コラム:米ストレステスト、欧州系2行の不合格が発する警告

コラム:米ストレステスト、欧州系2行の不合格が発する警告
 6月29日、米連邦準備理事会(FRB)が発表したストレステスト(健全性審査)第2弾の包括的資本分析(CCAR)結果によると、スペインのサンタンデールとドイツ銀行の米子会社はそれぞれ3年連続と2年連続で不合格になった。写真はワシントンにあるFRBの前を通り過ぎる男性。2015年12月に撮影(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)
Gina Chon
[ワシントン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)が29日発表したストレステスト(健全性審査)第2弾の包括的資本分析(CCAR)結果によると、スペインのサンタンデール とドイツ銀行の米子会社はそれぞれ3年連続と2年連続で不合格になった。サンタンデールとしては、野球のように「三振バッターアウト」にならないのは幸運というべきだろう。
今回の結果から読み取れる警告は、はっきりしている。今後テストを受けざるを得なくなるより多くの欧州系銀にとっては、北米系銀行と違って合格を勝ち取るのは小さな野球のボールを捕まえるのと同じぐらい難しいように思われるということだ。
ドイツ銀行は今年、合格に近づいたように見えた。しかしサンタンデールとともに、資本計画の過程に「重大な打撃を与える」深刻な欠陥が判明した。2行ともリスク管理と内部統制の妥当性も適切に説明できなかった。ただ、テストを受けた他の31行(ほとんどは米国勢)と同じく、深刻な逆風シナリオ下でも数量的な基準はクリアしている。
モルガン・スタンレーは何とか条件付きで合格をもらった。資本計画のより重大でない問題を解決するために今後再提出が義務付けられた。ウォール街で活動している大手行というくくりでは、ドイツ銀行とサンタンデールの子会社だけが資本還元は不可能になる。つまり親会社は配当を受け取れない。
他の欧州系銀行もやや不安げな様子かもしれない。米国で活動する大手外銀は7月1日までに中間持株会社を設立する必要がある。ドイツ銀行やサンタンデール、あるいはバークレイズ、クレディ・スイス、UBSの中間持株会社は来年、試験的に資本計画を提出する。そして2018年には正式なストレステストの対象に加わる。これらの中間持株会社にも米国の納税者に負担をかけずに危機を乗り切れる態勢を確保させる狙いだ。
ストレステスト合格のこつをつかむまで何度かトライする機会はある。シティグループは昨年合格する前に、2回落第している。ドイツ銀行とサンタンデールは学習を積んでおり、あるいは現在の組織構造でなく新しい中間持株会社での合格に力を注いでいるのかもしれない。それでも不合格が1回で済まなかったという事実からは、ストレステストの勘所を習得する難しさが分かる。FRBは毎年、どんどんテストを厳しくしている。今回はドイツ銀行とサンタンデールが最も問題があるように見えたが、両行だけでなくライバルの欧州勢も、この極めてとっつきにくい課題に向けてもっと入念な準備する必要があるのだろう。
●背景となるニュース
*FRBが29日発表した包括的資本分析結果によると、ドイツ銀行とサンタンデールの米子会社が再び不合格になった。数量面の基準は満たしたが、質的な評価に問題があった。FRBは資本計画の過程に「広範かつ著しい」脆弱性が見られ、是正措置も十分でないと指摘した。
*FRBはモルガン・スタンレーの資本計画については、いくつかの脆弱性に対策を施す必要があるとして12月29日までに再提出を求めた。他の30行は合格し、株主還元が認められた。
*ストレステストの対象となったのは33行。想定されたのは実質国内総生産(GDP)が7.5%減少し、失業率が足元の5%から10%まで急上昇する一方、短期債利回りがマイナスに転じるという深刻な経済の下振れ局面だった。
*23日に発表されたストレステスト第1弾「DFAST」では、最悪のシナリオ下でも全行が最低自己資本比率とレバレッジ比率の要求基準に達した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
英文参照番号[nL1N19L1Y0](契約の内容によっては英文がご覧いただけない場合もあります)
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab