焦点:株安は景気後退の前触れか、政策余力乏しく薄氷

焦点:株価下落、景気後退の前触れか 政策余力乏しく薄氷
 2月17日、最近の金融市場は、景気後退を予言するような動きを示している。市場の見通しが当たるとは限らないが、少しのショックでも大きく動揺しやすい状態だ。写真はロンドンの金融センター、カナリー・ワーフ。15日撮影(2016年 ロイター/Hannah McKay)
[ロンドン 17日 ロイター] - 最近の金融市場は、景気後退を予言するような動きを示している。市場の見通しが当たるとは限らないものの、現在の世界は少しのショックでも大きく動揺しやすい状態だ。
世界の株式時価総額は年初から8兆ドル超も消し飛んだ。こうした中で景気後退をメーンシナリオに据えているエコノミストが一握りしかいないことは注目に値する。
しかし懸念は強い。現在は大規模な経済政策が実施されそうにないどころか、そもそもその余力が乏しい上、欧州や日銀のマイナス金利政策は金融システムを救うのではなく、かえって問題を引き起こしているとの見方が多いからだ。
アクサ・インベストメント・マネジャーズは今年の世界経済の成長見通しを3.1%から2.7%に引き下げ、市場は循環的なリスクだけでなく、システミックなリスクを抱えていると警鐘を鳴らす。
アクサの首席エコノミスト、エリック・チェイニー氏は「世界の経済成長がこれほど弱く、企業利益がこれほど悲惨で、賃金上昇率がこれほど低い有様では、小さなショックでも世界の市場は大きく動揺する」と見る。
アクサは考え得るショックとして、中国の経済政策が突然変更されることと、ユーロ圏の不完全な銀行同盟をめぐるジレンマを挙げた。
しかし何より危なっかしいのは、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票だ。投票は6月末までに実施される可能性が高い。
チェイニー氏は「ロンドンは世界一の金融センターだ。英国の金融業界に何らかの混乱が起これば、すぐさま世界中の市場に伝播するだろう」と述べた。
<景気後退の予兆>
モルガン・スタンレーとソシエテ・ジェネラルは世界がことし景気後退入りする確率を約20%と見ている。シティその他はリスクが高まり続けているとの見方。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは米国が景気後退に陥る確率を20%と予想している。
どの予想を信じようが、景気後退がレーダーに映り始めたことは間違いない。
株式市場は既に景気後退を織り込んだようだ。
シティのストラテジスト、ジェレミー・ヘール氏によると、過去の景気後退期前に比べ、株価の調整度合いは「少し激しい」程度だという。この動きに照らせば、「世界的な景気後退はことし始まり、2017年半ばに終わる」想定になるという。
米国株が1年間で15─20%下落した後に景気後退が訪れた回数は、訪れなかった回数より多いが、必ず訪れるというわけではない。アライアンス・バーンスタインは、1988年と2002年にも半年間でこれだけ下がったが、景気後退には陥らなかったと指摘する。
企業利益がことし7─10%減少すると予想されていることを考えれば、株式市場の懸念も無理はないのかもしれない。しかしJPモルガンの調査では、1960年代、80年代、90年代に企業利益と株価がピークをつけた後、景気後退を経ずに急速に回復した例がある。
しかし現在と違うのは、当時は毎回大規模な景気刺激策が講じられたことだ。今回はそう簡単には実施できない。
しかも今回は株価が下落しているだけではない。JPモルガンによると、社債スプレッドは正に景気後退の領域に入っている。通貨とコモディティ価格の動きも過去6回の景気後退期の平均的な軌道をたどっている。
スタンダード・ライフ・インベストメンツの首席エコノミスト、ジェレミー・ローソン氏は「金融市場の緊張が蓄積し続けるなら、過去より遥かに深い景気後退がもたらされるだろう」と述べた。
(Mike Dolan記者)

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