インタビュー:ルネサス、半導体再編に参戦意向 大規模買収も=CFO

インタビュー:ルネサス、半導体再編に参戦意向 大規模買収も=CFO
11月18日、ルネサスエレクトロニクスの柴田CFOは、世界的な半導体再編について「受け身ではなく能動的に行動を起こしたい」と述べ、買収を視野に入れていると明らかにした。2013年3月撮影(2015年 ロイター/YUYA SHINO)
[東京 18日 ロイター] - ルネサスエレクトロニクス<6723.T>の柴田英利常務兼最高財務責任者(CFO)は18日、ロイターのインタビューで、世界的な半導体再編について「受け身ではなく能動的に行動を起こしたい」と述べ、規模拡大のために他社買収を視野に入れていることを明らかにした。
買収に向けて、手元資金の活用や市場調達も可能として、大規模案件への意欲も示した。
ルネサスは車載用半導体市場で世界トップのシェアを持っているが、今年3月、蘭NXPセミコンダクターズが米フリースケール・セミコンダクタを118億ドル(約1.4兆円)で買収することで合意、両社連合に1位の座を明け渡すことになる見通しだ。
これについて柴田CFOは「大きな脅威」と指摘。「早く彼らを凌駕(りょうが)するスケールに持っていきたい」と述べた上で「他社を買収して規模を拡大する可能性はある」と語った。
世界の半導体業界では巨額買収が相次いでおり、NXP・フリースケール連合だけでなく、今年5月には米アバゴが通信機器用半導体のブロードコムを370億ドル(約4.6兆円)で買収すると発表。さらに6月には米インテルが同業のアルテラを167億ドル(約2兆円)で買収することで合意した。
買収資金に関しては、9月末の現預金3800億円超のほか「金融機関や資本市場から十分に調達できる。追加的に数千億円は調達できると思う」と述べるとともに、「そんなに規模の小さな資金で考えているわけではない」と述べた。
<初配当は来期以降、成長投資を優先>
2010年4月に発足した同社は、15年3月期に初めて最終黒字化を実現し、営業利益率も10%を超えた。一方で減少している売上高については「まだ10%弱は撤退する事業があるので、意図的に減らし続けている」と述べて、来期以降も減収傾向は続くとの見通しを示した。
ただ、16年3月期も、2ケタの営業利益率と最終黒字は「達成したい」と強調。会社発足以来、まだ配当実績はないが、柴田CFOは「今期は成長投資を優先する」と述べ、今期も初配当を見送って、2017年3月期以降に検討する方針を示した。
柴田CFOによると、構造改革ステージを脱却して来期以降の成長につなげるため、今期は設備投資を増強する方針。設備投資額は、前年度の351億円に対し「今期は前年の2倍弱の水準」と述べ、500億円を超える規模になるとの見通しを示した。設備投資と併せて、ADAS(先進運転支援システム)など成長市場への研究開発への資金投下も強化する方針という。
柴田CFOの主な発言は以下の通り。
――NXPのフリースケール買収をどう見るか。
「もちろん脅威。両社が統合して大きくなるので、当社も早く彼らと同じような規模になって、凌駕するスケールに持っていきたい。(規模拡大は)R&D全体の予算が大きくなるので大きな武器で、そうした状態に当社もなりたい。当社が他社を買収して規模を拡大する可能性はある」
――アバゴがブロードコムの買収を決定する前に、ルネサス買収を検討していたとの報道があった。
「他社が当社を買いたいという話は株主に行くのではないか。それよりも、こちらが買いたいということは色々と検討している」
――買収資金はどう手当てするか。
「いま使える資金がバランスシートに3000億円超(9月末の現預金3886億円)ある。あとは追加的な資金調達で数千億円は調達できる。そんなに規模の小さな資金で考えているわけではない。金融機関や資本市場から十分調達できる」
――買収を検討している分野は。
「例えば、当社は自動車に強い。自動車にあまり強くない会社でも、必要な製品や技術を持っていれば、その会社を買収して製品や技術を自動車に売り込むことができる。そうしたシナジーが大きい。自動車や産業をベースにみるというより、当社にない技術や製品、当社が拡大したい技術や製品を持っているところがよいのではないか」
――半導体再編にどう参入するのか。
「半導体は、技術的な優位性を追求することで自然に成長した時代は終わり、普通の産業になりつつある。その中で、規模拡大や、1つの顧客にあらゆるソリューションを提供できるワンストップサービスが必要になってくるので(再編は)当然。当社も可能であれば、受け身ではなく能動的に行動を起こしたい」
――世界再編で中国勢の動きが目立つ。
「短期的には大きな影響はない。中国勢は例えば米国の企業を買収するときに大きな価格を払うのでM&Aの価格を釣り上げる要因になるので困る。当社のビジネス領域で深刻な競合はないが、半導体の市場で中長期的には非常に大きな存在になる」

村井令二 編集:北松克朗

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