IDC Japanは今年4月に実施したユーザー動向調査の結果を発表した。国内企業によるクラウド導入率は上がり、クラウド市場が普及期に入ったと強調している。
「SaaS」「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「業界特化型クラウド」など項目すべての利用形態で、クラウドの利用率は年々上昇しているという。2014年、SaaSは29.6%、パブリッククラウドは25.1%の企業が利用中と回答した。
一方、クラウドの認知度は、2014年調査ではわずかに低下した。例えば「理解している(『よく理解している』『概ね理解している』の合計)」という回答率は、SaaSでは2013年の38.8%から2014年は35.4%、プライベートクラウドでは同39.6%から36.0%に低下した。
IDCは背景として、従来ホスティング型アプリケーションサービス(ASP)や仮想化ソフトウェアをクラウドと認識してきた企業が、クラウドの本質をより深く考えるようになったため、クラウドを理解しているとする回答率が下がったためと推測している。
クラウドに対する印象は、従来から肯定的な印象を持つ企業が多かったが、2014年調査では、「安価」「迅速」といった利点に対する回答率がわずかに減少したという。期待が先行していたクラウドへの印象が、現実に沿って是正されたためとした。ユーザー企業のクラウドに対する期待は、クラウド登場時から変わらず、コスト削減をはじめとしたITの効率化だと説明している。
だが、IDCはITの効率化のみに焦点を合わせた場合、クラウドは国内IT市場を縮小に導くとする。ユーザー企業の多くはクラウドとイノベーションをあまり結びつけていないものの、クラウドはITの効率化だけでなく、事業や社会活動を変革するプラットフォームになり得ると指摘している。
クラウドを使ったイノベーションは新しいIT市場を創造すると共に、事業や社会活動を変革を促すという。事業者にとって重要な課題は「ITの効率化」と「ITを使ったイノベーション」という異なる命題に対応した、効果的な事業戦略の立案であるとしている。
2011~2014年 パブリッククラウドの利用検討状況 すべての配備モデル(「SaaS」「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「業界特化型クラウド」)で図表と同様の傾向がみられたという。