Microsoft主催の学生技術コンテスト「Imagine Cup 2010」にて、ソフトウェアデザイン部門に日本代表として参加した石村脩氏、関川柊氏、永野泰爾氏、金井仁弘氏の4人は、筑波大学附属駒場高等学校(筑駒)の1年生から3年生という若いグループだ。しかし彼らはただの高校生ではない。「優勝する」という発言は、多くの大人たちからすると大口をたたいているようにしか見えない。しかし一方で、「彼らなら本当にやるかもしれない」と思わせるような可能性を秘めたグループなのだ。
エリート高校生たちの挑戦
4人が所属するのは、筑駒の中高パーソナルコンピュータ研究部、別名「パ研」だ。Imagine Cup出場時の「PAKEN」というチーム名も、パ研をそのまま英語表記したもの。筑駒が全国有数の進学校であることに加え、このパ研にはスーパーコンピュータコンテストをはじめとする数々のコンテストで優秀な成績を残している部員や卒業生がいる。今回世界大会に参加したメンバーの中にも、多数の申込者の中から選抜されて「セキュリティ&プログラミングキャンプ2009」に中学3年生の時点で最年少にて参加し、Rubyの高速化を実現して「スーパー中学生」として注目された金井氏が入っているほか、2008年のImagine Cupパリ大会のアルゴリズム部門で世界第3位という好成績を残した高橋直大氏もこのパ研出身だ。
PAKENがImagine Cupに参加しようとしたきっかけは、単にMicrosoft製品を無料で使いたいという理由からだった。それが書類審査を通過し、3月に開催された日本大会では1位を獲得、ポーランドへの切符を勝ち取った。彼らの提案したソリューション「Bazzaruino」は、海外に支援物資を運ぶ際のコストを削減するため、旅行者が航空機を利用する際の預け荷物の空き容量を利用して物資を運ぶシステム。日本大会にて審査員を務めた東京大学大学院 准教授 博士の杉本雅則氏は「非常に斬新なアイデアだ」と絶賛していた。
その後PAKENのメンバーは世界大会に向け、システムはもちろんのこと、プレゼンテーション内容を何度も練り直し、世界大会に備えた。筆者が2度にわたって見学したマイクロソフトによる事前研修の場でも、ほんの短期間でプレゼンテーション内容がどんどん進化していった。
そしていよいよ迎えたImagine Cup世界大会。1回戦にて審査員の前でプレゼンテーションを披露した4人はとても堂々としていた。声のトーン、表情、すべて自信に満ちあふれている。リーダーの石村氏が進行役を務め、関川氏と永野氏のロールプレイのシーンでは審査員から笑いがこぼれた。質疑応答の際には、世界大会への出場が決まってから英会話学校に通ったという最年少の金井氏が次々と審査員の質問に答える。日本大会出場時にはまだ中学生で、その後数カ月英会話レッスンを受けただけとは思えないほどの英語力だ。
プレゼンテーションは満足のいく出来だった。PAKENの4人も、メンターとして同行していたパ研 顧問の市川道和氏も、彼らをサポートするために同行していたマイクロソフト日本法人のメンバーも、笑顔で彼らの健闘をたたえた。あとは結果を待つだけだった。
1回戦突破は68チーム中12チームのみ
1回戦の結果は、その日の夜に発表された。ソフトウェアデザイン部門には、各国の代表として集まった68チームが世界大会に参戦している。2回戦に進むのは、この中から12チームのみ。2回戦でプレゼンテーションを披露する順に、12チームの名前が発表されていった。