欧州委員会(EC)が「EU AI Act」という、世界で最も影響力を持つ法的枠組みの一つになるであろう法律の草案を発表してから約1年がたった。Mozilla Foundationによると、このフレームワークの策定作業は依然として続いており、今こそその方向性を確定するための取り組みに積極的に参加する時だという。
Mozillaの使命は、インターネットがあらゆる人々のためのオープンかつアクセス可能な公共のリソースであり続けるよう保証するために尽力することだ。インターネットの健全性を実現する同組織のプログラムにおけるかなりの部分で「信頼できる人工知能(AI)」(Trustworthy AI)の構築に焦点を置いてきている。
筆者はMozillaのエグゼクティブディレクターであるMark Surman氏と、上級ポリシーリサーチャーであるMaximilian Gahntz氏に会い、MozillaのAIに対する注力と姿勢について、そしてEU AI Actに関する重要な事実と、それが実際にどのように機能するのかとともに、改善に向けたMozillaからの提言と、あらゆる人々がこのプロセスに参加する方法について話を聞いた。
法制化への道を着々と進んでいるEU AI Actは、欧州連合(EU)に拠点を置いていない場合にも影響がある
Mozillaは、AIがインターネットの健全性における新たな課題だと2019年に看破していた。その背景には、AIがわれわれに代わって、あるいはわれわれに関して意思決定を行ってくれるものの、常にわれわれの意に沿ってくれるわけではないところにある。AIはわれわれが読むニュースや、目にする広告を用意したり、ローンの審査が通るかどうかを教えてくれるだけなのだ。
AIが下す意思決定は人類を手助けする可能性がある一方で、害を及ぼす可能性もあるとMozillaは指摘している。AIは歴史的な偏見や差別を助長し、ユーザーのことよりもエンゲージメントを優先し、大手IT企業の立場を盤石なものにしつつ個人の立場を弱体化する力を有している。
Surman氏は「信頼できるAIという考え方はここ数年、われわれにとって重要となってきている。というのも、データや機械学習(ML)、そしてわれわれが今日AIと呼んでいるものは、インターネットの実体と、インターネットが社会とわれわれの生活すべてと交わる手段における、技術的及び社会的ビジネスの中核構造になっているためだ」と指摘した。
EU AI Actに対するMozillaの姿勢について書き記しているGahntz氏によると、AIがわれわれの生活にますます浸透してきている中、その統制に向けた規範や規則を変革していく必要があるというEUの考え方にMozillaも同意しているという。