海外コメンタリー

欧州のAI規則案について知っておきたいこと

George Anadiotis (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2022-06-01 06:30

 欧州委員会(EC)が「EU AI Act」という、世界で最も影響力を持つ法的枠組みの一つになるであろう法律の草案を発表してから約1年がたった。Mozilla Foundationによると、このフレームワークの策定作業は依然として続いており、今こそその方向性を確定するための取り組みに積極的に参加する時だという。

 Mozillaの使命は、インターネットがあらゆる人々のためのオープンかつアクセス可能な公共のリソースであり続けるよう保証するために尽力することだ。インターネットの健全性を実現する同組織のプログラムにおけるかなりの部分で「信頼できる人工知能(AI)」(Trustworthy AI)の構築に焦点を置いてきている。

 筆者はMozillaのエグゼクティブディレクターであるMark Surman氏と、上級ポリシーリサーチャーであるMaximilian Gahntz氏に会い、MozillaのAIに対する注力と姿勢について、そしてEU AI Actに関する重要な事実と、それが実際にどのように機能するのかとともに、改善に向けたMozillaからの提言と、あらゆる人々がこのプロセスに参加する方法について話を聞いた。

法制化への道を着々と進んでいるEU AI Actは、欧州連合(EU)に拠点を置いていない場合にも影響がある

 Mozillaは、AIがインターネットの健全性における新たな課題だと2019年に看破していた。その背景には、AIがわれわれに代わって、あるいはわれわれに関して意思決定を行ってくれるものの、常にわれわれの意に沿ってくれるわけではないところにある。AIはわれわれが読むニュースや、目にする広告を用意したり、ローンの審査が通るかどうかを教えてくれるだけなのだ。

 AIが下す意思決定は人類を手助けする可能性がある一方で、害を及ぼす可能性もあるとMozillaは指摘している。AIは歴史的な偏見や差別を助長し、ユーザーのことよりもエンゲージメントを優先し、大手IT企業の立場を盤石なものにしつつ個人の立場を弱体化する力を有している。

 Surman氏は「信頼できるAIという考え方はここ数年、われわれにとって重要となってきている。というのも、データや機械学習(ML)、そしてわれわれが今日AIと呼んでいるものは、インターネットの実体と、インターネットが社会とわれわれの生活すべてと交わる手段における、技術的及び社会的ビジネスの中核構造になっているためだ」と指摘した。

 EU AI Actに対するMozillaの姿勢について書き記しているGahntz氏によると、AIがわれわれの生活にますます浸透してきている中、その統制に向けた規範や規則を変革していく必要があるというEUの考え方にMozillaも同意しているという。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  2. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  3. 運用管理

    IT管理者ほど見落としがちな「Chrome」設定--ニーズに沿った更新制御も可能に

  4. セキュリティ

    シャドーITも見逃さない!複雑化する企業資産をさまざまな脅威から守る新たなアプローチ「EASM」とは

  5. クラウドコンピューティング

    生成 AI リスクにも対応、調査から考察する Web ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]