中堅中小企業がIT製品の選定で最も重視しているポイントは「価格」だ。その結果、IT製品のコモディティ化が進み、製品単位での差別化が困難になっていくと見込まれている。
IDC Japanは10月5日、国内中堅中小企業IT市場におけるベンダー動向を分析した調査結果を発表した。2016年3月に実施した「国内中堅中小企業ユーザー調査」と、同年7~9月に実施したベンダーやシステムインテグレーター(SIer)などへのヒアリング調査をもとにしている。
国内中堅中小企業を対象としたユーザー調査では、従業員規模が999人以下の中堅中小企業がハードウェア、パッケージソフトを選定する際に重視する項目で「価格」の回答率が最も高くなっている。同様に購入先選定の理由としても「価格」を挙げる企業が最も多くなっている。
中堅中小企業における購入先選定の理由(IDC Japan提供)
IDC Japanは、中堅中小企業が製品やチャネルの選択で「価格」を重視していることから、中堅中小企業向け製品の「コモディティ化」が進むと見ており、ベンダーや販売チャネルにおいて製品単位での差別化は困難になっていくことが見込まれると分析している。
これに対して、大手国内ベンダーや外資系ベンダーでは、中堅中小企業向けのビジネスを強化しており、営業体制の強化、販売パートナーの支援拡充を図っている。特にパートナーを通じたクラウドの販売体制を強化している。
また、SIerや販売代理店は、収益拡大と差別化を図るために、新しいソリューションと組み合わせた提案を積極的に行っている。企業規模を問わず需要の高いモバイルに加えて、ニーズが拡大しているクラウド、データ分析に関連するソリューションを提供するSIerも増加しているという。
IT製品のコモディティ化が加速している。これまでのような既存システムの更新案件を中心としたビジネスは縮小傾向になるだけでなく、他社との差別化も困難となっている。ユーザー企業へのアプローチ方法を拡充したり、包括的なサポートを提供したりするなど、他社との差別化を図らなくてはならないが、ベンダーやSIerが単独で対応することは困難な場合も多くある、とIDC Japanは説明する。
ITスペンディング リサーチマネージャーの市村仁氏は、「ITベンダーは、販売パートナーだけではなく、他業態の企業も含めてエコシステムの構築を目指すべきである」と分析している。