ネットワンシステムズは12月17日、プライベートクラウドやパブリッククラウドが混在する環境において、性能や価格を比較して最適なクラウドサービスを選び、システム全体の構成を決められる「クラウドブローカリングサービス」を発表した。同日から提供を開始している。
クラウドブローカリングサービスは、プライベートクラウドやIaaSをはじめとした複数のパブリッククラウドを全社で一元管理できるようにすることで、アプリケーション利用環境を最適化する。セキュリティやガバナンスも強化できる。
具体的には、複数のクラウドを管理するポータルを設置し、アプリケーションと構成インフラを一覧できるようにする。この画面では、クラウド間で異なる機能の違いを吸収するマルチクラウド・オーケストレーション機能を持たせることで、複数クラウドを一元的に管理できるようにした。サービス基盤には、米CliQrのアプリケーション定義型クラウド管理基盤「CliQr CloudCenter」を採用した。
カタログ化=一覧表示
サービスの効果は(1)アプリケーションとインフラ構成の一覧表示、(2)クラウド間の性能やコスト比較、機能の違いの吸収、(3)マルチクラウドの利用状況の一元管理という3つに分類できる。
アプリケーションとインフラ構成の一覧表示機能は、アプリケーションとインフラ構成(ウェブサーバやアプリケーションサーバ、データベースサーバ、ロードバランサ、ファイアウォールなど)を融合した情報を一覧できるようにした。これによって、各クラウドの機能の違いを吸収し、一元的に管理できるようになる。
(1)の一覧表示では、インフラの各要素をドラッグ&ドロップすることで作成できる。その上で、最適な構成をテンプレート化することで、アプリケーションを迅速に開発、展開できるだけでなく、ナレッジも蓄積できる。さらに、ネットワンシステムズのノウハウを利用して作成した高可用性構成やセキュリティ強化構成などのカタログテンプレートも提供することで、さらに利便性が向上するとしている。
(2)では、作成した一覧画面を活用し、複数のクラウド間でアプリケーションの処理性能やインフラ稼働コストを比較できる。利用目的に最適なクラウドを客観的に判断できるとした。
稼働コストは、各クラウドサービスのAPI経由で最新の価格を反映して計測する。処理性能の計測では、シミュレーションではなく実際のクラウド環境に展開して算出し、N-tierアプリケーションでは1秒あたりで処理できるリクエスト数で測る。これによって、最適なインスタンスサイズも検討することができる。
(3)の目的は、ITガバナンス強化にある。アプリケーションが稼働しているクラウド環境について、利用クラウド/リソース利用状況/利用者などの情報を、単一の画面で一元的に管理できる。さらに、利用部門ごとに権限やコスト割り当ての設定も可能としている。「情報システム部門に隠れて事業部門がPaaSなどを利用する“シャドーIT”の対策に寄与すると想定している」(執行役員 篠浦文彦氏)
ネットワンシステムズ 執行役員 篠浦文彦氏
サービスは「Amazon Web Services」と「VMware vCloud Air」に対応しており、利用可能なクラウド環境を増やしていく方針という。また今後、プライベートクラウドのオーケストレーションツールとして「VMware vCenter」や「OpenStack」に対応。「Cisco ACI」や「VMware NSX」などのSDN製品とも連携し、アプリケーション・インフラ・ネットワークを連携させたプロビジョニングを可能にする予定とした。
執行役員の篠浦文彦氏は、クラウドブローカリングサービスを開始する背景として「事業継続性を担保する目的や、シャドーITなどさまざまな目的で複数のクラウド環境を利用する状況にある。PaaS各社の仕様差を吸収する役割が必要」と説明、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド利用時にネットワークを安定的に利用する重要性やユーザーニーズの高さを訴えた。
10月31日に同社が提供開始した、2本のネット回線を仮想技術で束ねて 、広域ネットワーク(WAN)として利用できるクラウド管理型のSD-WAN(Software-Defined WAN)サービスなどに加え、今後も、セキュリティなど、マルチクラウドやハイブリッドクラウド利用時のネットワークを安定させる関連サービスをリリースするとした。
ネットワンシステムズはクラウドブローカリングサービスを大規模企業、官公庁や自治体、サービス事業者へ向けて販売し3年間で7億円の売り上げを目指すとしている。
価格は、初期費用が29万8000円、月額費用はプランにより異なり、各プランの最小構成は最大同時稼働10台以上が税別3万9800円、同100台以上が37万8100円、1000台以上が358万2000円。
操作画面