佐賀県武雄市、ディー・エヌ・エー(DeNA)、東洋大学は2月12日、武雄市立山内西小学校の1年生40人を対象に、全8回実施したプログラミングの授業についての成果報告会を開催。授業で児童たちが作成したコンテンツを披露した。
また、武雄市の市長を務める小松政氏、東洋大学学長の竹村牧男氏、DeNA取締役 ファウンダーの南場智子氏と取締役最高技術責任者の川崎修平氏、そのほか山内西小の学級担任など関係者が、授業の成果と授業を終えての感想を語った。
プログラミングの授業で作成したコンテンツを発表する児童
武雄市では2014年4月から、市内の小学校の全児童に、1人1台のAndroidタブレットを貸与。3年生以上の算数と4年生以上の理科に、タブレットを使った「反転授業」を取り入れるなど、小学校の教育現場でのタブレット活用を進めている。今回のプログラミングの授業は、タブレット活用を推進する施策の一つとして、武雄市、DeNA、東洋大学が産学官連携で取り組んだ実証研究だ。2014年10月から隔週で計8回、通常の授業を終えた後の課外授業として実施した。
授業では、タブレット端末にプログラミングアプリをインストールして、「キャラクターを動かす」コンテンツの作り方を指導した。プログラミングアプリは、川崎氏がプログラミング言語「Scratch」をベースに、タブレット端末でのタッチ操作に特化した仕様で開発した。
Scratchと同様に、「←にあるく」「ジャンプする」などのコマンドが書かれたブロックを並べて、画面上のキャラクターを動作させる。「最後にタッチしたところへいく」などタブレット向けのコマンドも搭載する。今回の授業では、児童が自分で描いた絵をカメラでタブレットに取り込み、キャラクターとして動作させた。
DeNAがScratchをベースに開発したプログラミングアプリ
同日、第8回の授業として、児童たちがプログラミングアプリで作ったコンテンツを1人ひとり発表。「サンタクロースが家に入ると灯りがつく」「UFOに爆弾が当たると消える」「猫がミルクを飲むと大きくなる」など、それぞれが考えたストーリーを表現した。
南場氏は、「小学1年生がどこまでタブレットを使いこなせるのか心配したが、全く問題なく第1回目の授業からプログラミングの講義をすることができた」と説明。児童たちの発表会を見た感想として、「1つとして同じ作品がなかった。1人1台の端末で、それぞれが個を表現できたのではないか」と語った。
プログラミングアプリを開発し、全8回の授業で自ら先生として教壇に立った川崎氏は、プログラミング教育でのタブレット活用について、「タッチ操作で直感的に扱えるところや、カメラですぐに絵を取り込めるといった点で、小学1年生向けのプログラミングデバイスとしては良かった」と評価した。
一方で、「小学3~4年生くらいになれば、コードを書くようなプログラミング教育も可能になる。その場合は、キーボード付きのデバイスの方が良いかもしれない」とも考える。川崎氏によれば、今回開発したアプリは、OSによらずタブレット端末で動作する仕様になっており、iPadやWindowsタブレットへの展開も可能だとする。
指導内容については、小学1年生の発達を考慮した改善が必要のようだ。今回の授業では、「~を~かいくりかえす」「もし~なら」など、ループや条件分岐まで指導内容に含めた。学級担任の藤瀬澄子氏は「ブロックをつなげる作業は1年生には難しく、児童1人ではできなかった。1対1のサポートが必要だった」と語った。
小松氏は、武雄市におけるプログラミング教育を、「スマイル学習」、官民一体型学校「花まる学習会」に続く教育改革の“第3の矢”としながらも、今後、小学校でのプログラミング教育を継続していくかどうかは「未定」とコメントした。
(左から)武雄市の小松政市長、DeNAの川崎修平取締役最高技術責任者、DeNAの南場智子取締役 ファウンダー、東洋大学の竹村牧男学長