ゴミ1つ落ちていないイメージをもたれるほど清潔な都市として知られるシンガポール。これまでポイ捨てに罰金を課すなど公共衛生維持のためにさまざまな対策が講じられてきたが、今の美しい状況を維持できない可能性が出てきた。
シンガポール環境庁(NEA)によると、2015年のゴミ排出量は767万トンで、前年から15万9000トン増加した。シンガポール南部のセマカウ島にある埋め立て地は、今のペースでゴミが排出され続けると2035年までに満杯になると予測される。
背景には同国の拡大する経済活動と人口の増加がある。埋め立て地の処理能力を超えるゴミが発生してしまった場合、その周辺地だけでなく公共衛生の悪化や有害廃棄物による環境汚染の進行が懸念される。影響は、経済活動の鈍化にもおよぶかもしれない。
こうした状況を深刻に受け止め、シンガポールは「ゴミの3R」を掲げて解決を急いでいる。Reduce=ゴミを減らす、Ruse=再使用する、Recycle=再資源化するの3つだ。そうしたなか、近年世間からの注目を集めているのが革新的なアイデアを持つ地元の環境系スタートアップ企業だ。行政とも連携し、ゴミ処理のスマート化を目指している。
「シンガポールでは、毎日1800トンの可燃ゴミが排出されているが、そのうち1500トンは弊社の技術でリサイクルできる。経済的に見てもそのポテンシャルは大きい」――。シンガポール大手紙ストレーツ・タイムズにそう語るのは、有害廃棄物を無害化する技術を開発するZerowaste Asiaの創業者、Sun Xiaolong氏だ。
Sun氏はシンガポールの南洋理工大学で物質化学とエンジニアリングを学んだ後、15年以上にわたって、さまざまな産業で技術開発に携わってきた。シンガポール政府主導の400万シンガポールドル(約3億円)規模の産業廃棄物処理事業や、再資源化プロジェクトも任されてきた、同国の環境事業分野におけるキーパーソンでもある。
同氏が2013年に設立したZerowaste Asiaは、さまざまな種類の廃棄物から、ヒ素、カドミウム、水銀、鉛など、人や環境に害をおよぼす有害金属を、低コストかつ効果的に取り除くための薬品「ZA-TECH」の研究開発を続けている。
ZA-TECHは大がかりなプロセスや装置を必要とせず、その薬品を使うだけで固形廃棄物から排水、汚染された土壌などを処理できる。有害金属だけを分子レベルで錯体し無害化させるため、処理後も長期に渡って無害な状態を安定して保つことができるのも利点だ。
同社の技術を使えば、シンガポールで毎日焼却されている大量のゴミのほとんどがリサイクルでき、建築資材としても再利用できるそうだ。国土が狭く、国内資源が限られている同国にとって有益な技術だろう。現在はシンガポールと中国を中心に事業を展開しており、今後は他の地域にも事業を拡大していく方針だ。
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