音楽配信事業者や著作権権利者団体からなる一般社団法人著作権情報集中処理機構(CDC)が、円滑な著作権処理を推進するためのシステム「Fluzo」を開発した。これにより、著作権処理にかかる費用や時間が削減できるという。
Fluzoの特徴は大きく分けて3点ある。1つ目は複数の著作権管理事業者の権利管理情報を集約したデータベースだ。社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)、イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)、ダイキサウンドがそれぞれ構築しているデータベースを統合し、楽曲検索時などにおける窓口を一本化する。
2つ目は、音源ファイルから楽曲検索が可能となるフィンガープリント技術の採用だ。従来のテキストベースの検索では、曲名やアーティスト名が1文字違うだけでうまくいかないことがあった。今回、音源そのものから抽出したフィンガープリントデータを検索クエリとして使えるようになり、利便性が高まったという。NTTデータとグレースノートの技術を併用して精度を高めたとのことだ。
3つ目は、独自に発行するID(CDC-ID)による一元管理だ。CDC-IDと各管理事業者が付与している作品コードの関連付けをCDCが一括して実施。管理事業者間の権利移動や未登録楽曲の事後的な関連付けについても対応する。これによって複数の著作権管理団体をまたいだ利用楽曲報告データも一括で処理できるようになり、配信事業者側の作業負荷を大幅に減らせるという。
CDC代表理事の佐々木隆一氏はFluzoについて、「膨大な音楽流通における権利処理業務の効率化が最大の使命」と説明。「従来はn対n(複数対複数)で行われてきた取引の真ん中にCDCを置くことで、n:1:nの形を築くことができる。作業を1点に集約できれば、実質的なコスト低減はもちろんのこと、さらなる音楽のネット流通の促進にもつながる」と意義を語った。
なお、実際の運用開始については、「実務作業を円滑に開始するにあたって、さらなる修正を要する項目も残っているため、今しばらく準備のための時間を頂く」とし、当初予定していた4月1日からは遅れることになるという。
CDC幹事であるJRC代表取締役の荒川祐二氏は「著作権等管理事業法施行から8年、いまさらという感はあるかもしれないが、動き出したこと自体を前向きにとらえている」と話し、事業法以降に設立された新興著作権管理団体にとって、Fluzoが追い風となることに期待を寄せた。一括処理による作業の軽減によって、配信事業者が楽曲使用を判断する際に「(登録楽曲の多い)JASRAC楽曲か、否か」以外で考えるようになり、音楽著作権管理事業全体の活性化につながる、と指摘する声もある。
当初参加する配信事業者はCDC幹事社のうちの10社。2010年度内に50社の参加を目指す。基本的には利用実績に応じた費用負担となるため「早期に参加社が増えることで、個々の負担割合が減ることが理想」(CDC代表理事の菅原瑞夫氏)という。
また、放送局など音楽配信事業者以外への提供や、検索など一部機能のみの利用を認めるといったことも視野に入れている。ただ、「基本的に営利団体ではないため、各業界などのニーズを受けてから対応を考えることになる」(菅原氏)と慎重な姿勢も示している。
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