続いて、「イオンモバイル」を展開するイオンリテールの河野充宏氏、「OCNモバイル」を展開するNTTコミュニケーションズの岡本健太郎氏、「BIGLOBE SIM」を展開するビッグローブの大谷雅己氏、そして「mineo」を展開するケイ・オプティコムの森隆規氏が登壇。それぞれが自社サービスの最新動向や、直近のサービスなどを説明し、その後は各担当者によるパネルディスカッションが実施された。
まずは、2016年の格安SIMユーザーの動向をテーマとし、吉本氏が自社調査データを基に現在の市場動向を改めて説明。1年以内の契約者が半数を占め、家族で一緒に格安SIMを利用するユーザーが増えていること、音声通話付きサービスの利用者が7割を突破したこと、そしてNTTドコモとワイモバイルからMNPで移動するユーザーが増えており、MVNOからMVNOへのMNPも増えつつあることなどが明らかにされた。
そうした傾向の変化は、MVNO側も確実に感じ取っているようだ。ケイ・オプティコムの森氏は「最近、女性と若年層が増えているが、そうしたユーザーは口コミで加入する比率が格段に高く、最近は3~4割が家族や友人からの紹介で知った人たち」と話す。リテラシーの高い従来のユーザーとは異なり、新しいユーザー層では口コミによる安心感がサービス選びに重要な役割を果たしていることを示している。
また、ビッグローブの大谷氏は、「去年に比べ6Gバイト以上の大容量プランを契約する新規ユーザーが増えており、量販店では9割以上が6Gバイト以上を契約している。キャリアからMVNOに乗り換える際、いくら安いといっても容量が減ることには不安があるのではないか」と、大手キャリアから移動してくる最近のユーザーの傾向について説明した。
2つ目のテーマとして挙げられたのが、今夏の参入が予定されているLINEの「LINEモバイル」である。吉本氏はLINEモバイルの参入に関して「期待するのはスマートフォン利用者の拡大」と話し、スマートフォンを持つ年配者は「LINE利用率が驚異的」(吉本氏)であること、そしてLINE利用者のLINEモバイル認知率が3割で、そのうち3割が利用意向を示していることなどから、フィーチャーフォンユーザーをスマートフォンに移行させるのに、LINEモバイルは大きな役割を果たすのではないかと話した。
各MVNOの担当者は、LINEモバイルの参入に関して「話題性があると盛り上がる、歓迎していきたい」(イオンリテールの河野氏)と、敵視するよりも歓迎の意向を示す。その一方で、NTTコミュニケーションズの岡本氏が「LINEモバイルでさえ、LINEユーザーからの認知度が3割だという資料を見てショックを受けている。事業者はメリットのあるところを伝えただけで、情報を伝えきったように感じているだけなのではないか」と話すなど、LINEモバイルが参入してもなお、MVNOの認知にはまだ多くの課題があると、事業者側は感じているようだ。
最後に吉本氏は、MVNOの利用者が1000万人を突破するには、何が必要かをテーマとして挙げた。その上で吉本氏は、MVNOのサービス契約数は増えているものの、現在の契約数から1000万契約を突破するには154%の成長率が求められることから、年内の突破は難しいと推測する。
契約を増やすには、いまMVNOの利用を検討している人をいかに取り込むかが勝負となるが、契約にたどり着くまでには4段階の検討レベルがあり、そのレベルに応じて「インターネットでの評判」や「本体セット販売」など、ユーザーが注視しているポイントには特徴的な項目が現れていると話した。
では、MVNO側は1000万人の利用者を獲得する上で何が必要と考えているのだろうか。イオンリテールの河野氏は「iPhoneがMVNOで取り扱い可能になれば普及に弾みがつく。SIMフリーのiPhoneをMVNO全体で扱えるよう、働きかけをしていきたい」と、日本で人気のiPhoneを取り扱えることが大きく影響するとの考えを示した。また、イオンが力を入れてきた、フィーチャーフォンを利用しているシニア層の拡大も、重要になってくると話す。
一方でケイ・オプティコムの森氏は、「“格安”と思われているうちは大きく伸びない。かといってキャリアに近づくとよく分からない存在になってしまう。いかにキャリアにできないことをするかが鍵になるのではないか」と話し、MVNOは規模が小さく小回りが利くことを生かし、知恵を使って尖ったことをする必要があるとの考えを示した。
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