筆者の影が近づくと、暗紅色のタコは岩の下に隠れ、暗い裂け目に入っていった。浮遊しながらダイビングマスク越しに下をのぞいていると、波が後頭部に当たって飛び散った。マウイ島南岸沖の海の生き物たちと触れ合っている間に、またしても時が経つのを忘れてしまっていたらしい。手元の「Apple Watch」を確認したところ、ほぼ30分間、ずっと水中にいたようだ。
以前だと、「Apple Watch Ultra」がなければ、スキューバダイビングのセッションを追跡できるアプリ「Oceanic+」は使用できなかった。そして2024年秋、「Apple Watch Series 10」の登場に伴い、同機種でもOceanic+が使用できるようになった。同アプリでは、シュノーケリング機能がアップデートされている。
Series 10のリリース後すぐ、筆者はシュノーケリングの人気スポットであるハワイに行く予定になっていたので、これは機能をチェックする絶好の機会だと考えた。
シュノーケリングは趣味の1つではあるが、それほど頻繁にやるわけではない。英国に住む筆者にとって、シュノーケリングができる一番近い場所は極寒の北海だからだ。スコットランドやノルウェーをはじめとした北欧諸国の海岸線に接する北海は、シュノーケリングをする水域としては、特にこれといった魅力や面白みがある場所ではない。
しかし、幸運なことに、筆者は素晴らしい場所でシュノーケリングをする機会に恵まれてきたので、今では旅先でのお気に入りのアクティビティーの1つになった。インドネシアではカメと一緒に泳ぎ、オーストラリアではエイやサメ、イルカと一緒に泳いだ。紅海では、目もくらむような極彩色のサンゴの花園を探検したこともある。
今回のハワイ旅行でビーチに行ったときは、ほとんどの時間をシュノーケリングに費やした。いつものようにマスクとシュノーケルを持参し、有名なマウイ島の巨大アオウミガメを撮影するために、「GoPro」も持って行った。貴重品は小さな防水バッグに入れ、クリップで腰に留めた。そして、手首にはApple Watch Series 10だ。
10年前に初代のモデルが発売されて以来、旅行に持参すべきデバイスとして筆者はApple Watchをお薦めしてきた。両手がふさがっているときでも、手首に目をやれば旅の情報を簡単に確認できるし、タイムゾーンが変わっても、アクティビティーや睡眠を細かく監視できるからだ。また、移動中も通信状態を維持できるので、旅行や出張に行くときに本当に便利だ。今やApple Watchは、筆者にとってスマートフォンやヘッドホン、GoPro、「Kindle」と並んで、旅行に欠かせない重要なアイテムとなっている。
Apple Watch Series 10は、「泳げる耐水性能」のデザインで、50mの耐水性能を備える。本体が水中に入ったことを検知すると、防水ロックが作動する。水から上がったら、Digital Crownを長押しすると、本体の両側面にあるグリルから水が排出される。
さらに、Series 10では、水温と水中での経過時間を教えてくれる「水深」アプリも新たに追加された。Apple Watchの「潮位」アプリと組み合わせれば、箱から取り出してすぐにシュノーケリングに行くことができる。
もう少し真剣にシュノーケリングに取り組んでいる人は、Oceanic+アプリをインストールするといいだろう。シュノーケリング機能を購入すれば、各シュノーケリングセッションのGPSアクティビティーマップやログブック(写真や動画を「iPhone」から自動でインポートしてくれる)といった機能を月2ドル(日本では税込み300円)で利用できる。
海に入る前から、Oceanic+アプリはヒートマップの助けを借りて、筆者を人気のシュノーケリングスポットに誘導してくれた。さらに、筆者はシュノーケリングセッションを始める前に、Apple Watchに標準で搭載されている潮位アプリを使って、海の状況も細かく確認した。
Apple Watchを装着した状態で海に入ると、防水ロックが作動するのでOceanic+アプリを起動する。あるいは、無料の水深アプリがウォッチフェイスにポップアップ表示される。いずれのアプリも、タイマーが開始し、現在の水深(シュノーケリングなので、それほど深くない)と水温を教えてくれる。
Apple Watchを装着してシュノーケリングをしたときに最も役に立った機能は、おそらくタイマーだろう。シュノーケリングをしていると、時が経つのを忘れてしまいがちだが、タイマーのおかげで、海に入ってからの経過時間と海の状況を常に把握することができた。
泳いでいる間、Oceanic+アプリは筆者の距離とルートに関するデータをバックグラウンドで収集していた。岸に戻ると、まずDigital Crownを長押しして、本体から海水を排出し、それから今後の参考のために、視界や海面の状態、海流、見かけた魚の種類(Oceanic+アプリの「Ocean ID」機能の力も少し借りた)について、詳細な情報をログブックに追加することができた。
筆者はGoProを持っていたので、シュノーケリング中にiPhoneで写真や動画を撮影することはなかった。もし撮影していたら、タイムスタンプを読み取って、写真や動画がシュノーケリングログに自動的に追加されていただろう。
Apple Watchを装着してシュノーケリングをすることで得られた追加データは楽しくて、ありがたいものだったが、最も便利だと感じたのは、標準で搭載されているシンプルな水深アプリだった。Oceanic+アプリは、各シュノーケリングセッションを振り返るときや、どこで何を見たのかを記録するときに役に立った。
例えば、カメをどこで見たのかと尋ねられたとき、単に言葉で説明したり、マップアプリで大まかな場所を指し示したりするだけでなく、泳いだ正確なルートを見せることができた。マウイ島に再び行ける幸運に恵まれたら、この上なくエキサイティングな海の生き物を見た場所のいくつかをまた訪れて、その結果を比較してみたいと思う。
筆者が定期的にシュノーケリングをする人であったら、Oceanic+アプリをもっと活用していたのは間違いない。まともなシュノーケリングスポットの近くに住んでいたら、さまざまな時間帯に見たさまざまな魚や生き物を追跡したり、傾向データを使ってそれらの生き物の行動を学んだり、地元の水中生態系とのつながりを深めたりといったことも楽しんでいただろう。
旅行先でたまにシュノーケリングをする程度の人にとって、Apple Watchが必須のアクセサリーだとは思わない。Oceanic+アプリが真価を発揮するのは、シュノーケリングではなくスキューバダイビングのときだ。それは、シュノーケリング機能が改良された今でも変わらない。
とはいえ、Apple Watch Series 10やApple Watch Ultraを持っている人にとっては、シュノーケリングのときにも利用できるというのはうれしいことだ。Oceanic+のシュノーケリング機能のサブスクリプションは非常に手頃な料金ではあるものの、ほとんどの人は、Apple Watchに標準で搭載されている水深アプリ機能を使用すれば、魚の友達を探してサンゴ礁を巡っているときに、簡単にアクセスできるリアルタイムデータを十分に得られるはずだ。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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