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豆焼橋

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国道140号標識
国道140号標識
豆焼橋
地図
基本情報
日本の旗 日本
所在地 埼玉県秩父市大字大滝地内
交差物件 豆焼川
用途 道路橋
路線名 国道140号大滝道路
管理者 埼玉県秩父県土整備事務所
施工者 三菱重工業
竣工 1982年昭和57年)8月[1]
開通 1998年平成10年)4月23日
座標 北緯35度54分41.05秒 東経138度49分16.78秒 / 北緯35.9114028度 東経138.8213278度 / 35.9114028; 138.8213278
構造諸元
形式 アーチ橋
材料
全長 220.000 m[2]
10.750 m
高さ 32.000 m
桁下高 120 m
最大支間長 149.600 m
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
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豆焼橋(まめやきばし)は埼玉県秩父市大滝の豆焼川に架かる国道140号大滝道路[3])の道路である。資料によっては豆焼沢橋と記されている物もある[4]

概要

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橋は秩父多摩甲斐国立公園の普通区域内の山地に位置する[5]。橋の標高は約1000メートルである[6][7]。橋長220メートル、総幅員10.75メートル、有効幅員9.25メートル(車道7.25メートル、歩道2メートル)最大支間長149.6メートルのアーチ橋の一種である鋼逆ローゼ橋の1等橋(TL-20)である。側径間は両側とも曲線となっていたが、右岸側は曲線から直線に改められている。下部工は逆T字橋台および重力式橋脚で、その基礎工は直接基礎である。橋の高さは豆焼川の河床から橋面まで120メートルである[8]。アーチリブの高さは基礎より32.0メートルである。車道と歩道の間には幅0.5メートルの縁石が設けられている。縁石に車道と歩道を隔てる柵は無い。車道には外向きに1.5パーセント、歩道に2パーセントの横断勾配が付けられている。また、縦断線形は山梨方に向かって6.0パーセントの上り勾配が付けられた片勾配の斜路橋の橋梁で[8]、この数字はベタ踏み坂の通称で著名な江島大橋(6.1パーセント)と0.1パーセントしか違わない。勾配6.0パーセントを度に換算すると約3.43 °で、右岸側と左岸側の高低差は13.2メートルとなる。支柱の対傾構にK型鋼(座屈拘束ブレース[9])が多用されている。橋のすぐ南詰には長さ744メートルで半径150メートルの曲線トンネルである奥秩父トンネルの坑口がある。

埼玉県の第一次特定緊急輸送道路に指定されている[10][9]

深い緑のVの字の谷間に橋の紅が映える絶景スポットで、2003年(平成15年)3月に国土交通省荒川上流河川事務所が選定した「荒川をめぐる旅100選」の荒川の名所の一つに指定されている[11][12]

諸元

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  • 形式 - 3径間連続鋼逆ローゼ橋
  • 橋長 - 220.000 m[2][13]
    • 支間割 - (34.500 m + 149.600 m + 34.500 m)
  • アーチライズ - 32.0 m
  • 幅員
    • 総幅員 - 10.750 m - 11.170 m
    • 有効幅員 - 9.250 m - 9.570 m(車道7.250 - 7.570 m、歩道2.000メートル)
  • 縦断勾配 - 6.0 %
  • 横断勾配 - 車道1.5 %、歩道2.0 %
  • 床版 - 鉄筋コンクリート
  • 橋台 - 逆T字橋台
  • アーチ拱台 - 重力式橋脚
  • 基礎 - 直接基礎
  • 鋼重 - 1041 t
  • 橋格 - 一等橋(TL-20)
  • 施工 - 三菱重工業[注釈 1]
  • 架設工法 - ケーブルエレクション斜吊り工法
  • 竣工 - 1982年(昭和57年)8月
  • 開通 - 1988年(昭和63年)6月14日[注釈 2]

建設

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現場となる関東山地奥秩父山塊は山容が急峻で、2000メートル級の名峰が連なる全国屈指の山岳地帯ある。近年稀にみる難事業であることに加え、全線が国立公園の区域内にあり「奥秩父の美しい原生林を壊すな」と自然保護団体東京大学などからの横槍も入ったことにより事業の難易度がさらに増すこととなった[14][15]。国立公園を管轄する環境庁[注釈 3]公共性の高さから工事は原則許可する方針であった[16][注釈 4]

1980年(昭和55年)、国道140号の延伸工事は川又を起点に豆焼川の出会地点(滝川との合流点)までの約5.0 km地点に到達、道路改良が完了した[14]

豆焼橋の図面[8]によると豆焼橋の山梨方で直進ではなく左にカーブしているが、これは当時有力視されていた滝川を再び遡り、その源流の水晶谷を豆焼川同様にΩカーブで越えて雁坂峠の南東側に位置する雁峠付近の下にトンネルを通す計画(雁峠越えルート)[16]に基づいたためである。豆焼橋自体も当初の計画には無く、豆焼川の上流側に迂回してより規模の小さい橋を架ける計画であった[7]

現行のルート(雁坂ルート)の方が自然公園内の土地の掘削量が少なく、国立公園の特別地域(以下、特別地域)の通過距離が大幅に短くなり、自然環境への影響が少ないことに加え、雁峠の地質が悪く、トンネルの難工事が予想されたため[16]1981年(昭和56年)に橋から先はルート変更となった[16][17]。工事は事業主体は橋は埼玉県(県土木部)で、県境地帯(特別地域)となる橋以遠は、建設省関東地方建設局[注釈 5]が直轄で事業を行なっている[14][16]

橋は1980年(昭和55年)には橋の下部工の工事が完了している[14]。その後上部工が建設され、1982年(昭和57年)8月に完工している[1]。施工は三菱重工業(橋梁部門は現在のエム・エムブリッジ)が行ない、架設工法はケーブルエレクション斜吊り工法が用いられた[18]。架設地点は人を寄せ付けない険しい地形で、架設の際周辺に道路がないため、対岸への物資の搬入や、建設の際の仮設工である鉄塔設備の構築に大変難儀した[8]

1988年(昭和63年)6月14日入川橋1973年〈昭和48年〉7月11日に開通済み)から豆焼橋までの約5.5 kmが同日10時より開通した[19][20]。ただしパイロット道路(搬入道路)としての開通であるため、一般車両は豆焼橋の手前で折り返しとなり[19][注釈 6]、橋の対岸へは渡ることはできなかった。開通当時は国道の橋としては全国でも傑出した規模を有する山岳橋であった[7]。この橋の完成により埼玉県としての工事は一応完了となり[14][16]、山梨方の特別地域内で順次着手される建設省が直轄の雁坂大橋や雁坂トンネルなどの構造物建設の足掛かりとなった。なお、奥秩父トンネルは豆焼橋とほぼ同時期の1988年(昭和63年)に概ね完工されている[21]。雁坂トンネルのすぐ手前側にある雁坂大橋は約21億円を投じて[22]1990年(平成2年)完工[23]され、1991年(平成3年)3月[21]までに雁坂トンネルの埼玉側坑口(予定地)までのアプローチが可能となった[22]。これにより雁坂トンネルの埼玉県側の工事は1992年(平成4年)1月22日より着工されている[24]

一般車両も含めた豆焼橋の全面開通は雁坂トンネル有料道路の開業と同じ[25]1998年(平成10年)4月23日16時からである[26]。なお、大滝道路を構成する中津川沿いのバイパス(大滝大橋や大峰トンネルなど)もこれらと同時開業の予定だったが、1997年(平成9年)3月に工事現場付近でクマタカの営巣が確認されたため、工事が中断された影響によりトンネルや橋との開業に間に合わなかった[24]。大滝道路(落合交差点 - 雁坂大橋間)の全線開通は同年10月である[21][3]

開通後

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開通当初は秩父郡大滝村に架かる橋であったが、2005年(平成17年)4月1日の合併(平成の大合併)により大滝村は秩父市に合併され、所在地が秩父市に変わった。

橋の耐震基準が1980年(昭和55年)以前の基準であったため、豆焼橋耐震補強工事が実施され、2016年(平成28年)12月完了した[27]。 施工は日本ファブテックが担当した。粘性ダンパー(耐震ダンパー)の新設や座屈拘束ブレースなどの更新も行われている[9]

周辺

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周辺は「奥秩父の秘境」とも呼ばれ、紅葉の名所の一つである[28]。橋までは西武観光バス中津川線の「川又」停留所から徒歩で約1時間30分[19]の場所にある。 周囲は和名倉山(白石山)の麓を流れる滝川渓谷を挟んだ西側に当たり、奥秩父トンネルより先は秩父多摩甲斐国立公園の特別地域である[5]。雁坂トンネルや奥秩父トンネルの掘削で生じたズリ(掘削残土)の捨て場が周囲に複数個所あり[26][29]、そのうちの一つのワサビ沢を埋め立てたズリ捨て場には「彩甲斐街道 出会いの丘」が整備されている。 橋の南詰で滝川沿いへの旧ルートの車道が分岐があるが、入口に車止めが設置され、一般車両は通行不能となっている[30]。この車道は黒岩尾根を経由して雁坂峠へ至る登山道へ通じている。

その他

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  • けやき出版の『車でいく小さな旅 2: 奥秩父・雁坂みち編』( 1999年、ISBN 4877510680)の表紙に豆焼橋の写真が掲載されている。
  • 秩父市は橋からの投身自殺が多く[31]、このような背景から市内の主要な橋の高欄などに橋からの投身自殺を防ぐ目的で「自殺予防標語入り看板」を設置し、その成果を上げている[32]。豆焼橋もその対象になっており、橋の歩道側北詰に設置されている[33]

脚注

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注釈

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  1. ^ 橋梁部門は現在のエム・エムブリッジ
  2. ^ 但しパイロット道路として。
  3. ^ 現在の環境省
  4. ^ 後述のルート変更前までは自然保護団体などと同様に環境庁も建設に反対の立場だった[15]
  5. ^ 現在の国土交通省関東地方整備局
  6. ^ 橋を渡った先が工事中で行き止まりとなり、一般車両を通す意味がないため。「彩甲斐街道 出会いの丘」も当時はまだ未開業であった。

出典

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  1. ^ a b 伊藤雪 (2016, pp. 205–206)
  2. ^ a b 橋梁年鑑 豆焼川 詳細データ - 日本橋梁建設協会橋梁年鑑データベース。2022年7月14日閲覧。
  3. ^ a b “大滝道路が全線開通 雁坂トンネルアクセス道 大型車通行可能に”. 埼玉新聞 (埼玉新聞社): p. 1. (1998年10月4日) 
  4. ^ 「(表紙)」『土木技術』第39巻第6号、土木技術社、1984年6月1日、0頁、ISSN 02855046全国書誌番号:00017463 
  5. ^ a b 公園区域の基礎情報”. 環境省. 2022年6月30日閲覧。
  6. ^ 彩の国(92)の主な橋一覧” (PDF). さいたま橋物語(埼玉県ホームページ)、 (1994年). 2018年1月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月30日閲覧。
  7. ^ a b c 『大滝村誌(上)』 387-388頁。
  8. ^ a b c d 虹橋 No.31 36頁。
  9. ^ a b c 虹橋 No.81 24-25頁。
  10. ^ 埼玉県の緊急輸送道路”. 埼玉県 (2021年6月23日). 2022年7月14日閲覧。
  11. ^ 荒川をめぐる旅100選」『日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」』https://kotobank.jp/word/%E8%8D%92%E5%B7%9D%E3%82%92%E3%82%81%E3%81%90%E3%82%8B%E6%97%85100%E9%81%B8コトバンクより2022年7月14日閲覧 
  12. ^ 荒川100選 雁坂峠 豆焼橋”. 荒川上流河川事務所. 2007年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月14日閲覧。
  13. ^ 『橋梁年鑑 昭和59年度版【昭和57年度完工】』 89頁・176頁・177頁。
  14. ^ a b c d e 昭和55年9月4日『埼玉新聞』 1頁。
  15. ^ a b 『雁坂トンネルと秩父往還』 229頁。
  16. ^ a b c d e f 昭和56年9月20日『埼玉新聞』 1頁。
  17. ^ 『雁坂トンネルと秩父往還』 250-251頁。
  18. ^ 『橋梁年鑑 昭和59年度版【昭和57年度完工】』 89頁。
  19. ^ a b c 昭和63年8月5日『埼玉新聞』 9頁。
  20. ^ “国道140号の入川橋-豆焼橋間、14日から供用開始”. 朝日新聞 朝刊埼玉 (朝日新聞社): p. 0(朝日新聞クロスサーチ). (1988年6月4日) 
  21. ^ a b c 「土木事業史」略年表(事務所の歩み)” (PDF). 秩父県土整備事務所. 2022年7月14日閲覧。
  22. ^ a b 『雁坂トンネルと秩父往還』 234-237頁。
  23. ^ 橋梁年鑑 雁坂大橋 詳細データ - 日本橋梁建設協会橋梁年鑑データベース
  24. ^ a b 『大滝村誌(上)』 354-357頁。
  25. ^ 荒川の始まり -荒川の起点と源流点- (PDF) - 荒川上流河川事務所.2022年7月14日閲覧。
  26. ^ a b 平成10年4月24日『埼玉新聞』 19頁。
  27. ^ 豆焼橋耐震補強工事 - 日本ファブテック.2022年7月14日閲覧。
  28. ^ 紅葉観賞マップ - 秩父観光なび(秩父市). 2022年7月14日閲覧。
  29. ^ a b 五名美江「トンネル掘削残土の渓谷への埋め立てが渓流水質に及ぼす影響」『演習林報告』第126号、東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林、2012年2月、59-80頁、ISSN 037160072022年7月14日閲覧 
  30. ^ 黒岩尾根〜雁坂峠コース”. 秩父観光協会 大滝支部. 2010年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月17日閲覧。
  31. ^ 市報ちちぶ(平成27年8月号) (PDF) p. 2 - 秩父市、2015年8月10日、2022年7月17日閲覧。
  32. ^ 秩父市セーフコミュニティ 自殺予防対策委員会活動報告 (PDF) p. 27,30 - 秩父市(自殺予防対策委員会)、2022年7月17日閲覧。
  33. ^ ストリートビュー - google. 2022年7月17日閲覧。

参考文献

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関連文献

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  • 日本橋梁建設協会『新版 日本の橋―鉄・鋼橋のあゆみ』朝倉書店、2004年5月1日、171頁。ISBN 4-254-26146-2 
  • “高まる自然保護運動 秩父の雁峠と山梨結ぶ国道140号線の延長工事”. 埼玉新聞 (埼玉新聞社): p. 4. (1974年8月10日) 

外部リンク

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