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樺太アイヌ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アイヌ語 > 樺太アイヌ語
樺太アイヌ語
kabahuto aynu itah
話される国 日本
地域 樺太, 後に 北海道
民族 樺太アイヌ
消滅時期 1994年
言語系統
アイヌ語
  • 樺太アイヌ語
言語コード
ISO 639-2 ain
ISO 639-3 ain
Glottolog sakh1238  Sakhalin Ainu[1]
tara1248  Taraika Ainu[2]
消滅危険度評価
Extinct (Moseley 2010)
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樺太アイヌ語(からふとアイヌご、樺太アイヌ語:kabahuto aynu itah)またはアイヌ語樺太方言は、樺太樺太アイヌによって話されていた、アイヌ語の方言である。

アイヌが北海道から樺太に進出したのは、オホーツク文化後の時代であり、11世紀ころと考えられる。モンゴルの樺太侵攻の折、モンゴル軍と交戦した民族「骨嵬」(クイ)は、樺太アイヌとされる。アイヌの口頭伝承によると、樺太に住んでいたTonchiと呼ばれるニブフ人を置き換えたという[3]

第二次世界大戦後、樺太全土がソビエト連邦の施政下になってからは、樺太アイヌは100人を除き日本に移住した。アイヌの家族は樺太では1960年代に消滅した[4]。樺太アイヌ語は日本でしばらく生き残ったが、1994年に浅井タケの死亡により公的に知られる母語話者はいなくなったとされるが、実際はアイヌ語を多少なりとも知る樺太アイヌの一世はその後も存在した[5]。 現在は北海道や本州で生まれ育った樺太アイヌの中には自分たちの言語や文化を継承する動きがあり、樺太アイヌ協会などの組織が活動している。

音韻

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母音

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樺太アイヌ語は五つの母音を持つ。また、北海道アイヌ語と異なり開音節では母音の長短が区別される。

前舌 中舌 後舌
[i] i [u] u
中央 [e] e [o] o
[a] a

樺太アイヌ語において長母音を有する単語に関して、全てにおいて該当する訳ではないものの以下のような傾向が見受けられる。

  • 単音節かつ開音節の自立語は母音が長母音となる。例えばee(「エー」のように発音。「食べる」の意)などがこれに当たる。
  • 2音節以上かつ第1音節が開音節の単語のうち、北海道において例外的に第1音節にアクセントが置かれるような単語では、樺太では第1音節が長母音となる。例えば北海道のréra(「レラ」のように発音。「風」の意)は樺太ではreera(「レーラ」のように発音)となる。

子音

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子音は 「p」、「t」、「k」、「c」、「n」、「s」、「r」、「m」、「w」、「y」、「h」、「'」の12種が数えられる。無声音有声音の区別は存在しない。

両唇 両唇軟口蓋 歯茎 硬口蓋 軟口蓋 声門
破裂 [p] p [t] t [k] k [ʔ] '
破擦 [ts] c
[m] m [n] n
摩擦 [s] s [h] h
接近 [w] w [j] y
はじき [ɾ] r

北部のタライカ(敷香郡)やナヨロ(内路村)、ニイトイ(新問郡)、西海岸南部のタラントマリ(広地村多蘭泊)を除く樺太の多くの方言では音節末に立つ子音は限られ、音節末子音/m//n/との区別を失い、/k/, /t/, /p/, および/r/の一部は摩擦音化し/h/(xとも表記された)になる。例えば北海道のsések(「セセㇰ」のように発音。「熱い」の意)は樺太ではseeseh(「セーセㇸ」のように発音)となる。尚、音節末子音/h//i/の後ろでは[ç]に、/u/の後ろでは[ɸ]にそれぞれ近い音で発音される。

記録

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最古の記録は1643年オランダ人の探検家マルチン・ゲルリッツエン・フリースが残したいくつかの短い文がある[6]。また、1787年にフランス人のラ・ペルーズによっても161単語が記録されている[6]。他にも沢山の記録がある。

人物

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樺太アイヌ語の話者として記録を残した人物

樺太アイヌ語を記録・研究した人物

関連項目

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脚注

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  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Sakhalin Ainu”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/sakh1238 
  2. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Taraika Ainu”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/tara1248 
  3. ^ Gruzdeva, "The linguistics situation on Sakhalin Island". in Wurm et al. (1996:1008) Atlas of languages of intercultural communication in the Pacific, Asia and the Americas
  4. ^ Oops! That page can’t be found.[リンク切れ]
  5. ^ Piłsudski, Bronisław; Alfred F. Majewicz (2004). The Collected Works of Bronisław Piłsudski. Trends in Linguistics Series 3. Walter de Gruyter. p. 600. ISBN 9783110176148. Retrieved 2012-05-22.
  6. ^ a b 中川裕『アイヌ語広文典』白水社、2024年。ISBN 9784560099636 

参考文献

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  • 中川裕監修、小野智香子編『ニューエクスプレス・スペシャル 日本語の隣人たちⅡ(CD付)』白水社、2013年1月。ISBN 978-4-560-08616-2 

外部リンク

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