コンテンツにスキップ

松浦寿輝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
松浦 寿輝
(まつうら ひさき)
誕生 (1954-03-18) 1954年3月18日(70歳)
日本の旗 日本東京都
職業 詩人小説家フランス文学者批評家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
教育 博士(学術)
最終学歴 東京大学大学院仏文科
活動期間 1982年 - (詩人として)
1996年 - (作家として)
ジャンル 小説評論
代表作花腐し』(2000年)
『半島』(2004年)
川の光』(2007年)
『名誉と恍惚』(2017年)
『人外』(2019年)
主な受賞歴 高見順賞(1988年)
吉田秀和賞(1995年)
三島由紀夫賞(1996年)
芸術選奨(2000年)
芥川龍之介賞(2000年)
読売文学賞(2005年)
木山捷平文学賞(2005年)
萩原朔太郎賞(2009年)
紫綬褒章(2012年)
鮎川信夫賞(2014年)
毎日芸術賞(2015年)
谷崎潤一郎賞(2017年)
ドゥマゴ文学賞(2017年)
日本芸術院賞(2019年)
野間文芸賞(2019年)
デビュー作 『もののたはむれ』(1996年)
ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

松浦 寿輝(まつうら ひさき、1954年3月18日 - )は、日本詩人小説家フランス文学者批評家東京大学名誉教授毎日出版文化賞高見順賞読売文学賞選考委員。日本芸術院会員。

『折口信夫論』(1995年)などの評論、『冬の本』(1987年)などの詩集があり、小説では『花腐し』(2000年)で芥川賞を受賞。中年男を主人公とした幻想小説風の作品が多い。ほかの作品に『半島』(2004年)などがある。

人物

[編集]

東京都出身。幼少期から映画に親しむ。家のすぐ裏側が映画館であったと、初の映画評論集『映画n-1』の後書きに記されている。クリント・イーストウッドベルナルド・ベルトルッチのほか、特にアルフレッド・ヒッチコックの監督作品をこよなく愛しており、東大の映画講義でもしばしば言及する。一方、ジャン=リュック・ゴダールに対しては、近年のあからさまなアジア蔑視に対して疑問を感じている。

1977年から1979年にかけて、沼野充義らと第19次『新思潮』同人となり詩を書く。

B級映画への偏愛を隠さず、講義では『アスファルト・ジャングル』、『ウエスタン』から『ミッション:インポッシブル』、『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)、『キューティーハニー』などもとりあげている。

小説家としては、日本の古井由吉吉田健一[1]内田百閒、フランスのマルセル・プルースト失われた時を求めて」とロラン・バルトを敬愛する。また中井久夫川村二郎を知識人として深く尊敬している。最後まで小説を書かなかったバルトへの思いは「名前」(『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』)に詳しい。

社会から脱落した中年男を主人公とした作品が多い。『巴』『半島』といった長編小説も手がけるが、著者自身は短編の方により深い愛着を感じている。『半島』の装丁ではヴィルヘルム・ハメルショイを、『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』の装丁ではフィリップ・モーリッツの銅版画(エングレービング版画)をあしらっている。近著『そこでゆっくり死んでいきたい気持をそそる場所』の一篇「あやとり」では自身による猫の兄弟の挿画に挑戦している。

『折口信夫論』は「おそるべき水準の透徹した議論」[2]が展開されているという評価がある一方、荒川洋治から「官僚的な評論」[3]と言われ、折口門下の穂積生萩や鈴木亨や米津千之は、「同性愛ゴシップへの低俗な関心のみ強く折口学に対する理解の浅さを露呈した支離滅裂な内容である」と批判している[4]

2009年から2010年まで、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻の専攻長を務めた。また、東大駒場を拠点に2006年に設立された表象文化論学会の発足に尽力し、その初代会長となる(2期4年、2006-2010年)。

なお初期においてしばしば共に仕事をした美術研究家の松浦寿夫とは、特に血縁関係はない。

2015年現在、漫画家の西原理恵子から譲り受けた猫(三毛2匹、キジ1匹)を飼っている。[5]

学歴

[編集]

職歴

[編集]
  • 1982年、東大教養学部フランス語教室助手
  • 1986年、電気通信大学人文社会科学系列講師。
  • 助教授
  • 1991年、東大教養学部フランス語教室助教授。
  • 1999年、同大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(表象文化論コース)・教養学部超域文化科学科教授。
  • 2009年-2010年、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻の専攻長。
  • 2012年 東京大学退任。
  • 2014年 東京大学名誉教授。
  • 2015-2016年 東京大学客員教授。

受賞・叙勲歴

[編集]

主な著作

[編集]

[編集]
  • 詩篇20
  • 『ウサギのダンス』七月堂、1982年
  • 『松浦寿輝詩集』思潮社、1985年
  • 『冬の本』青土社、1987年
  • 『女中』七月堂、1991年
  • 『松浦寿輝詩集』思潮社 現代詩文庫、1992年
  • 『鳥の計画』思潮社、1993年
  • 『吃水都市』思潮社、2008年
  • 『afterward』思潮社、2013年
  • 『秘苑にて』書肆山田、2018年
  • 『松浦寿輝全詩集』中央公論新社、2024年

評論

[編集]
  • 『口唇論 記号と官能のトポス』青土社、1985年
  • 『スローモーション』思潮社、1987年
  • 『映画n-1』筑摩書房、1987年
  • 『平面論 1880年代西欧』岩波書店、1994年/岩波現代文庫、2018年
  • 『エッフェル塔試論』筑摩書房、1995年/ちくま学芸文庫、2000年
  • 『折口信夫論』太田出版、1995年/ちくま学芸文庫、2008年
  • 『映画1+1』筑摩書房、1995年
  • 『青天有月 エセー』思潮社、1996/講談社文芸文庫、2014年
  • 『謎・死・閾 フランス文学論集成』筑摩書房、1997年
  • 『ゴダール』筑摩書房(リュミエール叢書)、1997年
  • 『知の庭園 19世紀パリの空間装置』筑摩書房、1998年
  • 『表象と倒錯 エティエンヌ=ジュール・マレー』筑摩書房、2001年
  • 『物質と記憶』思潮社、2001年
  • 『官能の哲学』岩波書店、2001年/ちくま学芸文庫、2009年
  • 『散歩のあいまにこんなことを考えていた』文藝春秋、2006年
  • 『晴れのち曇り ときどき読書』みすず書房、2006年
  • 『青の奇蹟』みすず書房、2006年
  • 『方法叙説』講談社、2006年
  • 『クロニクル』東京大学出版会、2007年
  • 『波打ち際に生きる』羽鳥書店、2013年
  • 『詩の波 詩の岸辺』五柳書院、2013年
  • 『明治の表象空間』[7] 新潮社、2014年/岩波現代文庫(上中下)、2024年
  • 『黄昏客思』[8] 文藝春秋、2015年
  • 『わたしが行ったさびしい町』新潮社、2021年 - 海外紀行
  • 『黄昏の光 吉田健一論草思社、2024年

小説

[編集]
  • 『もののたはむれ』新書館、1996年/文春文庫、2005年
  • 『ウサギの本 (絵物語・永遠の一瞬) 』(絵本)新書館、1996年
  • 『幽』講談社、1999年/新編『幽 花腐し』講談社文芸文庫、2017年
  • 『花腐し』講談社、2000年/講談社文庫、2005年
  • 『巴』新書館、2001年
  • 『あやめ 鰈 ひかがみ』講談社、2004年/講談社文庫、2008年
  • 『半島』文藝春秋、2004年/文春文庫、2007年/講談社文芸文庫、2021年
  • 『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』新潮社、2004年
  • 川の光中央公論新社、2007年/中公文庫、2018年
    • 『川の光』は2009年6月20日にNHKの長編アニメーションとしてアニメ化されて放送された[9]。なお、この作品は有料オンデマンドでNHKのサイトから視聴できる[10]
  • 『不可能』講談社、2011年
  • 『川の光 外伝』中央公論新社、2012年/中公文庫、2018年
  • 『川の光2 タミーを救え!』中央公論新社、2014年/中公文庫(上下)、2018年
  • 『BB / PP』講談社、2016年
  • 『名誉と恍惚』新潮社、2017年/岩波現代文庫(上下)、2024年
  • 『人外』講談社、2019年
  • 『月岡草飛の謎』文藝春秋、2020年
  • 『無月の譜』毎日新聞出版、2022年
  • 『香港陥落』講談社、2023年

翻訳

[編集]

共著

[編集]

出演

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 「没後三十年 吉田健一の世界」『文學界』第61巻第9号、文藝春秋、2007年9月1日、104頁、NCID AA12358255 
  2. ^ 稲賀繁美「「耳」「声」「霊」──無意識的記憶と魂の連鎖について」、山中由里子・山田仁史編『この世のキワ 〈自然〉の内と外』勉誠出版、2019年、260頁。
  3. ^ 『文芸時評という感想』 [要ページ番号]
  4. ^ 『折口信夫・虚像と実像』勉誠社、1996年 [要ページ番号]
  5. ^ 『毎日かあさん12』
  6. ^ 平成24年秋の褒章受章者(東京都)” (PDF). 内閣府. p. 3 (2012年11月3日). 2013年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月30日閲覧。
  7. ^ 「新潮」で2010年11月まで50回連載。
  8. ^ 「文學界」で2015年8月まで19回連載。
  9. ^ [1]
  10. ^ [2]

関連人物

[編集]

外部リンク

[編集]