恵那山トンネル
概要 | |
---|---|
位置 | 長野県・ 岐阜県 |
座標 | 北緯35度28分59秒 東経137度37分43秒 / 北緯35.48306度 東経137.62861度座標: 北緯35度28分59秒 東経137度37分43秒 / 北緯35.48306度 東経137.62861度 |
現況 | 供用中 |
所属路線名 | E19 中央自動車道 |
起点 | 長野県下伊那郡阿智村 |
終点 | 岐阜県中津川市 |
運用 | |
建設開始 |
1967年10月12日(一期) 1978年3月21日(二期) |
完成 |
1974年10月23日(一期貫通) 1983年3月7日(二期貫通) |
開通 |
1975年8月23日(一期) 1985年3月27日(二期) |
所有 | 中日本高速道路株式会社 |
通行対象 | 自動車(危険物積載車両は通行禁止) |
技術情報 | |
全長 |
(上り線)8,649m (下り線)8,489m |
道路車線数 |
(上り線)2車線 (下り線)2車線 |
設計速度 | 80km/h(規制速度:70km/h) |
恵那山トンネル(えなさんトンネル)は、中央自動車道の園原IC - 中津川IC間にあり、長野県下伊那郡阿智村と岐阜県中津川市とを結ぶ、木曽山脈を貫く長大トンネルである[注釈 1]。
概要
[編集]全長は上り線が8,649m、下り線が8,489m[1]。1975年の開通当初は日本一長い道路トンネルで、世界でも2番目に長い道路トンネル[注釈 2]であった。2021年2月現在は山手トンネル、関越トンネル、飛驒トンネル、東京湾アクアライン、栗子トンネルに次いで日本国内第6位の長さである。
1975年の開通当初は、一期(現在の下り線)トンネルにおいて対面通行(暫定2車線)で供用されており、当時の制限速度は40km/hであった[2]。約10年後の1985年に二期(上り線)トンネルが完成し、上り線・下り線が別々のトンネルとなって片側2車線(完成4車線)となった。4車線となった現在でも、トンネル内は事故防止等の観点から車線変更禁止であり、制限速度も70km/hである。
なお換気方法の違いから、一期トンネルには天井板があり、高さ4.1m以上の車両は通行できなかったが、2012年12月に同じ中央道で発生した笹子トンネル天井板落下事故を受け、天井板を撤去した。これにより、2013年7月10日以降は高さ4.1m以上の車両も一期トンネルの通行が可能となった。
事故、火災、故障車発生などの緊急時に備え、上下線ともトンネル入口には信号機が設置されており、トンネル最直前の信号機の手前には赤信号の際の停止線がある。下り線手前の網掛トンネル下り線入口と上り線手前の神坂トンネル(上り線のみ)入口にも同様の信号機が設置されている。
トンネル設備
[編集]一期(下り線)トンネル
[編集]1967年10月に着工、1975年8月に完成。総工費は約340億円[3]。
建設当初の換気方式は横流方式となっていた。換気設備は東西それぞれの坑口とトンネル中間に立坑換気塔、斜坑換気塔の計4か所の換気所を設け、道路トンネルと並走する補助トンネルを通して道路トンネルの天井と側面から送風する。道路トンネルの天井部は送気ダクトと排気ダクトが区画されており、排気は天井部の排気ダクトから換気所へ送られる[3]。
2012年に発生した笹子トンネル天井板崩落事故を受けて同様の構造を持つ天井板を撤去する動きが広がり、2013年に本トンネルもジェットファンを使った縦流換気方式となった[4]。
防災設備としては5m間隔のスプリンクラー設備、消火栓、消火器を50mで1区画とする計173区画に設置されている。また、12m間隔で自動通報設備、50m間隔で手動通報設備が設置されている[3]。
交通管理用に、200m間隔で監視カメラ、100m間隔で緊急時の放送に使われる拡声装置、9か所に車両間隔と速度を検知する通行状況監視装置が設置されている[3]。
完成当初の恵那山トンネルと網掛トンネルをあわせた需要電力は約15,000kWと、大工場に匹敵する電力を必要とした。このためトンネルの東西より中部電力の77,000V送電線を引き込み、この2系統を各換気所の変電設備で降圧している。また、万が一の全停電に備えて非常用自家発電設備も設けている[3]。
二期(上り線)トンネル
[編集]1978年3月に着工、1985年3月に完成。総工費は約560億円[5]。
換気方式は、オイルショックを受けて省エネルギー化のため研究・開発が進められた縦流方式となっている。途中6か所にジェットファンを設け、そのうち4か所は集塵機室での電気集塵機による煤煙処理、2か所は一期トンネルと同様に立坑換気塔または斜坑換気塔によって換気を行っている。これにより換気用の天井ダクトや補助トンネルを不要とし、換気所要電力を一期トンネル(横流方式)の半分以下に削減した[5]。
通行制限
[編集]延長上り約8.6km、下り約8.5kmの長大トンネルであるため、危険物積載車両は恵那山トンネルを含む飯田山本IC[注釈 3][注釈 4] - 中津川IC間で通行禁止となっている。これら車両は当該区間では国道256号の清内路峠のトンネルを利用して迂回する必要がある。このほか、岐阜県東濃地区から松本・長野方面へは国道19号、名古屋IC以西から飯田・甲府方面へは国道153号(名古屋市中心部からであれば、愛知県道60号 - 愛知県道6号(グリーンロード) - 国道153号)を経由するルートもある[注釈 5]。
特別料金
[編集]関越トンネル(関越道)や飛驒トンネル(東海北陸道)と同様、建設費、維持管理費(月に約2,800万円)などの費用を要することから、恵那山トンネルを含む園原IC - 中津川IC間は恵那山特別区間として、距離単価が普通区間の1.6倍となっている。2024年(令和6年)4月1日から2034年(令和16年)3月31日までの予定で、ETC車に限り普通区間と同等の料金に引き下げられている[6]。
- 2011年(平成23年)8月1日から2014年(平成26年)3月31日までの期間は、割引として、ETCの有無を問わず普通区間と同等の料金に値下げされていた[7]。
- ETC車に対する割引は、当初2014年(平成26年)4月1日から当面10年間との予定であった[8]が、割引が継続することとなった。
笹子トンネル崩落事故関連
[編集]2012年12月2日午前8時頃に発生した中央道上り線・笹子トンネルで発生した天井板落下事故を受けて、国土交通省は、笹子トンネルと同型のトンネルの緊急点検を地方整備局や各高速道路会社などの道路管理者に指示した[9]。これを受けて、NEXCO中日本では自社管轄内にある同じ構造の一期トンネルを含め、4トンネルの緊急点検を行っている[10]。一期トンネルでは3日から順次点検が行われた[11]。
NEXCO中日本は、この緊急点検やその後の監視強化により本トンネルの安全性を確認したとしているが、利用者の不安を払拭するため、当初2014年度に計画していた天井板撤去工事を前倒しして[12]、2013年3月中に撤去する方針を示した[13]。しかしその後、関係機関との調整の結果、工事実施時期について、2013年5月連休明け以降の最も社会的影響が少ない時期に行うことを基本として、関係機関とあらためて協議・調整し決定すると発表した[13][14]。その後、2013年5月10日にNEXCO中日本が同年6月20日から7月10日まで一期トンネル(下り線・名古屋方面)を通行止にして行うと発表された。この間、二期トンネル(上り線・長野、甲府方面)を利用しての暫定2車線対面通行規制となった[4]。
沿革
[編集]- 1967年10月12日 : 一期トンネル着工。
- 1972年6月20日 : 恵那山トンネル・網掛トンネル区間4車線化施工命令。
- 1974年10月23日 : 一期トンネル貫通。
- 1975年8月23日 : 一期トンネル開通。
- 1978年3月21日 : 二期トンネル着工。
- 1983年3月7日 : 二期トンネル貫通。
- 1985年3月27日 : 二期トンネル開通、一期トンネルリフレッシュ工事開始。
- 1985年6月頃 : 一期トンネルリフレッシュ工事完了、完全4車線化。
- 2012年12月3日 : 中央道・上り線 笹子トンネル天井板崩落事故を受けて、恵那山トンネル下り線天井部分を緊急点検。
- 2013年6月20日 - 7月10日 : 下り線の天井板の撤去工事を実施。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 名前に「恵那山」とあるが、厳密には恵那山の少し北にある富士見台高原の真下を通っている。
- ^ 開通した1975年当時の世界一長い道路トンネルはモンブラントンネル(フランス - イタリア、11,611m、1965年開通)であった。
- ^ 恵那山トンネルは前述の通り、園原IC - 中津川IC間にあるが、園原ICは名古屋方面のみ接続のハーフインターチェンジのため、飯田山本IC - 園原IC間も規制対象となっている。
- ^ 開通当初は飯田IC - 中津川ICが規制対象だったが、飯田山本ICの開設により規制区間が短縮された。
- ^ ただし国道153号を通過するルートの場合、途中の伊勢神トンネル(愛知県豊田市)に高さ3.5mの制限がある。
出典
[編集]- ^ トンネル - NEXCO中日本 (PDF)
- ^ 昭和51年 警察白書
- ^ a b c d e 日本道路公団「恵那山トンネルの設備」『建設月報』第27巻第11号、建設広報協議会、1974年、74-79頁。
- ^ a b “中央自動車道 恵那山トンネルの天井板を撤去します ~ 工事規制中の安全運転にご協力をお願いします ~ | 2014年2月以前のニュースリリース | プレスルーム | 企業情報 | 高速道路・高速情報はNEXCO 中日本”. www.c-nexco.co.jp. 中日本高速道路 (2013年2月1日). 2023年3月19日閲覧。
- ^ a b 水谷, 敏則、山田, 憲夫「道路トンネルの付帯設備(1)」『トンネルと地下』第17巻第9号、土木工学社、1986年、59-69頁。
- ^ “3つの料金水準(普通区間・大都市近郊区間・海峡部等特別区間)を継続します | ニュースリリース | プレスルーム | 企業情報 | 高速道路・高速情報はNEXCO 中日本”. 3つの料金水準(普通区間・大都市近郊区間・海峡部等特別区間)を継続します | ニュースリリース | プレスルーム | 企業情報 | 高速道路・高速情報はNEXCO 中日本 (2024年3月27日). 2024年3月30日閲覧。
- ^ “高速道路の割高区間等の料金割引について”. 国土交通省 (2011年7月15日). 2015年6月20日閲覧。
- ^ “「新たな高速道路料金」について” (PDF). 新たな高速道路料金について. 中日本高速道路 (2014年3月14日). 2015年6月20日閲覧。
- ^ 『トンネル天井板の緊急点検について』(プレスリリース)国土交通省道路局、2012年12月3日 。2012年12月3日閲覧。
- ^ “トンネル崩落:つり天井式を緊急点検 中日本高速”. 毎日jp (毎日新聞社). (2012年12月3日). オリジナルの2012年12月6日時点におけるアーカイブ。 2012年12月3日閲覧。
- ^ “全国の高速に二十数カ所以上“つり天井”トンネル”. テレビ朝日 (2012年12月3日). 2012年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月3日閲覧。
- ^ “NEXCO中日本、安全性向上のための3カ年計画を策定 恵那山トンネルの天井板も撤去へ”. Impress Watch (2013年2月1日). 2013年3月2日閲覧。
- ^ a b “恵那山トンネルの天井板撤去が延期に”. 南信州新聞 (2013年2月10日). 2013年3月2日閲覧。
- ^ “中央自動車道 恵那山トンネル(下り線)の天井板撤去の工事について”. NEXCO中日本 (2013年2月8日). 2013年3月2日閲覧。
隣
[編集]- E19 中央自動車道
- (26-2) 園原IC/BS - 恵那山トンネル - 神坂PA/馬篭BS/SIC(SICは事業中) - (27) 中津川IC/BS
関連項目
[編集]- 延長別日本の交通用トンネルの一覧
- 延長別日本の道路トンネルの一覧
- 神坂峠 - 本トンネルに近い。
- 中津川線 - 建設が放棄された国鉄の路線。本トンネルの近くを神坂トンネルで抜ける予定であった。