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予備自衛官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
陸上自衛隊で用いられている予備自衛官標旗[1]

予備自衛官(よびじえいかん、: Reserve Self-Defense Official)は、自衛隊陸上海上航空)が予備要員として任用している非常勤自衛官のこと及びその官名である。特に予備自衛官の官職または官職にある者をいう。非常勤特別職国家公務員として、有事・訓練等の際に招集され、自衛隊における各任務に就けられる。一般の軍隊における予備役大日本帝国海軍における予備員制度などに相当する。「予備自」(予備自衛官)、「即自」(即応予備自衛官)、「予備自補」(予備自衛官補)の略称でも呼ばれる。

概要

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予備自衛官は常に維持する常備自衛官の人数を抑制し、必要時のみ効果的に増員するための制度またはその任にある自衛隊員の官職及びその職にある者をいう。身分は非常勤の防衛省職員非常勤の特別職国家公務員)・自衛隊員で、防衛省職員の定員外とされている。各地方協力本部が管理し、予備自衛官を以って官名としている。

自衛官を退官した者、予備自衛官補の教育訓練を終了した者より任官させる。予備自衛官補の課程を修了して予備自衛官に任官した者を特に公募予備自衛官といい、現役出身者と区別することがある。即応予備自衛官予備自衛官補と合わせて予備自衛官等という。予備自衛官制度の発足は1954年昭和29年)で、2004年平成16年)に予備自衛官50周年を迎えて予備自衛官50周年記念中央訓練、記念祝賀会、日米予備役懇談会などが挙行された。

1961年(昭和36年)に幹部自衛官たる予備自衛官がはじめて採用され、尉官が10名程度採用された。女性予備自衛官は予備自衛官制度発足時来看護士などの職種で募集され、要員は年々増加傾向にあった。一般の女性予備自衛官は1995年(平成7年)に募集され、2004年時点の約1100人余から漸増している。2002年(平成14年)に佐官の予備自衛官も採用開始される。2008年現在で約24万人の現役自衛官に対して約5万9千人、2013年現在で約23万人に対して約3万2千人、それぞれ予備自衛官が登録されている。現在の予備自衛官は、現役自衛官の数パーセントに当たる4万7900人[注 1]を定員とするが、充足率はおよそ7割である。諸外国の軍は予備役を現役の半数から同数を揃え、徴兵制度を敷く国家で予備役を現役の数倍から十数倍を擁する事例もある。自衛隊および予備自衛官制度が全志願制である事を勘案しても、自衛官の国家総人口に占める割合は諸外国の軍に比して高くない。

制度運用と政治的動向

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自由民主党国防部会は、日本の予備自衛官の規模や機能および役割などが各国の予備役と比較して非常に限定的であることから、これに対する改善をはかるとともに、現在は中佐相当の2佐までにとどまる公募予備自衛官を、大佐相当の1佐および将官など上位階級へ運用を拡大することを提言している。

民主党2003年(平成15年)に策定したマニフェストで予備自衛官の拡充を提言していたが、2009年度のマニフェストは提言を除いた。政権交代以降、予備自衛官の定員(47,900人)[2]に増減はなかったが、2010年に菅内閣は『平成二十三年度以降に係る防衛計画の大綱』を発表し、防衛費で大きな割合を占める人件費を抑制する施策として、「厳しい財政事情の中で有効な防衛力を確保する」ため「退職自衛官の有効活用」を図り、「公的部門での受入れを含む再就職援護や退職後の礼遇等に関する施策を推進」し、「官民の協力や人的交流を積極的に進める」として、常備および即応予備自衛官の削減と代替する予備自衛官の活用を今後の政府方針として打ち出している。

予備自衛官等制度における3区分

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予備自衛官等制度は、任務の内容や招集の義務レベルに応じ、大別して非常勤の隊員の任用形態として即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補の3種を定めている。招集を受けて応じなければ登録は抹消される。任期を継続すれば61歳まで継続可能。

予備自衛官等制度における3区分
区分 即応予備自衛官 予備自衛官 予備自衛官補
基本構想 防衛力の基本的な枠組みの一部として、防衛招集命令等を受けて自衛官となって、あらかじめ指定された陸上自衛隊の部隊において勤務 防衛招集命令、災害招集命令を受けて自衛官となって勤務 教育訓練修了後、予備自衛官として任用
設置
(発足年度)
陸上自衛隊 1997年(平成9年)
  • 陸上自衛隊 2002年(平成14年)
  • 海上自衛隊 2016年(平成28年)
身分 非常勤の特別職国家公務員 非常勤の特別職国家公務員 非常勤の特別職国家公務員
任務と役割 第一線部隊としての任務 駐屯地警備、後方地域の任務 教育訓練
招集に応ずる義務等 防衛・治安・災害派遣・国民保護等派遣・訓練 防衛・災害派遣・国民保護等派遣・訓練 教育訓練
任用期間 3年1任期 3年1任期
  • 一般 3年以内
  • 技能 2年以内
訓練日数 年間30日 年間5日
  • 一般 3年以内に50日
  • 技能 2年以内に10日
採用対象
  • 自衛官として1年以上の勤務者であり、退官後1年未満の者 若しくは技能を除く予備自衛官
  • 自衛官として1年以上の勤務者
  • 予備自衛官補の訓練を満了した者
自衛官未経験者
処遇等
  • 即応予備自衛官手当 月16,000円
  • 訓練招集手当 日14,200 - 10,400円
  • 勤続奨励金 1任期120,000円
  • 雇用企業給付金 月42,700円
  • 勤続年数や勤務成績により昇進・表彰
  • 予備自衛官手当 月4,000円
  • 訓練招集手当 日8,100円
  • 勤続年数や勤務成績により昇進・表彰
  • 訓練招集手当 日8,800円
  • 勤務成績により表彰
  • 即応予備自衛官の訓練招集手当(日額)は階級により異なる。
  • 予備自衛官の災害派遣招集は具体的な事情で招集拒否は勘案するが、防衛出動は正当な理由がない限り、拒否すると7年以下の懲役または禁錮が課せられる。
  • 予備自衛官補は教育訓練期間中、階級指定はなし。任官後、応募区分に応じて所定の階級を指定。
  • 予備自衛官補の招集は教育訓練のみで防衛出動・災害派遣等はなし。

処遇及び身分保障

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予備自衛官の処遇は、訓練応招に応じて1日8100円、その他に毎月4000円の支給がある。ただし、予備自衛官の訓練期間に定められている訓練日数を満たさずにいる場合、給与は停止し、再び訓練に応じるまで据え置きとされる。精勤者は勤続年数に応ずる表彰がある。予備自衛官は前述のごとく元自衛官及び予備自衛官補招集教育訓練修了者により編成され、日常は他職業ないし学業などに就いており、勤勉な予備自衛官も、訓練に応ずるために周囲の理解や協力を要する。特に被雇用者である予備自衛官は、雇用者や上司の了解と欠勤中業務の引き継ぎなど本業で不利益となり易い。自衛隊法第73条は「何人も、被用者を求め、又は求職者の採否を決定する場合においては、予備自衛官である者に対し、その予備自衛官であることを理由として不利益な取扱をしてはならない。」と定め、同条の2で「すべて使用者は、被用者が予備自衛官であること又は予備自衛官になろうとしたことを理由として、その者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱をしてはならない。」と定めている。これに罰則規定は定めがなく、身分保障としての実効性が低く、本条項が予備自衛官の民間採用が進捗しない一因とされ、即応予備自衛官や予備自衛官補に共通する課題である[要出典]

予算は順位が低く逼迫した場合、地域や訓練部隊により訓練参加、分割出頭、実弾射撃訓練などを中止する事例も見られる。主に観閲(観艦)式のある年は顕著に表れる[要出典]

基本的に防衛出動・災害派遣などで招集される際、出頭時から任務終了までの間当該の階級及び指定号俸に応じた俸給が支給される[3]

予備自衛官の訓練

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予備自衛官の訓練(5日間)は概ね、下記のようなカリキュラムにて行われる[4](訓練部隊によってカリキュラムは異なるため、あくまでも一例である)。

1日目
出頭、被服等の交付、着隊式、健康診断
2日目
体育訓練、野外衛生、基本教練
3日目
射撃訓練(射撃予習、射撃検定)
4日目
職務訓練
5日目
精神教育、表彰、離隊式

5日間の訓練は最初から最後まで連続して出頭することが練度の面でも望ましいが、社会人勤務などの日常生活と予備自衛官の職務を両立するため、予備自衛官の年5日間および即応予備自衛官の年30日間の訓練招集には分割出頭が認められている(なお、予備自衛官補の教育訓練招集は分割出頭は認められておらず、各「タイプ」ごとに連続して5日間出頭しなければならない)。

予備自衛官の5日間訓練は「2分割」が認められており、2日または3日間の連続出頭ができれば1~4日目のいずれからでも出頭が可能である。そのため本業の休日(例えば週末休みの場合であれば土日)を含めた日程で分割出頭することで、本業への負担を軽減することもできる。

予備自衛官補の訓練は一般と技能は日程を分けて行われるが、技能は職種に応じた訓練は実施されず、一般の訓練を簡略化・短縮した内容となる。予備自衛官の訓練も一般と技能を分けて行われるが、技能は職種に応じた専門的な訓練が実施される。ただし技能予備自が一般予備自の訓練に参加することも可能である。

表彰

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予備自衛官に対する表彰は、自衛隊法第5条の自衛隊員に対する表彰に関する規定、及び陸上自衛隊にあっては「予備自衛官及び即応予備自衛官の永年勤続者表彰の実施について」、海上自衛隊にあっては「予備自衛官永年勤続者表彰の実施について」という通達に基づいて実施される。予備自衛官及び即応予備自衛官は、以下の表彰制度が定められている。

予備自衛官等の表彰制度
表彰の区分 表彰要件(陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊) 授与品
防衛大臣表彰
  • 予備自衛官等としての勤務期間が30年以上
  • 招集時の勤務成績良好である者
  • 表彰状
  • 副賞
幕僚長表彰
  • 予備自衛官等として勤務期間が20年以上、かつ、招集時の勤務成績良好
  • 表彰を受ける年度及び直近の2箇年間連続訓練招集に出頭(=訓練に必ず参加)した者
  • 表彰状
  • 副賞
(陸)方面総監表彰
(海)地方総監表彰
(空)航空方面隊司令官表彰
  • 予備自衛官等として勤務期間が10年以上
  • 招集時の勤務成績良好
  • 表彰状
  • 副賞
師団長表彰
旅団長表彰
地方協力本部長表彰
  • 予備自衛官等として勤務期間が5年以上
  • 招集時の勤務成績良好
  • 表彰状
  • 副賞
  • 予備自衛官の表彰では「予備自衛官及び即応予備自衛官の永年勤続者表彰実施基準について(通達)」に定める予備自衛官永年勤続者表彰実施基準において、以下の要件が定められている。
  • 予備自衛官が退官し、再び任官した場合、引き続いて勤務としたものとみなされる。
  • 予備自衛官等を退官した後、退官した日の属する翌月以降再び予備自衛官等に採用された者の勤務実績については退官以前の勤務月数に合算される。
  • 同一の表彰を複数回受賞することはできない。団長表彰の次は総監表彰→幕僚長表彰→大臣表彰とステップアップする。

制度変遷

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予備自衛官は1954年(昭和29年)に時の防衛庁長官木村篤太郎の下、陸上自衛隊において予備自衛官制度が創設された官職である。当初、退職した自衛官を対象として15000人の予備自衛官の任用が図られた。有事に不足する常備自衛官の員数を補うことが同制度の目的であり、平時は民間にて就労する元自衛官を予備自衛官とし、1任期を3年、必要な防衛出動に招集する義務を付与することが定められた。1970年(昭和45年)に海上自衛隊、1986年(昭和61年)に航空自衛隊でそれぞれ導入されている。

予備自衛官の身分は非常勤の特別職国家公務員であり、任官者は予備自衛官手当・訓練招集手当がある。予備自衛官は陸海空の三自衛隊において運用の仕方が異なり、特に陸上自衛隊においては予備自衛官より即応予備自衛官、予備自衛官補という採用区分が派生している。今日では自衛官勤務一年以上の勤務者で退官後1年未満の者、予備自衛官補の招集教育訓練を満了した者を対象として採用される。

本項冒頭にも前述した通り、予備自衛官に任官された者は普段は社会人として働きながら、防衛招集命令、災害招集命令、国民保護等招集命令により招集された場合、出頭した日をもって自衛官となり活動する。一定の練度を維持するため、訓練招集命令により出頭し、年間一定期間(5日)の訓練を受ける。普段は社会人として一般企業に勤務しているため、訓練に参加しやすくするために分割出頭が認められているなどの措置がとられている。

予備自衛官の訓練は法律上で20日間実施が可能とされるが、本業との兼務を考慮して年間5日間とされており、本来予備自衛官として必要な錬度を確保することは難しい状況にある。1997年(平成9年)に、陸上自衛隊が年間30日の招集教育訓練に応ずる義務を有する即応予備自衛官の官職を創設し、常備自衛官の退職者ならびに予備自衛官より選考された者を任用して、有事に即応し、かつ一定の錬度を有する人員の確保策が図られた。即応予備自衛官については当該項目を参照。予備自衛官は、陸上自衛隊を皮切りに陸海空すべての自衛隊で任用され、陸上自衛隊では即応予備自衛官の任用をはじめるなど、二重三重の予備人員の練成・確保策を推進してきた。しかし、予備自衛官の員数は年々減少し、退職した自衛官に限定した員数の獲得が困難となり、自衛隊勤務経験がない一般国民を対象に予備自衛官補採用をはじめ、2001年以降から一定の招集教育訓練を修了した者を予備自衛官とする制度が発足し、従来の予備自衛官制度を大きく転換して改善を図っている。

予備自衛官補制度の新設を通じて、予備自衛官の任用の対象を一般国民にまで拡げたことは、予備自衛官等制度発足した1950年代と比較すると画期的であった。自衛隊が発足して間もない1955年8月に、防衛庁長官・砂田重政により高等学校・大学等の卒業生を対象に10か月ないし一年間、自衛隊の学校に入校させ、予備幹部自衛官とする構想を記者会見で発表したが、個人的な見解の部分が多く、政府部内でもあまり検討は進められなかった。戦後間もない社会情勢の中で自衛隊に対する警戒や懸念が強かったこともあり、頓挫し防衛庁長官が更迭される事態に発展したことがあった。砂田の罷免は予備幹部自衛官制度の提言のみならず、地域社会に郷土防衛隊なる民間防衛組織をつくり、主に地域の青少年に民間防衛の役割を担わせる郷土防衛隊構想を掲げ、一連の提言が世論の批判や懸念を招き更迭となっている。現在でも曽野綾子西村真悟が似た言説を唱え物議を醸している[5]

1990年代以降、冷戦崩壊、テロリズム拡大、災害の大規模化、北朝鮮による日本人拉致問題が明らかになるなど、日本国民に安全保障の懸念が強まり、自衛隊に対する国民の信頼や期待が高まった。これら情勢の中で発足した予備自衛官補制度は、若年者を中心に定員を大きく超える応募者が募りつつあり、予備自衛官等制度の一翼として定着しつつある。今後も安全保障環境の変化の中で、予備自衛官等制度に対する期待も寄せられつつあり、予備自衛官をはじめとした予備要員の適正な人員の獲得と能力の向上、そのために予備自衛官等制度に対する国民の理解を得ることが当該制度の定着を図る上での課題となっている。近年では、予備自衛官の新たな運用構想に基づき、従来の5日間訓練に加え、予備自衛官の中から選抜された者を中央訓練に参加させたり、5日間以上の訓練日程を組むことも行われている。 現在では、予備自衛官に情報科職種の創設を行い、予備自衛官補(技能)出身の技能公募予備自衛官のうち、語学採用のものを情報科に移動可能とすることや、一般公募予備自衛官の運用職域の拡大等、様々な検討がされている[6]

災害派遣

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2011年(平成23年)3月16日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の被災者支援のため、制度史上初の実任務招集がおこなわれた[7]。当初は陸上自衛隊に所属する予備自衛官のみを対象としていたが、4月16日に海上自衛隊及び航空自衛隊の予備自衛官に対しても災害派遣招集命令が発令された[8]。被災者への生活支援活動等や在日米軍等の救援活動の円滑化を図るための通訳に従事した[7]。初めての招集命令のため、これまで準備していなかった個人装備品の充実[9]や予備自衛官の勤務している民間企業との調整がうまくできるかが問題となった。

2016年(平成28年)の熊本地震に際しても、約160名の即応予備自衛官が招集されている[10]

2020年(令和2年)2月13日、新型コロナウイルス感染症に伴う災害派遣について、医療系資格を持つ予備自衛官(最大50名程度)の招集命令が下達された[11]

2024年(令和6年)1月5日、防衛省は、令和6年能登半島地震に対応するため、予備自衛官と即応予備自衛官を最大100人招集すると発表した[12][13]

災害派遣運用

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2012年(平成24年)3月財務省は、東日本大震災における「予備自衛官制度の運用」について調査した[14]

事前調査で被災地域外へ出頭可能と回答した予備自衛官は2割弱で、防衛省はこれらのうち155人に出頭を打診したが、出頭者は103人で事前調査対象者のおよそ0.4%と制度の機能不全が判明した。出頭可能を表明したが出頭の打診や命令を受けなかった者も多い。調査結果は「予備自衛官制度の維持には年間80億円ものコストがかかっているが、災害対処時に予備自衛官を十分に動員する運用態勢が確立されていなかった」とされた。財務省は、出頭者へ報酬を増やす、災害招集の拒否に対する罰則規定を設けるなどの改善案を提示した[15]

災害派遣などで駐屯地が留守となった場合に決裁責任者の不在など問題事例が発生し、予備一等陸佐創設の契機となった。

西日本豪雨災害では事前に予備自衛官が、土砂を取り除く資格、重機の免許と振動機械の資格の有無の聞き取り調査があったが、MOS(特技)と呼ばれる陸上自衛隊独自の自衛隊内の制度登録資格が無いので、ブルドーザーユンボの運転を許されずスコップで手掘り作業することになった[16]

階級

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自衛官の階級陸将、海将、空将以下2等陸士、2等海士、2等空士までの16階級であるが、予備自衛官の階級は陸上自衛隊では14階級から、海上自衛隊では12階級から、航空自衛隊では10階級から構成される。予備自衛官の階級においてはそれぞれ通常の自衛官の階級の上に予備と冠することとされ、予備1等陸佐予備2等海佐予備1等空尉を最高位とし、陸上自衛隊では予備2等陸士、海上・航空自衛隊では予備1等海士・予備1等空士を以って10から14階級として定められている(ただし予備2等陸士は予備自衛官補(一般公募)の予備自衛官候補生のみ、即応予備自衛官の者および予備自衛官補(技能公募)から予備自衛官になった者は予備3等陸曹以上の階級が指定される。[要出典]予備1等陸佐は連隊長1名のみ、もしくはそれに相当する予備1等陸佐になる。2018年4月より、予備1等陸佐の採用が開始された。公での登場は同年10月14日の中央観閲式において、元第28普通科連隊長関東補給処課長の吉原和宏予備1等陸佐の1名を指揮官とする「軽普通科連隊」が臨時編成され、観閲行進した[17][18]

公募予備自衛官

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技能・一般公募において任用された予備自衛官補が所定の招集教育訓練を修了した場合、応募した公募区分及び資格・経験に基づき、以下の職種及び階級の予備自衛官に任用される。下記表のほかに、大学の卒業や専修学校・短期大学・大学校・大学院などの卒業者は昇任することがある。例えば、基本情報技術者の合格者でかつ大学の理工系または情報系学部の卒業をしている者に関しては、49歳以上かつ実務経験概ね18年以上は予備1等陸曹、それ以外の者は予備2等陸曹として募集している。[要出典]

現在募集中の予備自衛官補からの任用職種階級表
衛生(甲)
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 医師 衛生科 医官
  • 実務経験19年以上 予備2等陸佐
  • 実務経験12年以上 予備3等陸佐
  • 実務経験5年以上 予備1等陸尉
  • 実務経験1年以上 予備2等陸尉
  • 実務経験1年未満 予備3等陸尉
歯科医師 歯科医官
薬剤師 薬剤官
臨床心理士 衛生官
公認心理師
看護師 看護官
  • 実務経験23年以上かつ看護部長若しくは看護課長相当の職位に
    1年以上勤務した46歳以上の者 予備3等陸佐
  • 実務経験12年以上かつ35歳以上 予備1等陸尉
  • 実務経験6年以上かつ29歳以上 予備2等陸尉
  • 実務経験3年以上かつ26歳以上 予備3等陸尉
  • 実務経験3年未満又は26歳未満 予備陸曹長
法務
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 弁護士 普通科 法務
  • 実務経験18年以上 予備2等陸佐
  • 実務経験11年以上 予備3等陸佐
  • 実務経験4年以上 予備1等陸尉
  • 実務経験1年以上 予備2等陸尉
  • 実務経験1年未満 予備3等陸尉
司法書士
  • 実務経験21年以上 予備2等陸佐
  • 実務経験14年以上 予備3等陸佐
  • 実務経験7年以上 予備1等陸尉
  • 実務経験3年以上 予備2等陸尉
  • 実務経験1年以上 予備3等陸尉
  • 実務経験1年未満 予備陸曹長
衛生(乙)
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募

理学療法士

衛生科 上級衛生
  • 49歳以上かつ実務経験概ね18年以上 予備1等陸曹
  • 上記以外の者 予備2等陸曹

作業療法士

診療放射線技師

上級診療放射線

臨床検査技師

上級臨床検査

救急救命士
准看護師

上級救急救命

栄養士

上級給養

臨床工学技士

上級衛生

准看護師 中級衛生
  • 49歳以上かつ実務経験概ね18年以上 予備1等陸曹
  • 44歳以上かつ実務経験概ね13年以上 予備2等陸曹
  • 上記以外の者 予備3等陸曹
歯科技工士 上級歯科技工
歯科衛生士 中級衛生
語学
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 英語検定1級程度 普通科 上級語学
  • 下記以外の者で49歳以上かつ実務経験18年以上 予備1等陸曹
  • 外国語大学等卒業者又は実用英語技能検定(英検)1級又はこれと同等の能力を有する者 予備2等陸曹
英語検定準1級程度 予備3等陸曹
大学卒業程度(ロシア語 中国語 韓国語 アラビア語 フランス語 ポルトガル語 スペイン語)
  • 下記以外の者で49歳以上かつ実務経験概ね18年以上 予備1等陸曹
  • 外国語大学者又はこれと同等の能力を有する者 予備2等陸曹
短期大学卒業程度[19](ロシア語 中国語 韓国語 アラビア語 フランス語 ポルトガル語 スペイン語) 外国語短期大学卒業者またはこれと同等の能力を有する者 予備3等陸曹
整備
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 大型自動車整備士 武器科
施設科
上級装輪整備
上級施設機械整備
  • 1級大型自動車整備士 予備1等陸曹
  • 2級大型自動車整備士 予備2等陸曹
小型自動車整備士
  • 1級小型自動車整備士 予備1等陸曹
  • 2級小型自動車整備士 予備2等陸曹
二輪自動車整備士
  • 1級二輪自動車整備士 予備1等陸曹
  • 2級二輪自動車整備士 予備2等陸曹
通信
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 陸上無線技術士 通信科 上級レーダー整備
  • 第1級 予備1等陸曹
  • 第2級 予備2等陸曹
総合無線通信士
(第1級・第2級)
上級無線電信
  • 第1級 予備1等陸曹
  • 第2級 予備2等陸曹
  • 大学無線・通信工学に関する学部卒又はこれと同等の能力を有する者 予備二等陸曹[要出典]
第3級総合無線通信士 中級無線電信 予備3等陸曹
工事担任者
(第1種又は総合種)
上級有線整備
  • 49歳以上かつ実務経験概ね18年以上の者 予備1等陸曹
  • 上記以外の者 予備2等陸曹
電気
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 電気主任技術者 施設科 中級電工
  • 第1種 予備1等陸曹
  • 第2種 予備2等陸曹
  • 第3種 予備3等陸曹
  • ただし大学電気・電子系学部卒又はこれと同等の能力を有する者 予備2等陸曹[要出典]
情報処理

[20]

公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 通信科 上級電計処理 予備陸曹長
予備1等陸曹
中級電計処理
  • 44歳以上かつ実務経験概ね13年以上の者 予備2等陸曹
  • 第2種情報処理技術者、基本情報技術者、予備3等陸曹
  • ただし大学情報系学部卒又はこれと同等の能力を有する者 予備2等陸曹[要出典]
建設
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 建築士 施設科 上級建設
  • 1級 予備陸曹長
  • 2級 予備2等陸曹
建設機械施工技士 上級施設機械施工
  • 1級 予備1等陸曹
  • 2級 予備3等陸曹
  • ただし大学の建築・機械系学部卒又はこれと同等の能力を有する者 予備2等陸曹[要出典]
  • 2級の資格を有する者で44歳以上かつ実務経験概ね13年以上の者 予備2等陸曹
測量士 上級測量
  • 49歳以上かつ実務経験概ね18年以上の者 予備1等陸曹
  • 上記以外の者 予備2等陸曹
測量士補 中級測量 予備3等陸曹
  • ただし大学の土木・測量系学部卒又はこれと同等の能力を有する者 予備2等陸曹[要出典]
放射線管理
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 放射線取扱主任者 化学科 上級化学
  • 第1種 予備1等陸曹
  • 第2種を有する者で44歳以上かつ実務経験概ね13年以上の者 予備2等陸曹
  • 第2種 予備3等陸曹
人事
公募区分 資格 職種 特技 階級
技能公募 遺体衛生保全士(エンバーマー) 普通科 又は共通
  • 49歳以上かつ実務経験概ね18年以上の者 予備1等陸曹
  • 上記以外の者 予備2等陸曹
納棺士
  • 49歳以上かつ実務経験概ね18年以上の者 予備1等陸曹
  • 44歳以上かつ実務経験概ね13年以上の者 予備2等陸曹
  • 上記以外の者 予備3等陸曹
保育士 上級厚生
  • 主任保育士又はこれに該当する職務の実務経験が
    概ね5年以上の者 予備1等陸曹

中級厚生

  • 実務経験概ね13年以上の者 予備2等陸曹
  • 上記以外の者 予備3等陸曹
一般
公募区分 資格 職種 特技 階級
一般公募 - 普通科 - 予備2等陸士
船舶(甲/乙)[21]
公募区分 資格 指定職域 特技 階級
技能公募 1級海技士(航海) 用兵(艦艇) 艦艇幹部
  • 20年以上かつ43歳以上 予備2等海佐
  • 12年以上かつ35歳以上 予備3等海佐
  • 7年以上かつ30歳以上 予備1等海尉
  • 7年未満または30歳未満 予備2等海尉
2級海技士(航海)
  • 11年以上かつ34歳以上 予備1等海尉
  • 4年以上かつ27歳以上 予備2等海尉
  • 4年未満または27歳未満 予備3等海尉
3級海技士(航海)
  • 6年以上かつ29歳以上 予備2等海尉
  • 1年以上かつ24歳以上 予備3等海尉
航海 航海員
  • 1年未満または24歳未満 予備海曹長
4級海技士(航海)
  • 24年以上かつ47歳以上 予備海曹長
  • 18年以上かつ41歳以上 予備1等海曹
  • 18年未満または41歳未満 予備2等海曹
5級海技士(航海)
  • 19年以上かつ42歳以上 予備1等海曹
  • 9年以上かつ32歳以上 予備2等海曹
  • 9年未満または32歳未満 予備3等海曹
1級海技士(機関) 用兵(機関) 艦艇幹部
  • 20年以上かつ43歳以上 予備2等海佐
  • 12年以上かつ35歳以上 予備3等海佐
  • 7年以上かつ30歳以上 予備1等海尉
  • 7年未満または30歳未満 予備2等海尉
2級海技士(機関)
  • 11年以上かつ34歳以上 予備1等海尉
  • 4年以上かつ27歳以上 予備2等海尉
  • 4年未満または27歳未満 予備3等海尉
3級海技士(機関)
  • 6年以上かつ29歳以上 予備2等海尉
  • 1年以上かつ24歳以上 予備3等海尉
ディーゼル ディーゼル員
  • 1年未満または24歳未満 予備海曹長
4級海技士(機関)
  • 24年以上かつ47歳以上 予備海曹長
  • 18年以上かつ41歳以上 予備1等海曹
  • 18年未満または41歳未満 予備2等海曹
5級海技士(機関)
  • 19年以上かつ42歳以上 予備1等海曹
  • 9年以上かつ32歳以上 予備2等海曹
  • 9年未満または32歳未満 予備3等海曹


宣誓

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予備自衛官に任命された者は、自衛隊法第五十三条及び自衛隊法施行規則第四十一条に則り、以下の宣誓書に署名捺印が義務付けられている。

私は、予備自衛官たるの責務を自覚し、常に徳操を養い、心身を鍛え、訓練招集に応じては専心訓練に励み、防衛招集、国民保護等招集及び災害招集に応じては自衛官として責務の完遂に努めることを誓います。

脚注

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注釈

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  1. ^ 陸上自衛隊:46,000人、海上自衛隊:1,100人、航空自衛隊:800人

出典

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  1. ^ 予備自衛官標旗の取扱いについて(通達)
  2. ^ 防衛省・自衛隊の人員構成2012年11月27日閲覧
  3. ^ 出頭時から1か月は通常の俸給額が支給、1か月に満たない部分は日割りにて給与が支給される。指定号俸に関しては現職を退官時の階級による号俸を基準とし、予備自衛官として登録後の勤務状況や登録年数・予備自衛官として登録後の昇任時における号俸に関してはそれぞれ勤務状況等を考慮した号俸が支給される
  4. ^ 「有事などの際、国を支える力になる!「予備自衛官等制度」」 政府広報オンライン 2023年11月13日閲覧
  5. ^ "郷土防衛隊"構想の消長,樋口恒晴,政教研紀要22号,P113-133 国士舘大学日本政教研究所1998年1月
  6. ^ 防衛省陸上幕僚監部予備自衛官編『平成22年度Power Reserve』(防衛省、2010年)参照。
  7. ^ a b 予備自衛官・即応予備自衛官の災害招集について』(プレスリリース)防衛省、2011年3月16日http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/03/16c.html2011年3月17日閲覧 
  8. ^ 海上自衛隊及び航空自衛隊の予備自衛官の災害招集について』(プレスリリース)防衛省、2011年4月16日http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/04/15d.html2011年4月19日閲覧 
  9. ^ 即応予備自衛官と違い予備自衛官の訓練時は出頭先の部隊に保管しているOD作業服66式鉄帽等を支給されていたが、個人貸与で無く部隊管理品の一時的な支給に過ぎなかった。即応予備自衛官は各方面隊で指定された所属部隊・訓練先の駐屯地業務隊で管理された個人貸与品たる被服・装具を使用しており、一部では常備自衛官と同じ戦闘装着セットを使用する例もある。
  10. ^ 日本国防衛省 (2016年5月30日). “平成28年熊本地震に係る災害派遣について(最終報)”. 2017年11月25日閲覧。
  11. ^ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための救援に係る災害派遣における予備自衛官の招集について”. 防衛省・自衛隊 (2020年2月13日). 2020年2月16日閲覧。
  12. ^ 予備自衛官と即応予備自衛官を招集、最大100人…能登半島地震の被災地支援”. 読売新聞オンライン (2024年1月5日). 2024年1月5日閲覧。
  13. ^ 防衛省・自衛隊 [@ModJapan_jp] (2024年1月5日). "令和6年能登半島地震により甚大な被害が生じていることを踏まえ、本日、予備自衛官や即応予備自衛官を最大約100名招集することとしました。". X(旧Twitter)より2024年1月5日閲覧
  14. ^ “予備自衛官の見直し必要、震災出頭103人だけ”. 読売新聞. (2012年7月3日). オリジナルの2012年7月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120704195226/http://www.yomiuri.co.jp:80/politics/news/20120703-OYT1T00465.htm 2012年11月28日閲覧。 
  15. ^ 予備自衛官制度の運用2012年11月28日閲覧
  16. ^ (株)扶桑社 出版 小笠原理恵 著 自衛隊員は基地のトイレットペーパーを自腹で買う190頁、191頁
  17. ^ 予備自衛官制度(@jgsdf_reserve)のtwitterより - 陸上幕僚監部予備自衛官室
  18. ^ 予備1等陸佐に採用辞令書を交付”. 自衛隊埼玉地方協力本部. 2019年10月13日閲覧。
  19. ^ 予備自衛官補募集要項(技能):国際連合公用語英語検定試験A級以上、ロシア語能力検定試験2級以上、実用中国語技能検定試験3級以上、韓国語能力評価試験4級以上、実用アラビ ア語検定試験3級以上、実用フランス語検定技能試験2級以上、外国語としてのポルトガル語検定試験上級以上、スペイン語技能検定3級以上、通訳技 能検定試験、通訳案内士試験合格者等
  20. ^ 旧制度下で取得した前身の試験を含む(詳細は当該記事を参照のこと。)
  21. ^ 『海上自衛隊の予備自衛官の任用、服務等に関する達』。 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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