ライブアイドル
ライブアイドル(地下アイドル) | |
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基本情報 | |
職種 | アイドル |
職域 | 芸能人 |
詳細情報 | |
必要技能 | 歌、ダンス |
就業分野 | 芸能界 |
関連職業 | 歌手、タレント |
ライブアイドルとは、マスメディアへの露出よりもライブ等を中心に活動するアイドルのこと[1]。地下アイドル(ちかアイドル)[2]、インディーズアイドル[2]、プレアイドル、リアル系アイドル[3]とも呼ばれる[4]。
概要
[編集]別名、地下アイドル、インディーズアイドル、プレアイドル、リアル系アイドルと呼ばれる[4][5]。メディアにはあまり露出せず、ライブやイベントを中心に活動する女性アイドルをいう[5]。比較的小規模なライブやイベントを中心に活動するアイドルやアイドルグループを指しており、所属先は小規模な芸能事務所が多く、中には事務所に所属せずフリーで活動している者もいる[5]。
フリーライターの来栖美憂によると、おニャン子クラブの流れを受けて1990年代に大人数のアイドルグループが続々と誕生し、アイドルとしてのハードルが大幅に下がり、アイドルになりたいと思う女の子が急増した[6]。地下アイドルは、そのような「インディーズのアイドル」がさらに先鋭化したものだという[6]。「インディー」は、大手媒体への露出を主とする「メジャー」と対比し、そのような露出の伴わない活動を主とするものに用いられることが多い[7]。
ライブアイドルの活動は、メジャーとインディーの垣根を取り去り、職業としてアイドルになる、もしくは認められる以前の、アマチュアという意味合いで呼ばれることもある[8]。プレアイドルとは、これから一流アイドルになるであろうアイドルの卵達のことを指すが、あまりメジャーでないアイドルのことをこう呼ぶことがある。ただし、最近ではこの層のアイドルが少ないため、あまり用いられなくなっている[9]。
また、ロマン優光は、「自分の音楽や表現をアイドルを通して実現しようという節のあるアーティスト性のある運営が経営している小規模なアイドル」を「インディーズアイドル」、「芸能事務所的な立ち位置の運営が経営している小規模なアイドル」を「地下アイドル」として区別している[10]。
笹山敬輔は著書『幻の近代アイドル史 明治・大正・昭和の大衆芸能盛衰記』において、アイドル的な存在は明治時代から存在しており、それらはテレビ時代が生んだ「会いに行けないアイドル」ではなく、「会いに行ける」ライブアイドルの元祖であると言えるとしている[11][12]。著書では、娘義太夫の竹本綾之助、奇術師の松旭斎天勝、浅草オペラの河合澄子、宝塚少女歌劇の初期メンバー、明日待子などを取り上げている[13][14]。
経緯
[編集]1990年代前半
[編集]1980年代末頃から、それまでアイドル歌謡を歌ってきたアイドルの在り方が否定的に捉えられるようになった。アイドルの主な活躍の場であったテレビの歌番組、『ザ・トップテン』が1986年、『ザ・ベストテン』が1989年に終了している[15]。おニャン子クラブの解散(1987年)、また1988年から89年にかけての東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件によるオタク(アイドルファンも含む)のイメージ悪化の影響などもあり、「アイドル冬の時代」へと突入して、マスメディアに登場するアイドルの形態がそれまでの歌手活動を中心とするものから、バラエティ、CM、グラビア、女優などを主とするものへと変化していった[16]。
こうした状況下で1980年代的なスタイルにこだわるアイドル歌手はプレアイドルと呼ばれ、メジャーなアイドルでは当たり前なテレビ出演や大きな会場でのライブはほとんど無く、小規模なライブハウスや区民会館などを主な活動場所とした[17]。その代表的な存在が水野あおいで、他に桜井亜弓、森下純菜などがプレアイドルの中心として活躍した[17]。また目黒福祉センターをホームに活動していたオン・ザ・ムーブプロモーション所属のアイドルたちも密かに注目されていた[17]。
また1992年に所属事務所を辞めてフリーでアイドル活動を始めた宍戸留美は元祖フリーアイドルと呼ばれ[18]、またライブアイドルの原型であるとも評価されている[19]。フリーとなった理由について宍戸は、「事務所がやらせようとしていたバラドルにはなりたくなかったから」と語っている[19]。
ライブ系のアイドルグループとしてはこの時期に活動を始めた東京パフォーマンスドール(1990年)、南青山少女歌劇団(1990年)、制服向上委員会(1992年)などが草分けとされる[20]。しかし冬の時代における厳しさは何ら変わることなく、「外道」と呼ばれる極端なファンとも渡り合っていかねばならなかった[21]。ソロアイドル自体の新規性が薄れてきたことから、前述の先駆的なライブアイドルグループの活動後、アイドルの主流はアイドルグループに移行することになる。
1994年には制服向上委員会がその年の夏に行った「5日間・9ステージ130時間ライヴ」の模様を収録したビデオ『ライブアイドルNo.1』が発売されている[22]。
1990年代後半
[編集]1990年代中頃より小室哲哉のプロデュースにより、元東京パフォーマンスドールの篠原涼子、元グラビアアイドルの華原朋美、元スーパーモンキーズの安室奈美恵などがアーティストとして人気を博した[23]。そして「アイドル冬の時代」に終止符を打ったとされるのが安室と同じ沖縄アクターズスクール出身の4人組で、『THE夜もヒッパレ』でグループ名がSPEEDと決まり1996年にデビュー、翌年には紅白歌合戦に出場した[23]。また『ASAYAN』からは「シャ乱Qロックヴォーカリスト・オーディション」の落選組によりモーニング娘。が結成され、1998年にメジャーデビューした[23]。アーティスト志向ではない昔ながらのアイドル文化を復活させると、再びアイドルに注目が集まるようになった。
一方でプレアイドルにその流れが直接波及することはなかったが、そのような時に、東京四ッ谷にライブハウス「四ッ谷サンバレイ」[注 1]が開業し、ここが多くのプレアイドルの活躍の場になることで、その知名度が増し始めた[24]。ライブハウスはおもに地下にあったことで、彼女たちを地下アイドルと呼ぶようになったといわれている[17][注 2]。地下アイドルの特徴は、大手媒体への露出がないことを逆に熱いライブやファンとの触れ合いで覆そうとしていた所にあり、その頑張りを身近に体験できる一体感がファンの支持を得ていく[17]。一方で「地下アイドル」という呼称は元々の由来から離れ、半ば蔑称のように使われもした。
2000年代
[編集]2000年代に入ると、桃井はるこ[26]に代表されるアキバ系アイドルが勃興し、秋葉原の歩行者天国で路上ライブを繰り広げ、特に専用の劇場を構え恒常的に公演を行うAKB48が表れると、大きな社会現象を引き起こした[27]。
AKB48は単なる物販を行うだけでなく、その購入数を握手や会話など触れ合いの時間や人気投票の投票券と絡めることで、CDの売り上げが低迷する中でも大きな売り上げを上げ続け、これは「AKB商法」と呼ばれて批判も浴びた[28][29][注 3]。しかし、AKB商法の登場は、マスメディアの露出に依存せず、アイドルとファンのコミュニケーションにより人気を獲得する可能性を広く認知させた出来事であった。同時期にはSNSや動画共有サービスが台頭し始めており、時代の流れはマスメディアによる一方向の情報発信からインフルエンサーとファンの間での双方向のコミュニケーションに移りつつあった[31]。
2000年代後半になるとPerfume、AKB48といったライブ系のアイドルが台頭し、1990年代初頭からの地下アイドルの流れがメジャー化した[20]。また楽曲についても、メジャーシーンで活動したミュージシャンがアイドル楽曲の提供・プロデュースを行う例も増え、良質な楽曲を重視するアイドルもしくはアイドルファンを指す「楽曲派」という呼び方も現れ始めた。
2010年代
[編集]2010年にはサエキけんぞうプロデュースの『W100 LIVEアイドル』がシンコーミュージックから出版され[32]、2011年8月には吉田豪監修のコンピレーションアルバム『ライブアイドル入門』がリリースされた[33][34]。
この頃になると、地下アイドルとの呼称は良くない印象が出始め、またAKB48とその姉妹グループのように、元来はライブ活動中心のアイドルであってもメディアに積極的に登場するようになったため、相対的に地下アイドルの呼称も実情に合わなくなったため「ライブアイドル」という呼び方が使われるようになってきた[1][3]。
2010年代には、過酷な環境でも活動を可能にしてきたライブアイドルの手法と、AKB48の影響が相まって「アイドル戦国時代」と呼ばれる、過当競争を生み出すまでに至っている[35]。
2020年代
[編集]2020年代になると新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した影響を受け、感染拡大防止のため外出自粛が求められたりライブハウスなどが営業自粛を余儀なくされたため、地下アイドルもライブができなくなり苦境に立たされることとなった。このため活動停止や解散を選択するグループが現れた一方[36]、直接触れ合う必要のないオンライン配信に移行する地下アイドルも増えた[37]。またライブを開催できない代わりに、トーク配信などを主活動とするアイドルも現れる[38][39]。
下北沢SHELTER副店長・川本俊によると感染対策などを施し、2020年7月から徐々にライブを再開[40]。アイドルライブはバンド系と比べると、無観客や声を出さないなど変容するルールに対応することに長け、下北沢ERAなどコロナ禍を機にアイドルライブを受け入れた箱も存在する。ERA店長の久保寺豊は「(インディーズバンドファンは)お酒が飲めるかどうかが重要、(アイドルは)ドリンクよりもライブでの応援や特典会が大事」とアルコール提供や飲食提供が規制されていた時期でも集客できたファン心理を分析。「(ライブハウスは)アイドルに助けられた」と述べている[41]。
男性のライブアイドル(通称「メンズ地下アイドル=メン地下」)も台頭し始めた[42]が、女子中高生などが過剰な推し活にハマり、大金を使ったり生活の乱れを招いたりするなど一部で社会問題化している[43][44][45]。
特徴
[編集]- ファンとの距離が近い
- 「会いにいけるアイドル」を標榜する通り、ファンの顔や名前を「認知」して呼びかけたり、握手会・関連グッズ物販やライブチャットで会話を行うなど、ファンとの距離が近いことが特徴[5][46]。ファン対象に撮影会やツアー企画などのオフ会を行う者もいる。一方、ごく一部ではあるが過激なパフォーマンスや接触を炎上商法的に行う者や、心ないファンによるセクハラ的な言動や誹謗中傷などの被害が起こる場合もある[47][注 4]。
- 関連グッズ販売が収入源
- プレアイドルの時代から、ライブアイドルは小規模なライブに多く出演し、会場での物品販売などと組み合わせ収益にしてきた[28]。以前は音源CDや「握手券」などの販売が主立っていたが、2009年以降に確認されるチェキ撮影権(アイドルとの写真撮影およびサインやメッセージ等を書いてもらい、その間に会話や交流ができる)の発売はライブアイドル文化の象徴ともなっている[49]。
- 成長、弱肉強食、下剋上
- 地下アイドル達の成長、弱肉強食、下剋上が応援する魅力だとされる[50]。ふとしたきっかけでSNSなどで話題になり全国的に知名度を上げるものや、メジャーシーンへ抜けていくグループ・人材もいる。同グループ内でも人気を競ったり切磋琢磨する一方、運営する事務所も玉石混合であるため、中には法意識の欠如による詐欺まがいの契約トラブルなど「夢を食い物にする大人」がいる世界である[51][52]。
- メンバーの異動・入れ替わりが多い
- 様々な事情により突如とした「卒業」「脱退」やグループ解散、または別グループへ新メンバーとして移ること(転生)も頻繁である。また「メンバー全員卒業」および、表現が回りくどくはなるが、一旦解散と言う意味で「現体制終了」という形でグループを一旦休止し、後にメンバーを入れ替えた新体制で、名前のみ引き継いで再スタートすることもある。
- 活動における負担から体力・精神的に不調をきたし休止・脱退を余儀なくされるアイドルも少なくなく、アイドル経験者が引退後のセカンドキャリアをサポートする企業も現れている[53]。
「地下アイドル」の区分
[編集]絵恋ちゃんは、ソロでアニソンやメジャーアイドルのカヴァーを歌っている「地底アイドルシーン」と、その上(自らの持ち歌がある)の「地下アイドルシーン」の二層構造になっている[54]と吉田豪に語っている。
メジャーデビューして人気のあるアイドルを「地上」、メジャーデビューしてはいるが知名度はあまりないアイドルを「半地下」、インディーズとして活動しているアイドルを「地下」、アイドルと風俗のギリギリのラインで活動しているアイドルを「地底」とする区分もある[55]。
関連文献
[編集]- 諏訪稔 著『インディーズ・アイドル名鑑』 東京キララ社、河出書房新社(発売)、2012年、ISBN 978-4-309-90956-1[56]
- 姫乃たま 著『潜行 = The Dissimulation : 地下アイドルの人に言えない生活』 サイゾー、2015年、ISBN 978-4-904209-82-0
- 姫乃たま 著『職業としての地下アイドル』 朝日新聞出版〈朝日新書〉、2017年、ISBN 978-4-02-273731-1
- 深井剛志、姫乃たま、西島大介 著『地下アイドルの法律相談』 日本加除出版、2020年、ISBN 978-4-8178-4650-1
- ロマン優光 著『地下アイドルとのつきあいかた』 太郎次郎社エディタス、2023年、ISBN 978-4-8118-0854-3
関連項目
[編集]- ローカルアイドル - 日本の特定地域に密着して活動するアイドルのことで、ご当地アイドルなどとも呼ばれる[57]。
- 天使のU・B・U・G - フジテレビ系放送のバラエティ番組。当時のプレアイドルが多く出演していた。
- 推しが武道館いってくれたら死ぬ - 地方のライブアイドルとそのファンを描いた漫画作品。テレビアニメ、実写テレビドラマ、映画化もされた。
- だから私は推しました - NHK総合で放送。ライブアイドルとそのファンを採り上げたテレビドラマ。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 2000年よりLive inn Magic、2016年より四谷Honey Burstに改名。
- ^ 2007年12月にオープンした秋葉原ディアステージも店舗を地下に構えている[25]。
- ^ 音楽ソフトの売上数について改めて簡単にまとめると、日本の音楽CDの売り上げは1999年以降、2011年まで連続して前年を下回り、前年を上回った十二年の数値を見てもCD生産枚数は最盛期(1998年)の半数以下に落ち込んでいる。また、1990代半ばには年間20タイトルを超えていたCDシングルのミリオンセラーも、2012年は5タイトルになっている。このようにCD売り上げにおいて音楽産業が往時の勢いを著しく欠く中で、なお高いCD売り上げを誇っているのが、「アイドル」という芸能ジャンルの代表格であるAKB48とその姉妹グループである。2012年のミリオンセラーシングル五タイトルはすべてがAKB48名義のものであり、同年のCDシングル売り上げランキング上位20タイトルのうち、12作品がAKB48とその姉妹グループのものである。CD売り上げ全体が減退するなかでこれらアイドルのCDが高い売り上げを維持していることは、「AKB商法」的なものへの批判的視線をさらに際立たせている。もっとも、この批判的視線について相対化を促す議論が少なくない[30]。
- ^ なお、2016年に発生した小金井ストーカー殺人未遂事件では、一部マスメディアが被害者を実状とは異なる「地下アイドル」と報じた事で、ライブアイドル現場固有の特徴が生み出した犯罪であるかのような偏向報道が批判された[48]。
出典
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- ^ a b c d e ブレーメン大島 2008, p. 56.
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参考文献
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- ブレーメン大島「インディーズアイドルの真実」『UTB(アップトゥボーイ)2008年8月号』第186巻、ワニブックス、56-57頁、2008年8月1日。
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- 宗像明将「LIVEアイドル論 〜LIVEアイドルって、なんだ?〜」『W100 LIVEアイドル』サエキけんぞう(監修)、シンコーミュージック・エンタテイメント〈シンコー・ミュージックMOOK〉、2010年12月20日、214-218頁。ISBN 9784401770298。
- 太田省一『アイドル進化論 南沙織から初音ミク、AKB48まで』筑摩書房、2011年1月27日。ISBN 9784480864086。
- 岡島紳士; 岡田康宏『グループアイドル進化論 「アイドル戦国時代」がやってきた!』毎日コミュニケーションズ〈マイコミ新書〉、2011年1月31日。ISBN 9784839937713。
- Patrick Galbraith; Jason Karlin, eds. (2012-10-02), Idols and Celebrity in Japanese Media Culture, Palgrave Macmillan, ISBN 9780230298309
- 北川昌弘とゆかいな仲間たち『山口百恵→AKB48 ア・イ・ド・ル論』宝島社〈宝島社新書〉、2013年8月24日。ISBN 9784800213990。
- 香月孝史『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』青弓社〈青弓社ライブラリー〉、2014年3月20日。ISBN 9784787233721。