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マタンゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マタンゴ
監督
脚本 木村武
原案
製作 田中友幸
出演者
音楽 別宮貞雄
撮影
編集 兼子玲子
製作会社 東宝[出典 2][注釈 1]
配給 東宝[6][8][注釈 1]
公開 日本の旗 1963年8月11日[出典 3]
上映時間 89分[出典 4]
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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マタンゴ』は、1963年昭和38年)8月11日に公開された日本特撮ホラー映画[出典 5]変身人間シリーズの番外編的作品[20][21][注釈 2]

製作・配給は東宝[6]。カラー、東宝スコープ[出典 7]。同時上映作品は『ハワイの若大将[出典 8]

概要

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ウィリアム・H・ホジスンの海洋綺譚『夜の声』を原作[出典 9](原案[26][24])とし、翻案・脚本化された。

人間社会から隔絶された無人島を舞台に、極限状態に置かれた人間のエゴイズムを描き出している[出典 10][注釈 3]。怪物以上の恐ろしさを感じさせる俳優陣の熱演も評価されている[21]

内容こそ奇談怪談に属するものであるが、同時上映の明るい青春映画『ハワイの若大将』とのギャップも手伝い[24]、今日でもSFホラー映画マニアの間で語り継がれている[注釈 4]。また、カルト映画の1つとしても知られており、「世界の珍妙ホラー映画ベスト5」の第3位に挙げられている[28][29]ほか、海外での人気も高い[30]。監督の本多猪四郎も、本作品を自身の代表作の一つに挙げている[23]

しかし、興行的には成功であったとは言えず[22]、本作品と翌年の『宇宙大怪獣ドゴラ』が低迷に終わった結果、本格SF路線はゴジラシリーズなどの怪獣路線へ吸収されていった[31][注釈 5]。製作の田中友幸は、雰囲気作りには成功していたとしつつ、流行していた怪獣映画と紛らわしい売り出し方であったと述懐している[33]

本作品公開の前月である1963年7月に公開された『日本一の色男』(監督:古澤憲吾)の劇場予告編の末尾には、約20秒の尺に描き文字と効果音のみで構成された本作品の告知が追加されている。[独自研究?]

アメリカでは日本公開当時は劇場公開が実現せず『Attack of the Mushroom People』(直訳:キノコ人間の襲撃)のタイトルでテレビ放映されるだけに終わった[26]が、イタリアでは2016年に第18回ウディネ・ファーイースト映画祭にて、特集上映「BEYOND GODZILLA: ALTERNATIVE FUTURES AND FANTASIES IN JAPANESE CINEMA」(「ゴジラの向こう側: 日本映画におけるオルタナティブとファンタジー」)の1作として上映された[34]

2022年には、4Kデジタルリマスター版が制作された[35]

あらすじ

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東京の病院に収容されている青年・村井研二が、自らが遭遇した恐怖の体験を語り始めた[24]

ある日、豪華なヨットで海に繰り出した村井たち7人の若い男女が嵐に遭って難破し、南太平洋にある霧に包まれた無人島に漂着するが、そこはカビと不気味なキノコに覆われた孤島であった[12][24]。波打ち際に唯一佇む難破船には、少数の食料や未知のキノコ「マタンゴ」の標本が残っていたものの生存者はおらず、「船員が日々消えていく」と書かれた日誌や、「キノコを食べるな」という警告が発見されたうえ、この船が実は核実験の影響を調査する海洋調査船であったことが判明する[12][24]。また、船内の鏡はすべて割られていた[24]

7人は当初こそキノコに手を出さず、理性を保って協力していたが、まもなく食料と女性を奪い合って対立する飢餓と不和の極限状態が訪れ、皆の心はバラバラになっていく[24]。また、島の奥からは等身大のキノコに似た不気味な怪物が出没し始め、1人、また1人と禁断のキノコに手を出していく[12][24]

その後、唯一キノコに手を出さず怪物の魔の手からも逃れてヨットで島を脱出した村井は幸運にも救助され、こうして病院へ収容されることとなったが、そこは精神病院の鉄格子の中だった[24]。難を逃れたはずが狂人として隔離されてしまった村井は、「戻ってきてきちがいにされるなら、自分もキノコを食べて恋人と島で暮らしたほうが幸せだった」と後悔し、窓から平和な東京の町を眺めて悲観に暮れながら鉄格子の方を振り返る。病院関係者たちの好奇と畏怖の注目を集める村井の顔には、彼が島で見たマタンゴが生え始めていた[12][24]

第三の生物 マタンゴ

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諸元
マタンゴ
Matango[36][37]
別名 第三の生物[出典 11][注釈 6]
体長 10 cm - 2.5 m[出典 12]
体重 50 g - 300 kg[出典 13][注釈 7]
出身地

劇中では、「どこかの国が行った水爆実験の放射線によって変異したキノコを食した人間の成れの果て」と設定されている。マタンゴを食した者は、全身を次第に胞子で覆われるにつれて知性や理性が失われていき、成体(キノコ人間[出典 14])への変身と共に人間としての自我は消失し、怪物への変異が完了する[14][注釈 9]。難破船の日誌には、「島で発見した新種のキノコ」や「麻薬のように神経をイカレさせてしまう物質を含む」と記録されていた[注釈 10]

怪物の成体は、マタンゴによる変異が全身におよんで人間当時の各部がうかがえなくなっており、かろうじて人型と認識できる容姿である[14][注釈 11]。一方、変身途上は人間当時の各部がまだうかがえる容姿であるほか、無施錠のドアを手指で開ける、背後から人間を襲って島の内陸部に拉致するなどの運動能力や知能が残っている[注釈 12]が、いずれも発声能力はほぼ失せており、うめき声程度しか発しない。また、薬品や火、光に弱いほか、銃弾では死なないものの銃身で殴られると腕がもげる(ただし、血は大して流れない)など、骨肉の強度は人間のそれより劣る。

マタンゴが自生する島は木々が多々茂っているうえにいつも霧に包まれており、昼でも暗い。歩けば1日もかからず反対側に行ける広さしかないこの島には、潮や霧の影響から多くの船が島に引き寄せられて座礁するため、近海地域は「南太平洋の船の墓場」と形容されている[41]。浜にはウミガメが産卵に来るが、鳥類は決して島に近づこうとしない[14][26]

デザイン・造型
デザインは小松崎茂が担当[出典 17]キノコ雲をイメージしている[出典 18]
スーツ造型は利光貞三が担当[20][24]。スーツはワンピース状の1体と、頭部と胴体が分かれたツーピース状の4体が作られた[52]。全高は3メートルほどだが、ラテックス製ゆえ、重量は従来の怪獣よりも最も軽い30キログラムほどであった[20][52]。表面には光を反射するスコッチライトや蛍光塗料などを施し、青白く発光するようになっている[52][24]
スーツアクター中島春雄が担当[20][13]。中島は、演技のやりようがなく嫌々やっていたと述べている[20][13]が、スーツは軽く立ち回りもないので楽であったとも述べている[53]
マタンゴ怪人のマスクもラテックス製[52][37]。マスク制作は利光ではなく、八木寛寿らが担当した[54]
森の中のキノコの造形物は、発泡剤を石膏や一斗缶に入れて膨らませている[出典 19]。なお、小さなキノコには後述のバヤリースオレンジの缶、中くらいのキノコにはコンビーフの缶、大きなキノコにはペンキの缶がそれぞれ使われた[43]
複数出現したマタンゴ成体の中には、エノキタケに似た形態の個体もいた[出典 20][注釈 14]。これは小松崎によるデザインに基づいた造形の着ぐるみである[47][52]が、1体しか製作されていないらしく、出番は少ない[注釈 15]

キャスト

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スタッフ

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参照[6][11][60]

製作

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当初は早川書房の雑誌『S-Fマガジン』にて「空想科学小説コンテスト」を共催し、それに入選した作品の映画化を予定していたが該当作が無かったため、同誌の編集長であった福島正実の提案によって原作を決定し、福島自身が脚色を手掛けた[出典 28]。原案には、SF作家の星新一も名を連ねているが、実質的にはラストについての意見を出したこと以外はほぼノータッチである[22][66][注釈 18]

監督の本多猪四郎は、本作品はワライタケバミューダトライアングルがヒントになったと述べており、地球上には不思議な場所がまだあるということを表現したかったが、実際の作品は小ぶりになってしまったと語っている[67]

造型

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キノコのミニチュアには、開発されたばかりでまだ使用目的の無かった発泡ウレタンが使われた[出典 29]。キノコがみるみるうちに発育していくシーンは、実際に発泡ウレタンが反応して膨れ上がる様子をそのまま使っている[52][23]。監督の本多猪四郎はこの手法を高く評価しており、試作時に思わず拍手したという[69]ほか、後年のインタビューでもこの件を特撮スタッフのアイディアと努力の一例として挙げている[68][70]

笠井役の土屋嘉男は、撮影までマタンゴの姿を知らずセットで初めて見たが、着ぐるみはヨチヨチ歩きでセットも『白雪姫』のような雰囲気であったため、笑ってしまったという[出典 30]。麻美役の水野久美も最初は笑っていたが、だんだん不気味になっていき、特に天本英世のメイクが怖かったと述懐している[73][74][注釈 19]。土屋も、撮影時はリアルな怪物を想像していたが、映画全体として見れば気が狂った人々が見た非現実的な描写としては良かったとも述べている[71]

キャストが食べる劇中のキノコは、米粉をキノコ形に練った和菓子素材の蒸し菓子を、食紅などでピンク色に着色したもの(「新粉細工」と呼ばれるもの[76])である[23][77][注釈 20]。菓子は成城凮月堂[注釈 21]が映画用に作っており[81][82]、毎朝撮影所に蒸したてが届けられた[23]。しかし、そのままでは味気なかったため、土屋の提案で砂糖を加えて食べやすくしたところ大変好評で[23][注釈 22]、水野は特に気に入って食べていたといい[出典 31][注釈 23]、スタッフたちも撮影の合間につまみ食いをしていたという。土屋は上品な甘さであったと証言しており[72]、村井役の久保明も本当においしかったと述懐している[85]

ヨットの造形物は、フルスケールの本編セットと特撮スタジオプールでのミニチュアが用いられた[出典 32]。ミニチュアだったがかなり大きいものであり、実際に航行可能だった[43]。ただし、美術助手の井上泰幸によれば、動きが悪かったので本物のヨットを用いて撮影しようという案も挙がっていたという[86]。セットでの難破船内の装飾には、『モスラ』で用いられたモスラが吐く糸としてゴム糊を噴出する装置が用いられた[87]。助監督の中野昭慶によれば、この装置自体は元々スリラー映画などで蜘蛛の巣の表現として用いられていたものであったという[87]

井上は、当初マタンゴの森を葉のない枯れ木の森としてデザインしたが、特技監督の円谷英二からはキノコが生えているのだから鬱蒼としていなくてはならないと指摘され、慌ててセットに木を植えていったという[86]

村井が収容された病室の窓から見える景色は、合成ではなくミニチュアで表現された[出典 33]。井上は、円谷がすべてミニチュアで撮影しようと検討していたことを後に知ったという[86]ネオンサインには本物のネオン管を用いているが、危険であることから撮影所では制作できず[注釈 24]、業者に外注している[20][23]。ミニチュアによる風景は、人間社会が虚飾にまみれた作り物であるということを[24]、ネオンサインは、人間社会の毒々しさをそれぞれ表現しているとされる[20][13]。また、久保によれば、村井の顔に何もないパターンも撮影していたといい、本多や製作の田中友幸らはどのようにすべきか悩んでいたという[85]。脚本第1稿にも村井の顔の描写はなく、本多のアイディアであったとされる[67][注釈 25]

なお、大阪の東宝敷島劇場・敷島シネマに掲げられた本作品の看板の前には、劇中よりも巨大に制作された怪物の人形が展示された[89]。また、上映開始が子供たちの夏休み期間中だったことからも、銀座などの劇場入口ではバヤリースのタイアップによる怪物の懸賞ぬり絵が配布された[90][91]

撮影

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合成機器として、オックスベリー社の最新の光学合成撮影機「オプチカルプリンター1900シリーズ」が、本作品のために購入されている[出典 34]。合成を担当した飯塚定雄によれば、円谷英二は東宝に無理を言って買わせていたといい、本作品以降はオプチカル合成の技術が普及したと述べている[92]。撮影助手を務めていた川北紘一は、同年の映画『大盗賊』で本格的に使用するため、本作品でテストを兼ねていたものと推測している[52]

ロケ伊豆大島[67]八丈島で行われたが、マムシが頻繁に出没するうえ、森のシーンではムカデなどが多く、スタッフやキャストを悩ませた。笠井役の土屋嘉男によると、の演出のためにスモークを焚いたところ、樹上からいろいろな虫が落ちてきて大騒ぎになったという[81]

小山役の佐原健二は、『モスラ対ゴジラ』のオーディオコメンタリーで「『マタンゴ』では、いやらしい雰囲気を出すために、ちょうど歯医者に行っていて(奥)歯の治療をしている時に、治療とは違う(前)歯を抜いてしまうことを思いつき、担当医には強く止められたが、役作りの一つとして歯を抜いた」と語っている。また、自著でも「本作品の役作りのために歯を抜いた」と記している[93]。さらには、セットでのリハーサルの際にバケツの水が降り注ぐ中で(抜いた後に)差し歯にした歯を落としてしまい、大変だったとも述べている[30][72]。こうして、佐原は本作品での演技が評価された結果、本多の勧めにより、翌年の『モスラ対ゴジラ』でも悪役を演じる[94]など、本作品以降は悪役も演じるようになっている[84]

後年にみうらじゅんが水野に尋ねたところによれば、彼女がキノコを手に取って妖艶な仕草で美味しさを伝えるシーンは、よく意味がわからないまま監督に何度も駄目出しされたという[95]

バヤリースとのタイアップにより、同社製品のバヤリースオレンジを飲むシーンがある[96]

登場人物のモデル

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遭難する登場人物たちには、それぞれモデルとなった人物が存在する[16]。これは脚本の木村武と監督の本多猪四郎が、脚本を仕上げていく段階で設定された。

ヨットのオーナーである会社社長・笠井は西武グループ堤義明[72][74]清二兄弟、小心者の推理作家・吉田は大藪春彦[74]、仲間を見捨ててヨットで逃げ出す船長・作田は堀江謙一[29]、大学助教授・村井はワイドショーで人生相談に出演していた学者(学生を自分の恋人にしている)、歌手・麻美は「芸能界のどこにでもいた女性」、ヨットマン助手・小山はそんな彼らを庶民の視点から見る人物となっている[97]

この設定は製作の田中友幸を怒らせたが[97]、本多はほとんど直さずに作品を仕上げている[98][注釈 26]。また、本多は尺があれば船に乗る前のイントロダクションとして、贅沢で非生産的な当時の裕福な若者たちの生態を描きたかったと述べている[67]

なお、水野は撮影当時はモデルが存在することは知らなかったと述べている[74]

映像ソフト

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  • LD、VHS
    • 1985年9月25日、ビデオ発売[99]
    • 1998年12月23日発売、新装版[48][100]
    • LD版には水野久美のフィギュア購入券、VHS版にはマタンゴ怪人のフィギュア購入券が封入された[48]
  • DVD
    • 通常版 - 2003年12月25日発売[101][102]。オーディオコメンタリーは久保明[102]
    • 期間限定プライス版 - 2013年11月8日発売[103]
    • 東宝DVD名作セレクション版 - 2015年7月15日発売[104]
    • 東宝特撮映画DVDコレクション 15 - 2010年4月13日発売:デアゴスティーニ・ジャパン発売のDVD付きマガジン[105]
    • ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX vol.54 - 2018年7月24日発売:講談社発売のDVD付きマガジン[106]
  • Blu-ray Disc
    • 2017年11月3日発売[107]

書籍

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小説版
福島正実による小説版が『笑の泉』1963年8月号(一水社)に掲載された[108]
1993年には『怪獣総進撃(怪獣小説全集 1)』(出版芸術社ISBN 4882930714)に、1998年には『怪獣文学大全』(河出書房新社ISBN 4309405452)に収録された[108]
漫画版
石森章太郎による漫画版が『少年』1963年9月号に掲載された[109]
1980年には『COMICSポップコーン』4号(光文社)に、2002年には『歯車 - 石ノ森章太郎プレミアムコレクション』(角川ホラー文庫ISBN 4043610025)に収録された[109]

評価

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キャストやスタッフによる評価・証言

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  • 主演の久保明は、ロケやセットが豪華で、それぞれのキャラクターも確立されていて楽しい撮影であったと述懐している[85]。また、本作品を子供のころに観てキノコを食べられなくなったという感想を多く受けたという[85]。文明批判的な結末については、「東宝的ではなかった」と評している[85]
  • 水野久美は、本作品を自身の出演作で最も好きな映画に挙げている[出典 35]。海外のファンも多く、水野は数十年後にファンレターをもらうこともあるという[84]。本作品のスチールとして、水野の青と白のツートンカラーの水着スナップが紹介されることが多いが、水野によればこの水着は私物であり、映画の現場で撮影したものではないと述べている[74]
  • 土屋嘉男は、後年に海外でタクシー運転手から出演作を見たと言われ、黒澤映画かと思ったが挙がった題名は本作品であったという[30]
  • 小泉博は、人間の心理を追求してキャラクター作りを行っており、役者として楽しかったと述懐している[82]。また、グループ芝居で皆ノッており、本多もいつもより楽しそうであったことを証言している[82]
  • 佐原健二は、本作品は当時流行し始めていた覚醒剤を題材としており、その侵食する恐怖を描いていると評している[111]
  • 天本英世は、作曲家・サックス奏者の本多俊之が聞いたところによれば、マタンゴ怪人を自分から希望して演じたという[112]
  • 造型の利光貞三は、天本のマタンゴ怪人の演技を高く評価していた[43]。一方、天本はフルメイクのままで東宝の食堂にて昼食を取らなければならず、スタッフをかなり驚かせたという[43]

著名人による評価・着想

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  • 映画監督のスティーヴン・ソダーバーグは、幼少期に本作品を見た影響から30代ごろまでキノコを食べられなかったと語っている[出典 36]。ソダーバーグは本作品のリメイクを企画していた[29][26]が、東宝との合意に至らず断念している[114]
  • 俳優の斎藤洋介も、幼少期に本作品を見た影響からしばらくはキノコを食べられなかったという[115]
  • 東宝の女優であった高橋厚子も、本作品を見てキノコが食べられなくなったと述べているが、後に『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』で久保・土屋・佐原ら本作品の出演陣と共演できたことが嬉しかったという[116]
  • お笑い芸人の板尾創路も、幼少期に本作品を見てトラウマになったとの旨を述べているが、人間模様や心理描写については今(2016年時点)見ても古臭さを感じないうえ、どんな題材でも一流の人たちが真面目に作れば後の時代に残るとの旨を、本作品の魅力として挙げている[117]
  • 映画監督の樋口真嗣は、「映画の主人公は、いい人で正しくあるべきというのは、本多さんの映画から学びましたね」と本多の人柄を述懐したうえで「おれの中では本多先生のダークサイドだと思っているんですよ」と本作品を批評している[118]
  • キノコ愛好家でもある写真評論家の飯沢耕太郎は、「『きのこ映画』の最大傑作といえば、『マタンゴ』以外にはちょっと考えられません」と本作品を絶賛しており[119]、キノコを手にした水野の妖艶な描写についても「『マタンゴ』がずっと語り継がれている一つの理由は、この恐怖とエロティシズムの相乗効果にもあると思います」と高く評価している[120]
  • 映画ライターの高橋諭治は、マタンゴを「欲望に目がくらむ人間という生き物のどうしようもない弱さ、愚かさにつけ込む悪魔のようなキノコ」と酷評したうえで、本作品を「決して単純なモンスター・ホラーではない」「ストーリーを、とてつもないインパクトと説得力をこめて成立させた唯一無二のホラー映画」などと高く評価している[26]
  • 著作家・英文学者の遠藤徹は、「ウィルス的な“感染”の原理によるブリコラージュ的な進化の方向が示されている」と評したうえで「夜の街で欲望を開放する我々観客も実はマタンゴ化しているのであり、日常生活にマタンゴの感染状態は取り入れられている」などと本作品を分析している[121]
  • 小説家・コラムニスト・映画評論家の友成純一は、「これはドラッグ映画、幻覚映画以外の何者でもない」と本作品を評したうえで「本作品と『モスラ』は幻覚のようにケバケバしく美しい」などと両作品のセットの異様さを称えている[122]
  • 作曲家・サックス奏者の本多俊之は、物語については「見せない怖さはイマジネーションが豊かになるので、最後までマタンゴが出なくても良かったかもしれない」との旨で評する一方、マタンゴについては「俺はキノコ大好きになって、マッシュルームの缶詰ばっかり食っていたなあ、このあと(笑)」と評している[112]
  • 音楽プロデューサーの釘嶋峰幸は、物語については「7人中で一番人が良さそうな作田が最初に逃げる様子の心理劇が凄い」との旨で評する一方、マタンゴについては「俺エノキはまだ大丈夫だったんだけど、あとはもう、ダメ(笑)」と評している[112]
  • 映画監督の船曳真珠は、「浸食されていく感じで徐々に盛り上げていき、どうもおかしいという流れの作り方が本当に素晴らしいうえ、人間という生き物を描いた力強く大人の映画」との旨で評している[112]
  • 漫画研究書籍や特撮研究書籍の著者としても知られる日本経済大学講師の坂口将史は、平成仮面ライダーシリーズ第15作『仮面ライダー鎧武/ガイム』に登場する怪人「インベス」の正体やそれも含めての物語を、マタンゴを想起させるとの旨で評している[123]
  • 映画史・時代劇研究家の春日太一は、「SFホラー映画の傑作である」と絶賛したうえで唐突な終幕を「容赦ない突き放し方のおかげで、初見時の衝撃が今も心の奥底で妖しく輝き続けている」との旨で評している[124]
  • 著作家・評論家の本橋信宏は、小学1年生時に人生観を変えた作品に一択で本作品を挙げている[90]。1962年公開の『キングコング対ゴジラ』に大満足したうえで父に見せられたが、同作品のように爽快な怪獣映画ではなく子供たちを相手とした夏休みに最も似合わない内容だったことからも、劇場入口にて貰った懸賞ぬり絵はそれによるトラウマを自宅にて再発動させるだけだったという[90]
  • 美術家・ポップアーティストの村上隆は、2006年にマタンゴから着想を得た作品「フラワー マタンゴ」を制作しており、これはフランスベルサイユ宮殿でも展示されている[125]

関連作品

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脚注

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注釈

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  1. ^ a b c ノンクレジット。
  2. ^ 資料によっては、本作品を変身人間シリーズの最終作と記述している[出典 6]
  3. ^ 書籍『東宝特撮映画全史』では、『モスラ』に登場するインファント島のネガのイメージであると評している[20]
  4. ^ 2022年には、メディア・ヴァーグのウェブメディア「マグミクス」にて、「トラウマ級の怖さを誇る特撮ホラー3作品」の1作として、『吸血鬼ゴケミドロ』や『犬神の悪霊』と共に紹介されている[27]
  5. ^ これにより、『ガス人間第一号』の続編として企画されていた『フランケンシュタイン対ガス人間』は怪獣路線に転向し、『フランケンシュタイン対地底怪獣』へ至ったとされる[32]
  6. ^ 資料によっては、きのこ怪獣と記述している[42]
  7. ^ 資料によっては、10グラム-300キログラムと記述している[38][39]
  8. ^ 資料によっては不明と記述している[37]
  9. ^ 劇中では「キノコを食べていると自分もやがてキノコになる」との台詞がある。また、あらすじにも記されているように、キノコを食べなくても胞子を浴びてしまうとキノコに変身する可能性があることが示唆されている。さらに、後述の石森章太郎による漫画版では、キノコを食べた直後から視認できるほどの変異が始まることが描写されている。
  10. ^ 劇中でマタンゴを食べた者は幻覚を見て気分が高揚し、血色が良くなって笑顔のままでいる。
  11. ^ 公開当時、幼児用三輪車を駆る姿でブルマァクより立体化された[43]。また、後年に「マタンゴ」としてよく知られ、立体化されているのは、こちらの容姿である[44][45]
  12. ^ 石森による漫画版では、変異途上の吉田が同様に変異途上の仲間たちをライフルで射殺し、アケミ(映画版における明子)と共に別行動中だった主人公(映画版における村井)がその発砲音を聞いて駆けつけ、真相を悟っている。
  13. ^ このポスターは、2018年に講談社のDVD付きムック『ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX』Vol.54に復刻収録された[50]
  14. ^ 資料によってはシメジと記述している[52][16]が、ブナシメジが人工栽培に成功して広く出回るようになったのは、本作品公開後の1970年である[56]
  15. ^ クランクアップ後のスタッフやキャストによる記念撮影にも、他のマタンゴ成体やマタンゴ怪人たちと共に写っている[57]。なお、後年にトイグラフによってソフビ人形化された際には、原典に存在しない巨大な双眼が付けられている[58]
  16. ^ a b 書籍『東宝特撮映画大全集』では、視察団と記述している[60]
  17. ^ 資料によっては、「協力」と記述している[6][60]
  18. ^ 書籍『東宝空想特撮映画 轟く 1954 - 1984』では、福島の名ではインパクトに欠けるため星の名義を借りたと記述している[24]
  19. ^ なお、当時の東宝はみんな自分でメイクしていたため、水野も本作品ではアイシャドーをグリーンにするなど研究していたと述懐している[75]。また、撮影現場にて自分でメイク直し中の姿を写されたスチールも存在している[43]。なお、スタッフの中には水野の姿も(変異途上の)メイクで男性キャストのように醜くしたい者もいたが本多は同意せず、水野をより美しく描く方が(内容も)怖くなると考えたという[43]
  20. ^ 一方、成城凮月堂の社長(2021年時点)によれば、撮影当時に職人として作っていたキノコはメレンゲ製であるという[78][79]
  21. ^ 凮月堂の名を冠するだけの無関係な別店舗の1つ(1918年〈大正7年〉創業[80])。
  22. ^ 土屋は、気が触れているのだから美味そうに食べるため、要望したという[30]
  23. ^ 麻美が一口マタンゴを食べて「美味しいわ!」というシーンは、水野本人の本音の感想であったという[77]
  24. ^ ネオン管の制作には特殊資格を必要とする。詳細は特種電気工事資格者を参照。
  25. ^ 本多の公式サイトにも、結末については2パターン用意されていたとの旨や、完成品の結末は映像の説得力を考慮したものとの旨が記述されている[88]
  26. ^ zakzakでは「口外無用でけりがついた」と報じられている[29]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i ゴジラ来襲 1998, pp. 68–69, 「第2章 東宝・怪獣SF特撮映画の歩み 第2期(1962-1970)」
  2. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 70, 「『マタンゴ』」
  3. ^ a b c ゴジラグラフィティ 1983, p. 37, 「PART.2 マタンゴ」
  4. ^ ゴジラ大百科 1993, p. 146, 構成・文 中村哲「東宝SF/怪獣映画・海外版大研究」
  5. ^ a b c ゴジラ画報 1999, p. 108, 「マタンゴ」
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t マタンゴ”. 映画資料室. 東宝. 2024年11月8日閲覧。
  7. ^ a b c d 本多全仕事 2000, p. 123, 「本多猪四郎作品リスト」
  8. ^ a b c d e f 円谷英二特撮世界 2001, p. 98, 「マタンゴ」
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出典(リンク)

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  • 講談社 編『キャラクター大全 ゴジラ 東宝特撮映画全史』講談社、2014年7月15日。ISBN 978-4-06-219004-6 
  • 『東宝特撮全怪獣図鑑』東宝 協力、小学館、2014年7月28日。ISBN 978-4-09-682090-2 
  • 電撃ホビーマガジン編集部 編『ゴジラ 東宝チャンピオンまつり パーフェクション』KADOKAWAアスキー・メディアワークス)〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2014年11月29日。ISBN 978-4-04-866999-3 
  • 村瀬継蔵『怪獣秘蔵写真集 造形師村瀬継蔵』監修 西村祐次/若狭新一、洋泉社、2015年9月24日。ISBN 978-4-8003-0756-9 
  • 『ゴジラの超常識』[協力] 東宝、双葉社、2016年7月24日(原著2014年7月6日)。ISBN 978-4-575-31156-3 
  • 映画秘宝COLLECTION(洋泉社)
    • 別冊映画秘宝編集部 編『ゴジラとともに 東宝特撮VIPインタビュー集』洋泉社〈映画秘宝COLLECTION〉、2016年9月21日。ISBN 978-4-8003-1050-7 
    • 野村宏平、冬門稔弐『ゴジラ365日』洋泉社〈映画秘宝COLLECTION〉、2016年11月23日。ISBN 978-4-8003-1074-3 
  • 『ゴジラ 全怪獣大図鑑』講談社〈講談社 ポケット百科シリーズ〉、2021年7月2日。ISBN 978-4-06-523491-4 
  • 小林淳『東宝空想特撮映画 轟く 1954-1984』アルファベータブックス〈叢書・20世紀の芸術と文学〉、2022年5月14日。ISBN 978-4-86598-094-3 
  • 講談社 編『ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK』 vol.0《ゴジラ&東宝特撮作品 総選挙》、講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2022年12月21日。ISBN 978-4-06-530223-1 

外部リンク

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