9K37
9K37 ブーク(ロシア語: 9К37 «Бук» ヂェーヴィャチ・カー・トリーッツァチ・スィェーミ・ブーク)は、ソビエト連邦で開発された中・低高度防空ミサイル・システムである。
演習中のウクライナ空軍所属の9K37ブーク | |
基礎データ | |
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装甲・武装 | |
主武装 | 9M38 ミサイル×4 |
機動力 |
種類 | 中・低高度防空ミサイル |
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製造国 | ソビエト連邦/ ロシア |
性能諸元 | |
ミサイル直径 | 0.40m |
ミサイル全長 | 5.55m |
ミサイル全幅 | 0.86m |
ミサイル重量 | 690kg |
弾頭 | HE破片効果(70kg) |
射程 | 3,000-32,000m |
射高 | 25-22,000m |
誘導方式 | SARH |
評価の高かった2K12 クープの後継種として計画されたもので、開発はNIIPとヴィーンペルが担当した。愛称はロシア語で「ブナの木」の意味。NATOコードネームでは、SA-11 ガドフライ(Gadfly:牛虻)と呼ばれる。このシステムの輸出型はガーンク(«Ганг» ガーンク、ガンジス川の意)として知られている。
概要
編集本システムは、9M38 ミサイルと、9A310M1自走発射機によって構成されている。
開発
編集ミサイルは中高度・中射程のセミアクティブ・レーダー・ホーミング誘導方式を採用しており、固体燃料ロケットエンジンを搭載している。
前任の2K12よりTELへの搭載数・射距離・高度・速度・誘導精度・弾頭重量のすべての面において強化されている。また、2K12では1目標しか迎撃できなかったが、9K37では同時に6目標を迎撃可能になった。9K37はジェット機やヘリコプターのような機動力に富む航空機や巡航ミサイルを迎撃するために設計された。
レーダー
編集9K37は9S18 チューブアームT / 9S18M1 スノードリフト(ロシア語: СОЦ 9C18 «Купол»)監視レーダーと9S470 / 9S470M1 ファイアードームH/I-band追跡迎撃レーダーを組み合わせて使用する。9S18M1監視レーダーは目標の高度・方位・目標からの距離などの情報を収集し、最大85kmの探知距離を持っている、100mの高度で低空飛行をする目標を35kmの範囲内で探知でき、それよりさらに低空飛行をする目標をも10-20kmの範囲内で探知できる。
9S470M1は単パルス式レーダーで、32km範囲以内のミサイル、高度15,000-22,000メートル以内の航空機を追跡でき、最大3基のミサイルを目標まで誘導する能力を持つ。また、9K37システムは結果的に2K12よりかなり強化されたECCM能力(対ECM / ジャミング能力)を持っている。そのほかに、レーザーを利用した光学追跡システムを追加装備することもできるが、標準ではない。
艦船発射型であるSA-N-7は300kmの探知距離を持つMR-750 3次元レーダーと追跡距離30kmを持つ3R90 フロストドーム H/I-band追跡迎撃レーダーを組み合わせて使用する。
派生型
編集- 3K90 M-22 ウラガーン(ロシア語: «Ураган»
- 「疾風」の意)、NATOコードネーム:SA-N-7、9K37の艦船発射型。輸出型はシュチーリ(ロシア語: «Штиль»:「凪」の意)として知られている。
- 9K37M1-2 ブークM1-2、NATOコードネーム
- SA-17 グリズリー、SA-N-12、9K37の強化型。
使用国
編集現役
編集- キプロス [5]
- エジプト – Buk-M1 と Buk-M2 派生型[6]
- ジョージア[7]
- インド[8]
- カザフスタン – 1セットのBuk-M2Eを2018年に発注し、2021年に到着[9]
- イラン
- 朝鮮民主主義人民共和国[10]
- パキスタン[11][12][13]
- 中国[14] – 艦載用にVLS化された派生型HQ-16。これは中国とロシアの合同プロジェクトで、海軍用9K37M1-2'Shtil' (SA-N-12)の改良型
- ロシア – 440セット以上の9К37と9К317が2016年時点で存在 (内訳は陸軍350、空軍80)[15][16][17][18]。 9К37は新型の9К317 Buk M2に置き換える計画で、2020年時点では70%以上が完了[19][20]。2016年に1個大隊のBuk-M3が配備[要出典]。66セットのBuk-M-1-2と36セットのM2と36セットのM3が2012年~2017年に配備[21]。2017年12月に3個ミサイル旅団が完全にBuk-M3化[要出典]。 2020年の早期に7個旅団分のBuk-M3が発注された[22]。 (参照:List of equipment of the Russian Ground Forces)
- シリア[23] 2011年にロシアから8セットの9К317E Buk-M2Eが到着して陸軍に配備(ストックホルム国際平和研究所の武器移転データベースによる)。さらに10/8[24] Buk-M2Eが防空軍に[25]。さらに20セットのBuk-M1-2[26]。
旧運用者
編集- フィンランド – 1996年からフィンランドはこのミサイルをロシアから(債務と引き替えに)受領して運用していた[31]。電子戦に対する懸念から、フィンランドはこのミサイルをNASAMS 2に置き換えることにした[32][33][34]。フィンランドは依然として配備してはいるが、大部分は貯蔵状態にある。戦時に備えて全機が稼働可能な状態を維持しているとしている[35]。
導入検討
編集アルゼンチン: ロシアはBuk-M2Eの導入をアルゼンチン空軍に対して働きかけている[36]。
キャンセル
編集1990年以前、9K37M1E "Gang" はワルシャワ条約機構の構成国への導入が予定されていたが、実現する前に機構が消滅(ソ連崩壊)した[37]。
実戦投入
編集- 2022年ロシアのウクライナ侵攻 - ロシアは多数のブークを投入。対するウクライナ側はブークに対してドローンなどによる攻撃を加え続けた。2024年11月、ウクライナ政府は戦争が始まって以来、1000基目のブークを破壊したとする映像を公開した[38](ただし、前出の配備数との間には大きな差があることに留意する必要がある)。
関連項目
編集脚注
編集- ^ “Algeria confirms Buk delivery | Jane's 360”. archive.is. (16 August 2017). オリジナルの16 August 2017時点におけるアーカイブ。 16 January 2018閲覧。
- ^ “Buk system spotted during Armenia's Independence Day parade rehearsal - PanARMENIAN.Net” (2016年9月16日). 2016年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月22日閲覧。
- ^ “Azerbaijan to demonstrate "BUK" anti-aircraft missile complex”. News.Az (20 June 2013). 23 June 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。23 June 2013閲覧。
- ^ “Tikhomirov Instrument Research Institute 9K37 Buk (SA-11 'Gadfly') low to high-altitude surface-to-air missile system”. Jane's Information Group (20 March 2008). 4 August 2008閲覧。 [リンク切れ]
- ^ “Israeli Fighter Jets Challenge Cypriot Air Defense in Mock Battle Exercise” (17 February 2014). 28 September 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。4 October 2017閲覧。
- ^ “Egyptian President Reinforces Friendship with Russia – Kommersant Moscow”. Kommersant.com. 24 February 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。20 February 2012閲覧。
- ^ “Armament of the Georgian Army”. Geo-army.ge. 9 March 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。20 February 2012閲覧。
- ^ “Project 15 D Dehli Class Destroyer”. globalsecurity.org (10 August 2013). 30 December 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。30 December 2013閲覧。
- ^ “Kazakhstan receives first Buk-M2E air-defence system from Russia”. Janes.com. 2 March 2022閲覧。
- ^ Армия Ким Чен Ира Archived 17 May 2011 at the Wayback Machine., Анатолий Цыганок. ПОЛИТ.РУ, 16 October 2006
- ^ “Pakistan Army inducts Chinese-made LY-80 SAM system – Jane's 360”. www.janes.com. 4 December 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。4 December 2017閲覧。
- ^ “Pakistan formally inducts LY-80 (HQ-16) air defence system”. quwa.org (13 March 2017). 29 October 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。4 December 2017閲覧。
- ^ Sinha, Akash (14 July 2018). “Pakistan deploys Chinese air defence system: Where does India stand?”. The Economic Times. オリジナルの1 January 2019時点におけるアーカイブ。 31 December 2018閲覧。
- ^ New HQ-16 surface to air missile ready for action: PLA Archived 2 October 2011 at the Wayback Machine., China Military News, 28 September 2011
- ^ Source: Military Balance 2016, page 190
- ^ Source: Military Balance 2016, page 195
- ^ Source: Military Balance 2016, page 197
- ^ Source: Military Balance 2016, page 199
- ^ “Buk-M2 goes on combat duty for anti-aircraft defence” (ロシア語). Rambler News (30 November 2011). 1 November 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。30 December 2013閲覧。
- ^ Moscow Defense Brief № 1, 2011
- ^ “ЦАМТО / Новости / Валерий Герасимов: за пятилетний период принято на вооружение более 300 новых образцов ВиВТ”. armstrade.org. 7 November 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。4 December 2017閲覧。
- ^ “ЦАМТО / Новости / Минобороны заключило контракты на поставку комплексов ПВО «Тор-М2», «Тор-М2ДТ», «Бук-МЗ» и С-300В4”. Armstrade.org. 2022年3月2日閲覧。
- ^ “9K37 Buk”. Jane's Information Group (17 November 2008). 19 November 2008閲覧。 [リンク切れ]
- ^ “Trade Registers”. 14 April 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2014閲覧。
- ^ “Чем будет воевать Сирия в случае агрессии стран западной коалиции?”. 6 October 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2014閲覧。
- ^ The International Institute For Strategic Studies IISS The Military Balance 2012. — Nuffield Press, 2012. — С. 349 с
- ^ “The "BUK" Ground Force Air Defense System”. State Company "Ukroboronservice". 20 July 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。18 July 2014閲覧。
- ^ Source: Military Balance 2016, page 206
- ^ Hristoforov, Vladislav (3 March 2018). “Україна модернізує зенітні установки ЗРК "Бук М1"”. 4 March 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。4 March 2018閲覧。
- ^ SIPRI Arms Transfers Database Archived 14 April 2010 at the Wayback Machine.. Information generated: 9 March 2014.
- ^ Video of Buk firing, Finnish Defence Forces website [リンク切れ]
- ^ “Pääkaupunkiseudun ilmasuojassa paljastui aukko” (フィンランド語). Suomen Kuvalehti. Pekka Ervasti (3 June 2008). 31 December 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。30 December 2013閲覧。
- ^ “Finland Updating Its Air Defense Systems”. Defense Industry Daily (10 September 2013). 25 December 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。30 December 2013閲覧。
- ^ “BUK M1 -ilmatorjuntajärjestelmä löytyy edelleen myös Suomesta – video” (フィンランド語). YLE (23 July 2014). 28 July 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。2 August 2014閲覧。
- ^ “Uutisvideot | Uutisvideot: BUK M1 –ilmatorjuntajärjstelmä löytyy edelleen myös Suomesta” (23 July 2014). 2022年3月22日閲覧。
- ^ “¿Como son los sistemas de defensa aérea que ofrece Rusia?” (4 February 2021). 2022年3月22日閲覧。
- ^ “samolotypolskie.pl – 9K37 "Buk"”. www.samolotypolskie.pl. 26 October 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。4 December 2017閲覧。
- ^ “「真上から...」ロシア「BUK-M1」を爆破する瞬間を捉えた衝撃映像をウクライナが公開「これで1000基目」”. ニューズウィーク日本語版 (2024年11月20日). 2024年11月20日閲覧。
外部リンク
編集- Federation of American Scientists(アーカイブ)
- Warfare.ru(アーカイブ)
- SA-11 9K317E 「Viking」 - V・V・チホミーロフ記念機器製作科学研究所(ロシア語)