近鉄1422系電車
近鉄1422系電車(1422けいでんしゃ)とは、近畿日本鉄道(近鉄)が保有する一般車両(通勤形電車)である。
共通事項 | |
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基本情報 | |
製造所 | 近畿車輛 |
主要諸元 | |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 | 直流1,500V |
最高運転速度 | 110 km/h |
車体長 | 20,720 mm [1] |
全幅 | 2,800 mm [1] |
全高 | 4,150 mm [1] |
車体 | アルミニウム合金 [1] |
主電動機出力 | 165kW [1] |
駆動方式 | WNドライブ |
制御装置 | 三菱電機製VVVFインバータ制御 |
制動装置 |
回生併用電磁直通ブレーキ 形式:HSC-R [1] |
保安装置 | 近鉄型ATS |
本項では1430系、1620系、およびその派生系列についても記述する。なお、解説の便宜上、宇治山田・鳥羽側先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:モ1422以下2両編成=1422F、モ1621以下4両編成=1621F)する。
概要
編集1984年に登場した1420系は近鉄では初採用のGTOサイリスタ素子を搭載したVVVFインバータ制御の試作形式として投入され、大阪線にて長期的な試験運用が行われたが、この結果を基に標準軌線用の量産型として登場したのが1422系であり、その標準軌線共通仕様の1430系・1620系に続いている[1][2]。
いずれの形式も1400系・8810系で確立された車体デザインを概ね踏襲し、車体構造では同時に登場した1220系と同様に、最大車体幅2,800mmの大型車体を大阪線・名古屋線車両で初めて採用して[2][3]、1420系以前の従来車の鋼製から裾を絞ったアルミニウム合金車体に仕様変更されている[1][3]。安定した大型アルミ押出材の供給が可能となり、構体の組立工数の削減が可能になったためであり、特急車と急行車の5200系を除き、その後の車両にもこのアルミ車体は採用され、近鉄のVVVFインバータ制御車の標準仕様となっている[3]。
車内インテリア面では内装材は1420系と同様にサンドウェーブ柄の化粧板に、マルーン調の床材を引き続き採用しているが、ロングシートの仕様は本形式の前年に製造された3200系や6400系と同様のひじ掛けが化粧板仕上げとなった新しいものに変更されており、これらの車内デザインは2000年に登場するシリーズ21まで近鉄一般車の標準仕様となった。
1422系
編集近鉄1422系電車 | |
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近鉄1422系電車(1424F)(前の2両) | |
主要諸元 | |
編成 | 2両編成 |
全長 | 41,440 mm |
車体高 | 4,050 [1] mm |
台車 | KD-95・KD-95A [1] |
主電動機 | MB-5023A [1] |
歯車比 | 6.31 |
編成出力 | 660kW |
制御装置 |
GTO-VVVFインバータ制御 型式:MAP-174-15VD13 [1] |
1987年4月に営業運用を開始した[3]。登場時は1250系(2代)を名乗っていたが[2][* 1]、1230系列の増備によって、1990年に現番号に変更されている[4][2][3]。6編成が製造されたが[1][2][3]、標準軌全線共通仕様の設定に伴う仕様変更のため、その後の増備車両は1430系に移行されている。電算記号は当初VC52 - 57となっていたが、上記の改番によって現在はVW22 - VW27に改められている[5]。
2019年4月1日現在、高安検車区に1422F (VW22) - 1427F (VW27) の6本が所属している[6]。
走行機器・性能
編集走行機器は1420系からは大きく仕様変更されており、制御装置は三菱電機製MAP型を採用[1]、主電動機はMB-5023A型[1]、歯車比は6.31と大きい。制動装置はTc車にHSC-R形を設置。MGはHG-77463形、CPはHS-10形をそれぞれTc車に配置している。集電装置はMc車に2基搭載する[2]。台車は両抱き踏面ブレーキ式の近畿車両製シュリーレン台車であるKD-95形を装着する[1]。運転台の配色はベージュ系のものを採用している。基本的な性能面では1420系と同等で[2]、最高速度110km/hを確保している。
改造・車体更新
編集近鉄各路線のGTO-VVVFインバータ制御車と同様に、以下の改造が順次施工されている。
- 車体側面のVVVFマーク撤去
- 簡易内装更新および車体連結部の転落防止幌設置
- 車内床材および座席モケットの交換
- ク1522形運転室側の車いすスペースおよび手すり整備
1430系
編集近鉄1430系電車 | |
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近鉄1436系電車(1436F) | |
主要諸元 | |
編成 | 2両編成 |
全長 | 41,440 mm |
車体高 | 4,030 [3] mm |
台車 |
Mc車:KD-96B形/KD-306形[7] Tc車:KD-96C形/KD-306A形/KD-306D形[7] |
主電動機 |
MB-5035A[7] MB-5035B[7] |
歯車比 | 5.73 |
編成出力 | 660kW |
制御装置 |
GTO-VVVFインバータ 型式:MAP-174-15VD27 [7] |
1990年7月に登場した、2両編成のVVVFインバータ制御車である[2]。1422系を標準軌全線共通仕様に変更した車両である[1][2][3]。1998年までに2両編成15本が製造された[2]。電算記号はVW [8]。
車体・走行機器等
編集走行機器面では1422系に引き続き、三菱製のインバータ装置を搭載している[9][2][3]。歯車比は5.73に戻り、主電動機はMB-5035AまたはMB-5035B[7]、台車は両抱き踏面ブレーキ式空気バネ台車のKD-96系または全軸片押し踏面ブレーキ式ボルスタレス台車のKD-306系を装着する[7]。以上の機器構成はシリーズ21登場前までこれが標準軌線VVVFインバータ制御車の標準となった。1230系と同様に1435系、1436系、1437系、1440系と細かく分類されることが多い。
- 1435系(1992年3月登場、1435Fのみ)
- 1436系(1993年3月登場、1436Fのみ)
- 1437系(1993年9月登場、1439F・1441F - 1445F)
- 1440系(2006年9月登場、1437F・1438F・1440F)
改造・更新
編集近鉄各路線のGTO-VVVFインバータ制御車両と同様に、以下の改造が順次施工されている。
- 車体連結部の転落防止幌設置
- バリアフリー対応改造 (2022年4月現在、1432F・1435F・1437F - 1445Fに施工[10][11][12][13][14])
- ドアチャイムおよび車内案内表示器の整備、ク1530形先頭連結部の連結部注意喚起スピーカー設置
- 簡易内装更新
- 車内床面の交換および座席モケット交換
- ク1530形運転室側の車いすスペース整備
- 車体側面のVVVFマーク撤去[3]
名古屋線ワンマン運転対応改造
編集2006年9月から2007年10月にかけて名古屋線所属の1437系1437F・1438F・1440Fがワンマン運転対応工事およびバリアフリー改造を施工し、系列名を1440系に変更している[3][10][11]。このため系列所属車両の番号が本来なら系列名の後ろになるところ、本系列では系列所属車両の番号が系列名よりも前になっている。
アートライナー
編集- 1433Fク1533 :「美し国おこし・三重」(2011年12月 - 2013年10月 )[15]
- 1433Fモ1433 :「美し国おこし・三重」(2012年10月 - 2013年10月)
- 1438F:「三重交通復刻塗装」(2019年7月18日運転開始[16] - )
配置
編集2019年4月1日現在、1431F・1432F・1435F・1436F・1439F・1441F - 1445Fの10編成が高安検車区に、1433F・1434Fの2編成が富吉検車区に、1437F・1438F・1440Fの3編成が明星検車区に配置されている[6]。
備考
編集1991年5月16日から6月8日にかけて、1433Fク1533が21000系モ21702 - モ21802と併結して、ボルスタレス台車の試験運転が実施されている[17]。
系列別分類
編集系列 | 編成名 | 電算名 | Tc ク1522・ク1530 |
Mc モ1422・モ1430 | ||
1422系 | 1422F - 1427F | VW22 - VW27 | 1522 - 1527 | 1422 - 1427 | ||
1430系 | 1431F・1432F 1433F・1434F |
VW31・VW32 VW33・VW34 |
1531・1532 1533・1534 |
1431・1432 1433・1434 | ||
1435系 | 1435F | VW35 | 1535 | 1435 | ||
1436系 | 1436F | VW36 | 1536 | 1436 | ||
1437系 | 1439F・1441F - 1445F | VW39・VW41 - VW45 | 1539・1541 - 1545 | 1439・1441 - 1445 | ||
1440系 | 1437F・1438F・1440F | VW37・VW38・VW40 | 1537・1538・1540 | 1437・1438・1440 |
1620系
編集近鉄1620系電車 | |
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近鉄1620系電車(1641F) | |
主要諸元 | |
編成 | 4両・6両編成 |
車体高 | 4,030[3] mm |
台車 | KD-306形・KD-306A形[18] |
主電動機 |
MB-5035A[18] MB-5035B[18] |
編成出力 |
4両:1,320kW 6両:1,980kW |
制御装置 |
GTO-VVVFインバータ制御 型式:MAP-174-15VD27[18] |
1994年11月に登場した、1420系列(1437系)の4・6両編成仕様である[18][2][3]。1994年から1995年にかけて4両編成5本[18][2][3]、1996年に6両編成1本[18][2][3]の合計26両が製造され、その後の増備車は5800系に移行している。トイレは全編成で省略された[18][3]。電算記号は4両編成車ではVG [19]、6両編成車ではVFとなっている[19]。
2019年4月1日現在、4両編成5本(1621F - 1625F)と6両編成1本(1641F)が高安検車区に配置されている[6]。
走行機器
編集走行機器や性能面は1437系に準じているが、電動車の集電装置は各1基に変更され、モ1670形はMc車側、モ1620形はT車側に搭載されたが、6両編成の1641Fに組み込まれたモ1650形は2基搭載に変更された[2]。また、モ1650形とサ1750形の間には簡易運転台と前照灯が設置されている[2]。
改造・更新
編集近鉄各路線のGTO-VVVFインバータ制御車と同様に、以下の改造が順次全編成に施工されている。
- 前面および車体連結部の転落防止幌設置[3]
- ク1720形運転室側の車いすスペース整備
- バリアフリー対応改造[12][20][13]
- ドアチャイムおよび車内案内表示器の整備、ク1720形先頭連結部の連結部注意喚起スピーカー設置
- 座席モケットや壁紙、床材の交換
- VVVFマークの撤去
- 灯具と行先表示器のLED化
- 防犯カメラの設置
2023年7月には1623Fに更新工事を施工し、先頭車では上部にあった前照灯を下部に、下部にあった標識灯を上部に移設(位置関係としては更新前と上下入れ替わる格好)、前面への転落防止幌設置のほか、行先表示器のLED化、車内のリニューアルが行われている[21]。内装デザインは近鉄8A系電車と同様にイチバンセンの川西康之が監修している。
編成
編集← 大阪上本町 宇治山田・鳥羽 →
| ||||||||||
系列名 | 編成名 | 電算名 | Tc ク1720 |
M モ1670 |
T サ1770 |
Mc モ1620 | ||||
1620系 (4両編成) | 1621F - 1625F | VG21 - VG25 | 1721 - 1725 | 1671 - 1675 | 1771 - 1775 | 1621 - 1625 | ||||
← 大阪上本町 宇治山田・鳥羽 →
| ||||||||||
系列名 | 編成名 | 電算名 | Tc ク1720 |
M モ1650 |
T サ1750 |
M モ1670 |
T サ1770 |
Mc モ1620 | ||
1620系 (6両編成) | 1641F | VF41 | 1741 | 1651 | 1751 | 1691 | 1791 | 1641 |
アートライナー
編集備考
編集本系列のモ1651という車番は近鉄では2代目である。初代は名古屋線向け1600系の増結用Mc車に与えられていたが、同形は1990年にモワ51形に改造・改番されたため、車番は重複していない。その後、モワ51形は2000年11月に廃車となっている。
運用
編集2両編成
編集- 大阪線所属車両
- 1422系 1422F - 1427F
- 1430系 1431F・1432F
- 1435系 1435F
- 1436系 1436F
- 1437系 1439F・1441F - 1445F
- 主に大阪線系統を中心に快速急行以下の各列車種別で2両編成単独や他編成併結の4両 - 10両編成で運用されている[18]。1422系・1430系共に2410系や1253系などの2両編成車と共通で運用されている。
- 名古屋線所属車両
- 1430系 1433F・1434F
- 1440系 1437F・1438F・1440F
- 主に名古屋線系統を中心に急行の増結編成および準急・普通列車として2両 - 6両編成で使用されている[9]。ワンマン運転対応の1440系は前記の増結運用に加えて志摩線のワンマン列車でも運用されている。
4両編成
編集- 1620系 1621F - 1625F
- 大阪線大阪上本町 - 青山町間を中心に快速急行から普通まで幅広く使用されているが[18][3]、ダイヤ混乱時以外は青山町駅以東や名古屋線の運用には入らない。特に限定した運用や編成は組まれておらず、2430系等トイレ無しの4両編成と共通運用で、編成単独および他形式併結の6両 - 10両編成で運用されている[18]。
6両編成
編集- 1620系 1641F
脚注
編集- 注釈
- ^ ただしこれには異説もあり、近畿日本鉄道 鉄路の名優では1252系(初代)としていたりするなど、近鉄当局の内部でも見解が分かれている。また、メディアックス発行(2012年)の『近畿日本鉄道完全データ』でも登場当時の形式名を同じく「1252系(初代)」としている。
- ^ ただし、先に三重交通の復刻塗装を施された三岐鉄道北勢線200系電車とは異なり、緑色の部分が明るい配色となっている。
- 出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 三好好三『近鉄電車』p.120
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.20 - p.25・p.29・p.128・p.142 - p.145(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4-586-50905-8 C0165
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 『近畿日本鉄道完全データ』 p.53 - p.56・p.67 (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.119
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.228-229
- ^ a b c 交友社『鉄道ファン』2019年8月号 Vol.59/通巻700号 付録小冊子「大手私鉄車両ファイル2019 車両配置表」(当文献にページ番号の記載無し)
- ^ a b c d e f g h i 三好好三『近鉄電車』p.121
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.229
- ^ a b 三好好三『近鉄電車』p.174
- ^ a b 『鉄道ファン』2007年9月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2007 車両配置表&車両データバンク」
- ^ a b 『鉄道ファン』2008年9月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2008 車両配置表&車両データバンク」
- ^ a b 『鉄道ファン』2016年8月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2016 車両データバンク」
- ^ a b 『鉄道ファン』2020年8月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2020 車両データバンク」
- ^ 『鉄道ファン』2021年8月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2021 車両データバンク」
- ^ 「近鉄1430系に「美し国おこし・三重」のラッピング」交友社『鉄道ファン』railf.jp 2012年01月02日
- ^ a b 近鉄1440系に志摩線開通90周年記念塗装車が登場 交友社『鉄道ファン』railf.jp 2019年7月19日掲載
- ^ 『鉄道ピクトリアル』1991年9月号(第548号)、電気車研究会 同誌1992年12月臨時増刊号(第569号)、電気車研究会、257頁
- ^ a b c d e f g h i j k l 三好好三『近鉄電車』p.122
- ^ a b 三好好三『近鉄電車』p.230
- ^ 『鉄道ファン』2017年8月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2017 車両データバンク」
- ^ “近鉄1620系リニューアル車が試運転を実施”. 鉄道ファン. 交友社 (2023年7月21日). 2023年7月22日閲覧。
参考文献
編集- 三好好三『近鉄電車 大軌デボ1形から「しまかぜ」「青の交響曲」まで100年余りの電車のすべて』(JTBキャンブックス)、JTBパブリッシング、2016年。ISBN 978-4-533-11435-9 C2065
- カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.20 - p.25・p.29・p.128・p.142 - p.145(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年)ISBN 4-586-50905-8 C0165
- 『近畿日本鉄道完全データ』 p.53 - p.56・p.67 (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
- 交友社『鉄道ファン』
- 付録小冊子「大手私鉄車両ファイル 車両配置表&データバンク」2007年9月 - 2017年8月・2019年8月発行号
関連項目
編集外部リンク
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