荒井献
荒井 献(あらい ささぐ、1930年5月6日 - 2024年8月16日)は、日本の新約聖書学者・グノーシス主義研究者。学位は、神学博士(ドイツ・エアランゲン=ニュルンベルク大学)[1]。東京大学名誉教授、恵泉女学園大学名誉教授。日本学士院会員。
日本学士院より公開された肖像写真 | |
人物情報 | |
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生誕 |
1930年5月6日 日本・秋田県大仙市 |
死没 |
2024年8月16日(94歳没) 日本・東京都 |
出身校 | 東京大学 |
学問 | |
研究分野 | 聖書学(新約聖書、グノーシス主義) |
研究機関 | 東京大学 |
学位 | 神学博士 |
学会 | 日本学士院 |
経歴
編集- 出生から修学期
1930年(昭和5年)、秋田県大曲市(現大仙市)で生まれた。秋田県立秋田高等学校より東京大学へ進み、1954年、東京大学教養学部を卒業。東京大学大学院人文科学研究科に進み、西洋古典学を専攻した。1959年に博士課程を単位取得満期退学。その後はドイツ・フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクに留学し、『ナグ・ハマディ写本』中の『真理の福音』のキリスト論に関する学位論文を提出して神学博士の学位を得た。
- 研究者として
1958年、青山学院大学文学部助手となった。その後、専任講師、助教授に昇格。しかし、大木金次郎院長兼理事長と対立し、1969年に辞職した[2][3]。ただし、同大学では1972年まで非常勤講師を務めた。
1969年、東京大学教養学部助教授に転じた。1977年に教授昇格。1991年3月に東京大学を定年退官し、4月より茨城キリスト教大学文学部教授となった。1992年から2001年まで恵泉女学園大学の学長を務めた。2001年、日本学士院会員となった[4][5]。これは帝国学士院時代の二木謙三を別とすれば、秋田県出身者では初であった。また、「九条科学者の会」呼びかけ人を務めていた[6]。
受賞・栄典
編集研究内容・業績
編集新約聖書学とグノーシス主義研究において精力的な研究を発表した。代表的著作として、「史的イエス」の問題を取り上げ、人間イエスの原像を時代史のなかに位置づけた『イエスとその時代』や、1945年にエジプトで発見された福音書(トマスによる福音書)について述べた『トマスによる福音書』などがある。
- 指導学生
多くの後進を育て、門下生には下記がいる[9]。
著作
編集単著
編集- 『原始キリスト教とグノーシス主義』岩波書店 1971
- 『初期キリスト教史の諸問題 現代への視角』新教出版社(今日のキリスト教双書) 1973
- 『イエスとその時代』岩波新書 1974
- 『人類の知的遺産 イエス・キリスト』講談社 1979
- 『隠されたイエス トマスによる福音書』講談社(福音書のイエス・キリスト) 1984
- 『トマスによる福音書』講談社学術文庫 1994
- 『「同伴者」イエス 小論・講演集』新地書房 1985
- 『新約聖書とグノーシス主義』岩波書店 1986
- 『新約聖書の女性観』岩波セミナーブックス 1988
- 『NHKこころをよむ イエス・キリストを語る〈上〉1992年10月~3月』日本放送出版協会 1992
- 『NHKこころをよむ イエス・キリストを語る〈下〉1993年4月~9月』日本放送出版協会 1993
- 『問いかけるイエス 福音書をどう読み解くか』日本放送出版協会 1994
- 『聖書のなかの差別と共生』岩波書店 1999
- 『使徒行伝』(全3巻) 現代新約注解全書 新教出版社 1977
- 改訂版 2016年
- 『人が神にならないために 説教集』コイノニア社 2003
- 再版 新教出版社 2016年
- 『イエスと出会う』岩波書店 2005
- 『「強さ」の時代に抗して』岩波書店 2005
- 『ユダのいる風景』岩波書店(双書時代のカルテ) 2007
- 『ユダとは誰か 原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダ』岩波書店 2007
- 文庫化 講談社学術文庫 2015年
- 『イエス・キリストの言葉 福音書のメッセージを読み解く』岩波現代文庫 2009[10]
- 『初期キリスト教の霊性:宣教・異端・女性観』岩波書店 2009
- 『キリスト教の再定義のために』新教出版社 2018
著作集
編集- 『荒井献著作集』(全10巻+別巻)岩波書店 2001-2002[11]
監修
編集- 『ギリシア語新約聖書 釈義事典』(全3巻) H.J.マルクス共監修、教文館 1993-1994
- 新版 2015年
- 『女性の視点によるキリスト教神学事典』エリザベート・ゴスマン,ヘルリンデ・ピサレク=フーデリスト, ルイーゼ・ショットロフ, エリーザベト・モルトマン‐ヴェンデル, イーナ・プレトリウス,ヘレン・シュンゲルン‐シュトラウマン編、岡野治子共監修、日本基督教団出版局 1998
- 『聖書百科全書』ジョン・ボウカー編著、池田裕・井谷嘉男共監訳、三省堂 2000
- 『原始・古代四福音書対観表 ギリシア語-日本語版』クルト・アーラントギリシア語版監修、川島貞雄と日本語版監修、日本基督教団出版局 2000
- 『総説キリスト教史』(全3巻) 出村彰と共監修、出村みや子・出村彰共著、日本キリスト教団出版局 2006∸2007
- 1巻『原始・古代・中世篇』
- 2巻『宗教改革篇』
- 3巻『近・現代篇』
共著
編集- 『聖書の世界 第5・6巻 新約』田川建三・八木誠一共著 講談社 1970
- 『パウロをどうとらえるか』編 新教出版 1972
- 『古典古代における伝承と伝記』秀村欣二・久保正彰共編 岩波書店 1975
- 『神話・文学・聖書 西洋古典の人間理解』川島重成共編著 教文館 1977
- 『青学神学科訴訟 建学の精神とキリスト教』青学神学科訴訟を支援する会編 新教出版社 1979
- 『総説新約聖書』川島貞雄・川村輝典ほか共著 日本基督教団出版局 1981
- 『冬の虹 荒井英津子句集』編著 東京美術、1982
- 『新約聖書正典の成立』編 日本基督教団出版局 1988
- 『ひろさちやが聞く新約聖書』ひろさちや共著 鈴木出版(世界の聖典) 1992
- 『聖書の思想と現代』(現代聖書講座 3) 木田献一共編 日本基督教団出版局 1996
- 『聖書名言辞典』池田裕共編著 講談社 2004
- 『世界平和とキリスト教の功罪 過去と現在から未来を考える 恵泉女学園大学大学院国際シンポジウム』代表、蓮見博昭・笹尾典代編 現代人文社 2004
- 『弱さを絆に ハンセン病に学び、がんを生きて』荒井英子共編 教文館 2011
- 『3・11以後とキリスト教』本田哲郎・高橋哲哉共著 ぷねうま舎 2013
- 『次世代への提言!』日本クリスチャン・アカデミー関東活動センター編 小林哲夫・本田哲郎・関田寛雄・杉野榮・青野太潮・森一弘・並木浩一・石田学・神田健次・戒能信生共著、新教出版社 2020
翻訳
編集- 『原始教会の伝承 釈義的・歴史的・神学的問題』オスカー・クルマン著、新教出版社(聖書学叢書) 1958
- 『危機に生きる信仰』カール・マイケルソン著、野呂芳男共訳、新教出版社 1959
- 『永遠の平和』(カール・ヒルティ著作集 11) カール・ヒルティ著、秀村欣二共訳、白水社 1959
- 新版 1979年
- 『ペテロ 弟子・使徒・殉教者』オスカー・クルマン著、新教出版社 1965
- 『教会史概説』カール・ホイシ著、加賀美久夫共訳m新教出版社 1966
- 『旧約外典偽典概説 付・クムラン写本概説』レオンハルト・ロスト著、土岐健治共訳、教文館 1972
- 『聖書の世界 別巻 新約聖書外典』八木誠一・田川建三・大貫隆・小河陽・青野太潮・藤村和義・佐竹明共訳、講談社 1974
- 改題新編『新約聖書外典』講談社文芸文庫 1997
- 『ヘルメス文書』柴田有共訳、朝日出版社 1980
- 『イエス運動の社会学 原始キリスト教成立史によせて』ゲルト・タイセン著、渡辺康麿共訳、ヨルダン社 1981
- 『ナグ・ハマディ写本:初期キリスト教の正統と異端』エレーヌ・ペイゲルス著、湯本和子共訳 白水社 1982
- 『批判的信仰の論拠 宗教批判に耐え得るものは何か』ゲルト・タイセン著、渡辺康麿共訳 岩波書店(岩波現代選書) 1983
- 『新約聖書 2 ルカ文書 ルカによる福音書・使徒行伝』佐藤研共訳、岩波書店 1995
- 『ナグ・ハマディ文書』(全4巻) 大貫隆・小林稔・筒井賢治共訳、岩波書店 1997
- 改題文庫化『新約聖書外典 ナグ・ハマディ文書抄』岩波文庫 2022
- 『使徒教父文書』八木誠一・田川建三・小河陽・佐竹明共訳、講談社文芸文庫 1998
- 『グノーシスの変容 ナグ・ハマディ文書・チャコス文書』大貫隆共編訳 岩波書店 2010
脚注
編集- ^ https://edurank.org/uni/university-of-erlangen-nuremberg/alumni/ 100 Notable alumni of University of Erlangen Nuremberg Updated, February 29,2024 EduRank
- ^ 青学神学科同窓会基督教学会閉会へ 2年後の論集60号の発行をもって 2015年6月13日 - キリスト新聞社ホームページ 2023年8月8日閲覧。
- ^ 青学神学科訴訟を支援する会編『青学神学科訴訟 建学の精神とキリスト教』新教出版社、1979年、106頁。
- ^ a b c “会員情報 - 荒井献”. www.japan-acad.go.jp. 日本学士院. 2023年9月19日閲覧。
- ^ 日本学士院(物故会員)
- ^ 「九条科学者の会」呼びかけ人メッセージ (2005.3.13)
- ^ “荒井献さん死去 94歳、聖書研究の権威:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年8月21日). 2024年8月21日閲覧。
- ^ 林巌雄 (2024年8月16日). “荒井献先生が、本日午前0時過ぎに、天に召されました。……”. www.facebook.com. 2024年8月18日閲覧。
- ^ 日本クリスチャン・アカデミー関東活動センター編『次世代への提言! 神学生交流プログラム講演記録集 神学生交流プログラム講演記録集』新教出版社 2020, 24頁
- ^ 前出の『問いかけるイエス』(NHK出版)を収録した『荒井献著作集』第2巻第2部の一部を削除し注を加えて文庫化したもの。
- ^ 叡智の光 SPECIAL NEWS