エイジング
エイジング(aging、ageing、エージング)は、一般には「経時」(時を経る)という意味である。
食品工業では、熟成という意味で使う。
機械工業製品などの場合、時を経ることで品質が低下したり不具合が生じること(経年劣化)を意味する場合もあるが、新品が安定動作するまで意図的に動作させることを指すためにも頻繁に用いられる。
人間
編集エイジングの原義は年齢を重ねていくこと、つまり「加齢」である。この意味ではヒトは受精の瞬間からエイジングを始める。
高齢社会では「老化」という意味でこの語を使う機会が増える。
なお老化に抵抗、対抗することはアンチエイジングという。加齢関連性の疾患を予防したり治療する医療は、抗老化医学と呼ばれる。
工業
編集電子部品
編集電子部品・モジュールは、実際に通電による負荷を与える事でエイジングされる。通電負荷によるジュール熱の発生や疲労も原子・分子骨格構造の変化に繋がるためである。結果、所定の性能を満たさない状態へ変化したものは、故障もしくは初期不良となる[1]。
精密機械
編集定盤や三次元測定機のような精密機械の製造時、鋳造・圧延時の内部応力に起因する歪を緩和するために加工した素材を一定期間、静置してから二次加工する例がある[2]。類似の事例は時計などの精密機械の製造でも見られる。
記録媒体
編集音楽はデジタル録音が行なわれるまではアナログの磁気テープが保存方法だったが、30年以上経つと磁性体が剥がれてしまう等テープ自体が劣化してしまう。
食品工業
編集酒
編集酒の中にはより良い品質に変質させることを目的として保存しておくものがある。これを「エイジング」や「熟成」と呼ぶ。代表的な例はウイスキーであり、樽の中で数年間、時には数十年の間エイジングを行った後に出荷する。
酒におけるエイジングは、酒の内部で発生する緩やかな化学的変化および物理的変化である[3]。ウイスキーなどの蒸留酒は樽の中にあるときだけで瓶詰めされた後のエイジングはまず行われないが、ワインや日本酒、ビールなどの醸造酒は瓶詰め後もエイジングする場合がある[3]。特に酵素が含まれている醸造酒は、蒸留酒と比べて変化速度が早いので、長い時間エイジングすると風味が劣化することがある[3]。火入れを行っていない日本酒や酵母の除去を行っていないビールなどがこれに該当する。
食肉
編集
美術の手法
編集舞台美術、映画美術やテーマパークなどにおける「エイジング」とは、登場する大道具や小道具やセット類の "見た目" を意図的に古く見せることである。実際には新しい道具やセットであっても、塗装を意図的に汚したり、錆びに見えるような塗装をしたり、長年使用するとつく手垢(てあか)のように見える汚れをつけたり、使用すればつくはずのキズを意図的につけたり一部を壊したり、埃をつけたり、壁紙を汚したり破いたりするなどして、古いものに見せる美術手法である。模型分野の「ウェザリング」に近い用法と言える。
脚注
編集- ^ “自動車用電子機器のエージングおよび電子部品のスクリーニング実施基準” (PDF). 日本自動車部品工業会. 2017年3月31日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 匠の息吹を伝える~"絶対"なき技術の伝承~ (78)平面を制する ~精密大物きさげ加工~(8m21s〜) - YouTube
- ^ a b c 外池良三 編『世界の酒日本の酒ものしり事典』東京堂出版、2005年8月5日、108、109ページ頁。ISBN 4-490-10671-8。