相生線

かつて北海道美幌町と津別町を結んでいた日本国有鉄道の鉄道路線

相生線(あいおいせん)は、かつて日本国有鉄道(国鉄)が運営していた鉄道路線地方交通線)である。北海道網走郡美幌町美幌駅石北本線から分岐し、同郡津別町北見相生駅までを結んでいた。1980年(昭和55年)の日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)施行により、翌年9月に第1次特定地方交通線に指定され、1985年(昭和60年)4月1日に全線が廃止となった[1]

相生線
キハ22 69 旧北見相生駅
基本情報
現況 廃止
日本の旗 日本
所在地 北海道網走郡
起点 美幌駅
終点 北見相生駅
駅数 14駅
開業 1924年11月17日
廃止 1985年4月1日[1]
所有者 日本国有鉄道
運営者 日本国有鉄道
路線諸元
路線距離 36.8 km (22.9 mi)
軌間 1067 mm
線路数 単線
電化方式 全線非電化
最大勾配 16.7
最小曲線半径 300 m
閉塞方式 票券閉塞式
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路線データ

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  • 区間(営業キロ):美幌 - 北見相生 (36.8km)
  • 駅数:14駅(起終点駅含む。駅8、仮乗降場6)
  • 複線区間:なし(全線単線)
  • 電化方式:全線非電化
  • 閉塞方式:票券閉塞式
    • 交換可能駅:1(津別)
  • 輸送密度(1981年度): 411人(キロ)[2]
1966年の網走支庁地図。

歴史

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停車場・施設・接続路線(廃止当時)
   
美幌川橋梁 美幌川
       
0.0 美幌駅 石北本線
       
網走川橋梁 網走川
     
(2.0) 旭通仮乗降場
       
第一チエブサクオンネナイ川橋梁 魚無川
       
第二チエブサクオンネナイ川橋梁 魚無川
       
第三チエブサクオンネナイ川橋梁 美富沢川
       
第四チエブサクオンネナイ川橋梁 美富沢川
       
第五チエブサクオンネナイ川橋梁 美富沢川
   
6.2 上美幌駅
   
(7.9) 豊幌仮乗降場
     
豊鄉川橋梁 豊幌川
     
小沼沢川
   
11.9 活汲駅
     
シンケピポロ川橋梁 シンケピポロ川
   
(15.0) 達美仮乗降場
     
想川
     
津別森林鉄道
     
16.6 津別駅
     
津別川
   
(17.7) 高校前仮乗降場
   
線の沢川
   
20.8 恩根駅
   
オンネキキン川
   
フタバ川
   
24.7 本岐駅
   
ボンキキン川
   
(28.4) 大昭仮乗降場
   
   
(30.3) 開拓仮乗降場
   
32.3 布川駅
     
第一網走川橋梁 網走川
   
吾見川橋梁 ペナマンキリウシナイ川
     
第二網走川橋梁 網走川
   
36.8 北見相生駅
 
釧路方面延伸計画(未着工)

釧路 - 美幌間を結ぶ釧美線(せんびせん)として計画された路線で、1911年の第27回帝国議会では阿寒郡飽別村民らによる「釧路美幌間鉄道速成の件」という請願が提出・採択され[3]、1912年にも請願が出されている[4]。1919年3月19日の第41回帝国議会衆議院請願委員会では、「美幌相生間拓殖事業鉄道敷設速成の件」という請願について、議員の寺田省帰が「美幌相生線はすでに大正十年から起工することになって居るのでありますけれども」と発言しており[5]、当路線に当たる区間の着工はこの時点で決まっていた。1921年3月2日の第44回帝国議会衆議院請願委員第四分科会の会議録では、議員の木下成太郎が「美幌相生間ならびに相生、釧路間鉄道敷設の件」という請願に関する説明で、二つの請願が出願した地方の違いで分かれているが一体のものであると述べている[6]

1922年の改正鉄道敷設法別表第148号で「釧路國釧路ヨリ北見國相生ニ至ル鐵道」と規定された。国の財政事情で中断され部分開通したもので、1924年に美幌から津別まで、翌年に北見相生までが開業した[7]。しかし、1931年に本路線にほぼ並行する釧網線(現・釧網本線)が全線開通したことで路線建設の意義が薄れたこともあり、釧路までの区間は着工が放棄された[8]1968年頃には、北見相生駅から阿寒湖を経由し白糠線までを結ぶ、阿寒線の建設運動が地元自治体を中心に行われたが、実現しなかった[8]1980年に国鉄再建法が成立すると第1次特定地方交通線に指定され、1985年4月に廃止された[7]

釧路側では1923年に北海炭礦鉄道(後の雄別炭礦鉄道)が雄別炭山まで開通させていたが、炭鉱の閉山にともない1970年に廃止された。

代替バスは鉄道と同じ美幌向けの路線(北見 - 美幌 - 津別:北海道北見バス)と、人の流れに沿って北見向けの路線(北見 - 津別 - 相生:津別町営バス)が運行されていたが、2012年10月に津別町営バスが事業終了し[9][10]、津別 - 相生間は予約制(後に一部便は予約不要となる)の混乗スクールバス(津別まちバス)へ移行した[11][12][13]。また、かつては阿寒バス釧路 - 阿寒湖畔 - 美幌間のバスを運行していたことがある[14]津別町営バス#津別町のバスの動きも参照)。

  • 1924年(大正13年)11月17日 相生線美幌 - 津別間 (16.6km) 開業。上美幌駅[15]・活汲駅[15]・津別駅[16]を新設。
  • 1925年(大正14年)11月15日 津別 - 北見相生間 (20.2km) 延伸開業し全通[7]。本岐駅・北見相生駅を新設[16]
  • 1947年(昭和22年)9月20日 布川仮乗降場を新設[16]
  • 1955年(昭和30年)8月20日 旭通仮乗降場[15]・豊幌仮乗降場[15]・高校前仮乗降場[16]を新設。
  • 1956年(昭和31年)5月1日 達美仮乗降場[15]・大昭仮乗降場[16]・開拓仮乗降場[16]を新設。
  • 1956年(昭和31年)9月20日 恩根駅・布川駅を新設[16](仮乗降場から昇格。恩根仮乗降場の設置日不明)
  • 1975年(昭和50年)5月 蒸気機関車の運転を廃止[17]
  • 1979年(昭和54年)12月11日 貨物営業廃止。
  • 1981年(昭和56年)9月18日 第1次特定地方交通線として廃止承認。
  • 1985年(昭和60年)4月1日 全線 (36.8km) を廃止[7]し、北見バス(当時)と津別町営バスの各バス路線に転換[1]

駅一覧

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接続路線の事業者名は相生線廃止時。全駅北海道網走郡に所在。

駅名 営業キロ 接続路線 所在地
駅間 累計
美幌駅 - 0.0 日本国有鉄道:石北本線 美幌町
旭通仮乗降場 - (2.0)  
上美幌駅 6.2 6.2  
豊幌仮乗降場 - (7.9)  
活汲駅 5.7 11.9   津別町
達美仮乗降場 - (15.0)  
津別駅 4.7 16.6  
高校前仮乗降場 - (17.7)  
恩根駅 4.2 20.8  
本岐駅 3.9 24.7  
大昭仮乗降場 - (28.4)  
開拓仮乗降場 - (30.3)  
布川駅 7.6 32.3  
北見相生駅 4.5 36.8  

仮乗降場には営業キロが設定されていなかった。括弧内に実キロを記す。

脚注

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  1. ^ a b c “国鉄第一次地交線11線 装い新たに再スタート”. 交通新聞 (交通協力会): p. 1. (1985年4月2日) 
  2. ^ 昭和の国鉄の終焉期:営業係数(主として昭和56年度のデータ)”. OMOTESANDO HARAJUKU INFOMATION. 2021年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月28日閲覧。
  3. ^ 第27回帝国議会衆議院本会議会議録1911年2月23日および貴族院本会議1911年3月6日(帝国議会会議録検索システムにて2021年7月23日検索)
  4. ^ 第28回帝国議会貴族院本会議会議録1912年2月9日(帝国議会会議録検索システムにて2021年7月23日検索)
  5. ^ 第41回帝国議会衆議院請願委員会1919年3月19日(帝国議会会議録検索システムにて2021年7月23日検索)
  6. ^ 第44回帝国議会衆議院第四分科会1921年3月2日(帝国議会会議録検索システムにて2021年7月23日検索)
  7. ^ a b c d 鉄道ファン』第35巻第8号、交友社、1995年8月、57頁。 
  8. ^ a b 横平弘「旧国鉄予定線・釧美線の路線計画と課題」『土木史研究』第16巻、土木学会、1996年、557-564頁、doi:10.2208/journalhs1990.16.557 
  9. ^ 津別町営バス再編計画書(案)” (PDF). 津別町. 2014年4月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月28日閲覧。
  10. ^ “津別町 包括ケア導入へ調査費”. 北海道新聞. 2012年6月28日朝刊オホーツク版 p. 24網走・美幌面
  11. ^ 10月1日から町営バスが変わります 広報つべつ2012年7月”. 津別町. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月28日閲覧。
  12. ^ 変わる町営バス第2回 混乗スクールバスになる相生線と上里線 広報つべつ2012年8月”. 津別町. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月28日閲覧。
  13. ^ まちバスの運行について”. 津別町. 2015年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月28日閲覧。
  14. ^ 釧路駅前~釧路空港~鶴公園~丹頂の里~阿寒湖畔~美幌駅”. 阿寒バス. 2001年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月19日閲覧。
  15. ^ a b c d e 石野 1998, p. 922.
  16. ^ a b c d e f g 石野 1998, p. 923.
  17. ^ 「国鉄蒸気線区別最終運転日一覧」『Rail Magazine 日本の蒸気機関車』1994年1月号増刊

参考文献

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  • 石野哲 編『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 II』(初版)JTB、1998年10月1日。ISBN 978-4-533-02980-6 

関連項目

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外部リンク

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