甘辛しゃん
『甘辛しゃん』(あまからしゃん)は、1997年(平成9年)10月6日から1998年 (平成10年)4月4日まで放送されたNHK連続テレビ小説の第57作[1]。主演は佐藤夕美子。
甘辛しゃん | |
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ジャンル | ドラマ |
脚本 |
宮村優子 長川千佳子 |
演出 | 兼歳正英 ほか |
出演者 |
佐藤夕美子 樋口可南子 岡田義徳 大場泰正 遊井亮子 宍戸錠 尾上寛之 大村彩子 塩見三省 馬渕晴子 堀ちえみ 風間杜夫 植木等 |
ナレーター | 上田早苗 |
音楽 | 古川昌義 |
オープニング | 原由子「涙の天使に微笑みを」 |
時代設定 | 昭和35年 - 平成7年 |
製作 | |
制作 | NHK大阪 |
放送 | |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 1997年10月6日 - 1998年4月4日 |
放送時間 | 15分 |
回数 | 150 |
番組年表 | |
前作 | あぐり |
次作 | 天うらら |
概要
編集神戸市灘(灘五郷)の「榊酒蔵」を舞台に、女性酒職人を目指す主人公・榊泉とその家族が描かれている。朝ドラで初めて本格的に阪神・淡路大震災の被害も描かれた[2]。後に緒形裕美が漫画化した(現在は絶版)。
タイトルは灘の最高の酒をたたえる言葉として使われる“しゃんとあがった秋晴れの味”という表現から[3]。
ヒロインオーディションには1863人が応募した[4]。
初回視聴率は24.4%、平均視聴率は26.6%、最高視聴率は30.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)[5]。
放送ライブラリーでは第1回[6]と総集編が公開。
あらすじ
編集昭和35年、8月。丹波篠山の農村に住む泉は、農閑期に杜氏をしていた父を出稼ぎ先の灘での交通事故で亡くし、母・ふみと2人で暮らしていた。父は生前、「しゃんとあがった味」の酒を造ることが目標だった。
ある日、泉が友人たちと川遊びをしている時、そこで夏休みを過ごしていた灘の由緒ある造り酒屋、榊酒造の当主の息子、拓也と出逢う。
その年の秋、台風によりふみと泉は水田と家を失った。途方にくれる彼女達に父の杜氏仲間だった茂吉が、榊酒造で住み込みで働かないかと持ちかけた。悩みながらも、2人はその話を承諾。篠山を離れる事になる。
榊酒造での生活が始まる。造り酒屋独特の慣習やタブーに時に戸惑い、反発しながらも、泉はここでの生活になじんでいく。何かにつけて泉に突っかかり、ふみを独り占めしようとする拓也と意地を張り合いながらも、少しずつ仲良くなる。
そんな時、拓也の父、信太郎がふみにプロポーズする。1度は断り泉と共に榊酒造を離れたふみだったが、探して訪ねて来てくれた信太郎の真心にふれ、結婚を承諾。泉は拓也の義理の姉となった。
やがて泉は信太郎の死や拓也との感情のもつれを乗り越え、父が目指していた「しゃん」とした味の純米吟醸酒づくりを目指すこととなる。
出演
編集榊家とその縁戚
編集- 神沢泉 → 榊泉
- 演 - 佐藤夕美子(幼少時代:山下結穂)
- 主人公。母・ふみの再婚により榊家に入る。義弟・拓也との許されざる禁断の恋に悩みながらも、亡き父の夢であった酒造りの夢に向かい邁進し、榊酒蔵第7代当主となる。年を経るに連れて、ふみに似た容姿となっていく。
- 神沢ふみ → 榊ふみ
- 演 - 樋口可南子
- 泉の母。住み込みで榊酒蔵で働いている時に信太郎に見初められ再婚、泉と拓也のことを誰よりも案じている。泉の榊酒蔵当主就任直前に不慮の事故で他界する。
- 榊拓也
- 演 - 岡田義徳[7](幼少時代:比嘉タケル)
- 信太郎の先妻の子で、泉の義弟。幼い頃は泉と喧嘩友達だったが、やがて義姉となった泉と禁断の恋に落ちてしまい、それを振り切るかのように家を飛び出し上京。しかし酒造りの夢を忘れる事はできず、榊酒蔵と親しい清水酒蔵の職人となる。後に結婚して泉と良好な関係を取り戻すが、阪神・淡路大震災で倉の下敷きとなって命を落とす。
- 榊信太郎
- 演 - 風間杜夫
- 拓也の父で、泉の義父。榊酒蔵第5代当主として酒蔵の近代化に取り組むが、職人たちとの対立や息子・拓也との確執などの心労で、若くして急死。グレン・ミラー楽団などジャズのレコードを聴くのが趣味。
- 榊庄一郎
- 演 - 植木等
- 信太郎の父で、泉の義祖父。当主を信太郎に譲って隠居していたが、信太郎の急死により急遽第6代当主として復帰、後に一人前の酒職人に成長した泉に当主の座を譲った。飄々とした性格だが威厳も併せ持ち、榊家の精神的支柱的な存在。
- 榊りん
- 演 - 馬渕晴子
- 庄一郎の妻で、泉の義祖母。古い伝統を重んじる性格で、酒蔵に女性が入る事を厳しく禁じる。当初は泉・ふみ親子と対立していたが、様々な出来事を経て和解していく。その一方で、息子・信太郎や孫・拓也に先立たれる不幸に直面した。
- 恩田万作 → 榊万作
- 演 - 大場泰正
- 泉の夫で、そよぎの父。大学時代に泉と知り合う。若手の人気落語家“桂万吉”として活躍していたが、泉と結婚して榊家に婿入りする時に引退、以後は主夫として榊酒蔵を裏から支え続ける。年を経るに連れて、義父・信太郎に似た容姿となっていく。
- 榊そよぎ
- 演 - 大村彩子
- 泉と万作の娘で、ふみの孫。拓也の姪で庄一郎・りん夫妻の義曾孫。直感が鋭く、母・泉と叔父・拓也の関係を見抜いた。猫が大好きだが、なぜかあまり懐かれない。
- 浅井まゆ子 → 榊まゆ子
- 演 - 遊井亮子
- 泉の大学時代からの親友で、拓也の妻。上京した拓也と一時同棲し、一旦別れた直後に拓也との子・拓実を出産。当初はシングルマザーとして拓実を女手一つで育てていたが、拓也と再会して無事に結婚した。しかし、阪神・淡路大震災により彼が死去したため、未亡人となる。
- 榊拓実
- 演 - 橋龍吾(幼少時代:比嘉タケル〈2役〉)
- 拓也とまゆ子の子で、泉の甥。信太郎の孫で、庄一郎・りん夫妻の曾孫。そよぎの従兄。子供の頃から泉によく懐いていた。後に小児科医を目指し、慎作の診療所で働き始める。
- 榊はるか
- 演 - 野川由美子
- 信太郎の従姉妹。アメリカで暮らしていたが離婚を機に日本へ戻る。毒舌だが、たまに鋭い指摘をすることも。阪神・淡路大震災で榊酒蔵が潰滅状態になった時は、救援物資を持って榊家を助けた。
- 恩田慎作
- 演 - 宍戸錠
- 万作の父で、そよぎの祖父。小児科医だったが、息子(万作の弟)の病気を治せなかった事がトラウマになっており、長い間息子の万作と確執が続いていた。
- 神沢修造
- 演 - 新井康弘
- ふみの弟で、泉の叔父。丹波篠山で農家を営む。
- 神沢亮子
- 演 - 深浦加奈子
- 修造の妻で、泉の叔母。ふみと折り合いが悪い。
- 神沢良夫
- 演 - 曽谷聡紫
- 修造の子で、泉の従兄弟。
榊酒造の職人
編集- 熊代茂吉
- 演 - 塩見三省[8]
- 榊酒蔵の杜氏。一時榊酒蔵を離れ拓也を指導しながら清水酒造で働いていたが、泉の代に戻り杜氏として復活。しかし老齢と十数年のブランクのため、間もなく酒造りの第一線から退き、榊酒蔵の御意見番的存在となる(ノベライズの設定年齢から考えると、終盤の阪神・淡路大震災時は既に90歳を過ぎている)。
- なお茂吉役の塩見は、9年後の連続テレビ小説『純情きらり』でも、伝統味噌職人という似た役を演じている。
- 小野寺一世
- 演 - 美木良介
- 榊酒蔵の技師。実家も酒屋だったが倒産し、榊酒蔵の実権を握ろうと目論むが、泉の酒造りの助力も行った。後に不正が発覚して榊酒蔵を去る。
- 小野寺環
- 演 - 小沢真珠
- 一世の妹で、榊酒蔵の女職人。泉の良きパートナーで、兄の辞任後も榊酒蔵を支え続ける。
- 鶴子
- 演 - 紅萬子
- 榊家の家政婦。噂好きな性格。熱を出して倒れた時にふみに助けられて以来、ふみの親友となる。家政婦を辞めた後もしばしば榊酒蔵を訪れ、阪神大震災時も老齢の身に鞭打って、「湊や」でそよぎの面倒を見る。
- ケイ
- 演 - 松本麻希
- 榊家の使用人。鶴子やふみより遥かに若く、信太郎を慕っていた。鶴子と異なり、榊家を離れてからは、信太郎の葬式にしか登場しない。
- 水野
- 演 - 河野実
- 榊酒蔵の蔵人頭。茂吉が榊酒造を去った後に、職人達のまとめ役となるが、泉の代で引退した。
- 門田
- 演 - 山西惇
- 榊酒蔵の蔵人。初登場時は喧嘩っ早い若手職人だったが、茂吉・水野の後を受け継ぎ、終盤では杜氏にまで成長している。
- 森岡
- 演 - 白川明彦
- 榊酒蔵の技師。信太郎が購入した近代蔵を任されるが、当初は古くからの蔵人と対立することが多かった。阪神大震災時も現役で活躍する。
- 兵頭
- 演 - 守口徳治
- 榊酒蔵の蔵人。茂吉が復帰した直後、過労とストレスで倒れてしまい、これが原因で茂吉は杜氏を辞める決意をする。
- 利雄
- 演 - 城本一樹
- 榊酒蔵の蔵人。
- 人田
- 演 - 国田栄弥
- 榊酒蔵の蔵人。
その他の人々
編集- 湊屋平吉
- 演 - 笑福亭松之助
- 居酒屋「湊屋」の主人。「湊屋」が信太郎がふみを探しだしプロポーズした場所となって以来、榊酒蔵と家族ぐるみの親しい付き合いとなる。
- 湊屋光太郎
- 演 - 越前屋俵太
- 「湊屋」の2代目主人。平吉との関係は不明だが、彼の引退後に店を引き継ぐ。店が阪神大震災後もほぼ無事だったため、榊家の仮住宅代わりに店を開放した。
- 清水虎之助
- 演 - 嶋田久作
- 灘の清水酒造当主。榊酒造とは古い付き合いで、家を飛び出した拓也を受け入れ、茂吉と共に職人として鍛え上げる。後に経営難で廃業した。
- 清水咲
- 演 - 堀ちえみ
- 虎之助の妻。
- 中川ともみ
- 演 - 高松志穂
- 小学校時代の泉のクラスメイト。教科書に落書きばかりするいたずら者。
- 轟
- 演 - 徳田興人
- 小学校時代に泉と拓也が通っていた剣道教室の先生。スキンヘッドで強面だが、性格は温厚。
- 葛木
- 演 - 榊莫山
- 阪神大震災で家を失った老人。榊酒造の「露誉」の復活を待ち望み、自筆の題字を泉に贈る。
- アナウンサー
- 演 - 穴井夕子
- 落語家時代の万作がパーソナリティーを務めたテレビ番組の司会者。「露誉」の宣伝CM製作のため、榊酒造を訪れる。
- 山田先生
- 演 - 関秀人
- 小学校時代の泉の恩師。
- 藪田
- 演 - 丹羽貞仁
- 郵便局員。ふみの見合い相手。
- 田中
- 演 - ホーブユタカ
- 耕耘機の販売セールスマン。
- 松下
- 演 - 森下哲朗
- 保夫
- 演 - 島本ひと之
- 澄子
- 演 - 加藤一歩
- きみ子
- 演 - 宮田智子
- 和子
- 演 - 大山祐季
- 悟
- 演 - 田中貴広
- 宏
- 演 - 福森紀明
- 鈴木
- 演 - 北川隆一
- 本間医師
- 演 - 寺下貞信
- 佐伯先生
- 演 - 石井良子
- 巡査
- 演 - 平田龍治
- 草野
- 演 - 尾上寛之
- 森
- 演 - 吉田勝浩
- 岡本
- 演 - 小野浩史
- 松田
- 演 - 上田慧
- 堤
- 演 - 斧渕貴昭
- その他
- 演 - 久保佳那子、手嶋純子、中村哲也、川井つと
スタッフ
編集- 脚本 - 宮村優子、長川千佳子[1]
- 音楽 - 古川昌義[1][6]
- 主題歌 - 「涙の天使に微笑みを」
- 語り - 上田早苗アナウンサー[1][6]
- 副音声解説 - 関根信昭
- 題字 - 榊莫山[6](本編にも出演)
- 演出 - 兼歳正英[1][6] / 田村文孝[1]、広谷勇、宮崎純[1]、鈴木圭[1]、出水有三、吉田浩樹、勅使河原亜紀夫、木村明広、三鬼一希、小島史敬、大杉太郎
- 大阪ことば指導 - 川本美由紀、山下里佳子
- 酒造指導 - 森太郎
- 資料提供 - 高岡祥夫
- 撮影協力 - 江井ヶ嶋酒造、木村酒造、藤居本屋、兵庫県篠山町、丹南町、西紀町、JAささやま
- 特別協力 - 柚木學、藤居静子、尾瀬あきら
- 制作統括 - 秋山茂樹[1][6]
- 制作 - 小松隆一
- 美術 - 宮井市太郎[1][6]、有本弘、土居京子
- 技術 - 八木悟[1][6]、後藤信一[1]
- 音響効果 - 吉田秋男[6]、野下泰之[1]、嶋野聡[1]
- 撮影 - 石川一彦[6]、松本剛
- 照明 - 吉本和信[6]、鈴木優
- 音声 - 南裕幸[6]、嶋岡智子
- 記録・編集 - 阿部格[6]、藤澤加奈子
- 映像技術 - 佐伯仁之[6]、備中正幸
- 美術進行 - 大藪則臣、渡辺卓、坂口大吾、本庄誠司
放送日程
編集週 | 回数 | 放送日 | 演出 | |
---|---|---|---|---|
1997年 | ||||
1 | 1 - 6 | 10月 | 6日 - 10月11日兼歳正英 | |
2 | 7 - 12 | 10月13日 - 10月18日 | ||
3 | 13 - 18 | 10月20日 - 10月25日 | ||
4 | 19 - 24 | 10月27日 - 11月 | 1日||
5 | 25 - 30 | 11月 | 3日 - 11月 8日||
6 | 31 - 36 | 11月10日 - 11月15日 | ||
7 | 37 - 42 | 11月17日 - 11月22日 | ||
8 | 43 - 48 | 11月24日 - 11月29日 | ||
9 | 49 - 54 | 12月 | 1日 - 12月 6日||
10 | 55 - 60 | 12月 | 8日 - 12月13日||
11 | 61 - 66 | 12月15日 - 12月20日 | ||
12 | 67 - 72 | 12月22日 - 12月27日 | ||
1998年 | ||||
13 | 73 - 78 | 1月 | 5日 - 1月10日||
14 | 79 - 84 | 1月12日 - | 1月17日鈴木圭 | |
15 | 85 - 90 | 1月19日 - | 1月24日田村文孝 | |
16 | 91 - 96 | 1月26日 - | 1月31日||
17 | 97 - 102 | 2月 | 2日 - 2月 7日||
18 | 103 - 108 | 2月 | 9日 - 2月14日||
19 | 109 - 114 | 2月16日 - | 2月21日||
20 | 115 - 120 | 2月23日 - | 2月28日||
21 | 121 - 126 | 3月 | 2日 - 3月 7日木村明広 | |
22 | 127 - 132 | 3月 | 9日 - 3月14日||
23 | 133 - 138 | 3月16日 - | 3月21日||
24 | 139 - 144 | 3月23日 - | 3月28日鈴木圭 | |
25 | 145 - 150 | 3月30日 - | 4月 4日兼歳正英 |
総集編
編集1998年7月6日から9日までBS2で総集編連続4回が放送された。
脚注
編集- ^ a b c d e f g h i j k l m n 日本放送協会放送文化研究所 (メディア情報) 編『NHK年鑑'98』日本放送出版協会、1998年10月30日、178頁。
- ^ 連続テレビ小説「甘辛しゃん」 - NHKドラマ
- ^ 「NHKトピックス」『放送教育』第52巻第7号、日本放送教育協会、1997年10月1日、72 - 73頁、NDLJP:2340896/37。
- ^ 日本財団図書館(電子図書館) 教養誌「ほのお 1997年9月号
- ^ “NHK 連続テレビ小説と視聴者 −“朝ドラ”はどう見られているか −” (PDF). メディア研究部. NHK放送文化研究所. p. 148 (2020年1月30日). 2024年5月12日閲覧。(「付表1 NHK 連続テレビ小説【作品一覧表】」の154頁の57)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 放送ライブラリー program番号:177870
- ^ 岡田義徳 - NHK人物録
- ^ 塩見三省 - NHK人物録
関連項目
編集- 夏への扉 - 物語に出てくる(用いられた)SF小説。アメリカのロバート・A・ハインラインが、1956年に発表。
外部リンク
編集- 連続テレビ小説 甘辛しゃん - NHK放送史
- 第57作「甘辛しゃん」 - 朝ドラ100
- 連続テレビ小説「甘辛しゃん」 - NHKドラマ - ウェイバックマシン(2023年12月11日アーカイブ分)
NHK 連続テレビ小説 | ||
---|---|---|
前番組 | 番組名 | 次番組 |
あぐり
(1997年度上半期) |
甘辛しゃん
(1997年度下半期) |
天うらら
(1998年度上半期) |