正則局所環
可換環論において、正則局所環(せいそくきょくしょかん、英: regular local ring)とは、ネーター局所環 であって、剰余体 について を満たすような環である[2][3]。ただし左辺は A のクルル次元、右辺は k ベクトル空間としての次元である。右辺の数はしばしば埋め込み次元(英: embedding dimension)と呼ばれ と書かれることもある[4]。
正則局所環は代数幾何学において代数多様体の非特異点に対応するため中心的な役割を占める[5]。
ネーター局所環については次の包含関係が成り立つ。
- 強鎖状環 ⊃ コーエン・マコーレー環 ⊃ ゴレンシュタイン環 ⊃ 完全交叉環 ⊃ 正則局所環
例
編集以下ではクルル次元のことを単に次元と呼ぶ。
- すべての体は0次元の正則局所環であり、0次元の正則局所環は体である。
- すべての離散付値環は1次元の正則局所環であり、1次元の正則局所環は離散付値環である[6]。特に k が体で X を不定元とするとき形式的冪級数環 k[[X]] は1次元の正則局所環である。
- より一般に k が体で X1, ..., Xd を不定元とするとき形式的冪級数環 k[[X1, ..., Xd]] は d 次元の正則局所環である。
- p を有理素数とすれば、p進整数環は離散付値環ゆえ正則局所環であり、体を含まない。
- Z を整数環とし X を不定元とすると局所化 Z[[X]](2, X) は2次元正則局所環で体を含まない。
- コーエンの構造定理により完備な等標数の d 次元正則局所環で体を含むものはある体上の形式的冪級数環である。
特徴付け
編集性質
編集脚注
編集- ^ 堀田 2006, p. 130, 系7.13.
- ^ 一般のネーター局所環に対しては が成り立つ[1]。
- ^ 堀田 2006, p. 130, 定義7.14.
- ^ Matsumura 1986, p. 104.
- ^ Eisenbud 1995, p. 242.
- ^ 堀田 2006, p. 131, 例7.18.
- ^ 堀田 2006, p. 130, 定理7.15.
- ^ Matsumura 1986, Theorem 19.2 (Serre).
- ^ 堀田 2006, p. 131, 系7.16.
- ^ Matsumura 1986, Theorem 20.3 (Auslander and Buchsbaum).
参考文献
編集- 堀田, 良之『可換環と体』岩波書店、2006年。ISBN 4-00-005198-9。
- Eisenbud, David (1995). Commutative algebra. With a view toward algebraic geometry. Graduate Texts in Mathematics. 150. Springer-Verlag. ISBN 3-540-94268-8. Zbl 0819.13001
- Matsumura, Hideyuki (1986). Commutative ring theory. Cambridge Studies in Advanced Mathematics. 8. Cambridge University Press. ISBN 0-521-36764-6. Zbl 00043569