植毛
植毛(しょくもう)は、ドナー部位、またはドナーの毛根細胞を採取し対象箇所へ貼付縫合する事。植毛術。毛髪移植とも。
概要
編集植毛は事実上植皮の一種で毛根細胞を含む皮膚を採取して移植する。植皮と同様に生着のためには、移植片と移植床に毛細血管網の再構築が必要となるので移植床には良好な血行が要求される。移植後、1~2日目は移植床の創面より漏出した血漿により栄養・湿潤状態が保持され、数日経過後、移植片と移植床の毛細血管が直接吻合、およそ1週間後には血行が再開することで生着する。毛根細胞は患者自身あるいは一卵性双生児から採ったものでなければ拒絶反応により永久生着しない。
歴史
編集近代初の植毛成功事例は、1897年に、メナヘム・ホダラ(Menahem Hodara)が、はげていない部分の頭皮から皮膚を採取し、白せんではげた部分に移植し、定着させる事に成功したのが嚆矢とされる。1930年に笹川正夫[1]、1936年に奥田庄二(1886-1962)[2][3][4]、1937年に田村一[5][6]が報告している[7]。1959年にニューヨークの皮膚科医であるNorman Orentreichがパンチ式植毛法を発表した。 その後、マイクログラフト法が開発された。
ドナー優位の理論を展開するウォルター・P。アンガーは、自毛植毛のために最も生存可能な毛包を採取できる「安全なドナーゾーン」のパラメーターを定義した。移植された毛髪は、以前の場所で成長したであろう期間だけ新しい場所で成長するため、これらのパラメータは、プラッキング法であれFUE法であれ、毛包抽出の基本的な基礎として機能し続けます[8][9]。
その後20年以上にわたって、外科医はより小さな移植片の移植に取り組んだが、結果はごくわずかな成功にとどまった。1980年代には、プラグ・テクニックはストリップ切除に取って代わられ始め、ブラジルのカルロス・ウーベルは大量の小さなグラフトの使用を普及させ、米国ではウィリアム・ラスマンが1回のセッションで数千の「マイクログラフト」を使用し始めた。
1980年代後半、Limmer 氏は、実体顕微鏡を使って、一つのドナー片を小さなマイクログラフトに分割することを提案した[10]。
毛包植毛法は進化し続けており、グラフトの切開サイズが小さくなるにつれて、より高度に、より低侵襲になっています[11][12]。
植毛の種類
編集複数の種類がある。
- パンチ式植毛法
- 毛根細胞のある皮膚から専用の器具で皮膚を採取して移植する。
- マイクログラフト法
- 毛髪がある皮膚(ドナー)を毛髪2-3本ごとの小片(グラフト)に株分けして、対象の箇所に分散配置する。
副作用
編集自毛植毛がうまくいかなかった場合、移植した毛包がうまく根付かなかったり、手術後すぐに抜けてしまったりすることがあります[13]。その結果、ドナーやレシピエントの部分に、不均一な毛髪の成長や目立つ傷跡が生じる可能性がある。
ショックロス」として知られる薄毛は、一般的な副作用であり、通常は一時的なものである[14]。ハゲもよくあることで、1日に50本から100本の毛が抜けることもある。
脚注
編集- ^ 笹川正夫, 「植毛術について」『日本皮膚科泌尿器科雑誌』 1930年 30巻 5号 p.407, NAID 10020564903, (有償公開)
- ^ 奥田庄二先生探訪記
- ^ 奥田庄二. "生毛移植ニ関スル臨床的並ニ実験的研究." 皮フ科泌尿器科雑誌 46巻6号 (1936): 537-587.
- ^ Shiell, R. C. "The Okuda papers." Hair Transplant Forum. Vol.14. No.1. 2004.
- ^ 日本皮膚・泌尿器科雑誌 41巻、4号、597頁(1937年)
- ^ 田村一「恥毛の植毛手術」『日皮誌』第53巻、1943年、76頁、NAID 10016284969。
- ^ История трансплантологии волос
- ^ “How Fast Does Hair Grow After a Hair Transplant?”. nashvillehairdoctor.com. 2024年11月9日閲覧。
- ^ “Hair Transplant Timeline: What To Expect From Day 1 & Beyond?”. www.drserkanaygin.com. 2024年11月9日閲覧。
- ^ “History of Hair Transplantation”. www.scottsdaleinstitute.net. 2024年11月9日閲覧。
- ^ “New Hair Transplant Method In The World”. heliaclinic.com. 2024年11月9日閲覧。
- ^ “The Evolution of Hair Transplant Technology: From Strip Method to FUE”. cycledrivenlife.com. 2024年11月9日閲覧。
- ^ “How To Avoid A Failed Hair Transplant - Symptoms and Causes”. www.flymedi.com. 2024年11月9日閲覧。
- ^ “How Hair Transplants Work, Results, Usage, and Side Effects”. hairloss-recovery.com. 2024年11月9日閲覧。
参考文献
編集- 安藤智恵子, 「生毛移植に関する研究 第1編 生毛移植に関する臨床的研究」『岡山医学会雑誌』 66巻 9号 p.1799-1809, ISSN 0030-1558, 岡山医学会
- 宇都宮貞俊, 古賀敬一, 井川淳, 「癩性脱毛に対する眉毛成形術の経験」『レプラ』 24巻 3号 1955年 p.166-173, 日本癩学会, doi:10.5025/hansen1930.24.3_166
- 奥田庄二, 「生毛移植に関する研究」『皮膚』 3巻 3号 1961年 p.179-195, 日本皮膚科学会大阪地方会, doi:10.11340/skinresearch1959.3.179