東武N100系電車
東武N100系電車(とうぶN100けいでんしゃ)は、東武鉄道の特急形電車。愛称は「スペーシア X」 (SPACIA X) [注釈 1]。2023年(令和5年)7月15日に営業運転を開始した。
東武N100系電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | 東武鉄道 |
製造所 | 日立製作所笠戸事業所[1] |
製造年 | 2022年 - 2024年 |
製造数 | 4編成24両 |
運用開始 | 2023年7月15日 |
主要諸元 | |
編成 | 6両編成(4M2T) |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 |
直流1,500 V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 120 km/h |
設計最高速度 | 140 km/h |
起動加速度 | 2.23 km/h/s |
減速度(常用) | 3.7 km/h/s |
減速度(非常) | 5.3 km/h/s |
編成定員 | 212名 |
車両定員 |
クハN100-1形:23名 モハN100-2形:22名 モハN100-3形:56名 モハN100-4形:56名 モハN100-5形:35名 クハN100-6形:20名 |
車両重量 |
クハN100-1形:35.9 t モハN100-2形:41.2 t モハN100-3形:38.9 t モハN100-4形:40.4 t モハN100-5形:40.7 t クハN100-6形:34.8 t |
長さ |
21,580 mm(先頭車) 20,000 mm(中間車) |
幅 | 2,836 mm |
高さ | 4,045 mm |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 |
SS192M/T[2] (東武形式:TRS-22M/T) |
主電動機 | かご型誘導電動機 TM-22 |
主電動機出力 | 165kW |
駆動方式 | TD平行カルダン駆動方式 |
制御方式 | VVVFインバータ制御 |
制動装置 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ |
保安装置 | 東武形ATS |
備考 | 特記なき限り出典は[3]による |
概要
編集100系「スペーシア」の後継となる特急形電車である[6]。2021年11月11日に導入計画および形式名・エクステリアが発表され、愛称については2022年6月から7月にかけて名前を4つの中から「予想」する企画が行われた[7][注釈 2]のち、同年7月15日に愛称と運行計画が発表されている[1]。
製造は2022年から行われ[8]、翌2023年3月に第1陣となる2編成が落成した[9]。2024年にも同じく2編成を導入し、計4編成24両を運用する予定である[1]。
2023年10月にはグッドデザイン賞を受賞し[10]、2024年には鉄道友の会よりブルーリボン賞を受賞した[11]。東武鉄道の同賞受賞は、100系以来33年ぶりのことである。
構造
編集走行機器
編集ハイブリッドSiC素子を用いたVVVFインバータ制御装置を採用し、3号車と5号車に設置した[3]。500系同様に車両情報制御装置 (T-TICS) を二重系統で搭載しており、効率的な制動力の分配による消費電力の削減や制輪子の摩耗低減が期待できる[12]。特別車両となる1・2・6号車の台車には、フルアクティブサスペンションを設置している[12]。
内外装
編集外装色は日光東照宮陽明門の胡粉をイメージした白色をベースとし、前面と側面の窓周りを黒色としている[3]。先頭車両側面の窓枠は、沿線の伝統工芸品をイメージした六角形のものとなっている[3]。
内装は6タイプの座席から構成され、うち「スタンダードシート」以外は特別料金が必要となる。1・6号車のデッキには日光・鬼怒川の自然をイメージした映像を表示する天窓型液晶サイネージを設置し、季節ごとに異なる映像を投影する[3]。5号車以外のデッキには、ICカードによるワイヤロック式の荷物置き場を設けている[2]。
トイレは2・5号車にある。うち5号車にはバリアフリー対応トイレ[3]・車椅子スペースが設けられたほか、東武鉄道の車両としては初となる多目的室も設置された[3]。
車内自動放送は、日本語・英語・中国語・韓国語の4か国語に対応しており、日本語放送は一龍斎貞弥が担当している[13]。自動放送の前には、樽栄嘉哉作曲のオリジナルの車内チャイムが流れる[14][注釈 3]。
座席構成
編集1号車は「コックピットラウンジ」で、運転台に向かって右側に2人掛け、左側に4人掛けのソファ型座席をそれぞれ3組、運転席の直後に展望型の1人掛け座席を2席配置している[2](座席は各組単位で発売される[4])。「時を超えるラウンジ」をテーマに日光金谷ホテルや大使館別荘をイメージした客室内はカーペット敷きで、後位側にオリジナルのクラフトビールやクラフトコーヒーを提供するカフェカウンターがある[2]。
2号車は2+1配列(1列のみ1+1配列)のバックシェル付き回転リクライニングシートを12列配置した全35席の「プレミアムシート」である[3]。座席は東武鉄道の車両では初となる電動リクライニング機構とネックサポート型可動式枕が取り付けられており、肘掛けには内蔵式テーブルとコンセントを備えている[2]。
3・4・5号車は2+2配列の「スタンダードシート」で、従来の「スペーシア」の設備に加えて全席に背面テーブルとコンセントを装備しているが、フットレストは省略されている[3]。5号車の同じ区画には、パーテーションによる簡易コンパートメントの「ボックスシート」も設けている[2]。2人掛けだが、1席に大人と子供がそれぞれ1人ずつ着座可能である[2]。
6号車は個室のみで構成され、定員4人の「コンパートメント」4室と定員7人の「コックピットスイート」1室からなる[3]。コンパートメントは「スペーシア」の伝統をアップデートした個室と位置付け、コの字型のソファと折り畳み式のテーブルを配置している[2]。コックピットスイートはプライベートジェットをイメージした最上級座席で、移動可能なソファとミニテーブルを備えている[2]。
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1号車
コックピットラウンジ -
2号車
プレミアムシート -
3-5号車
スタンダードシート -
5号車
ボックスシート外観 -
5号車
ボックスシート内部 -
6号車
コンパートメント -
6号車
コックピットスイート
編成表
編集東武日光駅・鬼怒川温泉駅方先頭車を1号車とする6両編成で、100系と異なり両先頭車は電動機無しの制御車である[12]。系列名同様、各車両の形式は「クハN100-6形」のように「N」が冠されている[3][17]。
← 浅草 東武日光・鬼怒川温泉 →
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号車 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 新製日 | 備考 |
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形式 | クハN100-1形 (Tc1) |
モハN100-2形 (M1) |
モハN100-3形 (M2) |
モハN100-4形 (M3) |
モハN100-5形 (M4) |
クハN100-6形 (Tc2) | ||
自重 | 35.9 t | 41.2 t | 38.9 t | 40.4 t | 40.7 t | 34.8 t | ||
定員 | 23 | 22 | 56 | 56 | 35 | 20 | ||
車両番号 | N101-1 | N101-2 | N101-3 | N101-4 | N101-5 | N101-6 | 2023年5月25日 | |
N102-1 | N102-2 | N102-3 | N102-4 | N102-5 | N102-6 | 2023年5月26日 | ||
N103-1 | N103-2 | N103-3 | N103-4 | N103-5 | N103-6 | 2024年2月28日 | ||
N104-1 | N104-2 | N104-3 | N104-4 | N104-5 | N104-6 | 2024年3月2日 |
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クハN100-1形
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モハN100-2形
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モハN100-3形
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モハN100-4形
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モハN100-5形
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クハN100-6形
運用
編集2023年7月15日より浅草駅 - 東武日光駅・鬼怒川温泉駅間の特急列車「スペーシアX[注釈 4]」で運用されている[1]。なお、JR線への直通特急「きぬがわ」「日光」には使用されていない。
脚注
編集注釈
編集- ^ 当初発表されたプレスリリースでは、本車両の愛称は一貫してアルファベットで「SPACIA X」と表記され、100系の「スペーシア」とは区別されていたが[4]、その後の発表では基本的に片仮名混じりの表記が使用されている[5]。
- ^ 予想の対象は、正式採用される「スペーシアX」のほか「プレミアムスペーシア」「グランスペーシア」「スペーシアルクス」で、正解者には抽選でホテル宿泊券などがプレゼントされた[7]。
- ^ 同曲には60秒のフルバージョンが存在(車内チャイムは冒頭10秒を使用)しており、東武鉄道の公式YouTubeチャンネルで公開されているPR動画のBGMとして使用されている[15]。また、2023年11月17日からは浅草駅5番線(スペーシアX専用ホーム)において、同曲を約20秒に編集したものが発車メロディとして使用されている[16]。
- ^ 各プレスリリースや時刻表[18]をはじめとした案内では車両同様に「スペーシア X」と空白入りの表記となっているが、東武鉄道の旅客営業規則[19]に定められた列車名は空白無しの「スペーシアX」である。
出典
編集- ^ a b c d 「愛称は「スペーシアX」に決定 東武の新型特急「N100系」デビューは2023年7月 100系置き換え」『』乗りものニュース、2022年7月15日。2023年6月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 『鉄道ピクトリアル 7月号』電気者研究会、2023年7月1日、116-119頁。
- ^ a b c d e f g h i j k 「【お披露目レポ】東武新型特急「スペーシア X」N100系」『』鉄道新聞、2023年4月16日。2023年6月19日閲覧。[信頼性要検証]
- ^ a b 『特急スペーシアの新型車両(N100系)の愛称名をSPACIA Xに決定しました』(プレスリリース)東武鉄道、2022年7月15日 。2023年6月19日閲覧。
- ^ “車両のご紹介”. 東武鉄道. 2023年6月19日閲覧。
- ^ 「東武に新型特急 N100系『スペーシア』2023年投入予定…100系はDRCカラーに」『』レスポンス、2021年11月11日。2023年6月19日閲覧。
- ^ a b 「東武のニュー『スペーシア』の愛称候補…投票始まる 7月14日まで」『』レスポンス、2022年6月1日。2023年6月19日閲覧。
- ^ 「東武、新型特急「スペーシアX」の製造風景をYouTubeで公開 下松の笠戸事業所に潜入」『』鉄道チャンネル、2022年7月15日。2023年6月19日閲覧。
- ^ 「東武鉄道N100系「スペーシア X」新型車両ついに登場! 7/15デビュー」『』マイナビニュース、2023年3月5日。2023年6月19日閲覧。
- ^ "新型特急車両N100系 SPACIA Xが「2023年度 グッドデザイン賞」を受賞!!" (Press release). 東武鉄道・日立製作所. 5 October 2023.
- ^ “2024年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両”. 鉄道友の会 (2024年5月23日). 2024年5月23日閲覧。
- ^ “運行開始まであと150日!スペーシア Xの自動放送収録の様子の動画を公開しました!”. 東武鉄道公式サイト. 東武鉄道 (2023年2月15日). 2023年11月24日閲覧。
- ^ “楽曲提供”. 樽栄嘉哉. 2023年11月24日閲覧。
- ^ “スペーシア Xの車内チャイム音フルバージョンを使用したPR動画を公開しました!”. 東武鉄道公式サイト. 東武鉄道 (2023年8月14日). 2023年11月25日閲覧。
- ^ 東武鉄道沿線情報 -スカイツリーラインエリア- 【公式】 [@Tobu_skytrline] (2023年11月10日). "11月17日(金)より、浅草駅5番線ホーム(スペーシア X乗降専用ホーム)の発車メロディが変更となります!". X(旧Twitter)より2023年11月25日閲覧。
- ^ “東武鉄道 特急列車時刻表”. 東武鉄道. 2023年7月7日閲覧。
- ^ “運送約款”. 東武鉄道. 2023年7月6日閲覧。