布田川・日奈久断層帯
布田川・日奈久断層帯(ふたがわ・ひなぐだんそうたい、英: Futagawa-Hinagu fault zone)は、ほぼ熊本県内から一部鹿児島県北部に位置する2つの活断層帯の総称である。両者合わせると全長は約101kmで、九州最長である[1]。また、九州にある活断層の中では珍しい横ずれ断層である[2]。2016年現在では別々の断層帯とみられているが、地震調査研究推進本部地震調査委員会は2013年までひとまとまりの断層帯とみなしていた[3]。
概要
編集布田川断層帯は、南阿蘇村の阿蘇山外輪山西側斜面から益城町木山付近を経て宇土半島先端まで、おおむね東北東から西南西方向に延び、全体の長さは約64km以上の可能性がある[4]。日奈久断層帯は、益城町木山付近から芦北町を経て八代海南部まで、おおむね北東から南西方向に延び、全体の長さは約81kmの可能性がある[4]。両断層帯は益城町木山付近で接しており、以下のように区分される[4]。
- 布田川断層帯布田川区間 - 南阿蘇村から益城町木山付近まで、長さ約19km[5][6]
- 布田川断層帯宇土区間 - 益城町木山付近から宇土市中心部まで、長さ約20km[4]
- 布田川断層帯宇土半島北岸区間 - 宇土市住吉町(すみよしまち)から宇土半島北岸に沿って宇土半島先端まで、長さ約27km以上[4]
- 日奈久断層帯高野−白旗(しらはた)区間 - 益城町木山付近から宇城市豊野町山崎(とよのまちやまさき)付近まで、長さ約16km[4]
- 日奈久断層帯日奈久区間 - 宇城市豊野町山崎から芦北町の御立岬(おたちみさき)付近まで、長さ約40km[4]
- 日奈久断層帯八代海区間 - 御立岬付近から八代海南部まで、長さ約30km[4]
九州を含む西南日本は中央構造線によって内帯と外帯に分けられているが、布田川・日奈久断層帯は外帯を構成する帯状の地質構造を切っており、九州における中央構造線とも言われる臼杵-八代線も切っている[2]。
地震の発生
編集2016年(平成28年)の熊本地震は、布田川・日奈久断層帯の活動によって発生した可能性が直後から指摘されていたが[1]、このことについて地震調査研究推進本部地震調査委員会は同年4月17日、「本震は布田川断層帯の布田川区間を含む約27km、前震は日奈久断層帯の高野-白旗区間の活動によるものであり、一連の地震活動は2つの断層帯が連動するようにして発生したと考えられる。また、本震で動いた断層の範囲は想定よりも東西に数kmずつ長く、東端は阿蘇山外輪山(カルデラ)まで達していた」との評価結果を発表した[6][7]。
天然記念物指定
編集熊本地震の際に益城町内で地表に表れた断層について、2016年(平成28年)6月17日に2ヶ所が[8]、2017年(平成29年)6月7日に1ヶ所が[9]益城町指定文化財(天然記念物)に指定された。その後、これら3ヶ所は、「学術上価値が高く、地震の被害を将来に伝える災害遺構としても貴重である」として、2018年(平成30年)2月13日に国の天然記念物「布田川断層帯」として指定されている[10][11]。
脚注
編集- ^ a b “浅い震源、内陸型か 震源地周辺の断層帯、動いた可能性”. 朝日新聞. (2016年4月14日) 2016年4月15日閲覧。
- ^ a b 楮原京子ほか「布田川・日奈久断層帯海域部における高分解能マルチチャンネル音波探査」(PDF)『活断層・古地震研究報告』第11号、産業技術総合研究所地質調査総合センター、2011年、273-294頁、NAID 40019514174、2017年1月14日閲覧。(参照ページ:p. 273)
- ^ “熊本地震「連鎖」に3つの可能性 前震で地下の力変化 2断層帯、実は一体 ひずみ蓄積し余震誘発”. 日本経済新聞. (2016年5月2日) 2016年5月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 布田川断層帯・日奈久断層帯 - 地震調査研究推進本部
- ^ 布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂) (PDF) - 地震調査研究推進本部、2013年
- ^ a b M7.3 布田川断層帯動く 地震調査委 従来より長いと推定(しんぶん赤旗 2016年4月18日)
- ^ “M7.3、活断層が想定超え27キロ動く 東側は阿蘇山に到達していた…地震調査委が発表”. 産経新聞. (2016年4月17日) 2016年4月20日閲覧。
- ^ “布田川断層、町文化財に 益城町教委が指定”. 熊本日日新聞. (2016年6月26日) 2016年6月28日閲覧。
- ^ "熊本地震「畑の断層」を震災遺構に 益城町、文化財指定"(朝日新聞、2017年6月15日記事)。
- ^ 史跡等の指定等について(文化庁報道発表、2017年11月17日)。
- ^ 平成30年2月13日文部科学省告示第21号。
関連資料
編集- 田口清行「布田川断層・日奈久断層および臼杵 : 八代構造線の観察」『熊本地学会誌』第137巻、熊本大学、2004年11月、9-10頁、CRID 1050845762861372160、hdl:2298/26990、ISSN 03891631。
関連項目
編集- 熊本地震 (2016年) - 2016年(平成28年)に発生した地震。地震の原因としてはこの断層帯の活動が指摘されており、マグニチュード7.3を観測した。
- 熊本地震 (1889年) - 1889年(明治22年)に発生した地震。震源は2016年の熊本地震とほぼ同じ範囲で、マグニチュード6.3を観測した。
- 別府‐島原地溝帯
外部リンク
編集- 布田川断層帯・日奈久断層帯 - 地震調査研究推進本部
- 布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂) - 地震調査研究推進本部、2013年
- 「基盤的調査観測対象断層帯の追加・補完調査」成果報告書 No.H18-7 「布田川・日奈久断層帯の活動性および活動履歴調査」平成19年5月 独立行政法人産業技術総合研究所 (PDF)