西彼杵炭田

長崎県西部に点在した炭鉱群
大島炭鉱から転送)

西彼杵炭田(にしそのぎたんでん)は、長崎県西彼杵半島長崎半島の西側、五島灘とも呼ばれる海域一帯に分布する炭田。一部が島嶼の陸地にかかるが、大部分は海域にある海底炭田[1][2][3][4][5]。長崎炭田(ながさきたんでん)とも呼ばれる[5]崎戸-松島炭田(さきと-まつしまたんでん)、高島炭田(たかしまたんでん)を含む[1][2][3]2001年の池島炭鉱閉山以降、稼行している炭鉱はない[5]。代表的な炭鉱として高島炭鉱、池島炭鉱、端島炭鉱、崎戸炭鉱、松島炭鉱などがあった。

九州西部の炭鉱地図 1955年

地質・分布

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崎戸-松島炭田は西彼杵半島の北西の海域で、旧崎戸町域、大島松島池島周辺で炭層が発達している。古第三紀の赤崎層群、寺島層群、松島層群、西彼杵層群の一部に石炭が含まれる。過去の稼行炭層は7層程度あり、主要なものは松島層群中、崎戸層の中層新五尺層本層十八尺層が挙げられ、これらの炭丈は2メートル弱から5メートル弱あった[2][4]

高島炭田は長崎港外側の海域で、香焼島伊王島沖之島高島端島周辺で炭層が発達している。始新世の赤崎層群、高島層群、始新世から漸新世の伊王島層群の一部に石炭が含まれる。過去の稼行炭層は10層以上あり、主要なものは高島層群中、端島層の上八尺層胡麻八尺層盤砥五尺層一丈層十二尺層四枚層が挙げられ、炭丈は1メートルから4.5メートルあった[3][4]

崎戸-松島炭田と高島炭田の間には未開発の海域がある[1]

平均的な炭質は粘結性の瀝青炭。平均的な熱量は崎戸-松島炭田で6000-8000キロカロリー毎キログラム(kcal/kg)、高島炭田で7000-8000 kcal/kg。南部の端島などでは固定炭素の多いコークス原料炭を産したが、炭層が30度から60度ときつい傾斜をもつため、採掘は次第に深部に及びやがて閉山に至った[2][3][4]

理論埋蔵量は、崎戸-松島炭田が推定約11億トン、高島炭田が推定約7億トン[2][3]

炭層を含む地層には、崎戸-松島炭田では緩い傾斜のドーム・ベースン構造と東西や南北方向の断層が、高島炭田では褶曲(向斜・背斜)や単斜と北西 - 南東から東西方向の断層がそれぞれみられる[2][3]

主な炭鉱

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高島炭鉱
日本最古の大手資本による本格炭鉱。
端島炭鉱
軍艦島とも呼ばれた端島に位置した炭鉱。
崎戸炭鉱
松島炭鉱
両者を併せて崎戸松島炭鉱とも呼ばれた。
池島炭鉱
九州最後の炭鉱で2001年まで稼働を続けた。

脚注

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出典

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  1. ^ a b c 地学事典 2024, p. 1099「西彼杵炭田」(著者:井上英二)
  2. ^ a b c d e f 地学事典 2024, p. 549「崎戸-松島炭田」(著者:井上英二)
  3. ^ a b c d e f 地学事典 2024, p. 859「高島炭田」(著者:井上英二)
  4. ^ a b c d 日本の地質 1993, pp. 285–286.
  5. ^ a b c 長崎炭田」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパンhttps://kotobank.jp/word/%E9%95%B7%E5%B4%8E%E7%82%AD%E7%94%B0コトバンクより2024年12月13日閲覧 

参考文献等

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  • 地学団体研究会 編『最新 地学事典』平凡社、2024年3月。ISBN 978-4-582-11508-6 
  • 日本の地質編集委員会 編『日本の地質 9 九州地方』共立出版、1993年。ISBN 4-320-04668-4