大場秀章

日本の植物学者

大場 秀章(おおば ひであき、1943年7月14日[1] - )は、日本植物学者東京大学名誉教授東京大学総合研究博物館特招研究員[2]。専門は植物分類学植物文化史理学博士

大場 秀章おおば ひであき
生誕 (1943-07-14) 1943年7月14日(81歳)
東京都
研究分野 植物分類学植物文化史
研究機関 東北大学東京大学
出身校 東京農業大学
プロジェクト:人物伝
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経歴・業績

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大場秀章は1943年、東京都に生まれる。東京農業大学農学部に進むと1964年に卒業、同学大学院農学部農業拓殖専攻修士課程を1969年に中退する。翌1970年東北大学に奉職(助手)、1973年に東京大学助手に転じる。1979年に同学大学院より博士号を授与され、同学講師1980年)、同助教授1981年)、1996年に同学教授職につくと2006年定年退官。2024年9月時点で東京大学名誉教授、同学総合研究博物館の特任研究員[3]、定年退官後はキュラトリアル・ワーク研究部の特任研究員として在籍する。

新種登録した植物

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東京大学総合研究博物館

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東京大学総合研究博物館では寄附研究部門ミュージアム・テクノロジー(2005年9月30日まで)、「ミュージアム・テクノロジー(2)」(同10月1日より)で植物学部門の調査研究と教育活動をになった[4]。同館発行の『ウロボロス』開館10周年記念号に寄せた高槻成紀(同館助教授・当時)によると、同館に勤める研究者はほとんど全員、大学の夏季休暇中にそれぞれの目的地へ出かけ、中でも植物学は原寛(理学部植物分類学研究室教授)が全国でも最古の海外調査を1960年に始めた[5]。ヒマラヤを中心に日本の植物の起源を求めた成果は『Flora of Eastern Himalaya』(1966年)[6][7]として上梓し、調査は大場らが継承して高山帯に力点を置いた[8]

歴代の調査隊が採集した標本は30万点を超え、世界のヒマラヤの植物研究者にとって欠かせない存在である。また調査対象は総合研究博物館の改組[9]を経て広域ヒマラヤ全域に広がり、ミャンマー、中国など従来は入域が制限されてきた地域に及ぶ。

博物館教授を務める間、大場は寄せられた問い合わせに回答したり、フィールド調査で得た知見を一般向けの解説書にまとめる。植物画に関心が高く『植物学のたのしみ』(八坂書房、2005年)には植物学者として花の由来と特性を考察し、フランス皇妃ジョゼフィーヌが画家ルドゥーテにバラを描く契機を与えたエピソードを紹介した。サラダの起源と語源から説起した『サラダ野菜の植物史』(新潮社〈新潮選書〉、2004年)は食材を分類学に照らして来歴や特徴を紹介し、随想にアルメニアを訪問した体験と国の歴史、植物の多様性を述べた『私のアルメニア覚書き』がある(原人社、2005 年)。

国立ライデン植物博物館より受贈したシーボルト旧蔵の植物標本[10]を中心に、新蔵資料として2000年10月27日–同年12月22日に新規収蔵展示「シーボルト日本植物コレクション」展の展示責任者を務めシーボルト植物画コレクション(複製)などを披露する。本学の収蔵品特別展第16期では国際共同展「シーボルトの21世紀」の展示図録を監修した。

学位

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東京大学大学院より1979年に博士号(理学)を受けた論文は、「Taxonomic studies on the subfamily Sedoideae (Crassulaceae), with special reference to the Old World genera(ベンケイソウ科マンネングサ亜科の分類学的研究 :特に旧世界の属について)」[11]である。

著書・訳書

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著書
  • 『誰がために花は咲く : 植物進化の謎にせまる』光文社〈カッパ・サイエンス〉、1991年。ISBN 4-334-06058-7 
  • 『森を読む』岩波書店〈自然景観の読み方〉、1991年。ISBN 4-00-007824-0 
  • 『江戸の植物学』東京大学出版会、1997年。ISBN 4-13-063315-5 
  • 『植物は考える : 彼らの知られざる驚異の能力に迫る』河出書房新社〈Kawade夢新書〉、1997年。ISBN 4-309-50131-1 
  • 『日本森林紀行 : 森のすがたと特性』八坂書房、1997年。ISBN 4-89694-692-8 
  • 『バラの誕生 : 技術と文化の高貴なる結合』中央公論社中公新書〉、1997年。ISBN 4-12-101391-3 
  • 『花の男シーボルト』文藝春秋文春新書〉、2001年。ISBN 4-16-660215-2 
  • 『道端植物園 : 都会で出逢える草花たちの不思議』平凡社平凡社新書〉、2002年。ISBN 4-582-85139-8 
  • 『サラダ野菜の植物史』新潮社新潮選書〉、2004年。ISBN 4-10-603537-5 
  • 『植物学のたのしみ』八坂書房、2005年。ISBN 4-89694-860-2 
  • 『私のアルメニア覚え書き』原人舎、2005年。ISBN 4-925169-73-4 
  • 『植物学史・植物文化史』八坂書房〈大場秀章著作選〉、2006年。ISBN 4-89694-788-6 
  • 『植物分類学・植物地理生態学』八坂書房〈大場秀章著作選〉、2006年。ISBN 4-89694-789-4 
  • 『植物学とオランダ』八坂書房、2007年。ISBN 978-4-89694-894-3 
  • 『森を読む』岩波書店〈自然景観の読み方 : 新装ワイド版〉、2007年。ISBN 978-4-00-007842-9 
  • 『ガーデニング植物誌』八坂書房、2012年。ISBN 978-4-89694-989-6 
  • 大場秀章 文『図説バラの世界』鈴木せつ子 写真、河出書房新社〈ふくろうの本〉、2012年。ISBN 978-4-309-76183-1 
  • 『はじめての植物学 : 植物たちの生き残り戦略』筑摩書房ちくまプリマー新書〉、2013年。ISBN 978-4-480-68895-8 
  • 『牧野富太郎の植物愛』朝日新聞出版〈朝日新書〉、2023年。 ISBN 978-4-02-295214-1
  • 『牧野富太郎と植物研究』玉川大学出版部〈日本の伝記 知のパイオニア〉、2024年。 ISBN 9784472060236
植物画
ヒマラヤ
  • 『秘境・崑崙を行く : 極限の植物を求めて』岩波書店岩波新書〉、1989年。ISBN 4-00-430076-2 
  • 『ヒマラヤを越えた花々』岩波書店〈自然史の窓 8〉、1999年。ISBN 4-00-006668-4 
  • 大場秀章、五百川裕『ヒマラヤに花を追う : 秘境ムスタンの植物』緑育成財団監修、緑育成財団/八坂書房、2005年。ISBN 4-89694-801-7 
  • 監修・著『植物 : 超・びっくりパワー』旺文社〈生きもの超・びっくりパワー : きびしい自然に生きる知恵〉、2005年。ISBN 4-01-071891-9 
  • 『ヒマラヤの青いケシ』冨山稔写真、山と溪谷社、2006年。ISBN 4-635-22999-8 
訳書
  • E・J・H・コーナー 著、大場秀章、能城修一 訳『植物の起源と進化』大井徹 解説、八坂書房、1989年(原著1964年)。ISBN 4-89694-593-X。「原題:『Botanical monkeys』」 
  • ハロルド・クーポウィッツオランダ語版、ヒラリー・ケイ(Kaye, Hilary) 著、大場秀章 訳『植物が消える日 : 地球の危機』八坂書房、1993年(原著1983年)。ISBN 4-89694-635-9 
  • E・J・H・コーナー 著、大場秀章 訳『ボタニカル・モンキー : 植物の先生猿に助けられる』八坂書房、1996年(原著1992年)。ISBN 4-89694-674-X。「原題『The Botanical Monkey』」 [12]
  • コリン・タッジ、Tudge, Collin 著、渡会圭子 訳『樹木と文明 : 樹木の進化・生態・分類、人類との関係、そして未来』大場秀章 監訳、アスペクト、2008年(原著2005年)。ISBN 978-4-7572-1408-8 
  • シーボルト『シーボルト日本植物誌』大場秀章監修・解説、筑摩書房ちくま学芸文庫〉、2007年。ISBN 978-4-480-09123-9 [13]
  • コリン・マレー、Mallet, Corinne 著、大場秀章、太田哲英 訳『アジサイ図鑑』アボック社、2009年(原著2008年)。ISBN 978-4-900358-64-5。「原題:『英語: Hydrangea : portraits d'hydrangéas. portraits of hydrangeas. hortensienatlas』」 
編集、監修
  • 大場秀章 編『日本植物研究の歴史 : 小石川植物園300年の歩み』東京大学総合研究博物館〈東京大学コレクション〉、1996年。ISBN 4-13-020204-9 
  • 緑と花の研究会『知って得する花の名前・木の名前 : 緑・花文化の知識認定試験に役立つ本』大場秀章監修、青春出版社〈プレイブックス〉、2000年。ISBN 4-413-01794-3 
  • 『おもしろくてためになる植物の雑学事典』大場秀章監修、日本実業出版社、2001年。ISBN 4-534-03199-8 
  • 大場秀章 著、樋口春三 編『花に魅せられた人々 : 発見と分類』農林水産省農林水産技術会議事務局監修、農山漁村文化協会〈自然の中の人間シリーズ 花と人間編〉、2005年。ISBN 4-540-04136-3 
  • 大場秀章 編『標本は語る : 鉱物界・動物界・植物界』東京大学総合研究博物館/東京大学出版会〈東京大学コレクション〉、2005年。ISBN 4-13-020219-7 
  • 大場秀章 編『植物文化人物事典 : 江戸から近現代・植物に魅せられた人々』日外アソシエーツ、2007年。ISBN 978-4-8169-2026-4 
  • 大場秀章 編著『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
図鑑
  • 大場秀章 監修『図鑑しょくぶつ』講談社〈一年生百科 A-9〉、1975年。OCLC 672665932全国書誌番号:45004027 
  • 岩瀬徹 解説『マルチメディア植物図鑑 : ガイドブック』大場秀章 監修、鈴木庸夫 写真、アスキー〈マルチメディア図鑑シリーズ〉、1997年。ISBN 4-7561-1507-1 
    • 『マルチメディア植物図鑑 : ガイドブック』大場秀章監修、鈴木庸夫写真(改訂版)、アスキー〈CD-ROM & book : Windows & Macintosh対応. マルチメディア図鑑シリーズ = Multimedia encyclopedia〉、1999年。ISBN 4-7561-3104-2 
  • 牧野富太郎『牧野新日本植物圖鑑』小野幹雄・大場秀章・西田誠 編集(新訂)、北隆館、2000年。ISBN 4-8326-0010-9 
  • 大場秀章 監修『世界のワイルドフラワー』 1巻《地中海ヨーロッパ/アフリカ;マダガスカル編》、冨山稔 写真、学習研究社〈学研の大図鑑〉、2003年。ISBN 4-05-201912-1 
  • 大場秀章 監修『世界のワイルドフラワー』 2巻《アジア/オセアニア/北・南アメリカ編》、冨山稔 写真、学習研究社〈学研の大図鑑〉、2004年。ISBN 4-05-201913-X 
  • 大場秀章 監修・文『日本のバラ』松本路子 写真、淡交社、2012年。ISBN 978-4-473-03813-5 
シーボルト
  • シーボルト『日本植物誌 : フローラ・ヤポニカ』木村陽二郎と共解説、八坂書房〈博物図譜ライブラリー 6〉、1992年。ISBN 4-89694-736-3 
    • シーボルト『日本植物誌 : フローラ・ヤポニカ』木村陽二郎と共解説、八坂書房、2000年、新版2023年。ISBN 4896943473 
  • 大場秀章 編『シーボルトの21世紀』東京大学総合研究博物館/東京大学出版会〈東京大学コレクション〉、2003年。ISBN 4-13-020216-2 同館企画展(2000年)の展覧会図録。
  • P・F・B・フォン・シーボルト 著、瀬倉正克 訳『シーボルト『日本植物誌』本文覚書篇』大場秀章 監修・解説(改訂)、八坂書房、2007年。ISBN 978-4-89694-899-8 『シーボルト日本の植物』 (1996年刊) の改訂版。原タイトル: Flora Japonica
  • 大場秀章、田賀井篤平『シーボルト博物学 : 石と植物の物語』智書房星雲社ISBN 978-4-434-14579-7 
共編著

脚注

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  1. ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.398
  2. ^ 東京大学総合研究博物館. “研究者”. 2014年3月4日閲覧。
  3. ^ 研究者”. 東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo. 2024年10月6日閲覧。
  4. ^ 大場秀章 / 植物学. “大場秀章 – 自著紹介”. umdb.um.u-tokyo.ac.jp. Ouroboros(オウロボロス)> ニュース. 東京大学総合博物館. 2024年10月6日閲覧。
  5. ^ 高槻 成紀; 写真撮影:上野則宏、奥村浩司、幸田森、セルジオ・カラトローニ (2006年10月31日). 発行人:林良博。編集人:佐々木猛智、松本文夫、湯浅万紀子: “フィールドワーク”. www.um.u-tokyo.ac.jp. 『ウロボロス』開館10周年記念号. 東京大学総合研究博物館. 2024年10月6日閲覧。 “写真キャプション:植物調査隊のキャンプサイト。パキスタンのデオサイ高原にて(1993年7月)”
  6. ^ Hara, Hiroshi, ed (1966) (英語). The flora of Eastern Himalaya, results of the Botanical Expedition to Eastern Himalaya organized by the University of Tokyo 1960 and 1963.. 東京大学出版会 The University of Tokyo Press. 国立国会図書館書誌ID:000006350639. "x, 744 p. 図と挿絵(一部カラー)、地図、27 cm。デューイ十進法分類RA268、植物学 -- ヒマラヤ山脈、RA268-7。" 
  7. ^ Hara, Hiroshi, ed (1971). Flora of Eastern Himalaya, second report.. Bulletin. University Museum, University of Tokyo. 国立国会図書館書誌ID:000006350640. "x, 393頁、図(一部カラー)26 cm。植物 -- ヒマラヤ山脈。LCC:QK358、DDC :581.9/54、NDLC:RA268。「参考文献」p. 354。" 
  8. ^ 大場 1989
  9. ^ 大場 秀章(総合研究博物館名誉教授/植物分類学) (2006年10月31日). “総合研究博物館ができる ウロボロス開館10周年記念号 東京大学総合研究博物館”. www.um.u-tokyo.ac.jp. 東京大学総合研究博物館. 2024年10月7日閲覧。
  10. ^ 大場 秀章(本館教授/植物分類学・植物文化史=当時) (2000年10月1日). 高槻成紀、川口昭彦(発行者)、坂村健(デザイン): “シーボルト日本植物コレクションの寄贈”. 東京大学総合研究博物館ニュース(平成12年). Ouroboros. 2024年10月8日閲覧。
  11. ^ 大場秀章『Taxonomic studies on the subfamily Sedoideae (Crassulaceae), with special reference to the Old World genera(ベンケイソウ科マンネングサ亜科の分類学的研究 :特に旧世界の属について)』国立国会図書館、1979年。国立国会図書館書誌ID:000007591621-00 東京大学(理学博士)乙第5043号。
  12. ^ コーナー E. H. J. (大場秀章訳):ボタニカルモンキー」『植物研究雑誌』第71巻第4号、1996年、236–237頁、doi:10.51033/jjapbot.71_4_9091ISSN 0022-2062 
  13. ^ 大場 2001

関連項目

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人物
その他
一覧記事

外部リンク

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