塩分(えんぶん)は、

  1. ものに含まれる(しお)[1]: salt)、あるいはその[2]
    • 調理では「塩」「塩分」「塩分濃度」は使い分けられることがある[3]:
      • 塩: 調味料の一種としての食塩
      • 塩分(量)=「食品の総量(100gとは限らない)」中の「塩の量」(単位:質量[4][3]
      • 塩分濃度=「食品の単位量中の塩の量」÷「食品の単位量(100g等)」(単位:比率、あるいは濃度[3]
    • 食品分野で「塩分」は、話す人によって意味が異なる曖昧なことばである。特にカリウムは生理学的にナトリウムと全く違う挙動をするので、以下のどれを意味しているのか正確に理解する必要がある:
      • 調味料としての食塩(主成分は塩化ナトリウム)成分
      • 栄養学上の「ナトリウム」(塩化ナトリウム以外のナトリウムも該当するが、カリウム塩は該当しない。: sodium)だけ
      • 生理学上の塩分(ナトリウムだけでなくカリウム等も該当する[5]。ただし食品の場合、これらの成分は塩基ではなくて「栄養学上のミネラル」である)
    • 栄養学関連: 日本人の食事摂取基準[6]日本食品標準成分表[7]食品表示基準[8]、いずれにも「塩分」という項目はない。(関連する項目名として存在するのは、「カリウム」、「ナトリウム」、「食塩相当量[6][7][8])。
      • 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会は、「塩分」ということばに「食塩だけ(塩化ナトリウム以外の物質は該当しない)」という意味はないから「ナトリウム」、「食塩」、「食塩相当量」と同じ意味で使うのは誤用である、としていた[9]。これは「塩分」の意味として化学用語での定義だけを認めるという立場である。
      • 食品表示基準では、食品の製造販売業者が商品説明に「塩分」ということばを使うこと自体への禁止等はしていない。しかし使った場合には、ナトリウム塩のことであるとみなす規制をしている[8]
  2. 化学)ものに含まれる塩 (化学)(えん)あるいは塩類(えんるい)の分量[10]: salts)、または濃度[10][2]: salinity)。
    • 生理学では、塩(えん)ではなく塩基をさす場合がある[5]。また、ナトリウムだけではなくカリウム、その他も該当する[5]
    • 海洋学では、水に含まれる固形物質の濃度[11][12]: salinity)。「塩分濃度」ともいう[13]が、「『分』は『濃度』を意味するからこれは誤った呼称」という主旨の主張もある[12]。単位量以外の水中に含まれる塩の総量は「塩総量」[14]等とよぶ。
  3. 建設)ものに含まれる塩素化合物(塩化物)または塩化物イオンのこと[15]: chlorides[16])、あるいはその濃度[17]。コンクリートや金属を腐食する要因とみなされる。
    • 複雑な話題では「塩分」「塩分量」「塩分濃度」は使い分けられることがある[18]

もの自体か、量か、濃度か、は話す人により異なる。「塩分量」・「塩分含有量」とすれば量のことに、「塩分濃度」・「塩濃度」とすれば濃度のことになる。

関連項目

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出典

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  1. ^ 「塩分(1)」(出典:三省堂 大辞林 第三版)”. weblio辞典. 2020年7月16日閲覧。
  2. ^ a b 「塩分」(出典:デジタル大辞泉(小学館))”. goo辞書. 2020年7月16日閲覧。
  3. ^ a b c 用例: 基本調味料の塩分濃度”. 日本調理アカデミー. 2024年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ2020年7月16日閲覧。 総重量800gの炊き合わせで塩分濃度1%とするには塩分量8g、ゆえに使うべき醤油の量は48g という計算例。
  4. ^ 用例: 減塩のコツと塩分の多い食品・料理” (pdf). 日本高血圧学会. p. 2. 2020年7月16日閲覧。
  5. ^ a b c 用例(ただし一般向けの平易なことばの記事であって学術文献ではない): 當瀬, 規嗣 (2012年6月18日). “真健康論:第27回 水と塩で脱水防止”. 札幌医科大学. 2020年7月16日閲覧。「塩分」とその「濃さ」は使い分けており、「塩分」に濃度の意味は持たせていない。
  6. ^ a b ○食事による栄養摂取量の基準 (平成二十七年三月三十一日) (厚生労働省告示第百九十九号)”. 厚生労働省 法令等データベースサービス -法令検索- (2015年7月18日). 2020年7月18日閲覧。
  7. ^ a b 食品成分データベース – 食品成分値の条件を指定して検索”. 文部科学省. pp. 「成分」欄参照. 2020年7月16日閲覧。
  8. ^ a b c 食品表示法に基づく 栄養成分表示のための ガイドライン” (pdf). 消費者庁 (2018年). 2020年7月16日閲覧。
  9. ^ 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書(全文)” (pdf). 厚生労働省. p. 249 (2014年3月28日). 2020年7月16日閲覧。 なお、正誤表等も含む報告全体のホームページは[1]
  10. ^ a b "塩分". 岩波理化学辞典 (第3版増補版 ed.). 岩波書店. 1981. p. 179. 本書に「塩類」「分量」「固形無機物」の定義はない。
  11. ^ 国立天文台, ed. (2001). "日本近海の水温・塩分・音速の鉛直分布". 理科年表. Vol. 第75冊 平成14年度 2002年度版. 東京: 丸善. p. 地56(636). ISBN 4-621-04927-5
  12. ^ a b 磯辺, 篤彦. “地球惑星科学特別講義III/IV(海洋物理学)2. 海水の物性と水塊分布”. 九州大学. 2020年7月16日閲覧。
  13. ^ 用例: 日本海洋学会: “海洋観測ガイドライン” (pdf). 日本海洋学会. pp. 471,478 (2016年12月). 2020年7月16日閲覧。 p478は「塩分濃度」と「塩分」を使い分けている。
  14. ^ 用例: tnagai. “環境システム科学演習”. 東京海洋大学. 2020年7月16日閲覧。
  15. ^ (1)塩害とは”. コンクリートメンテナンス協会. 2020年7月18日閲覧。
  16. ^ 用例: Chlorides and concrete.” (英語). The Concrete Society (UK). 2020年7月21日閲覧。
  17. ^ 用例: 佃有射, 加藤碩, 丸屋剛, 山路徹「ステンレス鋼材の腐食発生限界塩化物イオン濃度に関する実験的検討」『コンクリート工学年次論文集』第30巻第1号、日本コンクリート工学協会、2008年、1119-1124頁、ISSN 13477560NAID 110009697584  「塩分」「塩分濃度」いずれも濃度の意味で使用。
  18. ^ 用例: 岸谷, 孝一「6. 海砂中の塩分が鉄筋に及ぼす影響と防錆対策」(pdf)『コンクリートジャーナル』第12巻第10号、日本コンクリート工学会、1974年、30-41頁、doi:10.14826/coj1963.12.10_30  p36「(1)塩分の除去」:ここでは濃度ではなく、塩化物自体。ただしp36「(i)塩分」では砂中の濃度の意味。p36「(iii)塩分量」:砂中の濃度。p34「塩分濃度」:溶液中の濃度。