初宮参り
赤ちゃんが無事に生誕1か月目を迎えたことを感謝して神に報告する行事
初宮参り(はつみやまいり)とは、赤ちゃんが無事に生誕1か月目を迎えたことを産土神に感謝して報告する行事である。初宮詣(はつみやもうで)とも。通常、単に宮参り(お宮参り)というと初宮参りのことを指す。
風習
編集日本には赤ちゃんの誕生と健やかな成長を願って、生誕約1か月目に、両親と父方の祖母が付き添って神社にお宮参りをする風習がある。古くは男児32日目、女児33日目に乳母または親戚の女性が抱き、その上に宮参り着と呼ばれる晴れ着を被せて、将来を祝福されるために産土神に参詣した[1]。
時期
編集一般的に男の子は生後31日や32日、女の子は32日や33日に行われるようであるが各地域で様々である。最近では主に生後1か月頃に行われていることが多い。
京都においては、女の子が早くお嫁に行けるようにと、男の子よりも早い時期にお宮参りを済ませる風習がある。
宮参り着の例
編集地方習俗
編集- あやつこ(綾子[2])
- 子供の「お宮参り」の時に、鍋墨(なべずみ)や紅などで、額に「×」、「犬」と書くことをこう呼ぶ。悪魔よけの印で、イヌの子は良く育つということに由来するとされ、全国的にでは無いが、地方によって行われる所がある。
- 古文献によると、この「あやつこ(綾子)」は紅で書いたとある、だが紅は都の上流階級でのみ使われたことから、一般の庶民は「すみ」、それも「なべずみ」で書くのが決まりであったという。この「なべずみ」を額に付けることは、家の神としての荒神(こうじん)の庇護を受けていることの印であった。東北地方で、この印を書くことを「やすこ」を書くと言う。宮参りのみでなく、神事に参列する稚児(ちご)が同様の印を付ける例がある。
- 「あやつこ(綾子)」を付けたものは、神の保護を受けたものであることを明示し、それに触れることを禁じたのであった。のちには子供の事故防止のおまじないとして汎用されている。柳田國男の『阿也都古考』によると、奈良時代の宮女には「あやつこ(綾子)」の影響を受けたと思われる化粧の絵も認められ、また物品にもこの印を付けることもされていたらしい。
- 雪隠参(せっちんまいり)
- 類似した風習は関東地方でも行われ、生後7日目に雪隠に参ることが行われていた[3]。産神の元を離れこの世で再生する儀礼である[4][3]。
脚注
編集- ^ 「宮詣り着に就いて」『裁縫精義. 特種物篇』奈良女子高等師範学校裁縫研究会 編 (東洋図書, 1949)
- ^ 漢字表記の出典:広辞苑第五版(版:岩波書店)
- ^ a b 須藤義人「「子ども文化」の基礎的研究-民俗祭祀の中にみる〈子ども像〉の諸相-」『沖縄大学人文学部紀要』第8号、沖縄大学人文学部、2006年10月、53-64頁、ISSN 13458523、NAID 110006427108。
- ^ 吉川祐子、『静岡県子ども民俗誌 ハレの日の名優』 静岡新聞社 1993年, ISBN 978-4783810650
関連項目
編集参考文献
編集- 『冠婚葬祭・暮らしのマナー大百科』日本文芸社、2005年、ISBN 978-4537203653。