兵法三十六計
中国の魏晋南北朝時代の兵法書
『兵法三十六計』(へいほうさんじゅうろっけい、中: 三十六計)は、中国の兵法書。兵法における戦術を六系統・三十六種類に分類した内容である。
概要
編集1941年、邠県(現在の陝西省咸陽市彬州市)において発見され、時流に乗って大量に出版された。様々な時代の故事・教訓がちりばめられているため。
戦術とは関連が薄い内容も含まれ、権威付けのために『易経』からの引用を使って解説しているなど、純粋な兵法書としては粗削りな部分が見られるためか、『孫子』などの武経七書と比較して軍事面では評価が低い。
兵法三十六計
編集勝戦計
編集こちらが戦いの主導権を握っている場合の定石。
- 瞞天過海 - 敵に繰り返し行動を見せつけて見慣れさせておき、油断を誘って攻撃する。
- 囲魏救趙 - 敵を一箇所に集中させず、奔走させて疲れさせてから撃破する。
- 借刀殺人 - 同盟者や第三者が敵を攻撃するよう仕向ける。
- 以逸待労 - 直ちに戦闘するのではなく、敵を撹乱して主導権を握り、敵の疲弊を誘う。
- 趁火打劫 - 敵の被害や混乱に乗じて行動し、利益を得る。
- 声東撃西 - 陽動によって敵の動きを翻弄し、防備を崩してから攻める。
敵戦計
編集余裕を持って戦える、優勢の場合の作戦。
- 無中生有 - 偽装工作をわざと露見させ、相手が油断した所を攻撃する。
- 暗渡陳倉 - 偽装工作によって攻撃を隠蔽し、敵を奇襲する。
- 隔岸観火 - 敵の秩序に乱れが生じているなら、あえて攻めずに放置して敵の自滅を待つ。
- 笑裏蔵刀 - 敵を攻撃する前に友好的に接しておき、油断を誘う。
- 李代桃僵 - 不要な部分を切り捨て、全体の被害を抑えつつ勝利する。
- 順手牽羊 - 敵の統制の隙を突き、悟られないように細かく損害を与える。
攻戦計
編集相手が一筋縄でいかない場合の作戦。
- 打草驚蛇 - 状況が分らない場合は偵察を出し、反応を探る。
- 借屍還魂 - 死んだ者や他人の大義名分を持ち出して、自らの目的を達する。
- 調虎離山 - 敵を本拠地から誘い出し、味方に有利な地形で戦う。
- 欲擒姑縦 - 敵をわざと逃がして気を弛ませたところを捕らえる。
- 抛磚引玉 - 自分にとっては必要のないものを囮にし、敵をおびき寄せる。
- 擒賊擒王 - 敵の主力や、中心人物を捕らえることで、敵を弱体化する。
混戦計
編集相手がかなり手ごわい場合の作戦。
- 釜底抽薪 - 敵軍の兵站や大義名分を壊して、敵の活動を抑制し、あわよくば自壊させる。
- 混水摸魚 - 敵の内部を混乱させ、敵の行動を誤らせたり、自分の望む行動を取らせる。
- 金蝉脱殻 - あたかも現在地に留まっているように見せかけ、主力を撤退させる。
- 関門捉賊 - 敵の退路を閉ざしてから包囲殲滅する。
- 遠交近攻 - 遠くの相手と同盟を組み、近くの相手を攻める。
- 仮道伐虢 - 攻略対象を買収等により分断して各個撃破する。
併戦計
編集同盟国間で優位に立つために用いる策謀。
- 偸梁換柱 - 敵の布陣の強力な部分の相手を他者に押し付け、自軍の相対的立場を優位にする。
- 指桑罵槐 - 本来の相手ではない別の相手を批判し、間接的に人心を牽制しコントロールする。
- 仮痴不癲 - 愚か者のふりをして相手を油断させ、時期の到来を待つ。
- 上屋抽梯 - 敵を巧みに唆して逃げられない状況に追い込む。
- 樹上開花 - 小兵力を大兵力に見せかけて敵を欺く。
- 反客為主 - 一旦敵の配下に従属しておき、内から乗っ取りをかける。
敗戦計
編集自国がきわめて劣勢の場合に用いる奇策。
脚注
編集参考文献
編集- 守屋洋著 『兵法三十六計』三笠書房、知的生き方文庫、2004年、ISBN 483797418X
- 梁増美著 『 中国人のビジネス・ルール兵法三十六計 36の日中間ビジネス事例で学ぶ』 ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 武岡淳彦監修・解説、尤先瑞作画、鈴木博編訳 『まんが兵法三十六計』、集英社
- ハロー・フォン・センゲル著、石原薫訳 『兵法三十六計かけひきの極意 中国秘伝!「したたか」な交渉術』、ダイヤモンド社
- カイハン・クリッペンドルフ著、辻谷一美訳 『兵法三十六計の戦略思考 競合を出し抜く不戦必勝の知謀』、ダイヤモンド社