伊良部大橋
伊良部大橋(いらぶおおはし)は、日本の沖縄県宮古島市の宮古島と伊良部島とを結ぶ橋である。
伊良部大橋 | |
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基本情報 | |
国 | 日本 |
所在地 | 沖縄県宮古島市 |
交差物件 | 東シナ海 |
着工 | 2006年(平成18年)3月18日 |
開通 | 2015年(平成27年)1月31日 |
座標 | 北緯24度47分57秒 東経125度14分0秒 / 北緯24.79917度 東経125.23333度 |
構造諸元 | |
形式 |
一般部:PC連続箱桁橋 主航路部:鋼床版箱桁橋[1] |
材料 | プレストレスト・コンクリート・鋼 |
全長 | 3,540 m(本橋部)[1] |
幅 | 8.5 m |
桁下高 | 27 m |
最大支間長 | 180 m |
関連項目 | |
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式 |
2006年(平成18年)3月18日に着工し、2015年(平成27年)1月31日16時に供用が開始された[2]。全長3,540メートル (m) で、新北九州空港連絡橋(福岡県道245号新北九州空港線)(全長2,100 m)を上回り、通行料金を徴収しない橋としては日本最長である[3][4][5]。総事業費は399億円[6]。
概要
編集宮古島の平良港トゥリバー地区と伊良部島東南部の長山の浜近辺を結ぶ橋で、沖縄県道252号平良下地島空港線の一部である[7][8][9]。
橋梁の構造は一般部がPC連続箱桁橋、主航路部が鋼床版箱桁橋とされ、本橋部分の全長は3,540 mに及ぶ。また、取付道路は2,960 mで、伊良部島側取付道路の一部は2箇所で計600 mの海中道路とされている[10]。本橋部分と取付道路を合計すると、全長は6,500 mとなる。
橋梁の幅員は8.5 mで[1]、幅3 mの片側1車線道路の両側に幅1.25 mの路肩が設けられる[11]。主航路部は船舶の通航のため、支間長180 m[11]、クリアランス27 m[7]とされる。また橋全体では、緩いカーブを描く線形をしている[9]。
橋長3,540 mは、離島どうしを結ぶ橋としては日本最長で、無料橋としても日本最長である[9]。また、日本の道路橋全体でもアクアブリッジ(4,384 m)、明石海峡大橋(3,911 m)、関西国際空港連絡橋(3,750 m)に次いで4番目の長さを持つ橋でもある[9]。
沖縄のマリンブルーの海中を突き進む長大橋からの眺望は好評で[9]、伊良部大橋の開通により観光の促進や流通コストの削減が見込まれる[2]。また、宮古島の地下ダムから農業用水や生活用水が大橋に併設された導水管を通って供給されるため、水道のコストも削減されたほか[2]、スピード化によって医療や教育の面でも伊良部島の島民にとって恩恵を与える大きな役目を果たしている[9]。
橋の中央部は一般車両駐停車禁止となっているが、車を停めて写真や動画を撮影する観光客や住民が少なくない。2017年9月には、橋の中央付近から男性が誤って海に転落するという、この橋で初めての死亡事故が発生し、宮古島警察署などでは対策を協議することになった[12][13]。
諸元
編集交通
編集橋の開通前に伊良部島内で路線バスを運行していた共和バスが、橋の開通に伴い路線を宮古島まで延長して、伊良部島佐良浜港 - 宮古島平良港間で路線バスを運行している[16]。
2019年3月30日のジェットスター・ジャパン成田~下地島線の就航に合わせて、橋を経由して下地島空港と宮古島の間で空港連絡バスの運行が開始された[17]。
一方、宮古フェリー及びはやてによって運航されていた平良港と佐良浜港を結ぶ一般旅客定期航路は、伊良部大橋開通に伴い廃止された[18]。伊良部大橋の開通後、はやてはクルーズ船「モンブラン」を購入し、伊良部大橋周辺等で遊覧船事業を行っている[19][20]。
歴史
編集前史
編集- 1940年(昭和15年)6月30日 - 渡口航路(宮古島平良港と伊良部島渡口港を結ぶ航路)上で、渡船が転覆・沈没し、73名の死者が出る(伊良部丸遭難事故)。この海難事故は、伊良部島の離島架橋を目指す原点となった[21]。
- 1974年(昭和49年)10月 - 伊良部村長・川満昭吉が、離島苦の解消を沖縄開発庁長官に口頭で訴え、伊良部島の離島架橋の要請活動を開始する[14][22]。
- 1991年(平成3年)3月 - 伊良部架橋促進宮古圏民総決起大会開催[22]。
- 1992年(平成4年) - 伊良部架橋のための基礎調査が始まる[14]。
- 1997年(平成9年) - 国の予算に架橋調査費が計上される[14]。
- 2000年(平成12年)3月 - 伊良部架橋調査検討委員会が、架橋ルート案を決定[22]。
- 2001年(平成13年)3月 - 平良下地島空港線が県道に認定される[14]。
- 2005年(平成17年)7月 - 沖縄県および平良市と池間・伊良部町漁業協同組合との間で、漁業補償契約が締結される[14]。
建設工事
編集本橋梁は、2006年(平成18年)3月18日に着工した。当初の計画では2013年(平成25年)3月の竣工を予定していた[23][24]。当初、主航路部は鋼中路アーチ橋を計画していたが、2007年(平成19年)に行われた耐風検討委員会の風洞実験で耐久性に問題があることが判明した[7]。主航路部橋種検討委員会にて再検討した結果、2008年(平成20年)に鋼床版箱桁橋に変更した[7]。同部分の実施設計が1年遅れたため、完成は当初計画から1年遅れの2014年(平成26年)3月となった[23]。
2012年(平成24年)6月、主航路部の中央径間を架設するための大型起重機船(フローティング・クレーン)が台風の影響を避けるために兵庫県の母港へ帰港し、気象条件から宮古島に再度呼び戻すのは2013年(平成25年)4月ごろになる見込みとなった[25]。このため、完成はさらに10か月ほど遅れ、2015年(平成27年)1月ごろ[2]となった。
- 2006年(平成18年)3月18日 - 伊良部大橋に着工。
- 2010年(平成22年)
- 2011年(平成23年)4月15日 - 平良久貝側に建設中の伊良部大橋の見学施設「伊良部大橋見学ステーション」が開館[28][29]。
- 2012年(平成24年)4月 - 宮古島側および伊良部島側の主航路部の箱桁の架設[29]。
- 2013年(平成25年)4月 - 中央部の箱桁の架設[29]。
- 2014年(平成26年)
-
2007年(平成19年)7月
仮桟橋・宮古島から撮影 -
2009年(平成21年)7月
伊良部島から撮影 -
2009年(平成21年)7月
伊良部島・牧山展望台から撮影 -
2012年(平成24年)8月
伊良部島・牧山展望台から撮影 -
2012年(平成24年)9月
宮古島・伊良部大橋見学ステーションから撮影 -
2014年(平成26年)8月
伊良部島・牧山展望台から撮影 -
2014年(平成26年)8月
宮古島・伊良部大橋見学ステーションから撮影
開通
編集- 2015年(平成27年)
- 1月25日 - 大橋開通祝賀会等実行委員会主催の「伊良部大橋開通記念ウォーキング大会」開催[33]。
- 1月28日 - 「伊良部大橋開通記念碑」除幕[34]。
- 1月30日 - 日本郵便株式会社沖縄支社が、「伊良部大橋開通記念」フレーム切手を発売[35]。
- 1月31日16時00分 - 伊良部大橋の供用開始(開通)[5]。
- 1月31日 - 宮古フェリー株式会社及び株式会社はやての宮古-伊良部航路廃止。
- 2月1日 - 「伊良部丸遭難の地」慰霊碑の前で、伊良部大橋開通報告会が行われる[36]。
- 3月13日 - ホテルアトールエメラルド宮古島が宮古島側たもとの旧伊良部大橋見学ステーションを改装し「橋の駅んみゃーち」をプレオープン[37]。
- 9月22日 - 「川満昭吉氏顕彰碑」除幕[38]。
- 12月22日 - 清算結了等により宮古フェリー株式会社の登記記録閉鎖[39]。
- 2017年(平成29年)9月4日 - 伊良部大橋初の転落死亡事故が発生[13]。
脚注
編集- ^ a b c “伊良部大橋の概要”. 沖縄県 (2013年4月10日). 2014年7月9日閲覧。
- ^ a b c d “宮古島ともうすぐ一つに/伊良部大橋 来年1月開通まで1年切る”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2014年2月28日) 2014年7月10日閲覧。
- ^ “伊良部大橋 来年1月開通 県内最長3540メートル”. 沖縄タイムス (沖縄タイムス社). (2010年7月4日). オリジナルの2010年7月14日時点におけるアーカイブ。 2014年7月10日閲覧。
- ^ “住民、開通楽しみに 伊良部大橋で架設作業”. 琉球新報 (琉球新報社). (2013年4月17日) 2014年7月10日閲覧。
- ^ a b “無料通行で日本一長~い!伊良部大橋開通…沖縄”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2015年1月31日). オリジナルの2015年1月31日時点におけるアーカイブ。 2015年1月31日閲覧。
- ^ 伊良部大橋 沖縄県
- ^ a b c d 宜保勝、渡久山直樹「伊良部大橋の概要と技術的特徴」(PDF)『建設情報誌しまたてぃ』第51号、一般社団法人 沖縄しまたて協会、2009年10月、18-22頁、2014年7月10日閲覧。
- ^ “新しい時代の幕開け/伊良部大橋が開通 親子三世代先頭に渡り初め”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2015年2月1日) 2015年2月1日閲覧。
- ^ a b c d e f 浅井建爾 2015, p. 187.
- ^ 247億円投じる/伊良部大橋、着工から5年 宮古毎日新聞、2011年1月1日
- ^ a b c d e f g “事業経緯 宮古島&伊良部島航空写真 事業経緯”. 沖縄県 (2012年8月20日). 2014年7月10日閲覧。
- ^ 日頃から撮影スポット 伊良部大橋の転落死、再発防止を検討 沖縄タイムス、2017年9月5日、2017年9月6日閲覧
- ^ a b プロポーズ直後だった… 伊良部大橋から転落死 沖縄タイムス、2017年9月5日、2017年9月6日閲覧
- ^ a b c d e f 伊良部大橋 - 沖縄県
- ^ 伊良部大橋 - 大日本コンサルタント株式会社
- ^ “バス路線2月から新路線開始 大橋開通あわせ延長等”. 宮古新報 (宮古新報). (2015年1月23日) 2016年6月26日閲覧。
- ^ “下地島空港ー上野に新路線/宮古協栄バス”. 宮古毎日新聞. (2019年2月8日) 2021年12月16日閲覧。
- ^ “宮古フェリーとはやて、伊良部航路廃止へ 大橋開通、市が見舞金”. 琉球新報 (琉球新報社). (2013年12月13日) 2013年12月13日閲覧。
- ^ はやてクルーズ船運航へ/船底に海中展望ラウンジ/八重干瀬周遊海婚など計画/4月スタート目指す 宮古毎日新聞、2015年2月4日
- ^ 海中展望型客船「モンブラン」回航 宮古毎日新聞、2015年3月24日
- ^ “架橋原点、風化させず 伊良部丸遭難事故慰霊祭”. 宮古新報. (2016年7月1日) 2018年1月20日閲覧。
- ^ a b c 伊良部大橋開通記念碑銘文
- ^ a b “大橋完成は14年3月に/伊良部 当初予定より1年遅れ/主航路部設計ずれ込む”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2011年5月18日) 2011年5月18日閲覧。
- ^ 2.1.伊良部大橋 - 土木研究所資料海洋環境下に建設されたコンクリート橋脚の初期物性調査―伊良部大橋P21橋脚― - 土木研究所資料 第4235号 - 独立行政法人土木研究所
- ^ “伊良部大橋中央部架設で大型クレーン船が入港”. 宮古新報ニュースコム (宮古新報社). (2013年3月31日) 2014年7月10日閲覧。
- ^ “伊良部大橋/上部工1000メートルを達成”. 宮古毎日新聞. (2010年5月24日) 2018年1月20日閲覧。
- ^ “伊良部大橋建設現場で重機転落、着工以来初の事故”. 宮古新報ニュースコム (宮古新報社). (2010年7月15日) 2014年7月10日閲覧。
- ^ 伊良部大橋眺望、見学ステーションが完成、宮古新報、2011年4月15日。
- ^ a b c “伊良部大橋 31日開通へ 「夢」が実現 伊良部島の離島苦解消へ/宮古島市の振興、発展に期待”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2015年1月1日) 2015年1月1日閲覧。
- ^ “伊良部大橋 最終生コンを打設 セグメント977個目/残り150メートル、9月に連結式”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2014年7月1日) 2014年7月1日閲覧。
- ^ “伊良部大橋 9月9日に連結式/県土建部 宮古本島と陸続きに/供用開始向け最終工程”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2014年7月31日) 2014年7月31日閲覧。
- ^ 伊良部大橋 - 沖縄県
- ^ “伊良部大橋開通記念ウォーキング大会”. 宮古新報. (2015年1月27日) 2018年1月20日閲覧。
- ^ 伊良部大橋開通祝い記念碑建立 沖縄宮古郷友連合会、琉球新報、2015年1月29日
- ^ “伊良部大橋開通で記念切手 宮古島限定1000部”. 沖縄タイムス. (2015年1月31日) 2018年1月20日閲覧。
- ^ “御霊に悲願成就を報告/大橋開通”. 宮古毎日新聞. (2015年2月2日) 2018年1月20日閲覧。
- ^ 橋の駅プレオープン、大橋宮古島側たもとに、宮古新報、2015年3月13日
- ^ 川満氏の顕彰碑完成、宮古毎日新聞、2015年8月1日
- ^ 宮古フェリー株式会社の情報 国税庁法人番号公表サイト
参考文献
編集- 浅井建爾『日本の道路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2015年10月10日。ISBN 978-4-534-05318-3。