伊勢丹府中店
伊勢丹府中店(いせたんふちゅうてん)は、かつて東京都府中市に所在し、三越伊勢丹が伊勢丹ブランドで運営していた百貨店。京王線府中駅前の再開発ビル「フォレストサイドビル」の核店舗としてテナント出店していた。ビル管理会社は府中市などが出資する第三セクターの株式会社フォルマ[3]。
伊勢丹府中店 | |
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伊勢丹府中店とペデストリアンデッキ | |
地図 | |
店舗概要 | |
所在地 |
〒183-0023 東京都府中市宮町一丁目41番地2 |
座標 | 北緯35度40分15.1秒 東経139度28分47.8秒 / 北緯35.670861度 東経139.479944度座標: 北緯35度40分15.1秒 東経139度28分47.8秒 / 北緯35.670861度 東経139.479944度 |
開業日 | 1996年4月3日 |
閉業日 | 2019年9月30日[4] |
正式名称 | フォレストサイドビル |
施設所有者 | 府中第二地区共有者組合[1][2] |
施設管理者 | 株式会社フォルマ[3] |
延床面積 | 約74,000 m2 |
商業施設面積 | 32,402 m² |
前身 | 商店街 |
最寄駅 | 府中駅 |
最寄IC | 国立府中IC |
1996年4月3日開業。2019年9月30日をもって閉店[4]。跡地には2021年にノジマが運営するショッピングセンター「ミッテン府中」が開業した[6]。
概要
編集府中駅南口第二地区市街地再開発事業の核テナントとして選出され[7]、同再開発により最初に完成した9階建ての「フォレストサイドビル」に、専門店街「フォーリス」等と共にオープンした[8]。総事業費約547億円。店舗面積は約3万2000平方メートル。フォレストサイドビルには、13階建ての明治生命府中ビル(現:KDX府中ビル)も併設された[7][9]。
府中市内初の百貨店として[10]駅前再開発のシンボルとして誘致された[11]、多摩地域最大級の百貨店でもあった[10]。なお、京王沿線多摩地域の百貨店としては、1983年11月1日に八王子そごう、1986年3月28日に京王百貨店聖蹟桜ヶ丘店、1989年10月20日に多摩そごう、1992年6月7日に柚木そごうが開業している(そごうの店舗はいずれも閉店)。
2016年3月30日には、開店20周年を迎えるにあたり地下1階食品フロア(デパ地下)をリモデルオープン。クイーンズ伊勢丹グランデが核店舗として出店した[12]。
2017年7月14日、再開発の最後の施設である15階建ての複合商業施設「武蔵府中ル・シーニュ」がオープンした。50年にわたる再開発事業の終了と京王線の高架化による地域分断の解消と相まって、府中駅周辺の拠点性は格段に増強され、回遊性の向上も期待された[9][13]。40年余りに及ぶ再開発は伊勢丹府中店から始まり、「武蔵府中ル・シーニュ」の開業により完了したところだった。
閉店の発表
編集だが、三越伊勢丹ホールディングスは2018年9月26日、業績不振から採算性の低い地方店舗の出店を見直すとして[11]、翌2019年9月30日をもって伊勢丹府中店を閉店すると発表した[4][11][14]。この際には同時に伊勢丹相模原店、新潟三越の閉店も発表されている[4][15]。
三越伊勢丹HDの発表によれば、府中店の売上高は開店初年度に記録した261億円がピークであり[4][16]、以降売上は低下の傾向を示していたという[4]。開店初年度以降は赤字が恒常化し[16]、2003年度以降は合計約34億円の減損損失を計上していた[16]。2018年度の売上は139億円と初年度のピーク時に比べほぼ半減していた[17]。
三越伊勢丹HDは、府中店閉店を発表したプレスリリースの中で、撤退の理由として上記の赤字に加え「同一地域内の競合関係が厳しくなったこと」を明確に挙げている[4]。
府中駅前にはもともと、京王電鉄が運営する府中駅ビルの京王府中ショッピングセンター(現:ぷらりと京王府中)と駅前商店街があったが、再開発によりフォレストサイドビル(伊勢丹府中店・フォーリス)、くるる、武蔵府中ル・シーニュと3つも再開発ビルが建設され、それぞれが大型ショッピングセンターとなっている。府中市の人口は約26万人(2021年時点)[18]、府中駅の乗降人員は約9万人/日[19]であるが、京王線特急で新宿駅まで20分台と都心部への交通の便が良く、また周辺に郊外型ショッピングセンターも点在することから、商圏人口に対しオーバーストア状態であることも懸念されていた[20]。
伊勢丹府中店の閉店を知らせる報道においては、1996年の開店以降の経済状況の変化により、バブル崩壊後からの長引く不況とデフレにより、伊勢丹府中店に限らず全国各地で百貨店の閉店が相次いでいたことも指摘された[21]。閉店発表についてのTOKYO MXの街頭インタビューでは、利用客は「がらがらの時があるから経営は大変と思っていた」「仕方がないのでは。食料品売場しか行ったことがなく、上の階はほとんど利用しない」などと答えていた[11]。また閉店の発表に対し、府中市長の高野律雄は「伊勢丹府中店は駅南口の再開発事業における最初の大型店舗でもあり、撤退は大変残念」とコメントした[11]。
なお、伊勢丹府中店と同様に、東京多摩地域で行政主導の駅前再開発事業により誘致され、のちに閉店した店舗として伊勢丹吉祥寺店がある。
閉店まで
編集2019年7月17日から閉店日まで、閉店セール「伊勢丹府中店ご愛顧感謝ファイナルフェスタ」[10]を開催[16]。正面玄関には府中市のシンボルであるケヤキ(フォレストサイドビルは馬場大門のケヤキ並木に面している)をモチーフとしたモニュメントが設置され、ケヤキの葉を象った短冊に利用客からのメッセージ約6,000枚が飾られた[16]。また「ファイナルフェスタ」の看板には「この街で生まれた、たくさんの出会いとともに、ありがとう」の文字と[10]、大國魂神社や府中競馬場など市内の名所[10]、武蔵国国府が置かれた府中の歴史のシンボルとして原始時代や律令時代から現代までの人々のイラストが描かれた。セール開催中には、府中市コミュニティバス「ちゅうバス」の1台に「ファイナルフェスタ」広告ラッピングが期間限定で掲出された。
2019年9月30日、伊勢丹府中店は予定どおり閉店した[10][16][17][21][22]。最終営業日には開店前から約1,200人が行列し、通常開店時間から5分早めて9時55分に開店[16]。閉店時間19時の30分前頃から、来店客ら約1,000人が閉店の瞬間を見届けようと2階正面玄関前に集まり、閉店後のセレモニーでは店長が「皆様と過ごした時間は我々の財産です」[10]「1996年4月3日の開店以来、23年の長きにわたり府中の街で営業を続けてまいりました。営業終了発表後にはお客様から温かいお言葉もたくさん頂戴し、あらためてお客様や府中の街に育てて頂いた店なのだと実感しております。本当にありがとうございました」[16]と感謝の言葉を述べた[10][16]。玄関から伊勢丹ののれんが外されると、集まった客からは「23年間ありがとう」の声とともに大きな拍手が湧き起こった[10]。
なお、伊勢丹府中店の閉店後も、専門店街「フォーリス」は通常どおり営業を継続していた。
民事訴訟
編集三越伊勢丹HDは2018年に閉店を発表した際に、別業態の商業施設開業に向けて、ビル運営会社フォルマなどの関係者と協議する方針も明らかにしていた[4]。しかしその具体策については決まっていなかった[17]。2019年9月の閉店時にもなお、跡地の活用策が決まらなかったことに対し、府中市や駅前周辺の商業関係者らからは、中心市街地の空洞化につながるとして懸念が示された[17]。また府中市が2020年東京オリンピック・パラリンピックの会場となる味の素スタジアムに近いこともあり、新商業施設の開業がオリンピック開催に間に合わず訪日外国人の集客機会を逃すとして、早期決着を望む声が高まっていた[17]。
三越伊勢丹は、フォレストサイドビルに別業態の商業施設を出店する予定だったが、条件が折り合わなかったためフォルマが解約を申し入れた[23]。その後、賃借料や共益費をめぐり両社の間で争いとなり、フォルマが三越伊勢丹に対し賃借料など約8,000万円の支払いを求める民事訴訟を提訴する事態となっていたことが2019年11月29日に判明した[23]。
翌2020年2月19日には、フォルマと三越伊勢丹が和解したことが明らかになった[24][25]和解の内容は三越伊勢丹の完全退店などで[24]、これによりフォルマとビル地権者(府中第二地区共有者組合)は、三越伊勢丹に代わる後継テナントの選定に入ることとなった[24][25]。
ミッテン府中開業
編集2020年6月25日、ノジマがビル運営会社であるフォルマから旧伊勢丹府中店の床部分を一括して借り受け[1][2]、自社旗艦店と複数の専門店テナントを誘致して、2021年春から夏を目処にショッピングセンターを出店する方針を公表[1][2][26][27]。
2021年2月17日、ノジマは新施設の名称を「ミッテン府中」(MitteN府中)」に決定したと発表[28][29][30]。「ミッテン府中」は同年5月20日からテストオープンが開始され[31]、同年6月25日にはグランドオープンした[6]。
年表
編集伊勢丹時代の店内構成
編集主なテナントや設備など(2016年時点)
周辺
編集- 府中駅南口市街地再開発事業計画で建設された再開発ビル
- フォーリス - 同じフォレストサイドビル内の専門店街
- くるる
- 武蔵府中ル・シーニュ
- ぷらりと京王府中(旧称:京王府中ショッピングセンター) - 京王電鉄が運営する府中駅の駅ビル
脚注
編集- ^ a b c d 『府中駅前にノジマ運営の新商業施設を来春~夏オープン ~人と街が交錯する賑わいの中心地を創る~』(プレスリリース)ノジマ、2020年6月25日 。2020年9月1日閲覧。
- ^ a b c d 株式会社ロジスティクス・パートナー (2020年6月26日). “ノジマ/旧伊勢丹府中店入居ビル「大規模商業施設」に来春刷新”. 流通ニュース. 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b “会社概要”. Foris フォーリス. 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “当社グループにおける店舗の営業終了についてのお知らせ”. 三越伊勢丹ホールディングス (2018年9月26日). 2019年10月19日閲覧。
- ^ 大國魂神社の七不思議について 大國魂神社
- ^ a b c “「MitteN府中」60店舗そろってグランドオープン レストランフロアは秋開業”. 調布経済新聞 (2021年6月29日). 2021年7月4日閲覧。
- ^ a b c “美しくよみがえるまちに 府中駅南口第二地区市街地再開発事業”. 府中市 (2013年4月15日). 2019年10月19日閲覧。
- ^ “「伊勢丹府中店」、地元民が見た寂しい末路 | 百貨店・量販店・総合スーパー”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2018年10月10日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b 百瀬 伸夫 (2018年3月2日). “連載コラム 東京府中駅前の商業施設「ル・シーニュ」が街を変える!! ~再開発事業と市街地商業活性化の行方は、エリアマネジメントが鍵~”. 日経メッセ 2019年10月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “東京)伊勢丹府中店、23年の歴史に幕:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2019年10月1日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b c d e “地元から惜しむ声 伊勢丹府中店が来秋閉店へ”. MX NEWS. TOKYO MX (2018年9月28日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b “伊勢丹府中店 開業20周年 地下1階食品フロア 2016年3月30日(水)リモデルオープン”. FOODS CHANNEL (2016年3月11日). 2019年10月19日閲覧。
- ^ “府中駅前再開発ビル 7月14日開業 成城石井など96店”. 日本経済新聞. (2017年6月9日) 2019年10月9日閲覧。
- ^ 三越伊勢丹、傘下の3店舗を閉鎖 新潟三越も 日本経済新聞、2018年9月26日、2018年9月26日閲覧。
- ^ “伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越の閉店を決定”. WWDJAPAN.com (2018年9月26日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “伊勢丹府中店が23年の歴史に幕、別れを惜しみ涙ぐむ客も”. FASHIONSNAP.COM. 株式会社レコオーランド (2019年9月30日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b c d e “伊勢丹府中店が閉店 退店後の活用未定”. 日本経済新聞. (2019年9月30日) 2019年10月9日閲覧。
- ^ “行政情報 - 人口”. 東京都府中市ホームページ (2021年2月15日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ “1日の駅別乗降人員(2019年度・2018年度)|京王電鉄”. 京王グループ. 2021年3月9日閲覧。
- ^ 東京府中駅前の商業施設「ル・シーニュ」が街を変える!! ~再開発事業と市街地商業活性化の行方は、エリアマネジメントが鍵~ 日経メッセ、日本経済新聞社、2018年3月2日
- ^ a b 府中伊勢丹23年で幕・・開店当初(1996年4月)に現在の日本の姿を想像できたか 府中市議会議員 結城亮 公式ブログ、2019年10月1日
- ^ “伊勢丹府中店23年の歴史に幕 「思い出の場所、寂しい」”. 毎日新聞 (2019年10月1日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b “東京・府中市出資の会社、三越伊勢丹を賃料めぐり提訴”. 日本経済新聞 (2019年11月29日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b c “府中市出資の再開発ビルと三越伊勢丹の訴訟、和解”. 日本経済新聞 (2020年2月19日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b 伊勢丹府中店が入居していたビル運営会社(フォルマ)と三越伊勢丹が和解へ 府中市議会議員 結城亮 公式ブログ、2020年2月20日
- ^ “旧伊勢丹府中店入居ビルを活用、ノジマが「府中駅南口ショッピングセンター」を来春開業”. FASHIONSNAP.COM. 株式会社レコオーランド (2020年6月26日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ “東京・府中の中心市街地、ノジマ主導で集客回復へ始動 潜望展望”. 日本経済新聞 (2020年8月31日). 2020年9月1日閲覧。(全文閲覧は要会員登録)
- ^ a b “2021年初夏、京王線府中駅前に新たなランドマークが誕生”. ノジマ. 株式会社ノジマ (2021年2月17日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ “府中・伊勢丹跡の大規模商業施設、名称は「MitteN(ミッテン)」に フロア構成発表”. 調布経済新聞 (2021年3月2日). 2021年6月1日閲覧。
- ^ “MitteN府中(ミッテン府中)|2021年初夏、京王線府中駅前に新たなランドマークが誕生。”. MitteN府中(ミッテン府中). 株式会社ノジマ. 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b 「ミッテン府中 テストオープン」『読売新聞』2021年5月21日。2021年5月29日閲覧。
- ^ フランセ 閉店のお知らせ(平塚ラスカ店、丸井志木店、伊勢丹府中店、伊勢丹相模原店) フランセ公式サイト、株式会社シュクレイ
外部リンク
編集- 伊勢丹府中店 - ウェイバックマシン(2019年9月29日アーカイブ分)
- ミッテン府中・専門店街フォーリス