人民警察機動隊
人民警察機動隊(ドイツ語: Volkspolizei-Bereitschaften ,VPB)は、ドイツ人民警察の即応部隊である。ドイツ民主共和国における内務省兵舎部隊(内務省軍)の主力を占めた。
概要
編集1955年、占領地警察の機動警察(Bereitschaftspolizei, 兵営人民警察の前身)と平行し、労働者の武力としてドイツ人民警察長官たる内務大臣の下に人民警察機動隊(VP-Bereitschaften)が編成される。人民警察機動隊は人民警察や兵営人民警察とは命令系統を違えた独立した戦力であり、ソビエト連邦を始めとする東側諸国の内務省軍と同等のものと見なされた。
1962年、国家人民軍、国境警備隊、国家保安省のフェリックス・ジェルジンスキー衛兵連隊、及び労働者階級戦闘団等の民兵組織と同時にVPBでも兵役法に基づく徴兵制が取り入れられた。機動隊及び鉄道警察戦闘部隊の兵役期間は、国家人民軍などよりも長い18ヶ月であった。召集は国家人民軍の各軍管区が一括して行い、彼らはまた国家人民軍から給与を受け取った。1962年から1982年まで、機動隊への志願は、軍の兵役を代替する手段の一つとして提示されていた。
機動隊は一般警察中央部隊(Zentrale Kräfte Schutzpolizei, ZKS)と並列して各地の人民警察地区支部に設置されていた。これらの部隊は機関銃や各種小火器を備え、軍に倣った部隊編成が行われていた。一般警察の警察官で構成されていた即応コマンド(Schnellkommandos)は1967年に解体されたが、一部は機動隊に残留した。
内務省の機動隊隊長ハインツ・オーピッツ少将は、1986年のスピーチで将校団に対して次のように述べた。
場合によっては、VPBあるいは警察全体を軍の一部と見なす事も可能であろう。その場合、各地方支部長及び各地方警察署長は、国家人民軍や国境警備隊における上級将校に相当する役割を負うのだ。
— ハインツ・オーピッツ少将
1988年12月21日、ドイツ民主共和国国防評議会議長エーリッヒ・ホーネッカーの元に発効された12/88号指令によって、VPBには新たな方向性が与えられた。これはVPの強化に焦点を当てたもので、将校及び下士官と徴収兵のどちらも、警察法の講義を受けた後に軍事訓練に参加した。人民警察地方支部の各管区では、ドイツ民主共和国が崩壊する直前まで入隊志願者が募集数を上回っていた。
歴史
編集- 1948年9月22日:ドイツ内務管理局(Deutsche Verwaltung des Innern, DVdI)に国境警察及び機動隊部(Hauptabteilung Grenzpolizei und Bereitschaften, HA GP/B)が設置される。数年後にHA GP/Bは兵営人民警察と改称され、後に国家人民軍となった。
- 1949年:各地の警務大隊(Wachbataillon)と機動隊が統合される。
- 1952年:警護大隊が人民警察地方支部と地区駐屯地への駐屯を始める。管区内のいかなる場所であっても、彼らは2時間以内に到達する事が出来た。
- 1952年7月1日:機動隊を含む戦力は警務隊(Wacheinheiten)として統合され、指揮権が兵営人民警察に移管される。
- 1953年6月16日:東ベルリン暴動が発生し、6月17日には鎮圧された。この後に防衛隊及び国境警察機動隊司令部は、人民警察機動隊として再編成された。彼らはドイツ人民警察本部の教育訓練局の元に配置された。教育訓練局は地区警察学校を設置し、一般警察中央部隊(Zentrale Kräfte Schutzpolizei, ZKS)の前身となった。
- 1955年:後方部隊と機械化部隊が新たに設置され、内務省の指揮下に置かれた。
- 1956年11月1日:人民警察機動隊が国家保安省の指揮下に移る。当時国家保安省は衛兵連隊及び内務管理部隊(Verwaltung Innere Truppen)による15000人の戦力を擁していた。
- 1957年2月1日:ドイツ機動隊司令部の指揮権が内務省へ返還され、機動隊は10の部隊に再編成された。
- 1961年8月13日:人民警察機動隊および内務省第1旅団はベスドルフに駐留し、ベルリンの壁を建設する為に労働者階級戦闘団(Kampfgruppen der Arbeiterklasse)の召集を行った。その間、国家人民軍及びドイツ駐留ソ連軍がベルリン周辺で治安維持任務に従事した。
- 1961年8月15日:壁の建築現場を警備していた機動隊員コンラート・シューマンが鉄条網を飛び越え西ドイツへ脱出する。
- 1962年1月24日:新たな兵役法が制定され、人民警察機動隊は21の部隊に拡張して再編成された。1962年4月には最初の召集隊員が行進を行った。
- 1985年11月1日:内務省にて兵舎部隊が再編成され、人民警察機動隊の規模が縮小された。
- 1990年10月3日:東西ドイツの統一。人民警察機動隊を含む内務省兵舎部隊は解散し、少数の将校と下士官のみが新生ドイツ警察に残留した。
人民警察機動隊の職務
編集人民警察機動隊の職務に関しては、1968年6月11日に発効された人民警察の職務と規模を指定する警察法の後半に基づく。内務省兵舎部隊には次の引用に示す内容が適用される。
ドイツ語原文 | 日本語訳文 |
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内務大臣たる人民警察長官はこれらの法的根拠及び0020/号台の各命令(Befehl 0020/…)に基づき、兵営部隊を運用した。第7項1のbは治安活動の基盤であり、また第7項1のjは防衛任務を負わせるものであった。また、0020/79号命令(Befehl 0020/79)は次のように規定している。
人民警察機動隊は、兵営に駐屯し、完全に機械化され、軍事的な原則に基づいて編成・指揮されるところの、人民警察部隊である。
— 0020/79号命令
„Die VP-Bereitschaften sind kasernierte, vollmotorisierte, nach militärischen Prinzipien organisierte und geführte Einheiten der DVP.“
1960年代後半、兵営部隊の主たる任務は軍の後方部隊と協同し、「公秩序と安寧に対する脅威の除去」を行うという点に重点が置かれた。VPBは人民警察ではなく内務省兵営部隊の一部とされ、本来は警察法第7項による制限を受けない。一般警察中央部隊が必要とする場合、VPBは検察権限を有する。
各中隊及び小隊の指揮官は人民警察地方支部に所属する人民警察将校によって指揮され、法の遵守を厳命されていた。当初は召集兵のみで編成される歩兵グループ(Schützengruppe)も存在したが、後に大臣命令によって禁止されている。なお、後に人民警察では地方支部主催のPR活動として半年間のみ歩兵グループを再編成している。
1989年の第0020/89号命令(Befehl 0020/89)では、1990年から1995年にかけて不穏分子が増加する事を見越し、人民警察及び兵営部隊と国家人民軍の共同作戦に関して規定した。ただし、この命令は遂行されなかった。
兵営部隊の編成と展開
編集内務省兵舎部隊(Kasernierte Einheiten des MdI)
編集21個以上の人民警察機動隊が編成されていたが、その内6つは内務省直轄部隊、すなわち兵営部隊としてベルリン付近に配置された。
ドイツ人民警察長官指揮下
- 第17、第18、第19人民警察機動隊及び情報部隊(ベルリン・バスドルフ)
ポツダム人民警察地方支部指揮下
内務省第一次長たる副参謀長指揮下
- ブラムベルク局(フロイデンベルク参謀部付) - 召集兵1404名で編成された自動車化部隊
- ディーペンゼー・ヘリコプター隊(ベルリン・シェーネフェルト空港)
また、ブラムベルク局では建築及び衛兵大隊などの後方部隊をシュトラウスベルクから北に10kmにあるギェルスドルフに駐屯させていた。
駐屯地
編集人民警察機動隊は大都市圏に駐屯した。
内務省第一次長たる副参謀長(1. Stellvertreter des Chef des Stabes des MdI) | |||||
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種別 | 名称 | 所在 | 勤務範囲 | 指揮官 | 備考 |
Hs.-Einheit | … | ディーペンゼー | 東独全土 | 1. Stv. C-Stab /MdI | 各地のVPを支援する。 |
DSt. Blbg. | リヒャルト・ゾルゲ博士(Dr. Richard Sorge) | フロイデンベルク | Bz. Frankf./O | 1. Stv. C-Stab /MdI | 有事に用いる内務省の地下司令部を備える。 |
略語一覧: Blbg.: DSt. |
Blumberg = ブルームベルク局の秘密偽装支部 Dienststelle = 軍事部隊 人民警察組織の配置と異なるものを指す。 |
Hs. C-Stab MdI VP |
Hubschrauber = ヘリコプター Chef des Stabes des MdI = 内務省参謀長 Ministerium des Innern = 内務省 Volkspolizei = ドイツ人民警察 |
労働者階級戦闘団および機動隊副司令官(Stellvertreter des Ministers Kampfgruppen der Arbeiterklasse / Bereitschaften) | ||||||
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No. | 種別 | 所在 | 勤務範囲 | 指揮官 | 名称 | 備考 |
1. | VPB | シュヴェリーン | シュヴェリーン県 | C-BDVP | カール・リープクネヒト(Karl Liebknecht) | Staatsgrenze/ NVA-Unterstellg. mögl. |
2. | VPB | シュトラールズント | ロストック県 | C-BDVP | エーリッヒ・ワイネルト(Erich Weinert) | … |
3. | VPB | ポツダム・ハイデ | ポツダム県 | C-BDVP | ハンス・マルヒビッツァ(Hans Marchwitza) | Ausbildung von Unterführern der VPB |
4. | VPB | マクデブルク | マクデブルク県 | C-BDVP | ヴィルヘルム・ピーク(Wilhelm Pieck) | … |
5. | VPB | ライプツィヒ | ライプツィヒ県 | C-BDVP | オットー・ヘッカート(Otto Heckert) | … |
6. | VPB | ハレ | ハレ県 | C-BDVP | ハンス・バイムラー(Hans Beimler) | Reservisten-Ausbg. |
7. | VPB | エアフルト | エアフルト県 | C-BDVP | テオドール・ノイバウアー博士(Dr. Theodor Neubauer) | Staatsgrenze/ NVA-Unterstellg. mögl. |
8. | VPB | ドレスデン | ドレスデン県 | C-BDVP | クルト・フィッシャー博士(Dr. Kurt Fischer) | … |
9. | VPB | カール=マルクス=シュタット | カール=マルクス=シュタット県 | C-BDVP | エルンスト・シュネラー(Ernst Schneller) | … |
10. | VPB | ルードルシュタット | ゲーラ県 | C-BDVP | ゲオルク·シューマン(Georg Schumann) | Staatsgrenze/ NVA-Unterstellg. mögl. |
11. | VPB | マクデブルク | 東独全土 | Minister | エルンスト・テールマン(Ernst Thälmann) | Staatsgrenze/ NVA-Unterstellg. mögl. |
12. | VPB | ハレ | 東独全土 | Minister | ベルンハルト・ケーネン(Bernhard Koenen) | Staatsgrenze/ NVA-Unterstellg. mögl. |
13. | VPB | マイニンゲン | ズール県 | C-BDVP | マグナス・ポーザー(Magnus Poser) | Staatsgrenze/ NVA-Unterstellg. mögl. |
14. | VPB | ノイシュトレーリッツ | ノイブランデンブルク県 | C-BDVP | ハンス・カーレ(Hans Kahle) | Ausbildung von Unterführern der VPB-Artillerie |
15. | VPB | アイゼンヒュッテンシュタット | フランクフルト県 | C-BDVP | ヨーン・シェーアー(John Schehr) | Ausbildung von Unterführern der VPB-SPW |
16. | VPB | コトブス | コトブス県 | C-BDVP | ゲオルギ・ディミトロフ(Georgi Dimitroff) | Ausbildung von Unterführern der VPB |
17. | VPB | バスドルフ | 東独全土 | Minister | コンラート・ブレンクレ(Conrad Blenkle) | Ausbg. vorverpflichteter Polizisten; |
18. | VPB | バスドルフ | 東ベルリン | Präs. PDVP | ハインリッヒ・ラウ(Heinrich Rau) | Ausbg. vorverpfl.Poliz.; Einnahme W-Bln. |
19. | VPB | バスドルフ | 東ベルリン | Präs. PDVP | ロベルト・ウーリッヒ(Robert Uhrig) | Ausbg. vorverpfl.Poliz.; Einnahme W-Bln. |
20. | VPB | ポツダム・ハイデ | 東独全土 | Minister | ケーテ・ニーダーキルヒナー(Käthe Niederkirchner) | Staatsgrenze / NVA-Unterstellg. mögl. / 1. Kompanie Ausbildung von Unterführern der VPB |
21. | VPB | ライプツィヒ | 東独全土 | Minister | アルトゥール・ホフマン(Arthur Hoffmann) | … |
その他の兵営部隊および演習場(Weitere Kasernierte Einheiten und Truppenübungsplätze) | ||||||
No. | 種別 | 所在 | 勤務範囲 | 所属 | 名称 | 備考 |
9. VP-Kp. | … | ポツダム・ハイデ | 東独全土 | C-BDVP Ptd. | 対テロ部隊 (GSG-9に相当) ¹ | |
(22.) | NaB | バスドルフ | 東独全土 | StM Na. | ルドルフ・ギプトナー(Rudolf Gyptner) | 直轄部隊。 |
(23.) | SE | ギールスドルフ | (シュトラウスベルク) | Ltr.DSt.Bbg. | … | 内務大臣後方指揮所 |
10. | Kp. | ブランケンブルク | 東独全土 | StM VD | ルドルフ・ティッテルバッハ(Rudolf Tittelbach) (FDJ-GO) | 兵站供給を担う。 |
– | Na.-Kp. | ドンミッチュ | 東独全土 | StM Na. | ヨゼフ・ギーファー(Joseph Giefer) | 情報将校学校を含む。 |
– | TüP-I | ベルツィヒ | 南部 | StM KG/B | … | フェアローレンヴァッサーに駐屯する。 |
– | TüP-II | ノイルピーン | 北部 | StM KG/B | … | … |
– | TüP-Kroppen | クレッペン | TüP-OHS | Kdr. OHS | … | … |
– | OHS | ドレスデン | 東独全土 | StM KG/B | アルトゥール・ベッカー(Artur Becker) | 士官大学校(Offiziershochschulen) |
略語一覧: | . | StM | Stellvertreter des Ministers=次官 |
DVP | Deutsche Volkspolizei=ドイツ人民警察 | KG/B | Kampfgruppen der Arbeiterklasse/ Bereitschaften=労働者階級戦闘団および機動隊 |
PDVP | Präsidium der DVP Berlin=ベルリン警察幹部会 | Ltr. Dst. | Leiter Dienststelle=軍事部隊本部長(警察大佐) |
BDVP | Bezirksbehörde der DVP=県警察 | Ltr.VPKA | Leiter VPKA=郡警察本部長(警察中佐) |
VPB | Volkspolizei-Bereitschaft=人民警察機動隊 | K-VPB | Kommandeur=司令官(警察中佐) |
SE | Sicherungseinheit=保安部隊 | StKuSC | Stellv. des K u. Stabschef=副参謀長(警察少佐) |
VPKA | VP-Kreisamt=郡警察 | KC | Kompaniechef=中隊長(警察少佐) |
TüP | Truppenübungsplatz=演習場 | Na | Nachrichten=情報隊 |
鉄道警察特別行動中隊/機動隊(Transportpolizei-Einsatzkompanien/Bereitschaften) | |||||
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No. | 種別 | 所在 | 勤務範囲 | 所属 | 備考 |
1. | TP-Kp.(B) | バート・クライネン | ロストック県~シュヴェリーン県 | C-BDVP | しばしばベルリンで活動した。 |
2. | TP-Kp.(B) | パーゼヴァルク | ノイブランデンブルク県 | C-BDVP | … |
3. | TP-Kp.(B) | アイゼンヒュッテンシュタット | フランクフルト県 | C-BDVP | … |
4. | TP-Kp.(B) | コトブス | コトブス県 | C-BDVP | … |
5. | TP-Kp.(B) | タラント | ドレスデン県 | C-BDVP | … |
6. | TP-Kp.(B) | ナウムブルク | ハレ県 | C-BDVP | … |
7. | TP-Kp.(B) | シュプレーダ | ライプツィヒ県 | C-BDVP | … |
8. | TP-Kp.(B) | ブランデンブルク | ポツダム県 | C-BDVP | 1980年4月30日解散 |
略語一覧: TP |
Transportpolizei=鉄道警察 |
Kp. B |
Kompanie=中隊 Bereitschaften=機動隊 |
人民警察機動隊の構造
編集人民警察機動隊の職務は次のように分類された。
- 司令部要員(指揮官および副官)
- 政治局員
- 参謀
- 後方支援班
- 活動部隊
また次のような役職も存在した。
- 党書記(Parteisekretär) - ドイツ社会主義統一党(SED)地区指導者
- 自由ドイツ青年団書記(FDJ-Sekretär) - 自由ドイツ青年団(FDJ)地区支部に所属
- 国家保安省防諜士官(Abwehroffizier des MfS) - 国家保安省(シュタージ)県支部に所属
参謀部の構造は国家人民軍に倣ったものであり、また政治局はプロパガンダや政治教化を担当した。
警察活動
編集警察活動については次のように分類されていた。
- 通常の個別警察活動(schutzpolizeilicher Einzeldienst):一般警察など、人民警察の各部門が遂行する。
- 指令に基づく秩序警察出動(polizeilicher Ordnungseinsatz):地区支部職員および機動隊が出動する。
- 警察戦闘出動(polizeilicher Kampfeinsatz):地区支部の一部職員および機動隊が出動する。
- 民間防衛の編制と実働部隊を支援する枠組みの中での諸活動(Handlungen im Rahmen und zur Unterstützung von Formationen und Einsatzkräften der Zivilverteidigung):地区支部職員および機動隊が出動する。
戦闘任務
編集戦闘任務については特に次のように定められていた。
- ドイツ民主共和国において財産の保護、法秩序の回復、保安が必要とされる場合、ドイツ人民警察は武装勢力及びその他犯罪全てに対処しなければならない。[1]
この規定に従い、人民警察機動隊は一般の警察と異なる特殊な戦術、部隊、装備等を利用して任務を遂行した[2]。
戦闘任務の活動種別
編集- 戦争、反攻分子ないし敵対的武装勢力による攻撃への対処(人民警察機動隊)
- 重要地域の防衛とそれに伴う敵部隊への攻撃(国家人民軍地上軍指揮下で行う)
- 重要拠点の防衛の為の遊撃戦(第9中隊)
- 重要地域及び施設の防衛(地上軍指揮下)
- 兵站線の確保(鉄道警察戦闘部隊)
有事における内務省兵舎部隊の活動については、国家人民軍法のDV IX/10 Zug – Gruppeの項にて定められている。
訓練
編集人民警察機動隊における訓練の内容は、人民警察法が定める第062号台命令(DVP Nr. 062/…)に基づき、人民警察長官たる内務大臣によって管轄された。
内務省兵舎部隊における教育
編集内務省兵舎部隊における訓練では、政治的教育から始まり戦術行動及び守備任務に関する訓練、戦闘任務における戦術訓練などが含まれる。
政治教育
編集政治教育は3号台指令(Direktive 3/…)に基づいて計画・遂行された。その内容は国家人民軍の教範に則ったもので、期間は2日間(1日8時間)と定められていた。研修班の班長は小隊長(Zugführer)が務め、班長はしばしば消極的になりがちな班員らを鼓舞する役割を担った。新人隊員らはこの2日間の教育を必ず受けるものと定められており、警察官としての緊急出動を除けば出席の免除は認められなかった。
訓練および活動
編集訓練は次のように分類される。
- 基礎訓練
- 各種訓練
- 射撃訓練(MPi-K、RPK、SMG、RPG-7、PRG18、マカロフ拳銃、BTR-40、BTR-152、PSH、82mm迫撃砲、AGS-17など)
- 教育訓練
- 服務規則
- 軍事活動訓練(戦闘任務における展開、擬装、待ち伏せ、陣形、局地あるいは市街地戦など)
- 警察活動訓練(警察任務における展開、ヘルメットや警棒、盾、手錠など装備の使用法、容疑者逮捕手順、自己防衛の措置など)
- 体力試験(10km走など)
- 学科及び銃器・砲取り扱いに関する試験
- 戦術演習
- 勤務の一環としてのトレーニング
- 内務省兵舎部隊自動車教習所における自動車免許の取得
- 第17および第18、第19人民警察機動隊の第1中隊における警察法研修。地方警察署への研修配備。
後にこれらの訓練はいくらか削減された。また冬季には褐炭の露天掘り鉱山にて工業用褐炭の採掘を行い、夏季にはロストック港の作業に参加するなど、訓練の一環として様々な国策事業に労働力を提供した。
彼らはしばしば2度の訓練召集を受けた。これは主に、政府当局が政治教育を重視していた事による。この為、人民警察機動隊の隊員は基本的な軍事訓練に関する最低限の知識を持ち合わせていた。
在独ソ連軍将兵に対する捜査も人民警察機動隊が対応した。特に偵察隊員や空挺部隊の隊員が行方不明になるケースでは、単なる脱走兵だけではなく、時には死亡ないし傷害などの事件に関与していることが多かったという。在独ソ連軍に対する犯罪・事件に関しても他の事件と同様の優先度で行われ、何らかの特権などはほとんど認められていなかった。テレックス通信の検閲官も人民警察機動隊の現役将校が担当し、ソ連軍の動きは完全に掌握されていた。人民警察機動隊にとって、在独ソ連軍戦力の存在は西ベルリンの動向と並んで懸念事項とされていたのである。1970年代後半までこうしたソ連軍に対する取締りを担っていたが、その後はソ連軍による取締りが行われた。
訓練期間
編集教育は11月1日から翌年10月31日までかけて行われた。このうち11月1日から翌年4月30日までを前期教育、5月1日から10月31日を後期教育として扱っていた。研修はおよそ500時間の訓練を含むおよそ1000時間で、1日あたりの訓練時間は7時間であった。また土曜日も5時間の訓練が義務付けられていた。
下士官教育と専門職先任下士官資格
編集下士官教育は1971年からクルト・シュロッサー下士官学校で行われ、1985年5月以降はドレスデンの高級士官学校と統合された。訓練は次の3種類があり、5つの部隊によって訓練された。
- 歩兵班長(Schützengruppenführer) - 第16人民警察機動隊第1中隊(コトブス)、第20人民警察機動隊第1中隊(ポツダム)
- 装甲車班長・指揮官(SPW-Gruppenführer/Kommandant) - 第15人民警察機動隊第4中隊(ノイシュトレーリッツ)
- 工兵班長、職業下士官のための専門職資格(Pioniergruppenführer und Meisterqualifikation für Berufsunterführer) - 第8人民警察機動隊第2中隊(ドレスデン)
これらの教育課程を修了すると、人民警察上級巡査(Oberwachtmeister der VP)の階級に任命された。ポツダム・ハイデではマルクス主義及びレーニン主義に関する特別の政治教育も行われた。
内務省士官学校における研修
編集人民警察機動隊の為に、アルトゥール・ベッカー内務省高級士官学校に機動隊課程(Offiziershochschule des Ministeriums des Innern Artur Becker – Bereitschaften)が設置されていた。入学資格は他の高級士官学校や大学、またアビトゥーア試験と同様であった。
海外派遣
編集人民警察機動隊の将校団は軍事顧問として海外に派遣されることもあった。例えば1974年には対反乱作戦を指導するべく南イエメンに機動隊将校団が派遣されている。1980年にもドレスデン士官大学校からニカラグアへ教官が派遣された。1980年代初頭にはモザンビークに派遣された機動隊員がローデシア(現ジンバブエ)における反政府闘争の指導を行なっている。またサダム・フセインの要請を受けた東独政府は、秘密警察編成を支援するために機動隊将校団をイラクへ派遣したという。
参考文献
編集- Jörn Steike: Die Bereitschaftspolizei der DDR 1950–1990. Geschichte – Struktur – Aufgaben – Rechtliche Ausgestaltung. tuduv Verlag, München 1992.
- Jörn Steike: Von den „Inneren Truppen“ zur Bereitschaftspolizei (1953–1990). In: Torsten Diedrich, Hans Ehlert, Rüdiger Wenzke: Handbuch der bewaffneten Organe der DDR. Christoph Links Verlag – LinksDruck GmbH, Berlin 1998
- Autorenkollektiv: Historischer Abriß zum Aufbau und zur Entwicklung der Volkspolizei-Bereitschaften 1945–1985. Vorabdruck des MdI, Berlin(O) 1988 (unter Leitung Generalmajor Heinz Opitz, Leiter Hauptabteilung Bereitschaften 1983–1989, erarbeitet. Historische Entwicklung aufschlussreich da Unterscheidung VP-Bereitschaften/KVP, ab 1953 VP-Bereitschaften (Ausbildung) der Hauptverwaltung Deutsche Volkspolizei/ HVDVP und parallel außerhalb HVDVP VP-Bereitschaften/ Innere Truppen („Technische“). 9. VPB wird in Vordergrund gestellt, da Opitz Kommandeur dieses Truppenteils bis 1983.)
- Thomas Fischer: Polizeisoldaten / Kasernendienst – Straßenkämpfe – Atombunker. Helios-Verlag, Aachen 2006, ISBN 3-938208-39-2.