ユーカラ

アイヌ民族に伝わる叙事詩の総称

ユーカラ (yukar) は、アイヌ民族に伝わる叙事詩の総称である。アイヌ語で「叙事詩」を意味する。少年の英雄が主人公となる内容が多いため「英雄叙事詩」と訳されることがある。

カナ表記は統一されていないが、カタカナを用いる場合、萱野茂は「ユカㇻ」とした方がより忠実としている。[要出典]ラテン文字表記はyukarであり、yukaraではない。「ユカラ」ではなく「ユーカラ」と表記されるのはアイヌ語学者金田一京助による。第1音節にアクセントがあることから、母音が長く発音されることがあるため、金田一は日本語の表記として「ユーカラ」という長音表記を選んだ[1]

特徴

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短いものから何日もかけて語られる長いものまである。アイヌは文字を持たないため、口承で伝えられてきた。

アイヌ民族で、アイヌ文化研究者の萱野茂によると、「ユカㇻ」という言葉について「『イタッエユカㇻ=喋り方を真似る』、『アッカㇱエユカㇻ=歩き方を真似る』、『イペエユカㇻ=食べ方を真似る』、などと珍しい言葉ではなく極普通につかわれている。私が語ったユカㇻも私が作者ではなく、ずーっと昔のアイヌが語りそれを誰かが真似て、口から口へと受け継がれ、私もそれをまねをさせてもらった。」とされている。

金田一京助の分類によると、ユーカラは、「人間のユーカラ」(英雄叙事詩)と「カムイユーカラ」(神謡)の2種類に分けられる[1]。人間(アイヌ)を中心として語られるユーカラは、主にポンヤウンペと呼ばれる少年が活躍する冒険譚である。

「カムイユーカラ」はカムイが一人称で語る形式をとっており、サケヘと呼ばれる繰り返し語が特徴で、アイヌの世界観を反映した、神々の世界の物語である。中には、神・自然と人間の関係についての教えが含まれている。

散文の物語はアイヌ語ではウエペケレという。

アイヌの人々が、文字を持たないアイヌ語によって、自然の神々の神話や英雄の伝説を、口伝えの言葉による豊かな表現で、語り伝えてきた。近年、アイヌ語・アイヌ文化の衰退とともに、ユーカラをはじめとする口承文学の語り手も次第に少なくなっていったが、アイヌ語・アイヌ文化の復興運動の中で、口承文芸を練習・習得した、新しい語り手も育ってきている。

ユーカラは、日高西部・胆振・石狩などでの名称で、十勝や釧路ではサコㇿペ (sakorpe) 、日高東部(浦河・様似)では、ヤイラㇷ゚ (yayrap) と呼び、主人公の名前もオタストゥンクㇽ(オタスッの人)などとなる。

樺太アイヌ語ではユーカラ (yuukara) は 単に歌を指す言葉で、叙事詩はハウキ (hawki) と呼ぶ。

脚注

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  1. ^ a b 金田一京助 1932, p. 11.

参考文献

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  • 金田一京助『アイヌ文學』河出書房、1932年。 
  • 知里幸恵編訳『アイヌ神謡集岩波文庫 1978年1月 ISBN 4003208013 同ワイド版、2009年
  • 山本多助 著, 四辻一朗 絵『怪鳥フリュー―カムイ・ユーカラ 』平凡社名作文庫 1978年1月
  • 山本多助『カムイ・ユーカラ アイヌ・ラッ・クル伝』 平凡社ライブラリー 1993年11月 ISBN 4582760260
  • 萱野茂のアイヌ神話集成 1998年3月 書籍全10巻+CD全11枚+ビデオ1巻 第14回文化庁芸術作品賞(1999年)受賞作品
  • 萱野茂『カムイユカラと昔話』小学館 1988年
  • 萱野茂監修『アイヌのユカラ - 蘇る英雄』CD(1996年12月24日, 平取町二風谷にて録音) 
  • 萱野茂採録『ウウェペケレ集大成』解説:姫田忠義 執筆協力・対談聞き手 アルドオ 1974年 
  • 久保寺逸彦(編著)『アイヌ叙事詩 神謡・聖伝の研究』岩波書店 1997年3月
  • 中川裕『アイヌの物語世界』 平凡社ライブラリー 1997年3月 ISBN 978-4582761900、平凡社ライブラリー(改訂版) 2020年4月 ISBN 978-4582768992
  • ニコライ・ネフスキー, 魚井一由訳『アイヌ・フォークロア』北海道出版企画センター 1991年
  • 村崎恭子『ユーカラ・おもろさうし』(新潮古典文学アルバム)新潮社 1992年3月
  • 知里真志保金成マツとユーカラ』(Kindle版)

関連項目

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外部リンク

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