ユズリハ(楪[6]・交譲木[6]・譲葉[6]・杠[6]学名: Daphniphyllum macropodum)は、ユズリハ科ユズリハ属常緑高木。春に新しい葉が出ると古い葉が場所を譲るように落ちて生え替わるようすが特に目立つことが特徴で、和名の由来になっている。別名、ウスバユズリハ[2]

ユズリハ
Daphniphyllum macropodum
Daphniphyllum macropodum
(イギリス)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
: ユキノシタ目 Saxifragales
: ユズリハ科 Daphniphyllaceae
: ユズリハ属 Daphniphyllum
: ユズリハ D. macropodum
学名
Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. macropodum (1867)[1][2]
シノニム
亜種品種[5]
  • エゾユズリハ D. m. subsp. humile
  • フイリユズリハ D. m. f. variegatum
  • アオジクユズリハ D. m. f. viridipes

の形態がトウダイグサ科に似るので、古くはトウダイグサ科に含められたが[7]雌蕊が2個(トウダイグサ科は3個)などの違いから、独立のユズリハ科学名: Daphniphyllaceae)とされた。APG分類体系ではユキノシタ目に入れられている。

名称

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和名ユズリハは、に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することに由来する[6]古名ユズルハ(弓弦葉)といわれ、葉の中にある主脈がはっきりと目立ち、弓の弦のように見えることに由来する[8]。そこから発展した地方名(方言)としてツルノハというものもある[8]

中国名は、薄葉虎皮楠(別名:交讓木)[2]

分布と生育環境

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日本福島県以南・関東東海地方以西の本州四国九州沖縄[9][10]、日本国外では朝鮮半島南部、中国(中部から南西部)まで自然分布する[10]。日本の植栽可能地域では、東北地方南部より沖縄の地域となる[9]。主に暖地の山地や広葉樹林内に自生する[7][6]

形態・生態

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常緑広葉樹[9]。高木の中でも中高木に分類され[7]、高さは4 - 10メートル (m) ほどになり、幹は直立して上部は多く枝分かれをし、前年葉をつけたこんもりした樹形となる[6][8]。樹皮は灰褐色から茶褐色で、縦に筋が入る[6]。若枝は赤みを帯びる[10]

常緑樹でありながら、若葉に座を譲るように、春に古い葉が落ちて新しい葉と入れ替わる[10][7]。この生え替わりのとき、古い葉のほうは、まだ濃い緑色をしていながらも、浅緑色の新葉の下に控えて残っている[11]互生して、枝先にらせん状に集まってついて、葉身は垂れ下がる[9]。葉身には光沢があり[7]、長さは8 - 20センチメートル (cm) ほどの長楕円形から倒披針形で、先端は短く尖り、基部はくさび形[9]。葉の裏側は白みを帯びる[8]。長さ8 - 20 cmほどある葉柄は赤紫色を帯び、本種の特徴にもなっている[9][7][6]

花期は春から初夏(4 - 6月)[10]、新葉が出るころに、前年枝の葉腋から長さ4 - 8 cmの総状花序を出して、花被花弁)がない小さな花を多数つける[9][8][12]雌雄異株で、雄花・雌花とも花色は黄緑色をしている[9][8]

果期は6 - 12月で[8]果実は長さ15 - 20 cmで、枝先に集まってつき[10]10月から11月に熟して黒褐色になる。

冬芽は葉柄の基部につき、紅色を帯びて、葉柄が変化した芽鱗に包まれる[6]。葉痕は半円形で、維管束痕は3個ある[6]

ダフニフィリン、ダフニマクリン、ユズリミン、ダフェニリンなどの複雑な骨格構造のアルカロイド(ユズリハアルカロイド)を多数含み、家畜が誤食すると中毒の原因となる[13]。さらに、ユズリハアルカロイドはその構造から全合成の対象としてよく取り上げられる[14]

人間との関わり

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ユズリハは、新しい葉が古い葉と入れ替わるように出てくる性質から「親が子を育てて家が代々続いていく」ことを連想させる縁起木とされ、正月鏡餅飾りや庭木に使われる[15][16]。また、家紋も同様の由来で使用家は桓武平氏良文流千葉支流原氏、出自不詳の城本氏が使用した[17]

防火の機能を有する樹種(防火樹)としても知られる[18]

栽培

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日陰か半日陰を好む性質で、根は深く張り、土壌は砂土はよく乾燥にも強い。生育の速度は遅い方で、若木のうちは剪定の必要もほとんどない[15]。植え付けは6月中旬から7月中旬、剪定は6月下旬から11月下旬に行うものとされる[7]。ただし、刈り込みには弱いため、枝を軽く成形する程度に留めることとされる[7]。木が大きくなったら、混み合う枝を間引きするようにし、切り戻しの際は枝の分かれ目で行うようにする[15]

大きく目立つ葉は観賞用にもされ、白い斑入りが入る‘白覆輪ユズリハ’のほか、黄覆輪や黄中斑などの園芸品種があり、斑色の濃淡でいくつかの系統がある[15]

文化

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「譲り葉」の縁起を担いで正月飾りに用いられるが、これには歳を譲るという意味もある[12]

ユズリハに乗った年神(正月様)の降臨を歌った童謡は日本各地で見られる[19]。ユズリハが年神の乗り物になった理由は、祖霊は次々と代を譲って新しい命へ生を繋げていくように、春になるとユズリハの新葉が芽吹くと、あたかも古葉が代を受け継ぐように落葉する様子を見て、後世の人々がそのユズリハの落ち葉に乗って祖霊は天上界へ昇ったと考えた[19]。祖霊が帰るときも同じ乗り物の帰ってくるだろうと想像したので、門松にユズリハを結んで帰るべき家の目印とした[19]。また、常緑樹(常磐木)であることや、葉柄の赤い色が呪力があると信じられたことも、ユズリハが正月と結びついている理由である[8]

地方名の「ツルノハ」は「弦の葉」から「鶴の葉」へと変化し、鶴は千年の長寿をもつおめでたい鳥とされていることから、ユズリハもめでたい葉となった[8]

花言葉は「若返り」である[8]

ユズリハ属

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ユズリハ属(ユズリハぞく、学名: Daphniphyllum)は、ユズリハ科で唯一のである[11]東アジア温帯から東南アジアインドに分布し、35からなる。

脚注

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  1. ^ "Daphniphyllum macropodum Miq". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2012年8月20日閲覧 (英語)
  2. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. macropodum ユズリハ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum himalaense (Benth.) Müll.Arg. subsp. macropodum (Miq.) T.C.Huang ユズリハ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum membranaceum Hayata ユズリハ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2014年1月27日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 216.
  7. ^ a b c d e f g h 正木覚 2012, p. 110.
  8. ^ a b c d e f g h i j 田中潔 2011, p. 13.
  9. ^ a b c d e f g h i 山﨑誠子 2019, p. 94.
  10. ^ a b c d e f 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 129.
  11. ^ a b c 辻井達一 2006, p. 112.
  12. ^ a b c d 辻井達一 2006, p. 114.
  13. ^ 農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所 (2008年2月4日). “ユズリハ”. 写真で見る家畜の有毒植物と中毒. 2014年1月27日閲覧。
  14. ^ 有機化学美術館 (2013年7月25日). “【全合成】Total synthesis of the Daphniphyllum alkaloid daphenylline”. ChemASAP. ライブドアブログ. 2014年1月27日閲覧。
  15. ^ a b c d 山本規詔 2017, p. 57.
  16. ^ 山﨑誠子 2019, p. 95.
  17. ^ 「家紋と家系辞典」講談社
  18. ^ 藤山宏『プロが教える住宅の植栽』学芸出版社、2010年、9頁。 
  19. ^ a b c 田中潔 2011, p. 12.
  20. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. oldhamii (Hemsl.) T.C.Huang var. lanyuense T.C.Huang”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  21. ^ 鈴木英治ほか(2022)鹿児島県の維管束植物分布図集-奄美群島版- 鹿児島大学総合研究博物館研究報告(18)
  22. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. macropodum f. viridipes (Nakai) Ohwi アオジクユズリハ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  23. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum macropodum Miq. f. variegatum (Bean) Rehder フイリユズリハ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  24. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz ヒメユズリハ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。
  25. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz var. oldhamii (Hemsl.) Hurus. シマユズリハ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年6月14日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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