フェライト磁石
フェライト磁石(フェライトじしゃく、Ferrite magnet)は、フェライト磁性体による磁石である。特に強磁性のハード・フェライトが、一般にいう磁石の性質を持つ。軟磁性のソフト・フェライトは(軟磁性であるため)フェライトコアなどに使われる。
概要
編集酸化鉄を主原料にしてバリウムやストロンチウムなどを微量加えて焼き固めて作る化合物。焼き固めた後に1μmほどの粒子に粉砕したものを成型し焼結する窯業製品である。ハード・フェライトでは焼結後に電磁石によって着磁することで永久磁石とする。比較的強い磁性を持ちながら安価なため、様々な用途に用いられる[1]。
種類
編集用途
編集- ハード・フェライト
- 安価でそれほど強力な磁力が求められないあらゆる用途で使用されている。通常のモーター用の磁石として最も一般的であり、特殊なものとしては、フェライトの粉をゴムやプラスチックに混ぜて固めた柔軟性のあるボンド磁石では、容易に切断することが可能なのが特徴。複写機やレーザープリンターにはボンド磁石製のトナードラムが使われている。粉末をテープに吸着させて磁気テープとして記憶媒体に使用されたが、ハードディスクドライブ (HDD) の記録面での利用が増えている。スピーカーに使用される磁石は一部を除き、大部分がフェライト磁石である。
- ピップエレキバン(ピップエレキバンEXは除く)で使用されている磁石もフェライト磁石である。
- ソフト・フェライト
- ソフト・フェライトは、コイルや変圧器、磁気ヘッドなどの電子部品の磁心や、コピートナーに使用されている[1]。
歴史
編集1930年に日本の東京工業大学の加藤与五郎と武井武によってフェライトが発明されたことがきっかけで誕生し、1937年に日本の東京電気化学工業によって工業化された。
一時期フェライト磁石の磁気特性はピークに達したように思われていたが、1990年後半、SrLaCoフェライト磁石の出現により、開発熱が再燃した。その後、CaLaCoフェライト磁石が開発され、特性がBr=0.45 - 0.47テスラ、Hcj=300 - 450kA/mまで向上してきている。近年では、そのフェライト磁石をEV向けモーターとして活用する動きが活発になってきている。
ハード・フェライトの属性
編集ハード・フェライトの製造
編集- 原料
- 工程
- ボールミル中でスチールボールと共に上記の原料を回転させて、粉砕・混合する
- 1,300°C程の回転釜に連続的に投入・取り出しを行い、10時間程の「仮焼」を行なう
- 水とスチールボールと共にミキサータンクで「粉砕」を行なう
- 乾燥後、粘結剤・潤滑剤を加えて混合する
- 「成形」
- 「等方性フェライト」の製造:プレス機によって、1 〜 2t/cm2程度の圧力で求める形状に押し固める
- 「異方性フェライト」の製造:磁場中でプレス機によって求める形状に押し固める
- 25 〜 26時間、1,000°C前後で「焼成」する
- 必要なら切削加工などの形状の整形を行なう
- 0.002秒程度の強い磁力のパルスで「着磁」する[1]。
脚注
編集- ^ a b c 日刊工業新聞社編 『モノづくり解体新書』 日刊工業新聞社 2007年10月28日初版第1刷発行 ISBN 9784526059490
- ^ 田口仁, 武石卓, 諏訪建一郎. "高飽和磁化 LaZn 置換 M 型フェライト磁石." 日本応用磁気学会誌 21.5 (1997): 901-906.
- ^ 田口仁, 武石卓, and 諏訪建一郎. "フェライト磁石の高性能化に関する研究." 粉体および粉末冶金 44.1 (1997): 3-10.
- ^ フェライトマグネットの低温減磁について