伝貰

韓国独特の住宅賃貸制度
チョンセから転送)

伝貰(チョンセ、朝鮮語: 전세、傳貰)は、韓国独特の賃貸住宅制度。伝貰権(朝鮮語: 전세권、傳貰權)は韓国民法に明文化された物権であるが、伝貰権設定登記をしない場合は、債権に分類される[1]

伝貰
各種表記
ハングル 전세
漢字 傳貰
発音 チョンセ
日本語読み: でんせい
ローマ字 Chun-say, Jeonse,
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概要

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制度

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借り手は、家賃を払う代わりに、契約時に住宅価格の5~8割程度の伝貰金を一括で貸し手に払い、一方で月々の家賃は支払いを免除される。不動産の貸し手は、受け取った伝貰金を資金運用して、利子等の収入を得る仕組みになっている。借り手は、引っ越すときに、払った伝貰金を基本的に全額返してもらえる。簡単に言うと、最初にまとまったお金が用意できるのであれば、実質的に家賃を一切払うこと無く、不動産を借りられる制度である[2][3][4]インドボリビアにも似た仕組みはあるが、一般ではほぼ使われていないため、韓国独特の制度と言える[3]

チョンセ以外にも、他国では一般的な家賃を月々支払う「月貰(ウォルセ、朝鮮語: 월세)」や、不動産価格の半分くらいをチョンセとして支払って残りは月々に支払うという「半伝貰(バンチョンセ、朝鮮語: 반전세)」といった制度の賃貸物件も存在する。

割合

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2010年において、韓国の住宅全体でチョンセの物件が占める割合は、27.1%となっている[5]

問題点

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韓国の不動産価格が低かった頃は大きな問題にならなかったが、2017年にはソウルの平均の住宅価格が東京を超えるなど、近年、韓国の不動産価格は上昇に歯止めがかからない状態にある[6]。これに比例して、チョンセの物件の価格も上昇しており、チョンセの物件に入居する場合、日本円換算で数千万円を用立てる必要が生じるようになっている。しかし、蓄えが少ない若年層には、これだけの金額を一括で捻出することは難しく、若者が都市部の住宅に住めない事態を招いている。このことが、韓国の少子化の原因の一つとも指摘されている[7][8]

また、チョンセを利用した「GAP投資」というものがある。チョンセで入居可能なマンションを投資家が購入し、価格上昇後に売却して差益を得る投資方法である。物件購入額の6~8割は借り主が預けるチョンセの保証金で賄えるので、投資家が用意する資金は少なくてすみ、多くの者が投資に参加するようになっている。ソウル江南区のマンション取引のうち、GAP投資の比率は72%に達しているとされ、チョンセは不動産価格が高騰する一因とされている[3]

新築の家は相場が分かりづらい点を悪用し、チョンセの保証金を不動産そのものの価格より高く設定し、その保証金を騙し取る詐欺が発生している[9]

関連項目

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脚注

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  1. ^ 金鉉善韓国の伝貰権における法律上の内容 広島大学
  2. ^ 石昌目「韓国における住宅賃貸借 -伝貰制度を中心に-」『北大法学論集』第50巻第4号、北海道大学法学部、1999年11月、859-883頁、ISSN 03855953NAID 120000954170 
  3. ^ a b c 中村公 (2020年8月). “韓国止まらぬ不動産高騰 賃貸制度チョンセに大なた”. NNA. https://www.nna.jp/nnakanpasar/backnumber/200801/feature_001 2023年2月1日閲覧。 
  4. ^ “(GLOBE+)韓国のチョンセ 「タダ」で家を借りられる制度、曲がり角”. 朝日新聞. (2022年10月17日). https://www.asahi.com/articles/DA3S15447780.html 2023年2月1日閲覧。 
  5. ^ 韓国の住宅事情:住居形態と「チョンセ」” (PDF). 米子市 (2016年11月1日). 2021年3月27日閲覧。
  6. ^ “ソウルの住宅価格、東京より1200万円高く、ニューヨークと同等”. ハンギョレ. (2017年11月21日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/29016.html 2021年3月27日閲覧。 
  7. ^ 大部俊哉 (2021年3月5日). “韓国出生率0.84の衝撃 結婚どころじゃない若者たち”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASP343QMWP2VUHBI02P.html 2021年3月6日閲覧。 
  8. ^ 牧野愛博 (2020年7月20日). “若者の地獄 韓国大統領を支持しない意外な理由”. フォーブス. https://forbesjapan.com/articles/detail/35940/1/1/1 2021年3月6日閲覧。 
  9. ^ “膨らませた鑑定評価書を利用した伝貰詐欺急増”. 東亜日報. (2022年10月3日). https://www.donga.com/jp/article/all/20221003/3674272/1 2023年2月1日閲覧。 

外部リンク

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  • 金鉉善「翻訳 韓国における「住宅賃貸借保護法」及び「住宅賃貸借保護法施行令」(1)」『広島法学』第40巻第4号、広島大学法学会、2017年3月、10-1頁、doi:10.15027/43429ISSN 0386-5010NAID 120006313740 
  • 金鉉善「翻訳 韓国における「住宅賃貸借保護法」及び「住宅賃貸借保護法施行令」(2・完)」『広島法学』第41巻第1号、広島大学法学会、2017年6月、50-41頁、doi:10.15027/44534ISSN 0386-5010NAID 120006369474