サンリオSF文庫(サンリオ エスエフぶんこ)は、サンリオ1978年から1987年にかけて刊行していた文庫SF叢書。1978年7月25日に、アーシュラ・K・ル=グイン『辺境の惑星』、フィリップ・K・ディック『時は乱れて』、ウィリアム・S・バロウズ『ノヴァ急報』、レイ・ブラッドベリ『万華鏡』など6冊を発行して刊行を開始。1987年8月20日のフィリップ・K・ディック『アルベマス』[1]まで、全197冊が刊行された。創刊時の編集者は佐藤守彦、顧問に山野浩一。2代目で終刊時の編集者は西村俊昭

終刊時点でも根強い人気があり、先発の創元SF文庫ハヤカワ文庫SFにない特色もあったとされるが、商業的には苦戦を強いられた[2]

ニュー・ウェーブ作品、女性作家のSF作品、英米以外のSF作品、SF以外の怪奇小説ファンタジーミステリーなどの幅広いジャンルの作品を刊行していることも特徴。SF作品では、1982年に映画『ブレードランナー』が公開されカルト的人気を集めたフィリップ・K・ディック作品の刊行が21冊と最も多く、特に後期になるにつれ新刊はディック作品が中心となった。

装丁

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装丁は、全ての文字の書体にゴシック体を用いるなど、一定のフォーマットに統一されていた。コート紙のカバーは、表紙の全面にイラストをあしらい、上部中央に書名や著者などが配されていた。イラストは加藤直之角田純男木嶋俊らによるもので、シュールリアリスティックなものが多かった。カバーの背にはタコ型火星人のマークと番号が付されていた。番号は、刊行順に作家ごとに割り振られた数字と、作家別に刊行順に割り振られたアルファベットの組み合わせからなるものであった(例えば、3-Fは、ディックのサンリオSF文庫で6番目に刊行された作品を指す)。

宣伝活動

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発刊当初は先発の創元SF文庫、ハヤカワ文庫SFとの衝突を避け、ほとんど宣伝を行わなかったが、売上が伸びだした1980年夏に2億円の予算を組み、本格的な宣伝活動が開始された[3]

終刊とその後

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1987年に終刊。終刊理由は翻訳契約をした作品をすべて出版したことで、今後サンリオの出版業は子供・ファミリー向けに集約させるとした[2]

本文庫の刊行作品は、本文庫の廃刊後は一時期古書としての取引価格が高騰し、1988年時点で作品に関係なく古書としては1500円〜2000円で取引されていたという[4]。2018年現在までには他社の文庫(ハヤカワ文庫創元SF文庫ちくま文庫)で新版刊行されたり、単行本として出されたものも多い。なお一部は近年、新訳で文庫刊行されている。一方でマニアックな作品もあるため、未刊行のまま入手が困難となっている文庫も多い。

2014年には、シリーズ全冊を解説した『サンリオSF文庫総解説』(牧眞司大森望編、本の雑誌社)が刊行された。同書は2015年第46回星雲賞ノンフィクション部門を受賞[5]

2024年5月の時点で約8割が、国立国会図書館デジタルコレクションで無料公開されている[6]

サンリオ文庫

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サンリオからは一般文庫のサンリオ文庫も刊行されており、当初はサンリオSF文庫から刊行されたジャンルの作品であっても、後にはサンリオ文庫から刊行されているものもある。たとえば、ジョン・コリアの『奇談集』はサンリオSF文庫から刊行されたが、続刊の『奇談集II』はサンリオ文庫に収録されている。

刊行書一覧

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  • サキ『ザ・ベスト・オブ・サキ』 (11-A)
  • サキ『ザ・ベスト・オブ・サキⅡ』 (11-B)
  • ドナルド・バーセルミ『口に出せない習慣、奇妙な行為』 (15-A)
  • ドナルド・バーセルミ『罪深き愉しみ』 (15-B)
  • ドナルド・バーセルミ『アマチュアたち』 (15-C)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『天国の顔』 (タルタロスの世界I) (19-A)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『地獄の幻影』 (タルタロスの世界II) (19-B)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『無限の煌き』 (タルタロスの世界III) (19-C)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『ハルシオン・ローレライ』 (宇宙飛行士グレンジャーの冒険1) (19-D)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『ラプソディー・イン・ブラック』 (宇宙飛行士グレンジャーの冒険2) (19-E)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『プロミスト・ランド』 (宇宙飛行士グレンジャーの冒険3)』 (19-F)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『パラダイス・ゲーム』 (宇宙飛行士グレンジャーの冒険4)』 (19-G)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『フェンリス・デストロイヤー』 (宇宙飛行士グレンジャーの冒険5)』 (19-H)
  • ブライアン・M・ステイブルフォード『スワン・ソング』 (宇宙飛行士グレンジャーの冒険6)』 (19-I)
  • トマス・M・ディッシュ『334』 (22-A)
  • トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』 (22-B)
  • トマス・M・ディッシュ『キャンプ・コンセントレーション』 (22-C)
  • サミュエル・R・ディレーニ『時は準宝石の螺旋のように』 (24-A)
  • サミュエル・R・ディレーニ『エンパイア・スター』 (24-B)
  • サミュエル・R・ディレーニ『アプターの宝石』 (24-C)
  • ピーター・ディキンスン『緑色遺伝子』 (26-A)
  • ピーター・ディキンスン『キングとジョーカー』 (26-B)
  • ピーター・ディキンスン『生ける屍』 (26-C)
  • ロザリンド・アッシュ『蛾』 (30-A)
  • ロザリンド・アッシュ『嵐の通夜』 (30-B)
  • ロイド・ビッグルJr.英語版『暗黒のすべての色』 (ダーゼック・シリーズ)』 (31-A)
  • ロイド・ビッグルJr.『暗黒の監視人』 (ダーゼック・シリーズ)』 (31-B)
  • ロイド・ビッグルJr.『この暗黒化する宇宙』 (ダーゼック・シリーズ)』 (31-C)
  • ロイド・ビッグルJr.『沈黙は死の匂い』 (ダーゼック・シリーズ)』 (31-D)
  • ロイド・ビッグルJr.『時の復讐』 (ダーゼック・シリーズ)』 (31-E)
  • ディディエ・マルタン『飛行する少年』 (35-A)
  • クリストファー・プリースト『伝授者』 (43-A)
  • クリストファー・プリースト『逆転世界』 (43-B)
  • クリストファー・プリースト編『アンティシペイション』 (43-C)
  • マイクル・コニイ『ブロントメク!』 (45-A)
  • マイクル・コニイ『ハローサマー、グッドバイ』 (45-B)
  • マイクル・コニイ『冬の子供たち』 (45-C)
  • マイクル・コニイ『カリスマ』 (45-D)
  • ブライアン・W・オールディス『手で育てられた少年』 (47-A)
  • ブライアン・W・オールディス『兵士は立てり』 (47-B)
  • ブライアン・W・オールディス『世界Aの報告書』 (47-C)
  • ブライアン・W・オールディス『マラキア・タペストリ』 (47-D)
  • ブライアン・W・オールディス『突然の目覚め』 (47-E)
  • アントニイ・バージェス『ビアドのローマの女たち』 (48-A)
  • アントニイ・バージェス『アバ、アバ』 (48-B)
  • アントニイ・バージェス『どこまで行けばお茶の時間』 (48-C)
  • アンナ・カヴァン『愛の渇き』 (56-A)
  • アンナ・カヴァン『ジュリアとバズーカ』 (56-B)
  • アンナ・カヴァン『氷』 (56-C)
  • ボブ・ショウ『メデューサの子ら』 (57-A)
  • ボブ・ショウ『去りにし日々、今ひとたびの幻』 (57-B)
  • ボブ・ショウ『おれは誰だ?』 (57-C)
  • ボブ・ショウ『眩暈』 (57-D)
  • ボブ・ショウ『見知らぬ者たちの船』 (57-E)
  • J・G・バラード『夢幻会社』 (59-A)
  • J・G・バラード『ザ・ベスト・オブ・J・G・バラードⅠ』 (59-B)
  • トム・リーミイ『沈黙の声』 (63-A)
  • トム・リーミイ『サンディエゴ・ライトフット・スー』 (63-B)
  • イアン・ワトスン『マーシャン・インカ』 (71-A)
  • イアン・ワトスン『ヨナ・キット』 (71-B)
  • デイヴィッド・ウイングローブ英語版編『最新版SFガイドマップ 入門・歴史編』 (78-A)
  • デイヴィッド・ウイングローブ編『最新版SFガイドマップ 作家名鑑編 上 《A~L》』 (78-B)
  • デイヴィッド・ウイングローブ編『最新版SFガイドマップ 作家名鑑編 下 《M~Z》』 (78-C)
  • ロン・ハバード『奪われた惑星』 (バトルフィールド・アース1) (79-A)
  • ロン・ハバード『人類からの使者』 (バトルフィールド・アース2)』 (79-B)
  • ロン・ハバード『テレポーテーション作戦』 (バトルフィールド・アース3)』 (79-C)
  • ロン・ハバード『侵略惑星サイクロの謎』 (バトルフィールド・アース4)』 (79-D)
  • ロン・ハバード『宇宙戦艦キャプチュア』 (バトルフィールド・アース5)』 (79-E)
  • ロン・ハバード『地球よ、銀河に甦れ』 (バトルフィールド・アース6)』 (79-F)
  • R・A・ラファティ『悪魔は死んだ』 (83-A)
  • R・A・ラファティ『イースターワインに到着』 (83-B)
  • ロバート・アダムス英語版『ホースクラン登場』 (ホースクラン1) (84-A)
  • ロバート・アダムス『ホースクランの剣』 (ホースクラン2) (84-B)
  • ロバート・アダムス『ホースクランの復讐』 (ホースクラン3) (84-C)

参考文献

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※下記の回想研究も刊行。
小平麻衣子ほか編、やなせたかし装画、小手鞠るい小池昌代永田萠ほか寄稿

脚注

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  1. ^ 訳者の大瀧啓裕『翻訳家の蔵書』(東京創元社、2016年)に終了の経緯も回想されている。
  2. ^ a b 「ブックレーダー'87 『サンリオSF文庫』が終刊 売れ行きに難、10年で息切れ」『読売新聞』1987年8月10日付朝刊、8面。
  3. ^ 「サンリオ(中)映画進出で宣伝学ぶ(こちら宣伝部)」『日経産業新聞』1981年11月11日付、20頁。
  4. ^ 「文庫 “消えた文庫”が高値呼ぶ」『読売新聞』1988年6月20日付朝刊、9面。
  5. ^ 2015年 第46回星雲賞 - 日本SFファングループ連合会議(2021年2月5日閲覧)
  6. ^ 「幻の「サンリオSF文庫」、国立国会図書館デジタルコレクションで無料公開中」(INTERNET Watch, 2024年5月2日)

外部リンク

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関連項目

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