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2024年7月26日 (金)

カウラ事件など

 石破 茂 です。
 1944年8月5日に、オーストラリアのニューサウスウェールズ州カウラで起こった日本軍捕虜脱走事件(カウラ事件)から80年になります。545名の脱走は史上最多とも言われ、231名が死亡、108名が負傷したと言われています。
 今週、ジャスティン・ヘイハースト駐日オーストラリア大使と昼食を共にした際、これが話題となりました。オーストラリアはジュネーブ条約を遵守し、捕虜たちに対して十分な食事と医療を提供し、野球や麻雀などの娯楽も認められていました。ところが日本軍捕虜たちには「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿れ」という「戦陣訓」(1941年1月8日、東条英機陸相名で発せられた訓令)が叩き込まれており、「このように楽をしていてよいはずがない」「戦死した戦友に申し訳がない」「捕虜となったことが知れたら家族は村八分の扱いを受ける」などとの思いが募り、助かるためにではなく撃たれて死ぬために、成算のない脱走を図ったのではないかと言われています。捕虜たちはこの脱走計画の賛否を投票で問い、その8割が賛成したのだそうです。
 現地では毎年慰霊祭が行われ、80周年の節目でもある今年は日本からの訪問団を迎え、例年よりも大きな式典があるとのことでした。私もこの事件の存在は知っていましたが、詳細については今回改めて学んだことでした。カウラ市には犠牲者を慰霊し、日豪友好を象徴する日本庭園もあるとのことです。
 カウラ事件はNHKのドキュメンタリー(2005年)や日本テレビのドラマ(2008年)、映画(「カウラは忘れない」2021年)にもなっているのですが、不覚にもどれも視ておりませんでした。オーストラリアでは多くの人がこれを知っているのに(誰でも知っている、との指摘もあります)、日本ではほとんど語られることもないことに、自分に対する反省も込めて暗澹たる思いに駆られたことでした。
 「空襲に遭ったら逃げずに火を消せ」と規定した「防空法」(昭和12年成立・昭和16年改正)によって多くの市民が命を落としたのも、「前線で兵隊さんが命を懸けて戦っているときに、市民が逃げることは許されない」との考えに基づくもので、これは「戦陣訓」に込められた思い(「思想」というべきものかはわかりません)と相通ずるものであったのでしょう。徒にパシフィズム的な言辞を弄するつもりはありませんが、過去を直視する誠実さと勇気は持たねばなりません。

 米国バイデン大統領の選挙戦からの撤退表明には、ああ、やはりとの思いが致しました。あくまでも私見ですが、2021年12月8日、バイデン大統領が記者団からの問いに対して「ロシアがウクライナに侵攻しても、米軍を派遣することは選択肢にない」と発言したこと、また翌2022年3月11日にも「米国とロシアとの直接対決は第3次世界大戦になる」と述べて再度米軍の派遣を否定したことは、大きな問題であったと思っています。「ウクライナはNATOに加盟していないので米国は防衛義務を負わない」とわざわざ言及する必要はなかったし、これがロシアに誤ったメッセージを送ることになったとも思います。法的に整理すれば、国家同士が同盟関係にないことと、集団的自衛権を行使しないこととは別の話です。
 その一方、2022年5月23日の日米首脳会談後の記者会見において「台湾防衛のため軍事的関与をする意思はあるか」との問いに対しては「イエス」と即答し、「それが我々のコミットメント(約束・責任)だ」と述べました。台湾はいかなる集団安全保障機構にも参加していませんし、米国の国内法である「台湾関係法」には米国の台湾防衛義務は全く定められていないのですが、この発言の中国に対する抑止効果は極めて大きく、高く評価されるべきものだったと思います。
 最近常套句のように語られる「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」というフレーズは、それだけでは何らの国益にも資することはありません。ウクライナと台湾との対比を戦術も含めて深く検証し、それを踏まえて日本はどのように行動すべきなのか、法律上、装備上、運用上の準備を今から周到に進めることこそが肝要です。次期米国大統領がトランプ前大統領であれ、ハリス副大統領であれ、これは変わるものではありません。米国新政権とクリスチャン・シオニズムとの関係についても、よく知らべておかねばならないと思っております。
 合衆国大統領は世界有数の激職であり、四年にわたってこれを務めたバイデン氏に対して、我々は深く敬意を表さなければならないのであって、いかに対立する立場であっても悪罵の限りを尽くす反対陣営の姿勢には強い違和感を覚えます。

 本日の自民党総務会において、岸田総裁のイニシアティブにより全国で展開されている、自民党改革について全国各地の意見を聴く「車座対話」はいつ一巡し、、党本部に設けられた刷新本部においていつ総括を行うのかを質したのですが、明確な回答は得られませんでした。地方の声を等閑視した時に自民党が危機を迎えるのは経験則上明らかなのであり、執行部として真摯に対応されることを切に望みます。
 酷暑の日々、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2024年7月21日 (日)

どうする日本東部

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暑いなか、お集まりいただき、ありがとうございます!

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どうする日本中部

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2024年7月20日 (土)

若桜町花火大会(郡家駅前)

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2024年7月19日 (金)

梅雨明けなど

 石破 茂 です。
 関東地方の梅雨も明け、都心も酷暑の日々となりました。
 昭和40年代の小学生の頃、一学期の期末試験が終わり、ほとんど梅雨明けと同時に浦富海岸(鳥取県岩美町・山陰海岸国立公園)で二泊三日で行われた臨海学校は、本当に楽しい思い出です。「梅雨明け十日」と言いましたが、安定した天候で、波もほとんどなく、海はこの上なく透き通っており、淡水プールで100メートル以上泳げる「一級」の児童は約1.5キロメートルの遠泳に参加することを義務付けられたのですが、泳ぎ終わって飲んだ「飴湯」が冷えた体にこの上なく美味しく感じられたことを、今も鮮明に覚えています。
 この30年で、全国の海水浴場は二割減少、海水浴客はなんと八割も減少しているとのことです。日光を過度に浴びると紫外線の影響によって皮膚ガンを発症しやすいとの理由によるものなのかもしれませんが、「島国から海洋国家へ」とは言いながら、海に対する親近感が加速度的に希薄になっていくことに、危機感にも似た思いがしてなりません。

 

 度重なる自衛隊、中でも海上自衛隊の問題が噴出していることには、デジャヴの感を禁じ得ません。福田内閣で防衛大臣を拝命していた時、イージス艦衝突事案、航泊日誌破棄事案等々、多くの不祥事や事故が起こり、総理の命により防衛省改革会議が設置され、あらゆる論点を議論して改善の方向を提示したのですが、時間の経過とともに風化してしまったようで残念でなりません。潜水手当不正受給など、あってよいはずがありませんが、いつの間にここまでモラルが低下してしまったのか。護衛艦(潜水艦救難艦含む)は国家を体現しているのであり、その規律は、平素、陸(おか)を離れる機会が多いからこそ、より自律的に厳しいものであるべきなのに、「見えなければ、わからなければいい」ということにどうしてなってしまったのでしょうか。
 自衛隊は「国における最強の実力組織であるが故に、最高の規律が求められ、それに相応しい最高の栄誉が与えられる」という「軍隊」の本質から目を逸らせてきたことが今日の事態を招いたのだと私は確信しています。「自衛隊には必要最小限の装備と権限しか与えられていないので、憲法第9条第2項にいう『戦力』、つまり『陸海空軍その他の戦力』ではない」などという摩訶不思議な説明をし続け、「憲法第9条第2項はそのままにして、新たに第3項を新設して自衛隊を明記する」という改正案を唱えてきたことが、このような結果を招来したと言わざるを得ません。政治、特にもちろん私を含めた自民党が強く反省すべきは、まさしくこの点にこそあります。
 随分と以前にも書いたことですが、森喜朗内閣で防衛総括政務次官(今の副大臣)を拝命した時、かねてより畏敬してやまなかった吉原恒雄先生(当時拓殖大学教授・故人)を政務次官室にお招きした時、「石破さん、あなたは自衛隊を好きですか」と意外な質問をされ、「もちろん好きです」とお答えしたところ、「そうですか。あなたは総括政務次官を辞めるとき、きっと自衛隊を嫌いになっているでしょう」と仰いました。「あなたは自衛隊を好きだからこそ、良かれと思ってこれからいろいろな意見を述べるでしょう。そうすればするほどに疎まれる。残念ながらここはそういう組織なのです」と悲しそうに述べられた時のことを時折思い出しますし、その後、長官や大臣を務めながら、その言葉を強く実感したことでした。幸いにして多くの心ある防衛官僚や自衛官との出会いによって、私は自衛隊を嫌いになることはありませんでしたが、政治家が自衛隊に媚びるようになったり、意見を言わなくなったりすれば、文民統制など成り立つはずはありませんし、やがては国を亡ぼすことにもなりかねません。

 不祥事から国民の信頼を失い、大きな反省のもとに改革の方向性を打ち出したにもかかわらず、更なる不祥事が発覚した、というのは、自民党も同様です。もう一度気持ちを新たにして取り組まねばならないと思ったことでした。

 

 自民党総裁選挙について様々な報道があった週でした。「総裁選の号砲が鳴った」だの「立候補の決意を周囲に語った」だの、報道は選挙と人事にしか関心がないのか、言ってもいないことを書き立てますし、政策の内容に至っては全くと言ってよいほどに取り上げません。もしかすると政策について書く能力がないのかと疑いたくなるほどです。「正論を言っているばかりでは支持は広がらない」とのご指摘は有り難く承りますが、正論を敬遠する風潮を是認していてはいけないのではないでしょうか。政治ジャーナリストと称する方々の中にも、直接会ったことも話をしたこともないのにさも事情通のように論評される方々がおられ、これで世の中が良くなるはずはないと痛感させられます。

 

 トランプ前大統領の狙撃後の対応は、覚悟を決めた見事な政治家のそれでした。究極の時に人間の真価は出るものですし、「サスペンスとディールの大統領」の再登場の可能性を我々はよく認識して備えなくてはなりません。

 

 今週末、出来れば「プーチン重要論説集」(2023年・星海社刊)を読んでみたいと思っています。ロシア正教の熱心な信者とされているプーチン大統領は、その演説や論説の中で聖書をしばしば引用しますが、それがどのような文脈の中で、どのような論理構成で用いられているのか、これを知ることは大統領の思考を推し量る一つの大きな手掛かりとなるのではないか、対ロシア外交を語る上で重要なのではないか、と考えています。
 
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2024年7月18日 (木)

イシバチャンネル第百四十七弾「新紙幣について」

イシバチャンネル第百四十七弾「新紙幣について」をアップいたしました。

是非ご覧ください

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2024年7月12日 (金)

最近のおすすめ書籍など

 石破 茂 です。久しぶりに、最近読んで感銘を受けた本のご紹介です。

 

 「なぜ日本人はかくも幼稚になったのか」(福田和也著・1996年・角川春樹事務所)
 最近はあまりお見掛けいたしませんが、平成時代の初期、保守の若手論客として活躍した福田和也氏の論考です。「まず政治家が国民に『イヤなこと』を強いなければならない」「民主主義は万能の特効薬ではない」「『侵略戦争』か『聖戦』かという枠組みで戦争の意味を考えるのは間違いだ」等々、賛否は別として、物事の本質を正面から見極めて論じた論考には改めて深く考えさせられます。

 

 「矛盾だらけの日本の安全保障 『専守防衛』で日本は守れない」(冨沢暉元陸上幕僚長と田原総一朗の対談集・2016年・海竜社)
 正に題名通り、安全保障の本質を論じた対談集で、陸上自衛隊のトップを務められた冨沢氏の見解は地に足の着いた説得力に富むものですし、田原氏の質問も極めて巧みです。自分の雑駁な知識を整理するのにとても役立ち、改めて多くの貴重な示唆を受けました。

 

 「21世紀未来図 日本再生の構想 全体知識と時代認識」(寺島実郎著・2024年・岩波書店)
 経済、国際関係、安全保障等々、各般にわたって深い知識と鋭い洞察力を持って論じた素晴らしい一冊。今の米国を論じるにあたってのキーワードは「クリスチャン・シオニズム」であるとの指摘には、深く頷かされました。混迷する今の時代にあって、あるべき保守の思想とはこのようなものではないかと思います。
 寺島氏の著書以外は既に絶版かと思われますが、ネットでは入手可能です。是非ともご一読くださいませ。

 

 東京都知事選挙は大方の予想通りの結果となりました。石丸氏が二位に入ったことを意外とする向きもありますが、「基本的には保守系」「自民党ではない」「若くて見栄えが良い」「はっきりとモノを言う」という、今の時代の要請に当てはまった候補者であり、メディアが大きく取り上げたので、ある意味当然の結果であったのかもしれません。
 ご本人と一度も会ったことが無いので、単なるメディアを通じての印象となり恐縮ですが、開票日の同氏のインタビューの受け答え振りやその内容には少なからず違和感を覚えました。メディアからどれほど自分の意に沿わない質問をされても、インタビュアーの向こうにいる視聴者や読者に向かって出来るだけ丁寧な受け答えをしなければならない、というのは自戒を込めて思っていることですが、皮肉と冷笑を交えたような回答ぶりには残念な思いがいたしました。また、今後について問われた際、国政への意欲を披瀝し、「岸田総理の広島一区も選択肢」と述べた時にはやや興醒めした思いでした。四年前に安芸高田市長に立候補した時、そして今回都知事選挙に立候補した時、それぞれに語った政策に共感して投票した人の思いについては、どのように考えているのでしょうか。いつかご本人と話をする機会もあるかもしれませんので、あくまで現時点における私の感想です。

 

 小池知事はやはり二期八年間の実績に基づく安定感が評価されたのでしょうし、公約に掲げられた地下鉄駅のシェルター化や富士山噴火対策などを着実に実施し、全国のモデルとしていただきたいものです。
 蓮舫氏の敗因として、都知事選挙に国政の争点を持ち込んだことや、共産党との共闘を挙げる向きもありますが、詳細な分析はこれからなされることと思います。かつて社会党と共産党が推した美濃部亮吉知事の選挙の際、当時不人気な長期政権であった佐藤栄作政権を意識して「ストップ・ザ・サトウ」というキャッチフレーズが大きな効果を発揮した故事もあり、一概には言い切れないようにも思います。
 同時に行われた都議会議員補欠選挙が自民党の2勝6敗という結果に終わったことこそ、総括と反省が必要です。来年は都議会議員の本選挙、参院選などが控えており、「地方選の結果に一喜一憂しない」などと言っている場合ではありません。
 私が応援演説に行ったうち、府中市、板橋区では自民党候補が勝利できました。候補者も、応援体制も立派だったと思いますが、なによりも有権者の皆様に心よりお礼申し上げます。どちらの候補者も、自民党の数々の不祥事について率直にお詫びするとともに、それぞれの地域の課題と解決策を誠実に熱意を持って語っていたことが印象的でした。

 

 昨11日は、3月に急逝された元防衛大学校長 元神戸大学教授 元防衛省改革会議座長の五百籏頭真先生を送る会に参列して参りました。様々な事故や不祥事が続いた防衛省・自衛隊を改革する際、福田康夫内閣の防衛大臣として言葉に尽くせないご指導を賜りましたことに、心より感謝しております。「送る会」では蒲島郁夫氏、北岡伸一氏、御厨貴氏のお三方の弔辞が実に素晴らしいものでしたし、ご子息の五百籏頭薫・東大教授の謝辞も感銘深く拝聴いたしました。真のリベラリストであり、教育者であり、深く学問を究められた五百簱頭真先生の、御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。

 

 今週の都心は異様に暑い日々が続きました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
 

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2024年7月10日 (水)

イシバチャンネル第百四十六弾「出生率」

イシバチャンネル第百四十六弾をアップいたしました。


 


是非ご覧ください

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2024年7月 5日 (金)

都議補選など

 石破 茂 です。
 東京都知事選と9選挙区での東京都議会議員補欠選挙の投開票日を7日に控え、私も一昨日は八王子市と府中市での個人演説会、昨日は板橋区での街頭演説会で登壇して参りました。「知名度の高さ故の人寄せ要員」であろうとはいえ、候補者の人となり、訴えている政策の他に、当該選挙区や演説会場の所在地(八王子市加住町、府中市西府町、板橋区成増など)の各種指標や地域特有の課題などを事前にある程度承知しておかなければ、説得力のある応援演説にはなりません。東京都には62の市区町村があるのですが、人口増減率、世帯平均所得、出生率、婚姻率、人口当たりの病床数等々、さまざまな数値が大きく異なることに驚かされます。
 最近はこれらに加えて、太平洋(大東亜)戦争時の戦災状況も事前に調べるように努めて心がけているのですが、東京も昭和20年3月10日の東京大空襲だけではなく、府中市を含む東京都西部は同年5月25日、板橋は6月10日に大規模な空襲を受け、多数の犠牲者を出しています。シェルターや避難所を整備するにあたって、こういった歴史の教訓も今一度よく検証するべきです。市民や国民の避難を第一に考えていない、という点において、日本は戦前と戦後が連続しているように見えることに、改めて慄然と致します。

 都知事選や都議補選が終われば、政治報道は一気に自民党総裁選挙一色になるのかもしれませんが、内外の現状をどのように認識し、どのような政策を志向しているのかを等閑視して、ひたすら活劇調に「政局」のみを面白おかしく報じることは、日本政治にとって何のプラスにもなりません。未だに既存メディアの影響力が大きい中、「第四の権力」と言われるメディアに対しては三権分立的な相互抑制のシステムが存在していません。先週もこの点を指摘しましたが、もしメディアが暴走したら、立法府、行政府はどのような手段をとるべきなのでしょうか。司法による解決は裁判所への訴えという形がありますが、これには相当の時間がかかります。

 英国の総選挙では野党・労働党が大勝し、14年ぶりに政権が交代する運びとなりました。日本ではイギリスのような単純小選挙区制とは異なり、いわゆる「死に票」を生かすために比例代表制を並立で組み合わせているため、このような劇的な形での政権交代は起こりにくく、それが中途半端な感じを与えてしまっているのかもしれません。
 現在の小選挙区比例代表並立制は、それまでの中選挙区制度の「同じ自民党同士で戦うためにサービス合戦となりカネがかかりすぎる」「政策ではなく個人を選ぶことになる」「天下国家の在り方ではなく地域の利害を語る」等々の弊害を改めるため、長い侃々諤々の議論を経て導入されたものですが、それらの弊害は改められたのか、そして他の問題が生じてはいないか。自民党で中選挙区制度で戦った経験を持つのは、岸田総理や浜田衆議院国対委員長など、当選10回生以上のごく少数になってしまいましたが、そうであるだけに我々が残っている間にもう一度徹底した議論を行い、改めるべきは改めていかなくてはなりませんし、これは小選挙区制を導入した我々の責任であると思っています。

 日本銀行券の肖像画が、一万円券が渋沢栄一、五千円券が津田梅子、千円券が北里柴三郎に変更になり、この3日より流通が始まりました。福沢諭吉先生(慶應義塾で「先生」と呼ばれるのは福沢先生だけで、塾長であれ、教授であれ、すべて「君」で呼ばれます)が使われなくなったことに慶應のOB(「塾員」といいます)が反発しているとの報道も一部にありますが、最高額紙幣の肖像になっただけでも十分に名誉なことで、それほど拘ることでもないと思っています。そもそも紙幣の肖像画に政治家や軍人を使うことには慎重であるべきで、世界的な学問的功績のあった学者を優先すべきと思いますし、もちろん、時の政府の意図が働くようなことは断じてあってはなりません。

 前々回の当欄で「昔のクルマはうっとりするほどに美しかった」的なことを記しましたが、五木寛之氏の1972年の短編「わが憎しみのイカロス」には、BMW2000CSの美しさに惚れ込んだ少年の鬼気迫るような姿が描かれ、これを読んだ時の衝撃は今も忘れられません。五木氏の小説はほとんど読んでいますが、初期の短編や中編には何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていて、今も時折読み返しております。

 明日6日土曜日は自民党愛知県連大会で名古屋市へ、7日日曜日はかねてより親交のある元竹田市長の首藤勝次氏の叙勲祝賀会で大分県竹田市へ、8日月曜日は衆議院当選同期の木村義雄前参院議員の政経フォーラムで高松市へ、それぞれ参ります。
 酷暑の中、地方への出張が続き、心身ともにかなり疲れ気味ではありますが、何とかこなしたいと思います。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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