メディアの暴走など
石破 茂 です。
前通常国会会期末の6月19日、国家基本政策委員会 衆参合同審査会において、現内閣になって初めての党首討論が開催されましたが、この開催頻度の少なさと時間の短さは一体何なのでしょう。総質疑時間はわずか45分で、立憲民主党が26分、維新の会が12分、日本共産党が4分、国民民主党が3分という時間配分、これでまともな討論になどなるはずがありません。
国家基本政策委員会は2000(平成12)年に国会法第41条によって衆・参両院に設置された常任委員会で、委員長・委員部職員・委員長室・委員長車等も他の常任委員会と同様に割り当てられています。それなのに一国会に一度も開かれないで、これを税金の無駄遣いと言わずして何と言うのでしょう。せめてひと月に一回は開催し、総質疑時間として最低二時間は充てるべきものですし、総理大臣の負担が過重になるというのであれば、その分、予算委員会などの総理の出席回数を減らせばよいと思います。「党首討論」と称しながら、あくまで対総理質疑という形式を採っているのですが、質問者側からの事前の詳細な質問通告もなく、官僚の手による答弁書もないために、まさに総理と野党党首の資質と知識、質問力と答弁力が問われるのであり、この絶好の機会は最大限に活用されるべきです。
「令和の政治改革」で積み残した議論として、「さらにおカネのかからない制度をどのように設計するか」「政党の統治の仕組み(ガバナンス)を定めた『政党法』をどのような内容とし、条文化するか」「現行の『小選挙区比例代表並立制』のデメリットをどのように改めるか」という三点がありますが、国会閉会後、自民党内で議論が始まる気配がありません。いや、議員の中には問題意識をもってこれに取り組もうとする動きがあるのですが、その認識や現状に対する危機感が党内で共有されているのか、疑問なしとしません。この議論こそ、自民党が率先して取り組み、野党との相違を国民に示すべきなのですが、「車座対話集会」において全国の地方組織から出された意見の集約や類型化、分析の作業はどこまで進捗しているのでしょう。「言いっ放し、聴きっ放し」では「単なるガス抜き」との批判を免れず、ましてや「この機会を利用して顔と名前を売る」などと言われるようなことがあっては、ますます地方の信頼を失うことになります。執行部の適切で早急な対応を、引き続き総務会などで強く求めて参ります。
総裁選を9月に控えて、自民党内外が何やら騒がしくなりつつありますが、「日本の課題は何か」「それらにどのように対処するのか」という議論が全く欠落したままに「誰と誰が会った」「誰が誰に激怒している」といった活劇風の報道ばかりが伝えられて、心底嫌気がさします。
挙げ句、明らかに何らかの意図を持ったとしか思えない記事までが見られるようになりました。本日の朝日新聞の朝刊などがまさしくその典型で、何の根拠もないままに「27日、石破氏は総裁選に出馬の意志を周囲に伝えた」などと書いていますが、何故27日で、「周囲」とは一体どこの誰なのか、私には全くわかりません。意志を伝えるのならまず家人、信頼するスタッフ、40年にわたって支えてくれている選挙区の後援者や有権者であって、その順序を飛ばすようなこともありえません。
私はかねてより、「民主主義には健全なメディアの存在が不可欠で、権力とメディアが癒着や結託をすれば国が亡びる」との意見を持っていますが、権力と癒着や結託をしなくてもメディアの暴走はあり得るのであり、これもとても恐ろしいことです。
円の下落が止まる気配がありませんが、これは「円安」ではなく「円弱」が本質のように思います。もっとも円が強かった(高かった)のは2011年の1ドル=75円32銭だった時で、今の160円台後半の水準は、その時の半分以下になっています。日本の輸出がGDPに占める割合は18%程度で、ドイツの47%、韓国の44%に比べてもともと相当に低いところ、円安による「半額大安売りセール」的な商売がいつまでも続くとはとても思えませんし、世界のマーケットにおいて安さを売り物にしつづけるのは自らの首を絞めるようなものでしょう。「同じものを、安く、大量に作る」というかつての日本で成功したモデルから脱却し、いかに品質で勝負するか、高付加価値を価格転嫁するか、それが「成長と分配の好循環」にも必要なことなのではないでしょうか。
本日夕刻は札幌市において、高木宏壽復興副大臣の政経セミナーで講演の予定です。高木代議士は防衛大学校→慶大法学部→米国ウエスタンワシントン大学→北海道拓殖銀行→北海道警→北海道議会議員→衆議院議員、という異色かつ多彩な経歴の持ち主で、自民党ラーメン文化振興議員連盟の実質的な設立者でもあり、日頃より畏敬の念を持ってお付き合いさせていただいている同志です。
梅雨に入り、東京都心は不順な天気が続いておりますが、皆様の地域はいかがでしょうか。
どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。