「白黒端末の分野では絶対的な自信を持っている」楽天・三木谷氏
楽天株式会社は1日、電子書籍端末「kobo」の新機種として、既に海外で発売されている電子ペーパー端末「kobo glo」「kobo mini」の2機種を国内でも発売すると発表した。
「kobo glo」は6インチのフロントライト付き電子ペーパー端末で、価格は7980円。11月1日予約開始で、11月15日より出荷開始。「kobo mini」は5インチの電子ペーパー端末で、価格は6980円。発売予定は12月中旬(予約開始日は未定)。
また、同じく海外で発売されている7インチ液晶画面のAndroidタブレット「kobo arc」についても、近日中に発売を予定していることを明らかにした(詳細記事はこちら)。
1日には、都内でkobo端末の新機種に関する記者会見を開催。楽天の代表取締役会長でKobo Inc.のディレクターも務める三木谷浩史氏が端末を紹介し、記者からの質問に答えた。以下、記者会見での報道陣と三木谷氏の質疑応答の内容を紹介する。
●「品揃え20万冊」の目標は、「タイミングが合えば年内にも」
「kobo glo」を手に持つ三木谷氏 |
――既にAmazonのような強力なライバルが揃ってきているが、それらに対して現状でのkoboの強みは何か。次にコンテンツの調達に関して。EPUBだけを採用した結果、若干これまで苦労してきたかと思う。(目標としてきたコンテンツ点数の)数字の公約も満たされていない状況だが、年末に向けてコンテンツ調達のスピードはどのようになっているのか。
デバイスでは、我々の方はこれで既に日本で3機種の白黒端末を発売し、そしてAndroid端末の発売も控えている。ひとつの大きな特徴としては、koboはとにかくオープンプラットフォームであるということ。ファイルフォーマットもEPUB3というオープンなフォーマットを採用しており、これについてはトランジション(変換)に多少手間はかかっている部分はあるが、多くの出版社に「将来的にはEPUB3が必ずデファクトスタンダードになる」ということで支持をいただいている。
デバイスについても、今後ますます差別化をしていこうと思っており、さらに楽天市場とも連携してポイントなどをうまく使うことによって、より幅広い層にアピールしていきたい。
最大の違いは、microSDで大量の書籍をデバイスの中に入れられることかなと思っている。特に、我々が(koboを)やってみてわかったのは、日本の場合には漫画がたいへん大きな他の国との違いとしてあるということで、koboは32GBまでのmicroSDカードにより、最大1500冊ぐらいの漫画が入る。ここは大きな違いだと思う。
カラーバリエーションも豊富で、フォントにもモリサワフォントを使っているということで、より日本にローカライズされたと言うか、言い方は悪いですが、日本が本社であるがゆえにできることかなと思っている。
EPUB3の採用については、トランジションに当初の段階で多少手間取ったところは正直ありました。ただ、現時点では出版社の皆さんのコンセンサスとして、EPUB3をどんどん採用していこうということがあり、徐々に体制も整ってきたのかなと思っており、今後は(点数も)加速度的に増えていくのではないかと思います。
――量としては、これまで目標として挙げていた20万冊という数を年内に目指すのか、それともある程度近い時期に、また別の数字を出されるのでしょうか。
20万冊を目標として掲げていて、今現在は6万5000冊ということで、あと2カ月で13万5000冊ということになります。今後、結構大きな塊で、1万冊、2万冊という単位で入ってくる予定があり、そのタイミングが年内であれば20万冊までいけると思うが、それが多少ずれれば、(来年)1月になってしまうということもあるかもしれない。
――年内に100万台のkoboを売るという話もされていたが、そちらの達成状況はどのような状況か。楽天のプレミアム会員に対して端末を配布をしているという報道もあったが。
100万台まではなかなか行かないかなと思っているが、これは100万台という数字を公表して目標として立てたということではなく、内部の大きな夢として挙げていたもので、そこまではなかなか行っていないというのが正直なところ。
ただ、出足という意味では順調かなと思っており、コンテンツの売上についても好調だと思います。今回発表の「kobo glo」は、漫画を読むという意味においても、本当に日本人向けのデバイスだなと思っていまして、これをアピールしていきたい。
――コンテンツの中身について。先般、点数を過大表示したということで、消費者庁からの行政指導もあったと思うが、こういった状況になってしまった原因についてはどのように認識しているか。また、現在の6万5000点の中には、純粋に書籍と呼べないようなものも含まれていると思うが、20万点という数字はチャレンジングではないのか。そうした点についての見解を伺いたい。
当初、点数は3万冊という発表で、実際には約2万冊でスタートしたが、これは当初の予定としては3万冊のコンバージョンが終わるという予定だったが、実際にはオペレーションの手間が多少かかり、少し遅れてしまった。これについてはお詫びしなければならない。
現在のコンテンツの中身については、作家さんがどういった本を書いているかというような、たとえばWikipediaの情報が500ぐらいあると思う。これについてはウェブ上でも公開しているが、それ以外のものについては純粋な書籍、そしてコミックになっている。
――「kobo touch」発売時に、端末のアクティベーションの問題が起きたが、今回の新端末に関してはそのあたりは大丈夫か。その際のインタビューでは、「騒いでいるのは一部のユーザーだけ」といった発言もあったが、その認識は今でも変わらないか。
最初の段階では、PCに接続しないとセットアップができないという状況だったが、その後はWi-Fiに接続すれば基本的には1分以内にセットアップできるようになった。kobo touchではファームウェアのバージョンアップという形になったが、今後出てくる端末については、世界中のどこで購入しても、日本語を選択してWi-Fi接続すれば1分以内に使えるようになる。また、そういった前回の反省を踏まえて、今後はそのようなことがないように最善を尽くしていきたい。
●勝算は「あるからやる」。3Gモデルやプレミアム会員への送付は「答えられない」
「kobo mini」を手に持つ三木谷氏 |
――Kindleには3Gの回線がセットになっている機種がある。楽天もLTEでイー・アクセスとの提携を発表しており、その後イー・アクセスはソフトバンクが買収を発表したりといった動きはあったが、通信回線に関する戦略は。また、タブレットの7インチ端末は激戦区だが、ここで戦っていくにあたって勝算はあるか。
勝算はあるからやるんですよね(笑)。3Gモデルについては、今の段階ではお答えすることができないのが正直なところです。
ただ、電子書籍端末とタブレットというのは、たいへん大きな違いがある。電子書籍端末はダウンロードしたものを読むのが基本で、例えば飛行機に乗る場合などには、読む本をあらかじめダウンロードしておくという形になる。このあたりは価格と利便性の兼ね合いかなと思っている。スーパーWiFi(楽天とイー・アクセスの共同事業)については、イー・アクセスさんがどのようになるのかは我々にもよくわからないが、どうなるにせよ、スーパーWiFiを促進していきたいと思っている。
kobo arcについては、(Kindle)Fireとは全く違うもので、基本的にはarcはオープンなAndroid端末であるということが大きな特徴。当然、インターフェイスについてはTapestriesという独自のものを作っているが、基本的にはオープンというのが基本思想で、スペック的にも競合に比べると、同程度あるいは我々の方が優っていると思う。
――kobo touchを楽天プレミアムカード会員に送付した件について。その狙いと、いつまで続けるのか、どのくらい送ったのかを教えてほしい。
どういう販売促進をしているかということについては、残念ながらお答えすることができません。申し訳ございません。
――AmazonやiPad miniといった発表もあった。電子書籍とタブレットを一緒にするわけではないが、こうしたデバイスの市場が大きくなってきているということについて、改めてどのように受け止めているか。さきほどの「勝算は」という質問には「あります」という回答だったが、この激戦区の中でどのように戦っていくのか。
電子書籍という概念は、日本の中ではまだ比較的新しい概念。タブレットについては結構普及しましたが。さきほども申し上げたが、日本には漫画という特別な素晴らしいコンテンツがあり、いままでの白黒端末はあまりこの漫画を意識してこなかった。世界的にもあまり意識する必要がなかった。
我々がkobo touchを出してわかったのは、漫画の売上は非常に大きいということと、漫画を読んでもらうためにはいろいろな機能が必要であるということ。ひとつはデータファイルの容量が明らかに大きい。よって、欧米のものをそのまま持ってくるのではなく、ある程度カスタマイズする必要や、あるいは日本の仕様というものを世界的に採用して、世界基準にしてしまうということが必要になる。
今回のkobo gloに関しては、小説や実用書といった通常の書籍はもちろん楽しでもらえるし、漫画を読んでいただく上でも最適化されている。私も飛行機の中で10冊ぐらい漫画を読みながら帰ってきたが、やはり軽くていいなという感想。タブレットをずっと持っていると手が疲れるし、電池もずっと使っているとタブレットでは持たない。PCとタブレットが違うものである以上に、タブレットと電子書籍端末は違うものであると考えている。
電子書籍の世界の中で、やはり中核となっているのは白黒端末で、タブレットはどちらかと言えば映画や音楽、ゲームといったものが主流だと考えている。中にはタブレットで本を読もうという人もいるだろうし、欧米の調査ではだいたい70%~80%の方が白黒端末とタブレットを使い分けている。これからは、日本でも使い分けていくだろうなと思っている。kobo arcについての説明も今後させていただきたいと思っているが、白黒端末という分野においては、我々は絶対的な自信を持っているということです。
関連情報
(三柳 英樹)
2012/11/1 20:07
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