日本音楽著作権協会(JASRAC)は14日、2007年度の事業報告説明会を開催した。同年度の音楽著作権使用料の徴収額は1,156億7,055万円で、前年度から4.1%増加した。
使用料徴収額を分野別に見ると、音楽CDを含むオーディオディスクが216億4,597万円で前年度比10.7%減。一方、音楽配信を含むインタラクティブ配信は83億7,398万円(同8.8%増)、DVDを含むビデオグラムは169億1,819万円(同19.0%増)、有線放送は64億4,830万円(同263.1%増)と好調で、オーディオディスクの減少分を補った。ただし、有線放送の増収は、これまで支払われなかったCATVの使用料が、訴訟の解決に伴い入金されたため。
インタラクティブ配信の徴収額の構成比としては、「iTunes Store」などを含む楽曲配信が43.6%と半数近くを占め、次いで着うたが26.1%、着メロが22.2%、動画が5.8%と続いた。なお、楽曲配信は、2007年度の徴収額に反映されていないデータが多数あり、これらの徴収額が2008年度に反映される見込みだという。
全体の徴収額の構成比としては、放送等が23.0%で最も高く、オーディオディスクが18.7%で続いた。以下は、演奏等が17.0%、ビデオグラムが14.6%、インタラクティブ配信が7.2%など。
● YouTubeへの利用許諾は違法コンテンツ対応を待っている状態
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JASRAC常務理事の菅原瑞夫氏
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私的録音補償金は3億441万円で前年度比22.0%減、私的録画補償金は2億459万円で同20.2%減だった。
私的録音録画補償金制度をめぐっては、5月8日に開かれた文化審議会の私的録音録画小委員会で文化庁が、iPodやHDDレコーダーなど録音録画が主用途の機器や媒体を補償金対象とするなどの方針を盛り込んだ試案を示した。
この点についてJASRAC常務理事の菅原瑞夫氏は、「消費者や第三者的立場の学者の代表者も、これまでの議論を重ねた結論であればやむを得ないと言っている。残っている(賛成していない)のはメーカーだけ」と述べ、関係者の合意によって早急に著作権法を改正すべきとの考えを示した。
また、動画投稿サイトにおける音楽著作物の利用許諾については、これまでヤフーやソニー、ニワンゴなど5社と許諾契約を結んだことを報告。YouTubeとも協議を継続中だという。
YouTubeとの利用許諾契約に至らない理由については、過去に投稿された違法コンテンツへの対策が示されていないことを指摘。YouTube側からの対応を「首を長くしてお待ちしている状況」と述べ、具体的な対策方法が示されれば許諾契約を結びたいと話した。
著作権保護期間については、JASRAC理事の都倉俊一氏が、早急に現在の「死後50年」から、欧米先進国と同様に「死後70年」に移行すべきと主張した。「日本だけが50年を継続すると、諸外国と20年のギャップが出る。そうなると、将来的に日本が“著作権ヘイブン(回避地)”になり、日本でダウンロードすればタダという現象が起こりうる。これは、知財立国を標榜する我が国としては恥ずかしいこと」。
● 国内著作権使用料の分配額2位は「エヴァンゲリオンBGM」、パチンコの利用も
このほか、JASRACの著作権使用料の分配額が多かった作品を表彰する「JASRAC賞」も発表された。国内作品で最も分配額が多かったのは宇多田ヒカルの「Flavor Of Life」だった。
トップ10には、第2位「エヴァンゲリオンBGM」と第7位「残酷な天使のテーゼ」(ともにTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」)、第9位「愛をとりもどせ!!」(TVアニメ「北斗の拳」)がランクイン。これらはオリジナルコンテンツのDVDだけでなく、パチンコやパチスロ、ゲームなどで再利用されるなど、これまでにない利用形態が見られたという。
【お詫びと訂正 2008/05/15 13:33】
記事初出時、私的録音補償金について「30億4,417万円」としていましたが、正しくは「3億441万円」です。私的録画補償金についても「20億4,595万円」としてましたが、正しくは「2億459万円」です。お詫びして訂正いたします。
関連情報
■URL
日本音楽著作権協会(JASRAC)
http://www.jasrac.or.jp/
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( 増田 覚 )
2008/05/14 20:21
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