ビジネスブログやSNSに関するイベント「Business Blog & SNS World」で17日、フリーライターの佐橋慶信氏による「炎上の科学」と題した講演が行なわれた。講演では、ブログの記事やブログ開設者の言動などを発端として批判が殺到する、いわゆる「炎上」と呼ばれる現象について、これまでの例や傾向、対策などが語られた。
● 企業と個人の論理のすれ違いが炎上につながることも
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フリーライターの佐橋慶信氏
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佐橋氏はまず「炎上」がどこで発生するのかについて、ブログで言えばコメント欄に大量のコメントが寄せられることなどから起こると説明。その後、「荒れている」という報告が2ちゃんねるなどの掲示板や個人ブログなどに記載されるようになり、これらの騒動についての「まとめサイト」が作られる頃が炎上の最盛期で、さらに進むと一般紙やテレビのワイドショーなどにも取り上げられるが、ここまで来ると単に炎上と言うよりはもはや「事件」のレベルだとした。
佐橋氏は、ブログやサイトなどが炎上状態に至る例は多いが、今回はビジネスブログのイベントであるため、企業が絡んだ例を挙げたいとして、3つのケースを紹介。ソニーがウォークマンのプロモーション活動として開設したブログでは、一般人のウォークマン体験日記という形式を取っていたものの、不自然な言動などから批判が殺到。また、寄せられた批判に対しての苦しい言い訳をしたことなどが火に油を注ぎ、数日でブログが閉鎖に追い込まれた。
この炎上騒動について佐橋氏は、「深慮無しにバズ・マーケティング(口コミマーケティング)を素人が運用しようとした」ことが原因ではないかと分析。バズ・マーケティングの有効性といった話を聞きつけ、低予算で最大効果を得ようとする底の浅いマーケティングを展開してしまった結果、炎上という形でユーザーからの反発を受けたのではないかとした。
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の例では、NTTドコモが新サービスの「プッシュトーク」の宣伝の一環として、mixiに公認コミュニティを開設したところ、ユーザーの反発を受けたケースを紹介。この場合には、コミュニティにおいて「プッシュトーク以外の話題の禁止」「管理人へのマイミク申請の拒否」「トピック作成の制限」といった措置を取ったことが、ユーザーの反発を呼んでしまった。
この問題については、「mixiはコミュニケーションの場であると考えているユーザーと、宣伝の場としか考えていなかった企業との思惑のすれ違い」が原因ではないかと分析。宣伝のための場所であれば、批判的な意見などが書かれるのは避けたいという論理もわかるが、その理論をそのままコミュニティに持ち込もうとしたことが、トラブルの種になったとした。
また、最近の例としては、NHKの番組で企業の口コミ戦略として紹介されたブログが、一般のユーザーを装った「提灯ブログ」だとして批判が殺到したケースを挙げ、十分に説明の無い宣伝活動は批判の対象になりやすいとした。
● 「謝るべきは謝る」が大事。訴訟などは後で静かに
佐橋氏は、ブログやサイトがこうした炎上状態となった場合に、やってはいけない対策として「削除」「言い訳」「責任回避」「全面対決」を挙げる。「削除」については、問題となった記事やコメントを削除しても、必ず誰かがキャッシュとしてそれを保存しており、削除はむしろ新たな「燃料」の投下にしかならないと指摘。また、言い訳や責任回避ができる状態なら炎上になる前に収束しているはずだとした。さらに、全面対決は相手にする人数を考えればやめておいた方が無難で、その際のやりとりから新たな騒動に発展しかねないとした。
炎上した場合にどのように対応するべきかについては、ケースバイケースの側面も大きいとしながらも、「謝るべきは謝る」「言い訳しすぎない」「他人に頼るのは逆効果」の3点を挙げる。佐橋氏は、「自らに非のある部分は素直に謝るのが最も大切」として、言い訳はしても良いが、責任転嫁はしないことも重要だと説明。また、権威や警察などを持ち出すのは逆効果で、かえって騒動を大きくするだけだと指摘した。
一方で、事実無根の誹謗中傷や業務妨害などの被害があった場合には、冷静に記録を残し、静かに対応することが重要だと説明。わざわざブログなどで「告訴します」などと表明することは新たな騒動の種にしかならないとして、訴訟などの対応は後で静かに行なうべきだとした。
炎上しない方法については、基本的には一般社会での対応と同じであるとして、「できないことは書かない」「書いた事には責任を持つ」「情報の扱いは慎重に行なう」の3点を挙げる。特に企業の場合にはマスコミ対策と同様で、「社長不在の記者会見」「知らない、わからないといった発言」「他社への責任転嫁」「遅すぎるコメント」といった対応が最悪であるとして、危機管理責任者の常設が急務だとした。
また、ブログやSNSを利用したバズ・マーケティングについては、欧米でも詐欺だと感じる人が多く、どうしても口コミを使いたい場合でも、きちんとプロモーションであることを説明した方が良いと提言。「こっそりやろうとしても、隠し事は隠しきれない」として、こうした非常識が炎上の火種になると説明。企業は責任の所在を明確にすることが重要で、「責任のある素早い対応が企業を救う」と述べて講演を締めくくった。
関連情報
■URL
Business Blog & SNS World
http://www.idg.co.jp/expo/bbsns/
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( 三柳英樹 )
2006/11/20 17:22
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