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【おもてなしのプロフェッショナル】
京都の二条城から日本の「おもてなし」を鍛え、発信するワン・ワールド

 平成30年度、京都府内観光入込客数は約8505万人となりました(京都府HPより)。京都市内の人気スポットである二条城には、年間250万人の観光客が訪れます。今回は、その人気を支え、進化させていく株式会社ワン・ワールドの山口様にお話を伺いました。

「受付業務」を再定義する

ワン・ワールドの始まりと、現在についてお教えください

 もともと、平成10年に建物総合管理として、ビルやマンションの共有部分のメンテナンス事業をスタートさせたのがワン・ワールドの始まりです。当初は、民間の小さな実績をもとに、京都市をはじめとする官公庁の委託業務を開拓するために、営業を続け、少しずつ入札に参加できるようになってきました。この時代には、これまで官公庁の委託業務は複数年契約が普通の時代でしたが、徐々に、単年度契約に変わるようになり、これまで参加できなかった弊社でも少しずつ参加できるチャンスが出て来ました。このチャンスを生かすべく営業努力を積み重ね、営業範囲を拡大し、メンテナンス事業の拡大を図り、そして、メンテナンスと共に設備管理業務にも参入するようにしました。
 そして、次なる目標を考えていたときに、京都市役所に出入りしていた時、ふと「受付業務」の女子が目に入りました。「この業務は職員なのか・・?」と、疑問に思い、所管窓口に問い合わせにいったところ、「民間事業者に委託している」と聞き、「資格はいるのか・・・?」「次は、いつ見積合せをするのか・・・」などと、このチャンスを生かさずして、事業拡大はないという思いで、翌年に見積合せに参加できることになり、その業務を確保することが出来ました。

 メンテナンスの時のように、この実績を用いて、京都市内の施設の改札・案内業務がある施設を調査し、営業努力を積み重ねました。これらの改札・案内業務は、当初、入札で委託されており、市役所の受付業務の実績をもとに、全施設へ営業し、入札に参加できるようになって来ました。入札に参加し、市役所以外の施設も徐々に委託を受けられるようになりましたが、今度はメンテナンスのように、価格競争の入札でなく、改札・受付業務は、値段だけで決められるような時代から変化し、プレゼンテーションの時代へと少しずつ変わってきました。つまり、入札のような単純な価格競争でなく、アイデアや工夫の凝らしたプレゼンで、事業者を決めるようになり、「おもてなし」の猛勉強をするようになりました。

 改札・案内業務といっても、施設ごとに応じた対応があり、その内容は多岐に渡り、お客様に何を持ち帰っていただくのか、どのような「おもてなし」が必要なのかを掘り下げ、お客様のニーズにお答えすると同時に、気づきをご提供する必要が有ります。
猛勉強と共に、改札・案内業務の営業努力を積み重ね、現在では、年間250万人の観光客がご来城される世界遺産・二条城をはじめ、毎日、多くのこども達が訪れる京都市動物園、京都コンサートホールや青少年科学センターなどの改札・案内業務を任せていただくことが出来るようになりました。このような公共施設は、ただ単に、仕様書にある業務をするだけでは評価を得る事が出来ず、常にスタッフのおもてなし研修や様々なアイデアと創意工夫を凝らした提案をすることで、信頼を勝ち取らなければなりません。

 一方、昨今は働き方改革や若者の雇用問題、氷河期世代の就職問題などが叫ばれています。そこで次なる目的として、これら就職が困難な若者の声を聞き、政府の就職支援の勉強をするようになり、国の支援事業にも参画できるようになり、OJTとOff-JTを勉強し、就職支援事業を確保する提案に手を挙げるようになりました。このように、現在は、メンテナンス部門、設備管理部門、改札・受付案内業務部門、そして就職支援部門の4つを事業の柱として日々努力しています。

二条城をより楽しく、より二条城らしくする

今までで、最も記憶に残っているお仕事は何でしょうか

 もちろん、二条城ですね。特に二条城に携わって10年は経っていますので、私の宝物のような存在です。現在、二条城は世界遺産に登録されており、実績があるので大変注目されています。2019年の天皇陛下即位時、東大手門に屏風を作り、寄付をしました。また、二条城内のエサやり機の設置です。二条城の外堀内堀には併せて200匹程度の鯉がいますが、以前は職員の手でエサやりが行われていました。そこで提案に行き、エサやり機を設置、今では一日平均80個は売れる人気となっています。さらには外国人観光客が増えた結果、キャリーケースのような大きな荷物をもって観光されるお客様が目立つようになりました。しかしながら、コインロッカーは順路と反対方向の休憩所にしかありませんでした。そこでお客様の動線を考え、東大手門入ったところに手荷物預かり所を設置したことで、スムーズに二条城を観光できるようになりました。


 

今、力を入れて取り組まれていることはなんですか?

 二条城の制服を「着物」に変えることです。二条城は砂利で整備されているため、普段はスニーカーを履くよう義務化しています。しかし本格的な着物を導入すると、着替えに手間取ること、砂利で動きが取りにくくなることが予想されます。そこで着物を上下二部制にして、上の羽織と下の袴で独立させることにしました。その結果、以前の制服と同程度の短時間で着ることができるようになり、動きやすさも同時に確保することが出来ました。現在は、二条城に関係する企業に協賛金を募り、この制服の完成を目指しています。これを2020年の二条城内の春のライトアップまでに完成、導入を目指しています。

「おもてなしのプロフェッショナル」を輩出するために

今後の展望をお聞かせください

 私の最終目的は「観光都市である京都の人材不足を、人材育成で解決する。」ということです。理由としては、教育で変わる若者の姿があります。アルバイトの面接に来た学生に研修をして、いざコンサートホールのような高い接客レベルが要求される場所で1年ほど仕事をすると、若者が大変身します。自信と自覚を持つと、以前の姿から一回りも二回りも、若者は変わるのです。このような出来事から「おもてなしの専門学校」を作ろうと考えています。京都は観光都市と言われますが、おもてなしの専門技術を学べる専門学校はありません。京都市内では唯一、平安女学院大学に「おもてなし学科」が存在するのみです。将来的にはおもてなしの専門技術を学べる専門学校を作り、プロフェッショナルを育て、京都の各分野の企業に即戦力で送り出せるようにしたいと考えています。また、ワン・ワールドをいかに「ワン・ワールドで仕事をしたい」、「京都市動物園で仕事をしたい」と思っていただけるような魅力的な企業に出来るかを考えています。私は常に「おもてなし」ということを追求しています。それはお客様だけではなく、ワン・ワールドで働く社員やスタッフ、ワン・ワールドと係る全ての人々へ、どのようなおもてなしが出来るのか?どのようにすれば喜んで頂けるのか?ということです。そのことを常日頃から考えていれば、他社との区別化が図れ、自然と求められるようになります。今後もワン・ワールド独自の「おもてなし」を追求し続け、「ワン・ワールドしかない!」と思って頂けるような魅力ある会社づくりを行なって参ります。

<編集後記>
 現在では多くの外国人観光客が京都を訪れるようになり、日本のハイレベルな「おもてなし」があらゆる場所で求められるようになっています。このような状況下だからこそ、専門技術を有した「おもてなしのプロフェッショナル」を育て、将来の日本のインバウンドを背負って立つような人材を育成する必要が有ると思いました。(INBOUNDPLUS編集部 長谷川拳太郎)

取材・写真:世良田一輝
編集:長谷川拳太郎

INBOUND PLUS 編集部

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