理研での研究倫理軽視に関する告発?

概要
サイエンス誌のウェブサイトに、理研での研究倫理軽視に関する告発のコメントが載っていたので紹介する。なお、この告発の真偽は不明である。

告発

科学に関する学術誌サイエンス(Science) [1] のウェブサイトに、理化学研究所(理研)での研究倫理軽視に関する告発のコメントが載っていたので紹介したいと思う。

STAP細胞に関するニュース記事 [2] が、Irreproducibility Dogs New Reprogramming Method(訳:結果が再現されないことが、細胞を未分化状態に戻す新しい手法を悩ます)というタイトルでサイエンス誌に掲載された。このニュース記事に対し、サイエンス誌のウェブサイト上でトーマス・クネプフェル (Thomas Knöpfel) を名乗る人からコメントが投稿されていた。コメントの一部を以下に引用する。

Not knowing anything on this particular case I cannot comment on specifics. However, having worked 15 years for RIKEN in the role of principal investigator (Laboratory Head) I can report that RIKEN has a very soft interpretation of “research misconduct”. I personally had been severely harassed (and finally found unsuitable to continue my work at RIKEN) because I was not willing to tolerate events, that I my word constitute “research misconduct”, such as plagiarisms, blackmail to gain inappropriate co-authorships, and publication of results that are inconsistent with better knowledge of the authors or that are described in an intentionally misleading way.

(訳:この特定の事件については何も知らないので、詳細についてコメントすることはできない。しかし、理研に主任研究者(研究室の長)として15年働いたことにより、理研が「研究上の不正」に関してとても柔軟な解釈を持っていることについては報告することができる。剽窃、不適切に共著者となるためのゆすり、著者のより良い知識と合致しない結果や意図的に誤解させるような書き方で表された結果を公表することといった、私の言葉でいえば「研究上の不正」をなすような事件を見逃そうとしなかったため、私は個人的に激しい嫌がらせを受け続けていた(結果として理研で仕事を続けるのが不適当であるということが分かった)。)

Knöpfel, T. (2014, March 23). Re: Irreproducibility Dogs New Reprogramming Method [Website comment]. Retrieved from http://comments.sciencemag.org/content/10.1126/science.343.6177.1299(訳は引用者による。)

研究不正に関する補足

上記の引用部分に描写されている研究上の不正について簡単に補足しておこう。

「不適切に共著者となる」ということは、一般の人にとってはどんな不正か分かりにくいかもしれない。これは端的に言えば、知的な貢献をほとんど(あるいは全く)していないのに、学術論文 [3] の著者の一人に加わるということだ。学術論文の著者として名前を載せるためには、その論文を作りあげるために十分な知的な貢献をしなくてはならない。このため、本来は十分な知的な貢献をしていなければ共著者となることはできないのだ。それにもかかわらず、共著者になろうとする点で不正なのである。この種の不正でよくあるパターンは、部下の研究に対して何も貢献していないのに、上司が部下の書く論文に名前を連ねるということだ [4]

告発者について

上記のコメントは、トーマス・クネプフェル (Thomas Knöpfel) を名乗る人が書いたものだ。クネプフェル氏は、ウェブ上に公開されている履歴書によれば、1998年から理化学研究所の脳科学総合研究センターに勤めている。立場としては神経回路ダイナミクス研究チームという研究室のチームリーダーにあった。そして、2013年に英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンに移っている。

ただし、上記のコメントが本当にクネプフェル氏本人によるものなのかは確認できない。ウェブサイト上のコメントなど、いくらでもなりすまそうと思えばなりすませるからだ。またたとえ本人が書いたとしても勘違いなどがあったという可能性がないわけではない。あくまでも信じるか信じないかはあなた次第だ。

2014年5月31日追記:ANNの2014年4月17日付の「ドイツ人教授『理研は“STAP”以前も改ざんあった』」という報道で、クネプフェル氏自身がインタビューに対し、論文の盗用などを見たことがあると答えている。どうやら、サイエンス誌のウェブサイトでの投稿は本人によるものであったと考えて良さそうである。

脚注
  1. サイエンス誌はアメリカの雑誌で、科学に関する学術誌の中では最も権威がある雑誌の一つである。学術論文だけではなく、科学に関するニュースや評論も掲載される。 []
  2. Normile, D., & Vogel, G. (2014). Irreproducibility Dogs New Reprogramming Method. Science, 343(6177), 1299-1300. []
  3. 論文だけに限定されるのではなく、学会発表でも同様。 []
  4. 部下と上司を学生と大学教員に入れ替えても同種の不正が成立する。 []